メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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32.次元の狭間

32.ウルトラソウル!

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 いる。

 拳闘士は確認した。ただ顔を上げ、後方上方、その眼差しで一点を射抜いた。

 白く黒い女はゾッとした。透明状態にもかかわらず、精確にこちらを射抜いている。
 すでに敗北が脳裏にちらついている。

 褐色の悪魔。

 鋭い眼光にかつてない戦慄を覚えながら、それでもポラリスは興奮した。前回の敗北の泥と合わせて、すでにグチョグチョだ。

 白と黒に彩られた爪を鋭くしつつ、まだ様子を窺う。あの戦いから、慎重さも大事というのを教わったのだ。
 どこか小さな虫のようにこそこそと動き、拳闘士に近づく。拳闘士の目はその間もずっとこちらを見ている。

 先日手に入れた手に入れた鑑定の魔眼を使ってみる。レベルも能力も向こうの方が上だ。覆せないというわけではないだろう。しかし、相当に骨が折れることになる。

『なれば』

 ポラリスは光の魔力を掌に出し、わざとそれを握り潰した。簡易的な閃光弾である。

「チッ」

 光をまともに浴び、舌打ちしながら顔を背けた。

 それを隙と見たポラリスが一気に距離を詰め、爪を振るった。的確に頭を狙った一撃を、コウガイは首を傾けるのみで避けてみせた。

 何となくそうなるであろうと予想としていたポラリスは、翼を上手に制御して一回転し、もう一度爪を振るった。

 コウガイは、今度は背を反らすことで爪を躱した。そして、そのままポラリスの足を掴み、剣を振るように上から下に振り下ろした。
 ポラリスは咄嗟に頭を守るように両手を後頭部に入れたとはいえ、その下にあった地面が大きく陥没するほどの威力は貫いてきた。

 歯の隙間から零れそうになっていた血を無理矢理吐き出し、空っぽになっている肺に空気を入れる。しかし、萎んだままの肺は空気を十分に入れることができず、無様に喘ぐばかりだ。

 コウガイはそこで待つことはせず、ポラリスを引き抜き、追撃を加えていく。五回六回と叩きつけられる毎に意識が飛ぶ。飛ばされては戻され、戻されては飛ばされる。
 あの時以上の暴力と理不尽。どう頑張ってもここから勝てるビジョンが見えない。

 そして、叩きつけが止んだ。

 片足を掴まれたまま、乱雑に吊り下げられる。ポラリスの両手はすでにボロボロで原型すらそこにない。右手は肘の近くまでなくなっており、左手はなくなっており手首から肘のところまで裂けて鞭のようになっている。後頭部もなくなっており、傷から血液やら脳漿やらと一緒に、何か湿った肉片が落ちた。

 コウガイは興味を失った壊れた玩具を扱うように投げ捨てた。

 グシャとポラリスの頭がさらに潰れた。

「不死性というのはそこまでいくのだな」
『何じゃ、気付いておったのか』

 頭がぐちゃぐちゃに崩れているにもかかわらず、流暢に言葉が流れてくる。少し奇妙な印象を受けるが、コウガイは無視した。彼にとって彼女はその程度の存在なのだ。
 ポラリスがコウガイに引っ付いているだけなのだ。

『我が届くのは、まだまだ先かぁ』
「知るか」

 ポケットに手を突っ込んで歩くコウガイの後ろで、徐に立ち上がり、ポラリスは後ろについて歩き始めた。
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