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32‐1.一日千秋
2.セルン
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「よし」
セルンはリュックサックの前でガッツポーズを取った。
そして、小さく可愛らしい兎の顔が描かれたリュックサックを背負い、セルンは出発した。
セルンはコストイラと会って、大いに変わった。とても大変にガラリと。そして、二度も。
一度目は超退廃的かつ閉塞的な世界で生きていたセルンに外の世界を見せた。
窓をぶっ壊して入ってきたコストイラは、セルンの手を引いて、外の世界へ連れ出した。
コストイラの家に御忍びで行ったときには、目敏く見つけてきては強引に遊ばされた。体力のないセルンは毎回のように疲れすぎて失神気味だった。
この期間、セルンはかなりのアウトドア陰キャであった。
その後、コストイラと会えなくなってからは、元のガチ引き籠り陰キャになってしまった。
二度目はついこの間。もう一度コストイラに会えた時。
セルンは再認識した。私はコストイラが好きだ。
セルンは一度してしまった恋心に従うことにした。
コストイラの家に突撃することにした。もう押しかけて、無理矢理世話してしまえば、コストイラの性格ならば、決して追い返すことなどしないだろう。
セルンは疲れてしまったため、道横にある切り株に座っていた。
別にセルンに体力がないわけではない。コストイラと遊んでいた頃の体力がある。
庭や墓地、花畑が遊び場であったセルンは、踏み固められていたとはいえ、土でしか遊んだことがないのだ。
疲れの原因は整備された石畳。歩き方が分からず、余分に体力を削られてしまったのだ。
「ふぅ」
すでにかなりの体力を消費してしまったセルンは、かなりのお眠状態に突入してしまっている。
クゥ。
セルンの小さなお腹から、可愛らしい音が鳴った。兎のリュックサックの中を探ったが、食べ物らしきものはどこにも入っていない。
分かりやすくシュンとしてしまった。
「おい、あれを見ろ!」
「見てる、見てるから引っ張んなって」
騒がしくしている男女の方を見ると、とてもいい匂いがしてきた。何の匂いかは分からないが、どこか懐かしい匂いだ。
黄色い髪の女が近づいてくる。セルンが警戒するように強くリュックサックを抱えているところを見て、、彼女は手をワタワタと振って慌ただしく振り始めた。
「わぁっ!? 待って待って! ね、ねぇお嬢ちゃん、どしたの? 困っているの?」
セルンは物凄く子供扱いを受けた。まぁ、この身長が原因だろう。そんなことは分かっている。しかし、やっぱり駄目だ。普通に許せない。
「……私、十八なんだけど」
「ヤベェやった。同い年だ」
黄髪の女はかなりやってしまったことを理解し、焦りながら隣の男を見た。男は知るかそんなこと、という顔をしている。
「今、アタシのやるべきことはもうこれしかない!」
黄髪の女はとても覚悟の決まった目でセルンを見た。
「君にはこのとっておきのアップルパイをあげよう!」
「なっ! あのアップルパイ狂いのお前が人にあげる!? 明日には嵐か!?」
「アップルパイ?」
提案した黄髪の女に対する失礼な物言いは無視された。
セルンはまだ温かいアップルパイを受け取った。
ホカホカなアップルパイに感激し、思わず涎と涙が出てしまいそうだ。
「と、いうわけで、アタシ達がお嬢ちゃんの行きそうなところまで、案内しよう!」
セルンはリュックサックの前でガッツポーズを取った。
そして、小さく可愛らしい兎の顔が描かれたリュックサックを背負い、セルンは出発した。
セルンはコストイラと会って、大いに変わった。とても大変にガラリと。そして、二度も。
一度目は超退廃的かつ閉塞的な世界で生きていたセルンに外の世界を見せた。
窓をぶっ壊して入ってきたコストイラは、セルンの手を引いて、外の世界へ連れ出した。
コストイラの家に御忍びで行ったときには、目敏く見つけてきては強引に遊ばされた。体力のないセルンは毎回のように疲れすぎて失神気味だった。
この期間、セルンはかなりのアウトドア陰キャであった。
その後、コストイラと会えなくなってからは、元のガチ引き籠り陰キャになってしまった。
二度目はついこの間。もう一度コストイラに会えた時。
セルンは再認識した。私はコストイラが好きだ。
セルンは一度してしまった恋心に従うことにした。
コストイラの家に突撃することにした。もう押しかけて、無理矢理世話してしまえば、コストイラの性格ならば、決して追い返すことなどしないだろう。
セルンは疲れてしまったため、道横にある切り株に座っていた。
別にセルンに体力がないわけではない。コストイラと遊んでいた頃の体力がある。
庭や墓地、花畑が遊び場であったセルンは、踏み固められていたとはいえ、土でしか遊んだことがないのだ。
疲れの原因は整備された石畳。歩き方が分からず、余分に体力を削られてしまったのだ。
「ふぅ」
すでにかなりの体力を消費してしまったセルンは、かなりのお眠状態に突入してしまっている。
クゥ。
セルンの小さなお腹から、可愛らしい音が鳴った。兎のリュックサックの中を探ったが、食べ物らしきものはどこにも入っていない。
分かりやすくシュンとしてしまった。
「おい、あれを見ろ!」
「見てる、見てるから引っ張んなって」
騒がしくしている男女の方を見ると、とてもいい匂いがしてきた。何の匂いかは分からないが、どこか懐かしい匂いだ。
黄色い髪の女が近づいてくる。セルンが警戒するように強くリュックサックを抱えているところを見て、、彼女は手をワタワタと振って慌ただしく振り始めた。
「わぁっ!? 待って待って! ね、ねぇお嬢ちゃん、どしたの? 困っているの?」
セルンは物凄く子供扱いを受けた。まぁ、この身長が原因だろう。そんなことは分かっている。しかし、やっぱり駄目だ。普通に許せない。
「……私、十八なんだけど」
「ヤベェやった。同い年だ」
黄髪の女はかなりやってしまったことを理解し、焦りながら隣の男を見た。男は知るかそんなこと、という顔をしている。
「今、アタシのやるべきことはもうこれしかない!」
黄髪の女はとても覚悟の決まった目でセルンを見た。
「君にはこのとっておきのアップルパイをあげよう!」
「なっ! あのアップルパイ狂いのお前が人にあげる!? 明日には嵐か!?」
「アップルパイ?」
提案した黄髪の女に対する失礼な物言いは無視された。
セルンはまだ温かいアップルパイを受け取った。
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「と、いうわけで、アタシ達がお嬢ちゃんの行きそうなところまで、案内しよう!」
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