メグルユメ

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5.無縁塚

14.拳闘魂

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 男は人間ではない。男は拳闘士だ。



 産まれてから初めて行うのは発声ではなく拳の握り。文字よりも先に喧嘩の仕方を覚える種族だ。男女問わず戦う者を稚魚と呼び、勝ちの少ないものを雑魚と呼び、勝ちを生み戦いに身を置くものを戦士と呼ぶ。



 人間は子から大人になるとき、成人の儀を行うが、拳闘士は魔物と戦う。負ければ死。勝てば大人。



 戦いに身を置くものとして、男――ヌイトは闘者と名乗り、五重の塔の建設に携わった。ここにいれば戦いは自ずとやってくる。



 ヌイトにとっては最高の環境だと信じていた。



 五重の塔では何者なのか分かりやすい名を名乗らされるので闘者と名乗った。幾年が経ち、成長が止まったことに気付いた。















 炎の火力もだが、コストイラの力の方が上回っていた拳が弾かれた。思考が白く染まった。アレン達はヌイトの虚を衝き始める。考えていなかったところから攻撃が飛んでくる。槍の一撃は回避しきれず腿を斬られる。ナイフの猛撃は御しきれず体に細かく傷を作っていく。炎の柱はギリギリで躱していくが、鼻の頭や肘の先が炙られていく。弓矢はもはや無視していても平気だった。アレンは悲しくなった。誰もフォローは入れない。



 攻めに転じられない。攻めに転じようとすればすぐに別の方向から攻撃が飛んできて中断せざるを得なくなってしまう。



 急激に攻め方を変えてきた。先程までの軟弱な攻めとは比べ物にならない。



 面白れぇッ!



 ヌイトは長らく忘れていた。ひりひりする戦闘感覚に身を沈めていく。心地いい高揚感に痛みが消えていく。体から湯気が立ち上る。



「いくぜっ!逆転だっ!」



 成長が止まったことに気付いてから常に一層で戦い続けた。時には強い者と戦いを行うこともあった。しかしこの5年は現れなかった。退屈な日々を過ごした。傷一つつくことなく、戦いと呼べるものではない遊戯を演じていた。変わらない弱者との戦い。そんな中、今日この日、強者が現れた。















 湯気を吹き出し光を纏う上裸の男の拳に、赤煙を吐き炎を纏う紅い男が刀を合わせる。刀を振るう速度と同じ速度でヌイトは縦回転する。刀は引かなければ斬ることができない。痕を拳に残しながら、纏う光を失った拳を振り下ろす。そこに蒼い男が乱入する。槍撃は確実にヌイトを捉え壁へ縫いつける。ヌイトは壁に叩きつけながらも、槍を摑んでおりギリギリのところで刺されていない。もう一度右手を握り締めようとした時、掌にナイフが刺さる。両手を封じられた。目の前には拳を振りかぶったレイド。敗色濃厚?いや、負けだ。拳が顔面へと突き刺さる。意識が混濁していく。



 消えていく。



 意識が。



 繋がりが。



 地位が。



 消えたのだから、始めていけばいい。



 やはり戦う者としては、堂と構えていてはいけない。オレは挑戦者なのだから。















 上裸の男が動かなくなる。



「試練は突破か」



「倒せたのですから突破でしょう」



 コストイラは刀を収めながら疑問を口にする。アレンは自分の考えを口にする。エンドローゼは会話に参加せず、片っ端から回復していく。



「無理をしないでくださいね」



「わ、わ、私は回復しかできません。せ、せ、戦闘中はめ、め、迷惑をかけてばかりなので、む、無理をさせてください」



 エンドローゼがかっこよく見える。回復に対する意気込みは誰もが認めている。エンドローゼはヌイトには回復をかけずに皆の後を付いていく。
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