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6.紅い館
18.廃洋館
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寒さが厳しく、強まっていく。吐く息はいまだに相変わらず白いままだ。しかし、景色も白く色づいていっていた。この地はこんなに寒くなるような土地ではない。むしろ暑い方だったはずだ。
「へっぷし」
可愛らしくくしゃみをするエンドローゼはブルりと体を震わせ腕を擦る。寒い。寒いが、防寒具がない。雪は降っていない。今のうちにできる限り歩を進めるべきだが、体の動きが鈍く思うように進めない。気温が1ケタ台とはこんな世界なのか。
「まだ着かねェのか」
寒さで進行がゆっくりになっているせいで想定していた時間よりも長くかかってしまっている。それに苛立ったコストイラがぽつりと呟いた。正確な答えを持っている者はこの場にはいないので誰からも返答がない。文句を言いながらも歩くことそこから30分、目標にしていた建物に辿り着いた。想定から3時間も後のことだった。
石造りの洋館だ。このあたりは石造りの家屋が多いため何も珍しいことではない。ちなみにアレンだけは木造だ。自分で切った木を有効活用したらしい。
「1つ1つ部屋を調べますか?」
「もう遅いから明日にした方が良い場所もあるだろ」
コストイラの提案が飲まれ、このまま皆が就寝することとなった。
翌日。起きると睫毛が凍っていた。雪も氷もないのに。全員を起こすと、部屋を虱潰しに調べていく。
1階。台所や洗濯場、リビングがある。風呂場まであった。風呂を個人で持てるなんて貴族や金持ちぐらいなものだ。普通は温かい水の入った桶に布を漬け、それで体を拭くだけだ。ここは権力者の家だろうか。
台所や洗濯場にはそれとわかるものがいくつか残っていたが、食器やスプーンの類、衣類は一切残っていなかった。
「ひ、ひ、引っ越したんですかね」
「さぁね。2階も見てみないと分からないわ」
さらに1階を詳しく探索してみたが、見つかったのは地下への階段と2階への階段。地下道で戦ってきたばかりな一行は自然と地下を避け、2階へと上った。
2階には寝室しかない。謎に埃の被っていない椅子が一つだけあった。さっきまで誰かがここにいたのだろうか。気になるものはそれだけであり、他には何の変哲もない部屋しかない。というよりも、何も置いていなかった。不自然なほどに。隅々まで探したが、やはり何もない。
後は地下しかない。地下にいい思い出がない。正直な話行きたくない。1階に下りてくると、地下への階段を下り、扉に手をかける。
「冷ッ!?」
扉に触れたコストイラが思わず手を離した。冷たいドアノブにはコストイラの指の皮が付着していた。触れたときにくっついたようだ。コストイラは手をプラプラさせ、布を一枚かませて扉を開けた。
冷気が溢れてくる。ブルりと身を震わせる。寒い。この先に確実に原因がある。アレンは行きたくないと思いつつ、地下道を進み始める。
『カレトワ』
「ん?」
名前を呼ばれた黄色の髪の少女は振り返る。
「何?パンタレストさん。アタシに何か用ですか?」
『最近現れた勇者についてはどうなっている?』
「…………」
困った。カレトワは知らない。
勇者が現れたのは知っている。しかし、それがカレトワの持っている勇者についてのすべてだ。会ったことどころか見たことすらない。それどころか情報も入っていない。カレトワにとっては勇者などどうでもいい。来ればなんとかするが、まだ来ていないので何とも思っていない。
今、邪魔をするのなら遣われるのも吝かではないが、邪魔をされていないので何とも思わない。というか面倒なので遣われたくない。
「アタシ何にも知らないですよ。そういうのはデータ野郎のカンジャにでも聞けばいいんじゃないですかね」
『アイツは今、研究中なのだ。話しかけられない』
「アー」
カレトワは覚えている。カンジャは研究をするために魔王軍に入ってきた男だ。邪魔をせず、興味を待たれなければ基本無害な男だ。というよりは魔王軍の幹部は大体がそうだ。カレトワも邪魔されなければ無害である。
カンジャ。研究を邪魔しなければ無害。
カレトワ。自由な生き方を邪魔されなければ無害。
ロッド。興味を示されたり危害を加えなければ無害。
ヴェスタ。彼の持つ正義論に悪と判断されなければ無害。
エヴァンズ。彼の持っている権利を侵害しなければ不愛想であるが無害。
エンコ。宗教を馬鹿にしなければ無害。
コウガイ。妹に関すること以外興味を持たないので基本的に無害。
あれ、魔王軍って案外まともなのでは?
『他に誰に聞けばいいと思う?』
「知りませんよー。勇者って単語に敏感になるヴェスタとか情報収集が好きなロッドにでも聞けばいいんじゃないですかね?」
『ふむ。そうか』
パンタレストは顎を撫で、カレトワは興味が失せたようで腿を書いている。少しの沈黙が流れ、パンタレストが結論を出す。
『その2人のところに行ってみよう。呼び止めてすまんかったな』
「いいえ」
パンタレストの謝罪に手をひらひらさせながら答える。
『今度なんか奢ろう』
「え。じゃあ城下町の特選アップルパイ10個ください」
『う。あれ高いんだが』
「え、でも今奢ってくれるって」
『………わかったよ』
パンタレストはガクッと肩を落とす。カレトワは上機嫌で食堂へ向かった。
「へっぷし」
可愛らしくくしゃみをするエンドローゼはブルりと体を震わせ腕を擦る。寒い。寒いが、防寒具がない。雪は降っていない。今のうちにできる限り歩を進めるべきだが、体の動きが鈍く思うように進めない。気温が1ケタ台とはこんな世界なのか。
「まだ着かねェのか」
寒さで進行がゆっくりになっているせいで想定していた時間よりも長くかかってしまっている。それに苛立ったコストイラがぽつりと呟いた。正確な答えを持っている者はこの場にはいないので誰からも返答がない。文句を言いながらも歩くことそこから30分、目標にしていた建物に辿り着いた。想定から3時間も後のことだった。
石造りの洋館だ。このあたりは石造りの家屋が多いため何も珍しいことではない。ちなみにアレンだけは木造だ。自分で切った木を有効活用したらしい。
「1つ1つ部屋を調べますか?」
「もう遅いから明日にした方が良い場所もあるだろ」
コストイラの提案が飲まれ、このまま皆が就寝することとなった。
翌日。起きると睫毛が凍っていた。雪も氷もないのに。全員を起こすと、部屋を虱潰しに調べていく。
1階。台所や洗濯場、リビングがある。風呂場まであった。風呂を個人で持てるなんて貴族や金持ちぐらいなものだ。普通は温かい水の入った桶に布を漬け、それで体を拭くだけだ。ここは権力者の家だろうか。
台所や洗濯場にはそれとわかるものがいくつか残っていたが、食器やスプーンの類、衣類は一切残っていなかった。
「ひ、ひ、引っ越したんですかね」
「さぁね。2階も見てみないと分からないわ」
さらに1階を詳しく探索してみたが、見つかったのは地下への階段と2階への階段。地下道で戦ってきたばかりな一行は自然と地下を避け、2階へと上った。
2階には寝室しかない。謎に埃の被っていない椅子が一つだけあった。さっきまで誰かがここにいたのだろうか。気になるものはそれだけであり、他には何の変哲もない部屋しかない。というよりも、何も置いていなかった。不自然なほどに。隅々まで探したが、やはり何もない。
後は地下しかない。地下にいい思い出がない。正直な話行きたくない。1階に下りてくると、地下への階段を下り、扉に手をかける。
「冷ッ!?」
扉に触れたコストイラが思わず手を離した。冷たいドアノブにはコストイラの指の皮が付着していた。触れたときにくっついたようだ。コストイラは手をプラプラさせ、布を一枚かませて扉を開けた。
冷気が溢れてくる。ブルりと身を震わせる。寒い。この先に確実に原因がある。アレンは行きたくないと思いつつ、地下道を進み始める。
『カレトワ』
「ん?」
名前を呼ばれた黄色の髪の少女は振り返る。
「何?パンタレストさん。アタシに何か用ですか?」
『最近現れた勇者についてはどうなっている?』
「…………」
困った。カレトワは知らない。
勇者が現れたのは知っている。しかし、それがカレトワの持っている勇者についてのすべてだ。会ったことどころか見たことすらない。それどころか情報も入っていない。カレトワにとっては勇者などどうでもいい。来ればなんとかするが、まだ来ていないので何とも思っていない。
今、邪魔をするのなら遣われるのも吝かではないが、邪魔をされていないので何とも思わない。というか面倒なので遣われたくない。
「アタシ何にも知らないですよ。そういうのはデータ野郎のカンジャにでも聞けばいいんじゃないですかね」
『アイツは今、研究中なのだ。話しかけられない』
「アー」
カレトワは覚えている。カンジャは研究をするために魔王軍に入ってきた男だ。邪魔をせず、興味を待たれなければ基本無害な男だ。というよりは魔王軍の幹部は大体がそうだ。カレトワも邪魔されなければ無害である。
カンジャ。研究を邪魔しなければ無害。
カレトワ。自由な生き方を邪魔されなければ無害。
ロッド。興味を示されたり危害を加えなければ無害。
ヴェスタ。彼の持つ正義論に悪と判断されなければ無害。
エヴァンズ。彼の持っている権利を侵害しなければ不愛想であるが無害。
エンコ。宗教を馬鹿にしなければ無害。
コウガイ。妹に関すること以外興味を持たないので基本的に無害。
あれ、魔王軍って案外まともなのでは?
『他に誰に聞けばいいと思う?』
「知りませんよー。勇者って単語に敏感になるヴェスタとか情報収集が好きなロッドにでも聞けばいいんじゃないですかね?」
『ふむ。そうか』
パンタレストは顎を撫で、カレトワは興味が失せたようで腿を書いている。少しの沈黙が流れ、パンタレストが結論を出す。
『その2人のところに行ってみよう。呼び止めてすまんかったな』
「いいえ」
パンタレストの謝罪に手をひらひらさせながら答える。
『今度なんか奢ろう』
「え。じゃあ城下町の特選アップルパイ10個ください」
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