メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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7.旧地獄

4.レベル上げをしよう

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 コストイラの出しゃばりのせいでアストロのレベルが上がらなかったので、アストロはご立腹だった。よってコストイラが依頼を選ぶことになった。コストイラはしぶしぶであったが、腰に手を当て猫背の姿勢で依頼の掲示板に向かった。



 コストイラのことだ。無茶苦茶難しい依頼を持ってきそうだ。



 コストイラが1枚の羊皮紙を手に戻ってくる。コストイラは期待を裏切らず、難易度の高い依頼を持ってくる。



「死体を捨てるっつー火山が魔物のせいで近付けないらしい。道を開けてくれってさ。レリアちゃんがてんてこ舞いで頬がこけてたぜ」



 雑な説明だがなんとも分かりやすい。要するに魔物を倒せということだ。



「山登りか」



 レイドが嫌そうにポツリと呟いた。



「どうかしたんですか?」



「いや、山での重装備は遅れの原因となるし、コケると転がっていくからな」



「………そ、そうなんですか」



 うむ、と大きく頷くレイドに嘘が見えない。冗談ではなく本当に転がるのだろうか。



「わ、わ、私は体力がふ、ふあ、不安です」



 エンドローゼが指をもじもじと絡ませる。



「心配ないわ。元はといえば悪いのはコストイラよ。コストイラが何とかしてくれるわ」



「うぇっ!?う、わ、分かったよ」



 エンドローゼに大丈夫というアストロに抗議しようとするが、後ろめたさがやはりあるのかたじろいでしまう。



「レイドと一緒にいろよ。オレは前線にいるから本格的に助けるのはレイドじゃどうにもならない時な」



「任されよう」



「ふぇ!?あ、よ、よろしくお願いします」















 この火山は名前がないらしい。



 ヂドルでは火山と言えばここだから、他を考えないらしい。名前がないと困るので便宜上ヂドル山と呼ぶことにする。ヂドル山は300メートルほどの山だ。登るのに支障はないが、エンドローゼは微妙に自信がなかった。岩に腰掛け息を整えていた。ヂドル山には木々が生えておらず、岩山と言われれば全員が納得するだろう。その変わらない彩が気力を削っていた。



 すでに100メートルほど登ったが未だに魔物に遭わない。



「エンドローゼをここにおいて少人数で行くか?オレとアストロと後誰か」



「い、いえ、そ、それで、まま、間に合わなかった、ら、ら、い、い、嫌なの、で」



 息絶え絶えにコストイラの提案を斬る。息切れのせいでさらに聞き取りづらかったが何を言っているのか理解できた。コストイラが反論しようとするが、エンドローゼの目は誰よりも強く、コストイラでさえ気押された。エンドローゼは回復術士だ。こと回復に関しては絶対に譲ろうとしない頑固者だ。コストイラも諦めてエンドローゼが動けるようになるのを待った。



 そんな時だった。



 鳩胸をさらに強調するように胸を反らした鳥が下りてきた。どう見ても鶏だ。深緑色の体に羽、紅いトサカ、オレンジの眼。



「アストロ」



「分かってるわ」



 コストイラの一言にアストロも一言で返す。



『コカェアアアッ』



 鶏は一鳴きすると、口内に炎を溜める。



「お前もそのタイプか」



「問題ナシ」



 アストロは顔色を変えず、水魔術を放ち押し返す。水魔術は鶏の内部に入り込み腹を膨らませる。そのまま鶏が爆発する。



「グロ。で、レベルは?」



「ん~、まだ」



 アストロは自身のステータスを確認する。まだ29レベルだ。



「次行くか」



 息を整えたエンドローゼがリュックのショルダーハーネスを摑む。200メートル地点まで来た。気温は低くなってきており、分かりやすく休憩を入れる頻度が増えてきた。まだ、日は高いのに肌寒い。



「何でそこまで必死になってついてくんだ?別に休んでいても誰も何も言わねェぞ」



「ハァ、はぁ、ハァ、か、回復は、はぁ、ハァ、わ、私の、はぁ、ハァ、や、ハァやりたいことなのです。ハァ、ハァ、フゥ、つ、つ、ハァ、ついていきたいんです」



 はっきりとした真っ直ぐな眼の意見をぶつける。さしものコストイラは諦めて見守っている。レイドはぶつけられる視線に口を引き結ぶ。



 沈黙。無言の中、視線だけで対話している。レイドやコストイラの鋭い目に負けないほど、釣り上げられた目で応戦している。普段のエンドローゼからは想像できない強さを秘めている。



「整ったんなら頂上を目指すぞ」



 コストイラが中断させるとレイドがエンドローゼの手を取り立たせる。エンドローゼはリュックを握ると、フンと気合を入れる。



 250メートル地点に辿り着いた時、布が風に流れてきた。布、そう布である。アレン達には布にいい思い出がない。正確には髑髏の模様の布にいい思い出ない。この布との思い出は常に爆発とともにあった。アストロは嫌な顔をしながら水魔術を放つ。大爆発を起こそうとする布に当たり、集約していた熱が冷めていく。大爆発が起きない。



 萎びた布切れは力を失いへたり込む。アストロはシキに手を伸ばす。



「ナイフ貸して」



 シキがポンとナイフを手渡す。アストロはナイフを握ると眉を顰める。妙に握りづらい。しかし、刺すのに問題はない。ぴくぴくと動く布切れに刃を入れ、裂く。



 アストロは自身の現在のレベルを確認しようとステータスを開こうとする。



『ゴォオオオオオッッ!!』



 ドラゴンの叫び声がそれを中断させる。両目をオレンジに爛々と輝かせ、口の端からチロチロと炎が見えている。翼を動かし、風を起こしていく。砂塵が舞い、小石が転がる。アストロ達は目を守るように腕で視界を覆ってしまう。



 アストロは左手を向ける。ほとんど反射だ。咄嗟に動く時、人は自分の信じたものに頼る。アストロが頼ったのは魔術だ。効果抜群の水魔術ではない。アストロが最も撃ってきた炎魔術だ。



 牙が触れてしまいそうなほどに手に近付いた時、掌から炎が飛び出した。炎はドラゴンの内臓を焼いていく。さしものレッドドラゴンも内臓までは炎の耐性がないらしい。



『—――――ッッ!!』



 レッドドラゴンは悶えながら体を倒し、五体をバタつかせる。アストロは追い打ちをかけるように魔力をぶつける。



「私の糧になりなさい」



 アストロは焦りによる早鐘のような心拍を抑えながら水魔術を撃つ。



 アストロは30レベルに達した。
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