142 / 684
8.魔王インサーニアを討て
16.死を利用する者
しおりを挟む
生とは何か。
どんな生物にも生き延びようとするシステムが存在する。しかし、生きる意味自体はない。
では、生きる意味とは何か?
過去、最も優れていると称された騎士アスタットは言った。生きることに意味はない。だからこそ、そんなものは自分で決めてしまえばいい。
死とは何か。
どんな生物にも存在するシステムだ。もしこの世界に死がなければ人口は今の10倍以上になっていると言われている。誰もに平等に降りかかり、誰もが直面していないもの。その定義は曖昧で、時代や地域によっても変わる。
アスタットは言った。生の定義がなければ死の定義は出来ない。嘘のようだが、本当のことだ。私にも分からないことぐらいあるさ。
ここで一つ考えなければならないことがある。回復魔法と生死の関係性だ。
回復魔法は死に向かう体を無理矢理、しかし、生命活動を続けさせようとする魔法だ。生を望む者には重宝され、死を望む者には恨まれる。歴史的に見て、死を望む者たちは恨みを行動で示した。回復術士たちは忌み子狩りによって殺されていった。
今でもその考えが根深く残っている地域が存在する。当事者はもうこの世にいないほど後の時代になっても考えが残っている。大体的なものはないが、今も続いている。
『アアアアアアアアアアアアッッ!!』
死を望むもの、リッチは絶叫した。死を望むものとは死にたい者だけでなく死体を利用したい者も含んでいる。死体を利用する代表格であるリッチは、5メートルの身長を誇り、足元には従者のように死体が付き従っている。
リッチの標的は一人。エンドローゼだ。溢れ出る回復術士の魔力は、リッチを狂わしていた。リッチは闇の魔力を纏った拳を振り回し、壁を破壊する。
グリムリーパーは同じ職場で働くリッチのことをよく知っているつもりだった。しかし、この暴れようは想像できていなかった。リッチは普段後ろに居座り、死霊やゾンビを仕掛け撃破するという戦い方のはずだ。なのに今は壁を破壊してまで自分が前に出ている。何か因縁でもあるのだろうか。
「うひぇ」
エンドローゼから変な声が出た。レイドがエンドローゼの襟を摑み、引っ張ったのだ。エンドローゼは遅い。リッチの3分の1ほどの速さしかない。エンドローゼにしてみれば気が付いたら目の前に闇のオーラを纏った拳があった、という光景だ。
リッチの敵はただ一人。その他を相手している暇はない。
『フゥヲン!』
ガシャガシャガシャガシャ。ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ!
声に合わせるように控えていた死霊やゾンビ、そして骨が動き始める。その動きは素早く、レイドたちの動きを止めるように囲む。
レイドとエンドローゼが引き剥がされる。その瞬間をリッチが見逃すはずがない。
再び拳は闇の魔力を纏う。振りかぶったところに腹へと衝撃が走り、踏鞴を踏まされる。見るとレイドが投擲後のような姿勢だった。
『フゥア』
グリムリーパーは落ち着けと宥めようとするが、リッチには届かない。
なぜこうも止めたがるのか、なぜ邪魔をしてくるのか。
リッチはグリムリーパーも敵であると判断した。しかし、リッチにとって敵は一人。魔力を纏わせた拳でグリムリーパーを殴り道を開ける。鎌でガードをしたが、鎌は折れ、何度も地面をバウンドしてようやく止まる。
怯えた目を向けてくるエンドローゼを視界に入れる。
リッチは右手を挙げる。右手から明るい紫色の紋様が光り輝く。紋様から紫色の煙のようなものが出ており、エンドローゼに向かって行く。何か分からないが攻撃だ。明らかにエンドローゼを狙っていく。煙の出方が激しくなった瞬間、右手が吹き飛んだ。暴発したのか。右手の傷口は引きちぎられたようになっていた。それよりも下、腕にはナイフが刺さっていた。
リッチは傷口から視線を剥がし、エンドローゼに移す。リッチの顔に影。リッチは上を向く。そこにいたのはレイドだった。
レイドは大剣を振り下ろす。腕力、遠心力、重さ、重力、その全てを利用して大剣を振り下ろす。大剣はリッチの額を割り、侵入し、顔の半分を切った。
『アアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!』
顔面からオレンジと黒の混じった煙が噴き出す。絶叫を上げ、白眼を剥き、仰向けに倒れる。ビクビクと体を3,4度震わせると、動かなくなる。煙はもう出ていない。
どんな生物にも生き延びようとするシステムが存在する。しかし、生きる意味自体はない。
では、生きる意味とは何か?
過去、最も優れていると称された騎士アスタットは言った。生きることに意味はない。だからこそ、そんなものは自分で決めてしまえばいい。
死とは何か。
どんな生物にも存在するシステムだ。もしこの世界に死がなければ人口は今の10倍以上になっていると言われている。誰もに平等に降りかかり、誰もが直面していないもの。その定義は曖昧で、時代や地域によっても変わる。
アスタットは言った。生の定義がなければ死の定義は出来ない。嘘のようだが、本当のことだ。私にも分からないことぐらいあるさ。
ここで一つ考えなければならないことがある。回復魔法と生死の関係性だ。
回復魔法は死に向かう体を無理矢理、しかし、生命活動を続けさせようとする魔法だ。生を望む者には重宝され、死を望む者には恨まれる。歴史的に見て、死を望む者たちは恨みを行動で示した。回復術士たちは忌み子狩りによって殺されていった。
今でもその考えが根深く残っている地域が存在する。当事者はもうこの世にいないほど後の時代になっても考えが残っている。大体的なものはないが、今も続いている。
『アアアアアアアアアアアアッッ!!』
死を望むもの、リッチは絶叫した。死を望むものとは死にたい者だけでなく死体を利用したい者も含んでいる。死体を利用する代表格であるリッチは、5メートルの身長を誇り、足元には従者のように死体が付き従っている。
リッチの標的は一人。エンドローゼだ。溢れ出る回復術士の魔力は、リッチを狂わしていた。リッチは闇の魔力を纏った拳を振り回し、壁を破壊する。
グリムリーパーは同じ職場で働くリッチのことをよく知っているつもりだった。しかし、この暴れようは想像できていなかった。リッチは普段後ろに居座り、死霊やゾンビを仕掛け撃破するという戦い方のはずだ。なのに今は壁を破壊してまで自分が前に出ている。何か因縁でもあるのだろうか。
「うひぇ」
エンドローゼから変な声が出た。レイドがエンドローゼの襟を摑み、引っ張ったのだ。エンドローゼは遅い。リッチの3分の1ほどの速さしかない。エンドローゼにしてみれば気が付いたら目の前に闇のオーラを纏った拳があった、という光景だ。
リッチの敵はただ一人。その他を相手している暇はない。
『フゥヲン!』
ガシャガシャガシャガシャ。ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ!
声に合わせるように控えていた死霊やゾンビ、そして骨が動き始める。その動きは素早く、レイドたちの動きを止めるように囲む。
レイドとエンドローゼが引き剥がされる。その瞬間をリッチが見逃すはずがない。
再び拳は闇の魔力を纏う。振りかぶったところに腹へと衝撃が走り、踏鞴を踏まされる。見るとレイドが投擲後のような姿勢だった。
『フゥア』
グリムリーパーは落ち着けと宥めようとするが、リッチには届かない。
なぜこうも止めたがるのか、なぜ邪魔をしてくるのか。
リッチはグリムリーパーも敵であると判断した。しかし、リッチにとって敵は一人。魔力を纏わせた拳でグリムリーパーを殴り道を開ける。鎌でガードをしたが、鎌は折れ、何度も地面をバウンドしてようやく止まる。
怯えた目を向けてくるエンドローゼを視界に入れる。
リッチは右手を挙げる。右手から明るい紫色の紋様が光り輝く。紋様から紫色の煙のようなものが出ており、エンドローゼに向かって行く。何か分からないが攻撃だ。明らかにエンドローゼを狙っていく。煙の出方が激しくなった瞬間、右手が吹き飛んだ。暴発したのか。右手の傷口は引きちぎられたようになっていた。それよりも下、腕にはナイフが刺さっていた。
リッチは傷口から視線を剥がし、エンドローゼに移す。リッチの顔に影。リッチは上を向く。そこにいたのはレイドだった。
レイドは大剣を振り下ろす。腕力、遠心力、重さ、重力、その全てを利用して大剣を振り下ろす。大剣はリッチの額を割り、侵入し、顔の半分を切った。
『アアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!』
顔面からオレンジと黒の混じった煙が噴き出す。絶叫を上げ、白眼を剥き、仰向けに倒れる。ビクビクと体を3,4度震わせると、動かなくなる。煙はもう出ていない。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!
ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
エレンディア王国記
火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、
「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。
導かれるように辿り着いたのは、
魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。
王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り――
だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。
「なんとかなるさ。生きてればな」
手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。
教師として、王子として、そして何者かとして。
これは、“教える者”が世界を変えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる