メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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8.魔王インサーニアを討て

22.妖花の女王

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 人は猿から進化したという説がある。アレン達は到底理解できないことだった。人間は理性のない獣と同じであると言われているような気がしたのだ。



 魔物も進化する。



 こちらはすんなりと理解された。要因はアルラウネの存在だ。アルラウネは普通1.5メートルほどの魔物だが、稀に8メートルほどの巨大な個体が現れる。とある魔物学者はアルラウネを育ててみるという実験を行った。実験開始時から3年間、アルラウネを観察した結果、身長が一切伸びていなかった4年目、ある日突然一日で8メートルほどまで伸びていた。



 成長ではない。これは進化だ。偉大な一人の研究者によって判明したのだ。魔物学者は残る謎を3つ残していった。魔物から出る煙。魔物の増え方・生殖方法。魔物の起源。とある魔物学者でも求められなかった疑問は300年たった今でも解明されていない。



 進化の解明を助力した巨大なアルラウネはその大きさと女型という点からクイーンアルラウネと名付けられた。















 知識を持っていたとしても、実際に出会ったならば頭が真っ白になり、思うように体は動かない。クイーンアルラウネは思っていたより大きく、匂いがきつい。大きさに関する文献はいくつも存在するが、匂いに言及するものはなかった。ただの花の匂いならば、いい匂いで片づけられたが、匂いの強い花をいくつも束ね、そこに鼻を突っ込んだかのような感覚だ。いい匂いも混ざり合えば気持ち悪いものになる。



 クイーンアルラウネは蔦をうねらせた。アシドは落ちないように槍を刺し、シキは走りきり、うねりと関係なくなる。



 ガバリと腕を広げた。



『ラ―――――――』



 澄みやかな声は森に行き渡り、あらゆる生物を魅了する。



 ボコリと土が盛り上がる。



「何だ」



 アレンが見つめていると、さらに盛り上がり押しのけて姿を現す。通常のアルラウネだ。クイーンアルラウネに呼ばれ、守るように囲みながら現れた。



「下は私たちがやるわ」



「はい」



 アストロは炎魔術で蹴散らしながら宣言し、アレンは矢を射る。ペシリと矢を叩き落とす。クスクスクス。笑ってくれるなよ。アストロは溜め息を吐いた。



 アシドはアストロ達の様子を見て、クイーンアルラウネの方を見る。



「オレも頑張んねェとな」



 アシドは落ちないように注意しながら登っていく。



『アアアアアアアアッッ!』



「ブベ!」



 急に蔦が上下に激しく揺れ動き、顔面を強打し鼻血を出してしまう。ひっしとしがみつきながらこんにゃろと怒りを顕わにする。



 アシドが鼻血を出した原因を作った間接的な要因はコストイラとシキだ。両者がほぼ同時に攻撃を開始したために叫び、悶えた結果、アシドは怪我をすることとなった。



 コストイラは炎を纏いながら、女型と植物の境目を攻撃していく。然属性のクイーンアルラウネにとって火属性は弱点であるため、嫌がり蔦を差し向けるが、そのたびにコストイラは切り落としていく。



 シキはコストイラの反対側で脇腹を斬っていく。クイーンアルラウネはシキなら大丈夫と思い摑みにかかる。シキは回転し腕に乗り、さらに上部へ行く。



『ク』



 シキはクイーンアルラウネの頸動脈にナイフを刺し入れる。蔦はシキの体を捉え吹き飛ばす。血が尾を引きながら、森の中へ消えていく。



「はぁあああああああ!!」



 蔦から腕へジャンプし、ノータイムで再びジャンプする。槍を胸の上部に差す。腕や蔦を駆使しながら落とそうとするが、軽やかに回避し離脱する。



 明らかに元気がない。動きにキレがなくなってきている。シキがナイフを刺してからか。ナイフに毒でも塗ってあったのだろうか。周りにはアルラウネはいなくなっていた。



「アストロ!!」



 コストイラがクイーンアルラウネから飛び退きながら叫ぶ。



「フン!」



 アストロは鼻を鳴らし、左腕を上げる。



『アアアアアアアア!!』



 クイーンアルラウネは炎に包まれた。















 塔から幹部が出てくる気配がない。罠の可能性を考慮しながら塔に入る。塔の内部はところどころに穴があいており、何か細長い蛇か何かが通った跡のようにも見える。



 1階は生活空間であり、物が散乱していた。レイドの顔が少し厳しくなる。



 2階は扉が固く閉ざされており、開けることがかなわない。



 3階には人の気配がある。幹部がいる。



「開けんぞ」



 コストイラは扉に手をかけ、声を掛ける。皆が首肯するのを見届けて、コストイラは扉を開けた。



「何用だ」



 年を重ね、荘厳さを持った声が出迎えた。白髪に白く立派な髭を蓄えた老人だ。椅子にどっかりと座り込み、こちらを値踏みするように見つめてくる。鋭い眼光や佇まい、服装からは気品を感じる。



「よくここまで来たな」



 労うような一言。いや、恨みがましい一言かもしれない。見ると、老人の手元には螺子や歯車などの細かい部品がいくつも置いてある。何かの道具製作を邪魔したようなものなのだろう。恨みの方が強いのかもしれない。



「何か返したらどうだ。黙っていないで」



 一つ目の質問から無視してしまっていた。いくら相手が敵とはいえ、マナーの問題だ。



「なぜ」



 アレンが何かを言う前にレイドが前に出た。こういう場面ではレイドは皆を護るように身構えるのだが、珍しい。それがどうして前に出て話し始めるのか。呆気にとられたアレン達は止めることが出来なかった。



「なぜお前がここにいる。父さん」



 レイドの静かなる怒りと共に、5つ目の塔の攻略が始まった。
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