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10.境目果て
4.足元の見えぬ道
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吹雪が体を叩く。本来だったらこの時点で歩を止めるべきなのだろう。しかし、アレン達には止められなかった。洞窟がなければ穴を掘って人工的に雪崩を起こすのは避けたい。
地図が正しければもう少しで洞窟があるはずだ。
アレン達は風に逆らうように前傾姿勢で進んでいく。はためくコートを押さえなければ風に煽られ飛んでしまいそうだ。
「大丈夫か?」
前から聞こえるアシドの確認の声は風のせいで半分も聞こえてこなかった。
「何ですか!?」
「大丈夫かっ!?」
「エンドローゼさんがっ! キツそうですッ!」
アレンの言う通り、エンドローゼはすでに疲労が天元突破していた。汗を晒すのはまずいと顔を布で覆っていたが、汗の染みた布も凍ってしまいそうだから、そろそろ布を外した方がよさそうだ。同じことを思ったのか、アストロがエンドローゼから布を剥がした。
「アレン」
呼ばれたことに気付き、アストロに近づく。
「レイドはアレンに荷物渡して。レイドはそのまま、エンドローゼを背負える?」
「私は背負えるぞ。エンドローゼが私の汗ばった背が嫌でなければな」
「そんな冗談言えるようになったのね。で、アレンは?」
「3人分か」
「いける?」
「頑張れば」
レイドは荷物を下ろし、片膝をつく。エンドローゼはボーッとした顔で何も考えられず、促されるままレイドの背に乗った。レイドの武器や荷物をアレンが持ち、エンドローゼの杖をアストロが持つ。準備が整うのを無言で待っていたアシド達も歩を再開させる。
再開させて、30分ほど。アシドがこけた。顔面から雪に突っ込むのを見て、進行を止める。
「っつ~。オレ、何に足ひっかっけた?」
アシドが言うが、アレン達後衛には何も見えなかった。
「石?」
シキが呟く。掘ると、茶色の石のような卵状のものが出土した。その何かは縦3分の1のところに隙間が開いており、ギラつく目がこちらを見ている。
「生きてね?」
掘り起こしたコストイラは石のようなものを落とした。石はゴロリと転がり、こちらに目を向けてきた。石と言っているが、これは卵だ。とても硬い石のような卵だ。
全員が警戒しているが、卵が何かをしてくる気配がない。
「何もしてこねェな」
「そうね」
そういえば、アシドが蹴った時も何もしてこなかった。こいつは反撃しないのか。
「そもそも何の卵だ?」
一番の難題がそこだ。
そもそもの話。魔物は卵生なのか、胎生なのかすら分かっていない。魔物の卵を発見したものがいなければ、腹に子を宿した個体の発見もない。過去に、とある魔物学者が解剖をしたことがあったが、根本の部分、生殖器官が見つからなかったのだ。では、魔物はどう増えているのだ?
ついぞ解明されなかった問題の解決をしてしまったのだろうか?
アレンは瞳に魔力を集め、名を読み取り、ガレットの書を開く。指がかじかんでいて、上手に捲れない。
「そういやガレットの書があったな。いや、あれは名前が分かんなねェと開けなぁあああ? アレン、分かんのか?」
「はい。えっと、これは」
リドルエッグ。50㎝程の卵。地属性。何かの卵、大発見かと思ったが、これで成体らしい。ただの卵の見た目をした魔物だった。殻はジョリジョリしていて不味い。中身はインクのように黒く粘り気のある液体で満たされている。口に入れても食べた気にはならない。ハズレ枠。
「大発見じゃなかったのか。残念」
「てか、割って食ったんかい」
「ちなみにですけど、続きに何体か狩ったが自己回復するだけで攻撃してくることがなく無害、と書いてあります」
それを聞いて、全員が唸り、悩む。出した結論は。
「放置だな」
「こいつに時間を割きすぎた。早いとこ休憩できるところに行こう」
良かったな、リドルエッグ。見逃してもらえて。
ちなみに、リドルエッグは口が存在しておらず、鳴き声がなければ食事もしないらしい。ガレット曰く、何のために生きているのかすら分からない。
地図が正しければもう少しで洞窟があるはずだ。
アレン達は風に逆らうように前傾姿勢で進んでいく。はためくコートを押さえなければ風に煽られ飛んでしまいそうだ。
「大丈夫か?」
前から聞こえるアシドの確認の声は風のせいで半分も聞こえてこなかった。
「何ですか!?」
「大丈夫かっ!?」
「エンドローゼさんがっ! キツそうですッ!」
アレンの言う通り、エンドローゼはすでに疲労が天元突破していた。汗を晒すのはまずいと顔を布で覆っていたが、汗の染みた布も凍ってしまいそうだから、そろそろ布を外した方がよさそうだ。同じことを思ったのか、アストロがエンドローゼから布を剥がした。
「アレン」
呼ばれたことに気付き、アストロに近づく。
「レイドはアレンに荷物渡して。レイドはそのまま、エンドローゼを背負える?」
「私は背負えるぞ。エンドローゼが私の汗ばった背が嫌でなければな」
「そんな冗談言えるようになったのね。で、アレンは?」
「3人分か」
「いける?」
「頑張れば」
レイドは荷物を下ろし、片膝をつく。エンドローゼはボーッとした顔で何も考えられず、促されるままレイドの背に乗った。レイドの武器や荷物をアレンが持ち、エンドローゼの杖をアストロが持つ。準備が整うのを無言で待っていたアシド達も歩を再開させる。
再開させて、30分ほど。アシドがこけた。顔面から雪に突っ込むのを見て、進行を止める。
「っつ~。オレ、何に足ひっかっけた?」
アシドが言うが、アレン達後衛には何も見えなかった。
「石?」
シキが呟く。掘ると、茶色の石のような卵状のものが出土した。その何かは縦3分の1のところに隙間が開いており、ギラつく目がこちらを見ている。
「生きてね?」
掘り起こしたコストイラは石のようなものを落とした。石はゴロリと転がり、こちらに目を向けてきた。石と言っているが、これは卵だ。とても硬い石のような卵だ。
全員が警戒しているが、卵が何かをしてくる気配がない。
「何もしてこねェな」
「そうね」
そういえば、アシドが蹴った時も何もしてこなかった。こいつは反撃しないのか。
「そもそも何の卵だ?」
一番の難題がそこだ。
そもそもの話。魔物は卵生なのか、胎生なのかすら分かっていない。魔物の卵を発見したものがいなければ、腹に子を宿した個体の発見もない。過去に、とある魔物学者が解剖をしたことがあったが、根本の部分、生殖器官が見つからなかったのだ。では、魔物はどう増えているのだ?
ついぞ解明されなかった問題の解決をしてしまったのだろうか?
アレンは瞳に魔力を集め、名を読み取り、ガレットの書を開く。指がかじかんでいて、上手に捲れない。
「そういやガレットの書があったな。いや、あれは名前が分かんなねェと開けなぁあああ? アレン、分かんのか?」
「はい。えっと、これは」
リドルエッグ。50㎝程の卵。地属性。何かの卵、大発見かと思ったが、これで成体らしい。ただの卵の見た目をした魔物だった。殻はジョリジョリしていて不味い。中身はインクのように黒く粘り気のある液体で満たされている。口に入れても食べた気にはならない。ハズレ枠。
「大発見じゃなかったのか。残念」
「てか、割って食ったんかい」
「ちなみにですけど、続きに何体か狩ったが自己回復するだけで攻撃してくることがなく無害、と書いてあります」
それを聞いて、全員が唸り、悩む。出した結論は。
「放置だな」
「こいつに時間を割きすぎた。早いとこ休憩できるところに行こう」
良かったな、リドルエッグ。見逃してもらえて。
ちなみに、リドルエッグは口が存在しておらず、鳴き声がなければ食事もしないらしい。ガレット曰く、何のために生きているのかすら分からない。
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