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15.奈落
13.炎の腐界
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戦いが終わり、エンドローゼの髪がまた少し白くなった。普通にしていれば目立たず、気付くようなものではないが、アストロやコストイラは気にしてしまう。
「大丈夫なの?」
「は、はい。だー大丈夫です」
「他人だけじゃなくて自分にも気ぃ遣えよ」
「あ、あ、ありがとうございます」
こういう時のエンドローゼは意外に頑固だ。エンドローゼは無理に作ったような笑顔をして対処している。魔法は身を削るものだ。大丈夫なはずがない。
しかし、どれだけ念押ししてもエンドローゼは大丈夫の一点張りだ。流石のコストイラも諦めた。
道を進むごとに泥が増えてきた。ポンデスライムやマッドスライムはもう敵ではないが、トラウマ的な関係で関わりたくない。
つんのめった体を戻せず、顔から泥に突っ込んだコストイラが違和感に気付いた。
「この泥、もしかして岩が溶けたものか?」
今、アレン達の目の前にある岩は、半分が溶けて固まったような状態になっている。酸か高熱か。原因は分からないが、何か外的要因があって溶けたのは間違いない。
「見なさい。目の前の木。あれは燃えて溶けた跡よ」
アストロの言う先には倒木があった。その根元は黒く焦げているが、溶けた跡のようにも思える。木に融解度はないが。
今、この段階で体感温度が30度近くある。今は地上だと寒気の時期だ。30度に達することはない。地下だから影響を受けづらいと言われればそれまでだが。
進むごとに暑くなる。運動しているからでは説明がつかない域にまで来た。間違いなく熱い原因があり、暑くしている要因がある。いや、原因は何となくだが分かっている。炎だ。今目の前で燃えている木を見て確信してしまう。
アレンは傷跡の残る右腕を擦りながら予想する。岩をも溶かす火力を持つ敵などこれまでにはいなかった。この先にいるのは初見の敵だろう。
「炎のおかげで明るくなりましたね。それに暖かくも」
「そうだな。にしてもどうしてさっきこの明るさに気付かなかったんだ」
「何? 気付いていて歩いていたのではないのか?」
炎を眺めながらしたコストイラの質問に、レイドが本気で驚く。しかし、今度はレイドがアレン達を驚かせる一言を放つ。
「肉の海のところでこの光は見えていたぞ。てっきり周知の事実だと」
「え? 見えてたの?」
視線がレイドに集中する。しばしの沈黙が流れ、レイドが冷や汗を流す。
「いや、その、何だ。すまない」
「そういうとこだぞ、レイド」
「しっかりしてよね、レイド」
「次回は改善しろよ、レイド」
レイドは三連コンボを決められ、少し落ち込むように反省した。
少し歩くと炎の原因がいた。女型の魔物だ。高さは5mくらいだろうか。こちらに気付いていないため、背中を向けたままだ。魔物の前にはボロボロの状態のブラックドラゴンがいる。
魔物は左手に握っている剣を振り上げ、ぐったりしているブラックドラゴンの首に振り下ろす。剣が首に触れた瞬間、炎が上がり、ブラックドラゴンの悲鳴もオレンジと黒の混じった煙もすべて燃やす。ブラックドラゴンは燃え、剣で割られた岩は僅かに解けていた。
アレンが固唾を呑んだ。岩が溶け、生き物が溶けずに燃えていると考えると、あの炎が何度なのか分かるのだろう。アレンには分からないが。
1㎞離れているにもかかわらず、熱波にやられる。この温度なら、掠っただけでも炙られそうだ。ジトっとした汗が止まらない。喉の渇きも天井知らずだ。ハンカチはもう液体を吸わないどころか、不快感が残る。水だって無尽蔵にあるわけではない。水を口にできる回数は限られる。
早くこの場を抜けるため、アレン達は動きだす。慎重に丁寧に焦らず確実に。
歩いた先に何かがあるか分からないが、とにかく回り込むように歩く。止まっていた女型の魔物イフリータがゆっくりと歩きだす。一歩に3秒近くかけており、きっと何も考えず、どこに行こうというわけでもないのだろう。イフリータは警戒する素振りも見せない。警戒する必要のない、この地の頂点のような振る舞いだ。本当に頂点というわけではないが。
アレン達は完全にイフリータを警戒していた。だからだろうか、悪い結果を招いてしまった。真に注意すべきだったのは味方だった。
地面が燃えるほど暑い地に、体調を崩されたエンドローゼが石に躓いた。予想外の事態にエンドローゼは間抜けた声を出し、勢いよく地面とぶつかった。その音は小さかったが、イフリータが気付くには十分だった。
「ひぇ」
「エンドローゼ。アンタの育ったところだと悪い子にはお仕置きがあるのかしら?」
「ふぇ? み、み、み、水の入った桶に顔を、い、入れられたり、は、は、はー、裸で、て、天井から吊るされたり、で、です」
「…………後でお尻ぺんぺんね」
「ぴぇっ!?」
「バカ言ってねェで、戦闘だ」
一応やり取りが終わるまで待っていてくれていたコストイラが呆れたように声を出す。お尻ぺんぺんなどという罰の正体を知らないエンドローゼはオドオドしながら、レイドの後ろに隠れた。
「大丈夫なの?」
「は、はい。だー大丈夫です」
「他人だけじゃなくて自分にも気ぃ遣えよ」
「あ、あ、ありがとうございます」
こういう時のエンドローゼは意外に頑固だ。エンドローゼは無理に作ったような笑顔をして対処している。魔法は身を削るものだ。大丈夫なはずがない。
しかし、どれだけ念押ししてもエンドローゼは大丈夫の一点張りだ。流石のコストイラも諦めた。
道を進むごとに泥が増えてきた。ポンデスライムやマッドスライムはもう敵ではないが、トラウマ的な関係で関わりたくない。
つんのめった体を戻せず、顔から泥に突っ込んだコストイラが違和感に気付いた。
「この泥、もしかして岩が溶けたものか?」
今、アレン達の目の前にある岩は、半分が溶けて固まったような状態になっている。酸か高熱か。原因は分からないが、何か外的要因があって溶けたのは間違いない。
「見なさい。目の前の木。あれは燃えて溶けた跡よ」
アストロの言う先には倒木があった。その根元は黒く焦げているが、溶けた跡のようにも思える。木に融解度はないが。
今、この段階で体感温度が30度近くある。今は地上だと寒気の時期だ。30度に達することはない。地下だから影響を受けづらいと言われればそれまでだが。
進むごとに暑くなる。運動しているからでは説明がつかない域にまで来た。間違いなく熱い原因があり、暑くしている要因がある。いや、原因は何となくだが分かっている。炎だ。今目の前で燃えている木を見て確信してしまう。
アレンは傷跡の残る右腕を擦りながら予想する。岩をも溶かす火力を持つ敵などこれまでにはいなかった。この先にいるのは初見の敵だろう。
「炎のおかげで明るくなりましたね。それに暖かくも」
「そうだな。にしてもどうしてさっきこの明るさに気付かなかったんだ」
「何? 気付いていて歩いていたのではないのか?」
炎を眺めながらしたコストイラの質問に、レイドが本気で驚く。しかし、今度はレイドがアレン達を驚かせる一言を放つ。
「肉の海のところでこの光は見えていたぞ。てっきり周知の事実だと」
「え? 見えてたの?」
視線がレイドに集中する。しばしの沈黙が流れ、レイドが冷や汗を流す。
「いや、その、何だ。すまない」
「そういうとこだぞ、レイド」
「しっかりしてよね、レイド」
「次回は改善しろよ、レイド」
レイドは三連コンボを決められ、少し落ち込むように反省した。
少し歩くと炎の原因がいた。女型の魔物だ。高さは5mくらいだろうか。こちらに気付いていないため、背中を向けたままだ。魔物の前にはボロボロの状態のブラックドラゴンがいる。
魔物は左手に握っている剣を振り上げ、ぐったりしているブラックドラゴンの首に振り下ろす。剣が首に触れた瞬間、炎が上がり、ブラックドラゴンの悲鳴もオレンジと黒の混じった煙もすべて燃やす。ブラックドラゴンは燃え、剣で割られた岩は僅かに解けていた。
アレンが固唾を呑んだ。岩が溶け、生き物が溶けずに燃えていると考えると、あの炎が何度なのか分かるのだろう。アレンには分からないが。
1㎞離れているにもかかわらず、熱波にやられる。この温度なら、掠っただけでも炙られそうだ。ジトっとした汗が止まらない。喉の渇きも天井知らずだ。ハンカチはもう液体を吸わないどころか、不快感が残る。水だって無尽蔵にあるわけではない。水を口にできる回数は限られる。
早くこの場を抜けるため、アレン達は動きだす。慎重に丁寧に焦らず確実に。
歩いた先に何かがあるか分からないが、とにかく回り込むように歩く。止まっていた女型の魔物イフリータがゆっくりと歩きだす。一歩に3秒近くかけており、きっと何も考えず、どこに行こうというわけでもないのだろう。イフリータは警戒する素振りも見せない。警戒する必要のない、この地の頂点のような振る舞いだ。本当に頂点というわけではないが。
アレン達は完全にイフリータを警戒していた。だからだろうか、悪い結果を招いてしまった。真に注意すべきだったのは味方だった。
地面が燃えるほど暑い地に、体調を崩されたエンドローゼが石に躓いた。予想外の事態にエンドローゼは間抜けた声を出し、勢いよく地面とぶつかった。その音は小さかったが、イフリータが気付くには十分だった。
「ひぇ」
「エンドローゼ。アンタの育ったところだと悪い子にはお仕置きがあるのかしら?」
「ふぇ? み、み、み、水の入った桶に顔を、い、入れられたり、は、は、はー、裸で、て、天井から吊るされたり、で、です」
「…………後でお尻ぺんぺんね」
「ぴぇっ!?」
「バカ言ってねェで、戦闘だ」
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