メグルユメ

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15.奈落

16.―火の試練―

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「何だ貴様等挑戦者か挑戦者だなよし登録してやろうお前らは見たことないから予選を行わなければなさぁさぁさぁそらとっとと行った」

 足を入れた瞬間、句読点なくマシンガントークをしてきた男に、番号札の書かれた布を叩きつけられた。
 何で番号じゃなくて番号札なんだろうかとか、番号札に書かれているのは特別枠なんだがとか疑問を浮かべるが、その前に突っ込まなければならないことがある。

「あれ、これ僕達全員が出場することになってませんか?」

 アレンが自身を指さし、周りの反応を見ると、全員が頷いた。






 叩きつけられた布の輪に腕を通し、針で止める。コストイラがフゥと息を吐く。

 うずうずしている。今すぐにでも大声を出して暴れ出したいほどに、体内でエネルギーが暴れ狂っている。
 これで心の準備はできた。
 コストイラが光溢れる会場に足を向けた。



「さて、本日飛び入りで参加してくれた奴らがいる。しかし、残っているのは前回チャンピオンと挑戦者一名のみ。ゆえに、参加者には万全の挑戦者といきなり戦ってもらいます!」
「「「「「オオオオオオオオオ‼」」」」」

 会場のアナウンスにより、会場全体から歓声が上がる。声の総量は大きく、会場全体が揺れた。コストイラが会場に出ようとすると、前にいた兵士に止められる。

「あん?」
「前口上がある。それに合わせて入場してくれ」
「はいよ」

 コストイラは大人しく一歩下がり、口上を待つ。

「挑戦者はコイツ。現在15戦14勝1分け。3mの巨体を巧みに使い、来る敵全てを薙ぎ払い倒していく。負け知らずの悪魔、バルログ。ミメースウガイ‼」
『ゴォオオオオオ!!』

 口上に合わせ、コストイラの向かいにある入り口から、両拳を天へと突き上げた姿勢で入場しながら大声を上げる。会場を練り歩くバルログに口笛や歓声を浴びる。
 バルログがぐるりと回り、元入ってきた入り口に戻る。コストイラの口上が始まる。

「参加者はこの男。お前等は覚えているか? あの恐怖を、あの絶望を、紅い髪に黄色い目をしたあの悪魔を。退治屋フラメテの一人息子、コストイラ!!」
「「「「「「「「「し、ね~~~~~!!」」」」」」」」」

 バルログと同じように叫ぼうとして呑まれた。コストイラは思った。よくそこまで調べているな。そして、母さん何したん?
 コストイラは怒号を浴びながら入場する。殺すように叫ばれるバルログと堂々と対峙し、鮫のような笑みを見せつける。

「それでは、バトル、開始!!」







 開始の合図がなされた途端、バルログが駆けだす。巨体とは思えない速度だ。
 コストイラは、原則として不殺とされている闘技場から支給された刃の潰された刀を握る力を強める。バルログを見たのは妖怪の山で見た個体だけだ。あの時の恐怖はもうない。むしろワクワクした気持ちだけだ。

 迫る巨体に一歩も引かず、刀を構える。薙がれる拳に刀を合わせ、そこで初めて失態に気付いた。この刀は刃が潰されている。つまり、この拳は止まらない。
 気付いた時にはもう遅い。コストイラの体は浮き上がり、壁面に飛ばされる。そのまま激突して、壁面に沈む。その瞬間、会場が割れんばかりの歓声に包まれた。

「何て言うかアウェーね」
「はい。もの凄くそうですね」

 アレン達はアウェーの空気に身を縮こませていた。アストロ、アシド、レイドの3人は堂々としており、シキは無表情すぎて恐い。

「怖いよね。これが集団心理ってやつさ」

 アレンの後ろから声がした。その声は主はシキの背に寄っかかる。衝撃でシキの姿勢が少し前傾になる。

「私はあっちのコスロイラ? を応援しちゃおうかなぁ?」

 必要以上にくっつかれて面倒になり始めたシキが、肩に乗せられている誰かの顔を攻撃しようと掌で叩こうとする。

「うおっ!?」

 誰かは迫る掌に気付き、早くに対処のための行動をして、手を合わせてパチンと鳴らす。誰かの手の甲と誰かの唇が触れる。

「ごめん、ごめん、離れるよ」

 シキの肩に顎を乗せていた女は体を離し、金髪を優雅に翻しながら立ち去る。女は右手を挙げ、手をひらひらとさせていた。

「何だったんですかね」
「さぁな。でもアイツ」
「うん。強い」
「え? 強い?」
「感覚的な話だが、目に見えるもので説明するなら、人混みとぶつからずに擦り抜けているだろ」
「本当ですね」
「相当なものだぜ」

 その視線をその身に受ける金髪の女は嬉しそうに口を歪めた。






 コストイラは壁から剥がれようともぞもぞと動く。うまく嵌ってしまったのか尻が抜けない。

『ゴォア!』

 手間取っていると、バルログの拳がコストイラに追い打ちをかける。壁の一部を破壊しながらコストイラを殴る。

 盛り上がりが増していく。

 完成を全身に浴びてバルログは気持ちよくなる。その気持ちよさを両腕を広げた状態で表現する。

「あ」

 観客の誰かが気付いた。バルログの後ろで平然とコストイラが立ち上がったのだ。左手で鼻を押さえて思い切り息を吐き、血を出した。

「じゃあ、次はオレの番か」

 バルログが振り返るのと同時にコストイラが駆けだす。棍棒のように太い腕を潜り、支給された刀を振るう。刀身がバルログの脛に当たり、足が地面から離れる。
 前傾になったバルログの顎が地面に近づき、コストイラが跳躍することで顎をかち上げる。バルログの膝が折れてバランスを崩し、仰向けに倒れる。すぐさま手をつき、左脛が痛みを発し、力が抜ける。

 コストイラは着地直後にもう一度跳ぶ。刃の潰れた刀が綺麗に顎に入る。脳がピンボールめいて動き、脳震盪を起こし、ミメースウガイは気絶した。
 着地したコストイラが左拳を突き上げると、会場がブーイングに支配された。

 コストイラは決勝に進出した。
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