メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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15.奈落

22.―然の試練―

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 シキは勇者である。それは紛れもない事実である。

 しかし、シキ自身にその自覚が未だ芽生えていない。勇者とは何かを考えたり、悩んだりもするが、結局分からないままだ。

 では、シキ自身の特性は何か。

 それは、奴隷であり、暗殺者だ。

 つまり、何が言いたいのかと言えば、今この場にふさわしくないということだ。

 一対一の対決。この中では命令をしてくれる、安心できる材料や人物がいなければ、暗殺者のように身を隠せる場所もない。

 どうしようと珍しくうんうん悩むシキにアレンが近づく。

「何?」
「あ、えっと」

 アレンの眼は泳ぎ、ギザギザになった左耳を触る。チラチラ見ている方向にはアストロとエンドローゼの気配がある。アレンは何か吹き込まれたメッセンジャーだろう。2人は事あるごとにアレンと自分をぶつけてくる。何故?

「勝ってきてください」

 その言葉を聞いたシキはコクリと頷く。これは命令だ。勇者一行の司令塔であるアレンが、自分に対して下した命令である。

「分かった」

 だからこそ、シキは大きく頷いたのだ。






 ドゥームビートルを見たのは冥府の塔での一回のみだ。その戦い方はあまり分かっていない。

 4mの体躯に2mに近い角。鉤状になった爪も脅威だろう。外殻も硬そうで、刃が通るかどうか微妙だ。ナイフには刃がないが。
 シキのウェイトは勇者一行の中でも低い方だ。真正面から打ち合っても勝てる見込みはない。搦め手を使うしかないだろう。問題はドゥームビートル側の速さだ。速ければ搦め手を使いづらい。

 ナイトメアスタイルで構えるシキと堂々と鎮座するドゥームビートル。じりじりと動くシキに巨大蟲は目だけでシキを追う。
 数歩進んだ瞬間、バッと走りだした。ドゥームビートルの真ん中の足が伸び、進攻を邪魔しようとする。

 シキは巨大蟲の予想以上の速度で中足が届く前に後ろに回る。後ろ脚をナイフで12以上の斬撃を浴びせる。ドゥームビートルの後ろ脚には斬撃の痕が白い外骨格に黒く残っているが、切り傷がない。やはり硬い。

 シキは跳び上がり壁に張り付く。巨大蟲の後ろ脚がシキを潰そうと伸ばされる。シキは壁から離れ、ドゥームビートルの足に着地し、背中に乗っかろうとする。

 ドゥームビートルが羽を広げ、中にしまい込まれていた薄羽を動かし、後ろに風を送る。シキは足の下の風が届かない所を走る。
 シキは表に戻ると同時にナイフで刺し、切り開き、肉を掴むと、内側に侵入する。観客達はドン引きだ。刃がないのにどうして切れるんだよ。
 そして、シキは内部を切りながら腹まで辿り着く。シキはドゥームビートルの腹を切り破り出てくる。

 ドゥームビートルは倒れてしまった。




「勝者、シキ!」
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