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15.奈落
25.恐れることなかれ
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光のチャンピオンであるディエゴは目の前にいる挑戦者の姿を見て、左目を覆う眼帯をカリカリと掻いた。先程アイリススライムと戦っていた時と装備が違う。
先程は弓矢とジャベリン、爆弾という絶対に遠距離から仕留めてやろうという装備。今は弓矢とファルシオンという遠近両用の装備。もしやどちらもいける口か?
すでに開始の合図から30秒、どちらも仕掛けないので観客が苛立ち始めている。ディエゴとしては挑戦者が何かしようとしたところを一気に叩き決着というプランを立てていたが、仕方がない。
そこでぞくりと背筋が震えた。気分が悪い感覚だと断じ、その元を探す。と言っても原因なんて一つしかないだろう。
挑戦者だ。正確には挑戦者の眼だ。薄く光っている時点で何かしているのだろう。ディエゴにはそれが何かは分からないが、恐れたって仕方あるまい。
ディエゴは葡萄茶色の髪をガリガリと掻くと、一気に地面を蹴り加速した。挑戦者は逃げるように走り出すが、ディエゴは逃がさない。
魔力で作った矢を、挑戦者の進行方向に撃ち、足止めする。挑戦者が止まれば追いつくのは容易い。
「オマエ、気持ち悪く見てんなァ」
耳元でこっそりと囁くと、挑戦者の肩がビクリと震えた。ディエゴが今いるのは挑戦者の左後ろ。弓矢でもファルシオンでも対処しづらい位置だ。
ファルシオンを抜こうとするのを見て、それよりも早く剣を抜き、叩きつける。横に飛ぶ挑戦者はそのまま壁に背中をぶつけ、くたりと首を折る。
ディエゴは油断せず、ゆっくりと近づく。右手のファルシオン、左手の矢に警戒し、あと6歩の位置で止まる。これ以上は一回の踏み込みでファルシオンの攻撃可能範囲であると考えたからだ。
ディエゴは魔力で矢を作り、撃ち込む。挑戦者の右腕が動き、矢を弾いた。一瞬だけできた隙を逃すはずがなく、刃の潰された剣の切っ先が挑戦者の腹を穿つ。しかし、その間には矢が挟まっており、切っ先が滑り、後の壁に誘導される。
挑戦者は壁際から脱出し、ファルシオンをしまいながら、闘技場中央へと走る。
「ホゥ」
レイドが感嘆の息を漏らす。咄嗟であるが、ファルシオンで至近距離からの魔術を防いだり、剣との間に矢を噛ませて突きを回避したり、抜群の戦闘センスを発揮している。今までのアレンから想像できた者がいただろうか。いや、いまい。まぁ、生きるのに必死だからできているのでもう一度同じことは出来ない。
挑戦者が矢を番える。ディエゴは距離を詰めながらも、剣で対処しようと構えた。しかし、ディエゴの予想を裏切った。矢を真上に撃ったのだ。そこで成る程と理解する。ディエゴを着弾点まで誘導して狙おうとしているのだな、と。
だからディエゴは止まらなかった。止まる必要がどこにある。この先何が起こるのか分かっているのだ。対処法さえ分かっていれば、何の問題もあるまい。
ディエゴがさらに踏み込んでくると思っていなかった挑戦者は、足を引っかけ踏鞴を踏む。一瞬自身の足元を見て、すぐさまディエゴに戻る。その瞬間、ディエゴの耳が、矢が空気を切る音を確かに聞いた。しかも、複数。
視線を上に移すと、矢が見えた。やはり、複数。放った矢は1本だというのに、どうして複数になっているのかは分からないが、ディエゴはそういう技だと処理する。
「――シィッ!」
まずは魔術を先頭の矢に当てる。小さな爆発を起こし、その爆風は軌道を変えた。そこからは挑戦者に向かって走りながら、当たりそうなものだけを処理した。
そんなにあっさりと対処されるとは予想もしていなかった挑戦者がファルシオンを抜く。向こうがこちらに仕掛けようとしてくるが、ディエゴはそんなことでは恐れない。むしろ加速して剣を振るう。
バチンとファルシオンが弾かれる。結局それが普段から剣を振っているかいないかの違いだ。腕力だけでは迫れない剣技でもって挑戦者を叩き伏せる。
「勝者、ディエゴ!」
先程は弓矢とジャベリン、爆弾という絶対に遠距離から仕留めてやろうという装備。今は弓矢とファルシオンという遠近両用の装備。もしやどちらもいける口か?
すでに開始の合図から30秒、どちらも仕掛けないので観客が苛立ち始めている。ディエゴとしては挑戦者が何かしようとしたところを一気に叩き決着というプランを立てていたが、仕方がない。
そこでぞくりと背筋が震えた。気分が悪い感覚だと断じ、その元を探す。と言っても原因なんて一つしかないだろう。
挑戦者だ。正確には挑戦者の眼だ。薄く光っている時点で何かしているのだろう。ディエゴにはそれが何かは分からないが、恐れたって仕方あるまい。
ディエゴは葡萄茶色の髪をガリガリと掻くと、一気に地面を蹴り加速した。挑戦者は逃げるように走り出すが、ディエゴは逃がさない。
魔力で作った矢を、挑戦者の進行方向に撃ち、足止めする。挑戦者が止まれば追いつくのは容易い。
「オマエ、気持ち悪く見てんなァ」
耳元でこっそりと囁くと、挑戦者の肩がビクリと震えた。ディエゴが今いるのは挑戦者の左後ろ。弓矢でもファルシオンでも対処しづらい位置だ。
ファルシオンを抜こうとするのを見て、それよりも早く剣を抜き、叩きつける。横に飛ぶ挑戦者はそのまま壁に背中をぶつけ、くたりと首を折る。
ディエゴは油断せず、ゆっくりと近づく。右手のファルシオン、左手の矢に警戒し、あと6歩の位置で止まる。これ以上は一回の踏み込みでファルシオンの攻撃可能範囲であると考えたからだ。
ディエゴは魔力で矢を作り、撃ち込む。挑戦者の右腕が動き、矢を弾いた。一瞬だけできた隙を逃すはずがなく、刃の潰された剣の切っ先が挑戦者の腹を穿つ。しかし、その間には矢が挟まっており、切っ先が滑り、後の壁に誘導される。
挑戦者は壁際から脱出し、ファルシオンをしまいながら、闘技場中央へと走る。
「ホゥ」
レイドが感嘆の息を漏らす。咄嗟であるが、ファルシオンで至近距離からの魔術を防いだり、剣との間に矢を噛ませて突きを回避したり、抜群の戦闘センスを発揮している。今までのアレンから想像できた者がいただろうか。いや、いまい。まぁ、生きるのに必死だからできているのでもう一度同じことは出来ない。
挑戦者が矢を番える。ディエゴは距離を詰めながらも、剣で対処しようと構えた。しかし、ディエゴの予想を裏切った。矢を真上に撃ったのだ。そこで成る程と理解する。ディエゴを着弾点まで誘導して狙おうとしているのだな、と。
だからディエゴは止まらなかった。止まる必要がどこにある。この先何が起こるのか分かっているのだ。対処法さえ分かっていれば、何の問題もあるまい。
ディエゴがさらに踏み込んでくると思っていなかった挑戦者は、足を引っかけ踏鞴を踏む。一瞬自身の足元を見て、すぐさまディエゴに戻る。その瞬間、ディエゴの耳が、矢が空気を切る音を確かに聞いた。しかも、複数。
視線を上に移すと、矢が見えた。やはり、複数。放った矢は1本だというのに、どうして複数になっているのかは分からないが、ディエゴはそういう技だと処理する。
「――シィッ!」
まずは魔術を先頭の矢に当てる。小さな爆発を起こし、その爆風は軌道を変えた。そこからは挑戦者に向かって走りながら、当たりそうなものだけを処理した。
そんなにあっさりと対処されるとは予想もしていなかった挑戦者がファルシオンを抜く。向こうがこちらに仕掛けようとしてくるが、ディエゴはそんなことでは恐れない。むしろ加速して剣を振るう。
バチンとファルシオンが弾かれる。結局それが普段から剣を振っているかいないかの違いだ。腕力だけでは迫れない剣技でもって挑戦者を叩き伏せる。
「勝者、ディエゴ!」
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