287 / 684
15.奈落
32.挑む者達
しおりを挟む
意識が半ばまで飛んでいる。体がふわふわと浮いている。今の自分の状態が思い出せない。
顔が痛い。この感じは鼻頭が折れているだろう。鼻に血塊が詰まっているのか、息がしづらい。
無理矢理背を反らし、一回転して着地する。勢い余って一回バク宙する。目の前には腕を振って走るアリスの姿。ここで一気に追い打ちをかけて潰したいのだろう。
アリスには一つ、誤算があった。
シキがアリスの右拳を左手で受け、手首を返して逸らさせた。シキはアリスの懐に入っていき、臍の下に手を当て、右の手首を掴み、アリスの体を投げ飛ばす。
背中を強かに打ち付けたアリスは察した。シキは武器術の人間ではなく、何かの武術に加えるようにして武器術があるのだ。つまり、シキは体術でもいける口なのだ。
アリスは背中を丸め、足裏をシキの胸に付け、脚を伸ばす。シキはバク転で威力を逃がし、距離を取る。アリスは反作用を利用して膝を立てた状態で起き上がる。アリスは立ち上がりながら走り出す。口元をもごもごと動かす。シキが気付かないはずがない。
ギュガッ!! とアリスが止まる。その瞬間、アリスの後ろから隕石が現れる。しかし、それは今までの隕石とは違った。イライザの放っていたものとは違う。その一つ一つの威力は3,4倍はあるだろう。
今までの感覚で戦えば即死。闘技場では殺傷NGという設定はどこへ行ったのだろうか。
シキは静かにそっと息を吐き、痛む脇腹を気遣い最小限の動きだけで回避する。
一個目が着弾。圧倒的な爆音と暴力的な爆風がシキを襲う。いくらシキと言えど風を防ぐ手段はない。受け流す術はあるが、それでどうにかなるレベルの風ではない。
身軽にするためにかなり体重を減らしているシキでは耐えきれず、飛ばされてしまう。空中のせいであまり身動きが取れなくなってしまい、もう回避どころではなくなってしまう。
シキは空中で身を捻り、何とか着地する。シキは暴風などものともせず、弾丸のように空気を切り裂きながら走る。この暴風の中、真面目に真正面から向かってくる奴などいないと思っていた。だというのに、シキは真正面からやってくる。
アリスは困惑した。大前提として、アリスも暴風の影響で壁に叩きつけられている。ここから体を引き剥がす事すらできないのだ。シキはどうやっているというのか。
その時、風が止んだ。逆風という環境下にいたシキの体が解放される。急激な速度の変化に、シキは対応できたが、アリスは出来なかった。速度の増したシキはそのままアリスに蹴りを繰り出す。アリスの反応は少し遅れ、蹴りがまともに顔面にヒットする。
アリスは鼻血を出しながら、宙に浮いた。
チャンピオンになってから、負けるのが恐くなった。今の生活を手放したくないと思ったのは認めよう。しかし、それだけではない。
アリスという女の価値が分からなくなってしまった。ゆえに、アリスは自分の価値はチャンピオンであることだと勘違いを起こしてしまった。つまり、チャンピオンでない自分に価値などないと考えたのだ。
事実として、チャンピオンであるアリスに影響を受けた者はかなりいる。代表的な者は<白き刃>サラだろう。
その事実もアリスの考えを助長させた。これらはチャンピオンであるからこその結果なのだ、と。
だからこそアリスはチャンピオンにこだわった。
負けない。負けられない。
アリスは無理矢理意識を引き戻し、ギロリとシキを睨みつける。そこからは壮絶なインファイトが始まった。アリスもシキも小柄で細身のはずなのに、一発一発の打撃音が重すぎる。空振った一撃が壁や床を砕く。
両者から血が噴き出る。音が壮絶すぎて最初は盛り上がれなかったが、だんだんと歓声が出てくる。
アリスは殴り合っているうちに心が開けていった。殴り合っているのが楽しい。闘技場に入ったばかりの新人だった頃の気持ちが蘇ってきた。
「あは」
楽しい。ただただ楽しい。自然と笑い顔すら出た。
シキの中で一つの言葉が渦巻いていた。アレンからの勝ってくださいだ。命令は絶対遂行する。父からの教えだ。アレンから下された命令に絶対に遂行する。すでにいくつかの骨や内臓が破砕しているが、命令の為なら我慢できる。
シキはアリスの拳に合わせて拳を繰り出す。両者の拳がクロスして、相手を殴る。但し、片方だけ。
アリスの拳は間違いなくシキの顔面を捉えると思われた。しかし、そこはシキの方が一枚上手であり、当たった瞬間に顔面を逸らされ、威力を逃がされた。
筋力の少ないシキの拳がアリスの顔面に入る。アリスの首がゴキンと鳴り、膝から落ちていく。アリスの眼には自分の血が見えている。意識もある。しかし、体が動いてくれない。
無敗を誇ったチャンピオンに初めての黒星がついた。
「もう行くのかい」
アリスがショウノウに肩を貸してもらいながら、別れの挨拶にやって来た。
「はい。僕達は旅をしていて、ここに留まる気はありませんので」
「そうか」
ショウノウは猿の面を取り出し、その顔を隠すように持ち上げる。
「じゃあね、コス君。ここにいつでも帰ってくると良いさ。私は待ってるぜ」
「あぁ猿の姉ちゃんが死ぬまでにはな」
のっぺりとした面をつけたコストイラが軽く応じる。
「もっと研ぎ澄ますといい。君はいいものを持っている」
「当たり前だ。オレは絶対に負けねェよ」
モシェーはアシドにアドバイスをするが、アシドは拒絶する。
「オマエ、強い。アタシ、惚れた。好きだよ、シキ。付き合おう、愛し合おう」
「ッ!?」
「ん? え、嫌」
「…………フーン」
フウからの突然の告白にシキは珍しく目を丸くして断った。アレンはフウとのやり取りに聞き耳を立て、アリスにそれを勘づかれる。
「今回の戦いは私にも大いなる学びがあった。感謝しよう」
「私としては最後に私が負けた直接の原因が知りたいな」
「すまない。私も分からん」
両者ともに何が起きたのか分からず、首を傾げてしまう。
「よくも顔を傷付けてくれやがったな」
「あら。嫌なら避ければよかったじゃない」
闇の二人は未だに戦いが終わっていない。
「達者でな、愛されし者よ」
「そ、そ、そ、そんな、わー、私なんて」
エンドローゼはトゥーヤの言葉を顔を真っ赤にして否定する。どこか遠くでは狐の面をした少女がもっと自信を出せ、と応援している。
「オマエ、あの女が好きなのか? 何か全然恋愛には興味なさそうだが」
「なっ!? ま、まぁ、そうですね」
「勇者なんだろ。早くしねェと有益だからって政略結婚とかあるかもしれないぞ。まぁ、押したらいけそうな気もするけどな」
「え」
アレンは言われて初めて考えた。その可能性はあるじゃん、と。
「旅をするのなら、地獄みたいな奈落の次は、天国みたいな天界に行くと良い。まぁ、実際の地獄天国は異世界らしいけどね」
アリスが顎で一つの階段を指す。
「13代目勇者オイボースが天界に行くために造ったとされる階段だ。魔法でできているみたいでね、ほぼ一生崩れないらしい。そこは安心していいよ」
アレン達の視線が上の方に向く。この階段何万段あるのだろうか。
顔が痛い。この感じは鼻頭が折れているだろう。鼻に血塊が詰まっているのか、息がしづらい。
無理矢理背を反らし、一回転して着地する。勢い余って一回バク宙する。目の前には腕を振って走るアリスの姿。ここで一気に追い打ちをかけて潰したいのだろう。
アリスには一つ、誤算があった。
シキがアリスの右拳を左手で受け、手首を返して逸らさせた。シキはアリスの懐に入っていき、臍の下に手を当て、右の手首を掴み、アリスの体を投げ飛ばす。
背中を強かに打ち付けたアリスは察した。シキは武器術の人間ではなく、何かの武術に加えるようにして武器術があるのだ。つまり、シキは体術でもいける口なのだ。
アリスは背中を丸め、足裏をシキの胸に付け、脚を伸ばす。シキはバク転で威力を逃がし、距離を取る。アリスは反作用を利用して膝を立てた状態で起き上がる。アリスは立ち上がりながら走り出す。口元をもごもごと動かす。シキが気付かないはずがない。
ギュガッ!! とアリスが止まる。その瞬間、アリスの後ろから隕石が現れる。しかし、それは今までの隕石とは違った。イライザの放っていたものとは違う。その一つ一つの威力は3,4倍はあるだろう。
今までの感覚で戦えば即死。闘技場では殺傷NGという設定はどこへ行ったのだろうか。
シキは静かにそっと息を吐き、痛む脇腹を気遣い最小限の動きだけで回避する。
一個目が着弾。圧倒的な爆音と暴力的な爆風がシキを襲う。いくらシキと言えど風を防ぐ手段はない。受け流す術はあるが、それでどうにかなるレベルの風ではない。
身軽にするためにかなり体重を減らしているシキでは耐えきれず、飛ばされてしまう。空中のせいであまり身動きが取れなくなってしまい、もう回避どころではなくなってしまう。
シキは空中で身を捻り、何とか着地する。シキは暴風などものともせず、弾丸のように空気を切り裂きながら走る。この暴風の中、真面目に真正面から向かってくる奴などいないと思っていた。だというのに、シキは真正面からやってくる。
アリスは困惑した。大前提として、アリスも暴風の影響で壁に叩きつけられている。ここから体を引き剥がす事すらできないのだ。シキはどうやっているというのか。
その時、風が止んだ。逆風という環境下にいたシキの体が解放される。急激な速度の変化に、シキは対応できたが、アリスは出来なかった。速度の増したシキはそのままアリスに蹴りを繰り出す。アリスの反応は少し遅れ、蹴りがまともに顔面にヒットする。
アリスは鼻血を出しながら、宙に浮いた。
チャンピオンになってから、負けるのが恐くなった。今の生活を手放したくないと思ったのは認めよう。しかし、それだけではない。
アリスという女の価値が分からなくなってしまった。ゆえに、アリスは自分の価値はチャンピオンであることだと勘違いを起こしてしまった。つまり、チャンピオンでない自分に価値などないと考えたのだ。
事実として、チャンピオンであるアリスに影響を受けた者はかなりいる。代表的な者は<白き刃>サラだろう。
その事実もアリスの考えを助長させた。これらはチャンピオンであるからこその結果なのだ、と。
だからこそアリスはチャンピオンにこだわった。
負けない。負けられない。
アリスは無理矢理意識を引き戻し、ギロリとシキを睨みつける。そこからは壮絶なインファイトが始まった。アリスもシキも小柄で細身のはずなのに、一発一発の打撃音が重すぎる。空振った一撃が壁や床を砕く。
両者から血が噴き出る。音が壮絶すぎて最初は盛り上がれなかったが、だんだんと歓声が出てくる。
アリスは殴り合っているうちに心が開けていった。殴り合っているのが楽しい。闘技場に入ったばかりの新人だった頃の気持ちが蘇ってきた。
「あは」
楽しい。ただただ楽しい。自然と笑い顔すら出た。
シキの中で一つの言葉が渦巻いていた。アレンからの勝ってくださいだ。命令は絶対遂行する。父からの教えだ。アレンから下された命令に絶対に遂行する。すでにいくつかの骨や内臓が破砕しているが、命令の為なら我慢できる。
シキはアリスの拳に合わせて拳を繰り出す。両者の拳がクロスして、相手を殴る。但し、片方だけ。
アリスの拳は間違いなくシキの顔面を捉えると思われた。しかし、そこはシキの方が一枚上手であり、当たった瞬間に顔面を逸らされ、威力を逃がされた。
筋力の少ないシキの拳がアリスの顔面に入る。アリスの首がゴキンと鳴り、膝から落ちていく。アリスの眼には自分の血が見えている。意識もある。しかし、体が動いてくれない。
無敗を誇ったチャンピオンに初めての黒星がついた。
「もう行くのかい」
アリスがショウノウに肩を貸してもらいながら、別れの挨拶にやって来た。
「はい。僕達は旅をしていて、ここに留まる気はありませんので」
「そうか」
ショウノウは猿の面を取り出し、その顔を隠すように持ち上げる。
「じゃあね、コス君。ここにいつでも帰ってくると良いさ。私は待ってるぜ」
「あぁ猿の姉ちゃんが死ぬまでにはな」
のっぺりとした面をつけたコストイラが軽く応じる。
「もっと研ぎ澄ますといい。君はいいものを持っている」
「当たり前だ。オレは絶対に負けねェよ」
モシェーはアシドにアドバイスをするが、アシドは拒絶する。
「オマエ、強い。アタシ、惚れた。好きだよ、シキ。付き合おう、愛し合おう」
「ッ!?」
「ん? え、嫌」
「…………フーン」
フウからの突然の告白にシキは珍しく目を丸くして断った。アレンはフウとのやり取りに聞き耳を立て、アリスにそれを勘づかれる。
「今回の戦いは私にも大いなる学びがあった。感謝しよう」
「私としては最後に私が負けた直接の原因が知りたいな」
「すまない。私も分からん」
両者ともに何が起きたのか分からず、首を傾げてしまう。
「よくも顔を傷付けてくれやがったな」
「あら。嫌なら避ければよかったじゃない」
闇の二人は未だに戦いが終わっていない。
「達者でな、愛されし者よ」
「そ、そ、そ、そんな、わー、私なんて」
エンドローゼはトゥーヤの言葉を顔を真っ赤にして否定する。どこか遠くでは狐の面をした少女がもっと自信を出せ、と応援している。
「オマエ、あの女が好きなのか? 何か全然恋愛には興味なさそうだが」
「なっ!? ま、まぁ、そうですね」
「勇者なんだろ。早くしねェと有益だからって政略結婚とかあるかもしれないぞ。まぁ、押したらいけそうな気もするけどな」
「え」
アレンは言われて初めて考えた。その可能性はあるじゃん、と。
「旅をするのなら、地獄みたいな奈落の次は、天国みたいな天界に行くと良い。まぁ、実際の地獄天国は異世界らしいけどね」
アリスが顎で一つの階段を指す。
「13代目勇者オイボースが天界に行くために造ったとされる階段だ。魔法でできているみたいでね、ほぼ一生崩れないらしい。そこは安心していいよ」
アレン達の視線が上の方に向く。この階段何万段あるのだろうか。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!
ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
エレンディア王国記
火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、
「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。
導かれるように辿り着いたのは、
魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。
王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り――
だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。
「なんとかなるさ。生きてればな」
手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。
教師として、王子として、そして何者かとして。
これは、“教える者”が世界を変えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる