メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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17.彼岸

5.彼岸に舞う

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 下から口が来る。

 しかし、焦らない。刀を振る速度を考えたら間に合うからだ。

 しかも、視界の端に少し黄ばんだ白色の肌の女が見えている。自分の刀より先にそっちが対処するだろう。そう思った時、ケツァルコアトルの顔がひしゃげて森の中に消えていき、代わりにその場にその女が残った。
 女が肩で息をしている。その女の後ろにコストイラが着地する。

「お前たちは、何者ダ」

 女がショートソードの血を拭いながら振り返り、質問してくる。コストイラも振り返り、女の姿を見て目を細める。視界の端で見えた女の肌の色は、肌の色ではなかった。それは包帯だった。女の肌は一切露出しておらず、異常なまでにすべて包帯で覆われていた。

「勇者一行だよ」
「勇者だト?」

 女の目が鋭くなった。威圧感が増すが、コストイラはその程度では退かない。女が一歩詰め寄る。包帯の隙間から、ちらと皮膚が見えた。肌が赤黒く、凸凹している。黒い斑点も見えている。これは皮膚癌か?

「勇者なら、どウして私達を救ってクれなかっタ!?」

 それは少女の悲痛な叫びだった。少女の言葉は続く。太陽の神を主張する者が集まってきたこと。その間で諍いが増えたこと。女の村がそれに巻き込まれたこと。村が死んだこと。村人が燃えたこと。家族が目の前で死んだこと。

 声が枯れるのではないかというほどに叫び、コストイラの胸ぐらを掴み、自分の顔に近づける。ピカッと光を浴びて女の目が細まる。

 コストイラの背側の叢にいたシキがコンパクトな鏡を動かして、光を反射させて何かを伝えようとしている。女は光を鬱陶しそうにしながら、コストイラに詰め寄って行く。
 コストイラは女の体に抱き着き、横に跳んだ。1秒後にはその場を熱線が通った。

 ケツァルコアトルは未だに死んでいない。コストイラはすぐさま立ち上がり、ケツァルコアトルの方へと走る。並走してシキが通り過ぎた。

 魔力を纏うナイフが、羽毛ある蛇の青い鱗を切り裂く。痛みで持ち上がった首の下にコストイラが入り込み、刀を振るい首を斬り落とした。
 女は悶えたまま立ち上がれない。コストイラは女に近づき、顔の近くで屈む。

「分かってんだろ。自分の寿命が」
「ハァハァ。私はもっテ半年か一年だろう」
「いつまで生きているんだ?」

 コストイラの非情なセリフに女は歯を食い縛る。分かっている。無駄なことくらい、理解している。一柱一柱倒したところで、似非太陽神は生まれ続ける。

「……寿命が果てるまで」
「…………そうかい」

 女は痛みに悶絶しながら、コストイラを睨む。コストイラは立ち上がると、女を置き去りにする。

「あ、あの」
「駄目だ。あれは病気が所以だ。回復魔法じゃ治せねェだろ」
「あ」

 エンドローゼが衝撃を受けて、瞳を揺らしてコストイラから女に視線を移す。口元を手で覆い、涙を流す。
 病気は回復魔法ではどうにもできない。エンドローゼには、この少女を救えない。エンドローゼはせめて体力の回復ぐらいは、と回復魔法を掛けておいた。

 勇者一行は太陽の塔の裏に存在する森の中に入っていった。
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