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17.彼岸
10.押し寄せる
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アストロがもう一度炎魔術を放つ。ヘドロのない肌に着弾するが、焦げる程度でディープドラゴンはビクともしない。それどころか今何かしました?みたいな顔をして、アストロから目を逸らした。
アストロはカチンときたが、これは仕方のないことだ。それをするだけの価値がある攻撃を、アストロが放っていたからだ。
「アレン」
アストロがアレンを呼ぶ。ディープドラゴンを狙っていた集中を中断して、アストロを見る。
「何でしょうか?」
「貴方の矢って消耗品よね」
「え、あ、はい。そ、そうですね」
アレンの肩を掴むアストロの力が少し痛い。笑顔だが血管がピクピク浮いている。
「これを使いなさい。私が魔力で作り出した矢よ。これなら、いくらでいけるわ。さぁ、あのくそドラゴンに私の魔術を味わわせてやりなさい」
これをアレンが触って大丈夫なのか?弾けてこちらが怪我したりしないだろうか。
恐れながらもアレンは、エンドローゼに見られながら魔力の矢を手にした。
包帯だらけの女が痛む体を駆使して、太陽の塔があった場所まで辿り着く。
崩壊した太陽の塔の隙間に人の腕を発見した。女は周りを確認して、腕に駆け寄る。すでに一日の活動限界を迎えており、体が激痛を発し、熱が篭っている。肩で息をしてしまっている。
瓦礫に座り込みながら、小さい瓦礫をどかしていく。普段ならこんな事せずに毒を吐いていただろう。しかし、この腕に見覚えがあった。
包帯だらけの私を庇い、助けてくれた手だ。おそらく私の病気を知っていてもなお、態度を変えず、選択権をくれた腕だ。
計5個の瓦礫をどかした時、腕が動きだした。瓦礫を掴み、腕の筋肉が引き締まる。力の込められた腕が上を目指し、コストイラが瓦礫から出てきた。
「おめでとう」
「お? おう。ありがとう。ところで、何でここにいんだ?」
「ここ、太陽の塔」
コストイラは上を見て、どんよりとした空を確認して、後ろを見る。大量の瓦礫を認知して、かつて太陽の塔だったものを持ち上げる。
「成る程ね。お前的にはこれいいやつ?」
「サヒミサセイ」
「あん?」
「私の名前はサヒミサセイ。これはいいやつ。大丈夫」
「そうか。サヒミサセイ、ね。オレはコストイラ。何? 何で名前を言ったわけ?」
コストイラは立ち上がり、小石や埃を払う。サヒミサセイは包帯を外していく。
「貴方には私を覚えていてほしいから」
「重荷を背負えって? 初対面だぞ、オレ等」
皮膚癌だらけの黒い肌を晒し、コストイラの袖を摘まむ。コストイラは腕を引き、指を剥がした。
「悪ィな。オレは面倒事が嫌なんだ。だから、オレは覚えてやんねェ。覚えられてェならオレの家に行きな。バンツウォレイン王国のクリストロにあるぜ。そこまで辿り着けたら覚えてやるよ」
コストイラは手をヒラヒラさせながら立ち去った。
「バンツウォレイン王国のクリストロ」
サヒミサセイは口の中でコストイラの言った地名を転がしながら、真っ白な新しい包帯を取り出した。
ヘドロの混じっていない綺麗な水弾をアシドが槍で弾く。今はコストイラがいない。前線に出るのはアシドかシキしかいない。
モシェーとの戦いを思い出す。人間は生と死の狭間にて成長する。だからこそ前へ出て、成長するのだ。
アシドがヘドロの溜まる水の上に立つ。ディープドラゴンは危険を察知して水の中に避難しようとする。しかし、アシドの足の速さの方が勝った。水の中に入るよりも早く、槍の先端についている鋼がディープドラゴンの眼の上を切った。ヘドロだらけの水が染みたのか、すぐに頭が出現する。
アシドはディープドラゴンから頭突きを食らい、宙に投げ出された。ディープドラゴンが口を大きく開け、食らいつこうとする。
何かがディープドラゴンの下顎を貫いた。アシドが口の中に入っていく。幸いにして牙に当たらなかったアシドは、少しだけ開いた穴に槍を刺した。喉に落ちるのを拒絶し、穴を広げていく。
「よし、いけるわ」
「おぉ」
アストロが珍しくガッツポーズをとり、アレンは感嘆の声を出す。まさか魔力で作った矢が、ここまでの貫通力を持っているとは。
「ほら、もっと打ち込みなさい」
「あ、はい」
アレンは命令されるがままに矢を撃ち込んでいく。
「あの、アシドさんは」
「大丈夫よ。アイツ、生き汚いから」
なんだか失礼な評価だが、的は射ているような気がした。
「くそ。オレはシキみてェに肉を裂いて移動なんて器用な真似はできねェんだよ」
一方、ディープドラゴンの中。ディープドラゴンは暴れ狂っているが、すでにアシドは下顎の肉の中に入り、舌で掘れないところまできた。
あと残り3分の1のところで、目の前をビームのようなものが通り過ぎた。あと2㎝前に出ていたら目を焼かれていた気がする。
というかビームを出すことができる奴って誰?
あまりこの場にいると貫かれそうな気がしてしまう。疲れたとか言っていられない。早く脱出しよう。
必死に掘ると、ズルリと穴が貫通して、アシドは海に落ちて行った。氷の張るような極寒の海だったり、ヘドロだらけの水中だったり、アシドは過酷な水中がお好きなようだ。
そして、魔力の矢はその貫通力を遺憾なく発揮し、ディープドラゴンの脳を破壊した。
アストロはカチンときたが、これは仕方のないことだ。それをするだけの価値がある攻撃を、アストロが放っていたからだ。
「アレン」
アストロがアレンを呼ぶ。ディープドラゴンを狙っていた集中を中断して、アストロを見る。
「何でしょうか?」
「貴方の矢って消耗品よね」
「え、あ、はい。そ、そうですね」
アレンの肩を掴むアストロの力が少し痛い。笑顔だが血管がピクピク浮いている。
「これを使いなさい。私が魔力で作り出した矢よ。これなら、いくらでいけるわ。さぁ、あのくそドラゴンに私の魔術を味わわせてやりなさい」
これをアレンが触って大丈夫なのか?弾けてこちらが怪我したりしないだろうか。
恐れながらもアレンは、エンドローゼに見られながら魔力の矢を手にした。
包帯だらけの女が痛む体を駆使して、太陽の塔があった場所まで辿り着く。
崩壊した太陽の塔の隙間に人の腕を発見した。女は周りを確認して、腕に駆け寄る。すでに一日の活動限界を迎えており、体が激痛を発し、熱が篭っている。肩で息をしてしまっている。
瓦礫に座り込みながら、小さい瓦礫をどかしていく。普段ならこんな事せずに毒を吐いていただろう。しかし、この腕に見覚えがあった。
包帯だらけの私を庇い、助けてくれた手だ。おそらく私の病気を知っていてもなお、態度を変えず、選択権をくれた腕だ。
計5個の瓦礫をどかした時、腕が動きだした。瓦礫を掴み、腕の筋肉が引き締まる。力の込められた腕が上を目指し、コストイラが瓦礫から出てきた。
「おめでとう」
「お? おう。ありがとう。ところで、何でここにいんだ?」
「ここ、太陽の塔」
コストイラは上を見て、どんよりとした空を確認して、後ろを見る。大量の瓦礫を認知して、かつて太陽の塔だったものを持ち上げる。
「成る程ね。お前的にはこれいいやつ?」
「サヒミサセイ」
「あん?」
「私の名前はサヒミサセイ。これはいいやつ。大丈夫」
「そうか。サヒミサセイ、ね。オレはコストイラ。何? 何で名前を言ったわけ?」
コストイラは立ち上がり、小石や埃を払う。サヒミサセイは包帯を外していく。
「貴方には私を覚えていてほしいから」
「重荷を背負えって? 初対面だぞ、オレ等」
皮膚癌だらけの黒い肌を晒し、コストイラの袖を摘まむ。コストイラは腕を引き、指を剥がした。
「悪ィな。オレは面倒事が嫌なんだ。だから、オレは覚えてやんねェ。覚えられてェならオレの家に行きな。バンツウォレイン王国のクリストロにあるぜ。そこまで辿り着けたら覚えてやるよ」
コストイラは手をヒラヒラさせながら立ち去った。
「バンツウォレイン王国のクリストロ」
サヒミサセイは口の中でコストイラの言った地名を転がしながら、真っ白な新しい包帯を取り出した。
ヘドロの混じっていない綺麗な水弾をアシドが槍で弾く。今はコストイラがいない。前線に出るのはアシドかシキしかいない。
モシェーとの戦いを思い出す。人間は生と死の狭間にて成長する。だからこそ前へ出て、成長するのだ。
アシドがヘドロの溜まる水の上に立つ。ディープドラゴンは危険を察知して水の中に避難しようとする。しかし、アシドの足の速さの方が勝った。水の中に入るよりも早く、槍の先端についている鋼がディープドラゴンの眼の上を切った。ヘドロだらけの水が染みたのか、すぐに頭が出現する。
アシドはディープドラゴンから頭突きを食らい、宙に投げ出された。ディープドラゴンが口を大きく開け、食らいつこうとする。
何かがディープドラゴンの下顎を貫いた。アシドが口の中に入っていく。幸いにして牙に当たらなかったアシドは、少しだけ開いた穴に槍を刺した。喉に落ちるのを拒絶し、穴を広げていく。
「よし、いけるわ」
「おぉ」
アストロが珍しくガッツポーズをとり、アレンは感嘆の声を出す。まさか魔力で作った矢が、ここまでの貫通力を持っているとは。
「ほら、もっと打ち込みなさい」
「あ、はい」
アレンは命令されるがままに矢を撃ち込んでいく。
「あの、アシドさんは」
「大丈夫よ。アイツ、生き汚いから」
なんだか失礼な評価だが、的は射ているような気がした。
「くそ。オレはシキみてェに肉を裂いて移動なんて器用な真似はできねェんだよ」
一方、ディープドラゴンの中。ディープドラゴンは暴れ狂っているが、すでにアシドは下顎の肉の中に入り、舌で掘れないところまできた。
あと残り3分の1のところで、目の前をビームのようなものが通り過ぎた。あと2㎝前に出ていたら目を焼かれていた気がする。
というかビームを出すことができる奴って誰?
あまりこの場にいると貫かれそうな気がしてしまう。疲れたとか言っていられない。早く脱出しよう。
必死に掘ると、ズルリと穴が貫通して、アシドは海に落ちて行った。氷の張るような極寒の海だったり、ヘドロだらけの水中だったり、アシドは過酷な水中がお好きなようだ。
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