339 / 684
18.最果ての孤島
13.ドラゴンパレード
しおりを挟む
アシド達はかなり疲弊していた。この体はすでにこれ以上戦いたくないと悲鳴を上げていた。
しかし、そんなもの黙らせる。こんなもの、魔王インサーニアの時の戦いを思えば何ともない。インサーニアと戦った時は、5体がぐちゃぐちゃになっていたではないか。
己を鼓舞して、四肢を震わせ、再び戦場へと舞い戻る。
音を立てずに水中から頭を出す。その様はまさに神業というにふさわしいだろう。安易に突っ込んだりしない。グレートドラゴンに気付かれてしまうからだ。
滴る水を置き去りにして、砂も鳴らさず、走り出す。一歩止まった瞬間、ギュガと砂が爆発した。
グレートドラゴンがコストイラを見やるが、コストイラが止まった瞬間の砂が波となり、ドラゴンの眼を襲う。
目玉の痛みにより、顔を上空へと向けようとする。シキがその小さな体躯で踵落としを繰り出す。10倍もの差があり、体重であれば25倍以上はある。だというのにグレートドラゴンの頭が沈んだ。下顎すべてが砂の中だ。
グレートドラゴンが砂に下顎を埋めたまま、迫ってくるアシドとレイドに頭を振る。アシドとレイドが吹っ飛ばされ、シキはナイフを刺して振り落とされないようにする。
レイドの手から大剣が離れた。シキは今まで一度も使ったことのない糸を放ち、大剣を手元に引き寄せる。
ナイフとは比べ物にならない刃渡りの大剣を手にして、一瞬、シキの体勢が崩れそうになる。しかし、これだけの大きさであれば、首裏からでも重要な血管を断つことができる。
シキが大剣を引き絞る。グレートドラゴンはそのことに気付いていない。その細く小さな体のどこにそんな力があるのか疑いたくなるほど、容易く大剣を突き出した。
ブチブチと肉の繊維が千切れていき、重要な血管を寸断した。こうなっては、いくら耐久力のあるグレートドラゴンといえど、耐えることは出来なかった。
アストロ達が合流する。
「ふぃ~~。毎回こんなに戦闘があっちゃ、体がもたねぇぞ」
コストイラがぐるぐると肩を回す。今回のコストイラの言い分に納得する。確かに毎度戦闘が終わるたびにボロボロになっている。どうにか安全に立ち回る術を身に付けなくてはなるまい。
「話しているところ悪いのだけれど、まだ終わっていないわよ」
「あ~、やっぱり?」
コストイラは終わったような雰囲気を出していたが、結局駄目なようだ。見たくない現実に目を向ける。
数十体のグランドプスに一体のティタノサウルス。これは無理だ。許容量を超えている。背伸びをしたら届くとか、頑張ればなんとかなるとかの次元を超えている。人間が羽生やして飛ぶとか、鰓つくって海で暮らせとか、魔法で何とかなる範囲ですらない。
魔素を使わず魔力を作れとか、一切合切の行為をせずに子をつくれとか、そのレベルの話の不可能さだ。
「これはマジでヤベェ! 走れ! 逃げんぞ!」
勇者一行は足場の悪い砂浜を全力で走る。死なないためにただひたすらに走った。
先頭を走るのはエンドローゼだ。砂丘の中でもその逃げ足は健在で、誰よりも早く一目散に走った。誰よりもといっても、コストイラの号令を聞いて走り始めているので、別段責められることではない。むしろシキよりも反応速度が速かったのではないだろうか。
「まずい」
アレンの横でシキが呟いた。一番後ろから走ったにもかかわらず、シキはアレンを追い抜いた。ステータスの格差はもう諦めかけているので、心の中は凪だが、まずいとは何に対しての言葉なのか気になる。
ガクンとエンドローゼの頭が下がった。一瞬転んだのかと思った。しかし、直後に間違いだと気づいた。
砂浜に穴が開き、そこに落ちたのだ。エンドローゼはフォンに護られている。しかし、それは助けない理由にならない。
シキを先頭に、勇者一行はエンドローゼの後を追って穴に入っていった。
しかし、そんなもの黙らせる。こんなもの、魔王インサーニアの時の戦いを思えば何ともない。インサーニアと戦った時は、5体がぐちゃぐちゃになっていたではないか。
己を鼓舞して、四肢を震わせ、再び戦場へと舞い戻る。
音を立てずに水中から頭を出す。その様はまさに神業というにふさわしいだろう。安易に突っ込んだりしない。グレートドラゴンに気付かれてしまうからだ。
滴る水を置き去りにして、砂も鳴らさず、走り出す。一歩止まった瞬間、ギュガと砂が爆発した。
グレートドラゴンがコストイラを見やるが、コストイラが止まった瞬間の砂が波となり、ドラゴンの眼を襲う。
目玉の痛みにより、顔を上空へと向けようとする。シキがその小さな体躯で踵落としを繰り出す。10倍もの差があり、体重であれば25倍以上はある。だというのにグレートドラゴンの頭が沈んだ。下顎すべてが砂の中だ。
グレートドラゴンが砂に下顎を埋めたまま、迫ってくるアシドとレイドに頭を振る。アシドとレイドが吹っ飛ばされ、シキはナイフを刺して振り落とされないようにする。
レイドの手から大剣が離れた。シキは今まで一度も使ったことのない糸を放ち、大剣を手元に引き寄せる。
ナイフとは比べ物にならない刃渡りの大剣を手にして、一瞬、シキの体勢が崩れそうになる。しかし、これだけの大きさであれば、首裏からでも重要な血管を断つことができる。
シキが大剣を引き絞る。グレートドラゴンはそのことに気付いていない。その細く小さな体のどこにそんな力があるのか疑いたくなるほど、容易く大剣を突き出した。
ブチブチと肉の繊維が千切れていき、重要な血管を寸断した。こうなっては、いくら耐久力のあるグレートドラゴンといえど、耐えることは出来なかった。
アストロ達が合流する。
「ふぃ~~。毎回こんなに戦闘があっちゃ、体がもたねぇぞ」
コストイラがぐるぐると肩を回す。今回のコストイラの言い分に納得する。確かに毎度戦闘が終わるたびにボロボロになっている。どうにか安全に立ち回る術を身に付けなくてはなるまい。
「話しているところ悪いのだけれど、まだ終わっていないわよ」
「あ~、やっぱり?」
コストイラは終わったような雰囲気を出していたが、結局駄目なようだ。見たくない現実に目を向ける。
数十体のグランドプスに一体のティタノサウルス。これは無理だ。許容量を超えている。背伸びをしたら届くとか、頑張ればなんとかなるとかの次元を超えている。人間が羽生やして飛ぶとか、鰓つくって海で暮らせとか、魔法で何とかなる範囲ですらない。
魔素を使わず魔力を作れとか、一切合切の行為をせずに子をつくれとか、そのレベルの話の不可能さだ。
「これはマジでヤベェ! 走れ! 逃げんぞ!」
勇者一行は足場の悪い砂浜を全力で走る。死なないためにただひたすらに走った。
先頭を走るのはエンドローゼだ。砂丘の中でもその逃げ足は健在で、誰よりも早く一目散に走った。誰よりもといっても、コストイラの号令を聞いて走り始めているので、別段責められることではない。むしろシキよりも反応速度が速かったのではないだろうか。
「まずい」
アレンの横でシキが呟いた。一番後ろから走ったにもかかわらず、シキはアレンを追い抜いた。ステータスの格差はもう諦めかけているので、心の中は凪だが、まずいとは何に対しての言葉なのか気になる。
ガクンとエンドローゼの頭が下がった。一瞬転んだのかと思った。しかし、直後に間違いだと気づいた。
砂浜に穴が開き、そこに落ちたのだ。エンドローゼはフォンに護られている。しかし、それは助けない理由にならない。
シキを先頭に、勇者一行はエンドローゼの後を追って穴に入っていった。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!
ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
エレンディア王国記
火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、
「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。
導かれるように辿り着いたのは、
魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。
王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り――
だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。
「なんとかなるさ。生きてればな」
手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。
教師として、王子として、そして何者かとして。
これは、“教える者”が世界を変えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる