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20.シン・ジゴク
4.異端の魔女
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「あふぇ?」
エンドローゼが自分の手をジッと見る。何かが触れたのだ。ただ、何かと言っても物体ではなく液体であることは確かだ。嗅ごうとしていないのに鼻にツンとした刺激臭が来る。何かしらの薬品の臭いだ。回復魔法使いとして回復所で実習したことがないので、この薬品が何か分からない。ホルムなんちゃらだった気がする。ホルムアルデヒド? ホルムアルデビド?
薬品の付いた手をもう一度地面につけ、立ち上がった。右手には薬品が付いているので、左手で尻の埃を落とす。ふんふんとコストイラが鼻を鳴らす。
「何かツンとする臭いがするな。何かの薬品か?」
「そういう施設なのかしらね」
コストイラの言葉からアストロが予想する。エンドローゼもそのように予想するが、眉根を寄せた。
もし病院のような施設ならば、ナースがここにきて受付をしていてもおかしくない。ここは病院ではない?
「どう? ここ探索する?」
「微妙だな。探索したら絶対大量の死体が出てくる気がする」
「感覚?」
「そ、感覚」
ふんふんとエンドローゼも鼻を鳴らして臭いを嗅ぐ。最初、エンドローゼの右手についているホルムアルデヒドの臭いかと思ったが違う。また別の強烈な臭いだ。これは何だっけ? えっと。ちょっとボーっとしてくるな。これは、そうだ。麻酔だ。
病院ではない所で麻酔やホルムアルデヒドが使われている。ここは何の施設なのだろうか。
カツン、コツン。靴の音を響かせて屋敷の中を歩く。清涼な見た目をしている氷の女王が金のランプを持って移動している。
『そこに』
『はい』
金のランプの声に従い、ネチャリャンドゥがランプを設置する。ランプの魔女が出現し、椅子や薬品の準備をする。
ネチャリャンドゥは準備された椅子に座る。その体に痕が残らない程度に縄を縛る。手足も縛られているので、もう動かない。
ランプの魔女が氷の女王にスイッチを待たす。
『押してみて。昇天べるよ』
『はい』
カチとスイッチを押すと、様々な装置がピストンしたり震動したりし始める。そして、注射器が血管に入り込み、中に薬品が注入されていく。氷の女王は一瞬で失神した。
これではまだ死んだかどうかわからない。煙の魔女が触れるわけにはいかない。触れてしまったら殺人が成り立ってしまう。自殺でなければならないのだ。
「おい。何をしてやがる」
扉の方から指している光に影が入る。影が人の形をしている。煙の魔女がオレンジと水色の2色の瞳を向けた。松明の火のせいで逆光となっているため、詳しい恰好が見えない。しかし、武器が見える。普通の人間がこの場にいるはずがない。冒険者だとしてもこの地にはめったに近寄らない。
男が武器に手を伸ばす。待て。このままでは実証ができない。今、この氷の女王が死んだかどうかを知ってから殺してくれ。いや、方法を誰かに伝えてから。いや、方法を記してからにしてくれ。
横から炎が出てくる。男が刀を抜いて炎を打ち消した。炎で作られた剣が振るわれ、男が後ろに跳んだ。
ドアの枠の外に出てしまったので、煙の魔女からは見えなくなる。代わりに赫色のドレスを着た炎の女王が出てくる。ネチャリャンドゥの妹であるネチャリャンドィが扉の枠を掴んで中を見る。
『姉さんは…………』
『まだ分かりません。もう少し経過観察をさせてください』
その言葉を聞いたネチャリャンドィは静かに敵に向き直った。
姉の死を確認するまでは護り抜く。それが今の生きる意味となった。
エンドローゼが自分の手をジッと見る。何かが触れたのだ。ただ、何かと言っても物体ではなく液体であることは確かだ。嗅ごうとしていないのに鼻にツンとした刺激臭が来る。何かしらの薬品の臭いだ。回復魔法使いとして回復所で実習したことがないので、この薬品が何か分からない。ホルムなんちゃらだった気がする。ホルムアルデヒド? ホルムアルデビド?
薬品の付いた手をもう一度地面につけ、立ち上がった。右手には薬品が付いているので、左手で尻の埃を落とす。ふんふんとコストイラが鼻を鳴らす。
「何かツンとする臭いがするな。何かの薬品か?」
「そういう施設なのかしらね」
コストイラの言葉からアストロが予想する。エンドローゼもそのように予想するが、眉根を寄せた。
もし病院のような施設ならば、ナースがここにきて受付をしていてもおかしくない。ここは病院ではない?
「どう? ここ探索する?」
「微妙だな。探索したら絶対大量の死体が出てくる気がする」
「感覚?」
「そ、感覚」
ふんふんとエンドローゼも鼻を鳴らして臭いを嗅ぐ。最初、エンドローゼの右手についているホルムアルデヒドの臭いかと思ったが違う。また別の強烈な臭いだ。これは何だっけ? えっと。ちょっとボーっとしてくるな。これは、そうだ。麻酔だ。
病院ではない所で麻酔やホルムアルデヒドが使われている。ここは何の施設なのだろうか。
カツン、コツン。靴の音を響かせて屋敷の中を歩く。清涼な見た目をしている氷の女王が金のランプを持って移動している。
『そこに』
『はい』
金のランプの声に従い、ネチャリャンドゥがランプを設置する。ランプの魔女が出現し、椅子や薬品の準備をする。
ネチャリャンドゥは準備された椅子に座る。その体に痕が残らない程度に縄を縛る。手足も縛られているので、もう動かない。
ランプの魔女が氷の女王にスイッチを待たす。
『押してみて。昇天べるよ』
『はい』
カチとスイッチを押すと、様々な装置がピストンしたり震動したりし始める。そして、注射器が血管に入り込み、中に薬品が注入されていく。氷の女王は一瞬で失神した。
これではまだ死んだかどうかわからない。煙の魔女が触れるわけにはいかない。触れてしまったら殺人が成り立ってしまう。自殺でなければならないのだ。
「おい。何をしてやがる」
扉の方から指している光に影が入る。影が人の形をしている。煙の魔女がオレンジと水色の2色の瞳を向けた。松明の火のせいで逆光となっているため、詳しい恰好が見えない。しかし、武器が見える。普通の人間がこの場にいるはずがない。冒険者だとしてもこの地にはめったに近寄らない。
男が武器に手を伸ばす。待て。このままでは実証ができない。今、この氷の女王が死んだかどうかを知ってから殺してくれ。いや、方法を誰かに伝えてから。いや、方法を記してからにしてくれ。
横から炎が出てくる。男が刀を抜いて炎を打ち消した。炎で作られた剣が振るわれ、男が後ろに跳んだ。
ドアの枠の外に出てしまったので、煙の魔女からは見えなくなる。代わりに赫色のドレスを着た炎の女王が出てくる。ネチャリャンドゥの妹であるネチャリャンドィが扉の枠を掴んで中を見る。
『姉さんは…………』
『まだ分かりません。もう少し経過観察をさせてください』
その言葉を聞いたネチャリャンドィは静かに敵に向き直った。
姉の死を確認するまでは護り抜く。それが今の生きる意味となった。
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