メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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25.四柱一体

9.東方の守護者

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 南方の守護者が朱雀であるならば、東方の守護者は青龍だ。青みがかった緑の鱗を持つ龍である。格を表す指の本数は4であり、紫色の宝玉を持っている。
 属性は然だが、河川にいるためか、水属性の技を持ち合わせている。

 その例に漏れず、血だまりから緑色の龍が出てきた。

 コストイラは哀しげな顔になった。相手、飛んでんじゃん。

『はぁ』

 青龍が口を開き、長い舌を出して、こちらを窺っている。素早く口内に空気を貯め込んだ。
 口の中にある空気を、口内で魔素を分離して、魔力に変換する。それが超常的な速さで行われ、口内にブレスが出現する。

「げ」

 コストイラが危機に気付く。レイドも気付いた。何もしなければ死ぬ。
 レイドが楯を構える。ブレスが楯に当たった。

 レイドの楯には河童の技術が使われており、魔術軽減のバフがついている。

 ブレスには水属性と然属性が付与されていた。ブレスが楯に着弾する。魔術軽減が発動し、受け流すのに成功した。しかし、押し殺せない。

 楯を中心として水が弾け、暴風が発生した。レイドのみならず、勇者一行全員が吹き飛ばされた。

 レイドが地面をバウンドした。レイドが手を地面について立ち上がろうとするが、ブルブル震えてしまってうまく動かない。ドクドクと心臓が脈打つのが分かる。楯を挟んでもこれ。情けなくて泣けてくる。

 アストロが立ち上がらずに顔だけで他の誰が戦力としてもう動けるのかを確認する。エンドローゼは目をくるくるさせて倒れている。さっさと回収して隠さなくてはいけないだろう。コストイラとアシドは反撃するために力を溜めている。アレンとシキは見つからない。どこ行った?

 青龍が空を飛びながら、真っ先に倒すべき相手を見つけようとする。青龍の眼にも5人しか見えない。7人いたような気がするが、あと2人はどこに行った。





「えっと」

 アレンの眼が泳いでいる。

 今、シキはアレンの上で四つん這いになっている。触れていないが、顔が近すぎる。心臓がバクバクしすぎて怖い。
 ポタポタとシキの髪から水が滴っている。その水の落ちた先にあるのは、アレンの頬。余計心臓が鳴ってしまう。
 頬を近づけなくても聞こえてしまうのではないのかと心配になってしまう。

 聞こえているのか、シキの眉根が寄った。

「心臓、どうした?」

 シキがアレンの胸に耳をつけ、心臓の音を聞こうとする。こんなことをされてアレンが無事なはずがない。
 アレンがショートしたかのように気を失った。

 シキは無表情のまま慌てた。首が飛ばないように細心の注意をしながら、ペチペチと頬を叩く。起きない。

 シキはとりあえず岩場にアレンを隠した。次に朱雀の時のように石を用意した。




 青龍はまず平然としている女から倒すことにした。口内に空気を取り込む。

 ブレスは一度吐くと、次の装填に時間がかかる。青龍の実力ではまだブレスが撃てるほどクールタイムが短くなっていない。その為、ブレスに似た砲撃を撃とうとする。

 シキが石を投げつける。唐突に現れたシキに青龍の狙いがぶれる。
 投げられた石は的確に、その膨らんだ喉にぶつかった。条件反射で口内の空気が吐き出される。

 その隙にコストイラが起き上がり、ハイジャンプを見せつける。その結果、青龍の尻尾を掴むことに成功した。
 間髪を入れずに刀を鱗の隙間に挟み、素早く龍の体を上った。

 青龍は嫌がり、身を捻らせるが、コストイラは落ちない。それどころか、落ちないように刀を差しているので、傷が増えている。

 コストイラが青龍の頭に辿り着く。刀を首裏に刺し、そのまま刀を動かすと、血が噴き出した。

 青龍の首裏からオレンジと黒の混じった煙が噴き出る。コストイラが足を滑らせて青龍から落ちる。コストイラは落ちながら刀を振るい、青龍の下顎からも血が出る。
 コストイラは身を捻り、バチャンと着地した。衝撃で少し膝が笑う。

 青龍が口に空気を溜める。下顎が膨らみ、そこから水風船のように血が噴き出した。同時に空気も出てくる。
 もう一度空気を取り込もうとする。より多くの空気を取り入れようと口を大きく開くと、中に大きめの石が入ってきた。

 口内大爆発。

 口から血がピューと出しながら、シューシューと煙を上げている。

 空中に留まる制御がつかなくなり、ぐらりと落ちた。皮が剥がれて筋肉丸見えの顔が近づいてくる。
 アシドがコストイラの肩を借りて跳び上がり、青龍の左目に槍を突き刺した。

 グオッと首を振り上げられ、アシドが空中を散歩した。青龍は大きく口を開け、ぷるぷる震えていると、力が抜けて地面にぶつかる。

 青龍が絶命した。




 ピクリと男の方が揺れた。男は準備を中断して、テントの中に入っていく。

 あまり手入れのしていない髪をボリボリと掻きながら、荷物を漁る。
 男の目当てのものを見つけ出し、それを手にテントを出た。

 男はキョロキョロと左右を見て、東の方に歩き、手にしていた双眼鏡を覗く。

「東方まで開いた。俺のところまで来れるか知らねぇけど、頑張れって俺の役に立て」

 男はいまだに疼く右目を押さえながら、準備を再開させた。
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