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26.『黄昏の箱庭』
11.冥府の住犬
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狼擬き。
そうコストイラ達が名付けた魔物はもちろん狼擬きという名前ではない。
本名をガルムという魔物は鋭くカチカチ鳴らす。
体長1.9m、首の周りは26㎝はある。人の指ほどの長さがある牙、簡単に人肌を切り裂ける鉤爪、背中には一筋の縞模様があり、胸元には乾いた血がついている。
右側の腹を首元に怪我をしている痕がある。療養中だったのかもしれない。このまま後ろ歩きで離れれば見逃してくれるかもしれないだろうか。
まずは石でも投げて牽制しようとすると、森の中から銃声が聞こえた。
銃のような形状をしている魔道具を構えた男が出てきた。
「邪魔だ! そいつは俺が殺す!」
完全に目がキマッテおり、きっと何を言っても聞かないのだろう。
「待て」
森から別の男が出てくるが、その男はやはり言葉を無視して魔道具を発砲した。
「マズいわね。あの魔道具は自身の魔力を消費するタイプのものよ。あの人はもう魔力酔いを引き起こしているから、命さえ消費しているわ」
「そりゃマズイな」
「あの二人目は山の猟師だな。おそらく山で暮らしている守護者のようなポジションだ」
「そ、そ、それよりも回復を、で、でも、魔力まではー、回復さーせられない」
アストロの観察により、男が限界であることが分かった。コストイラは魔力酔いの辛さを思い出しながら苦い顔をする。レイドが二人目の男のことを推察するが、誰も反応してくれず肩を落としてシュンとする。エンドローゼはガルムのことを気にせず、魔道具を乱射している男の元へ近づこうとする。
「おい、メティスケントン! 乱射すんな! 死ぬぞ!」
「うるせぇ! 俺ぁ娘が殺されてんだ! 奴は俺が絶対にぶっ殺してやんだ!」
それを聞いたコストイラ達の目が変わる。家族の仇。多かれ少なかれ家族に対して一物ある集団。それがこの6人だ。この男に手を貸すのに、思考時間は一秒も必要なかった。
アストロが魔力を放ち、ガルムの行動や移動先を制限していく。
「アストロ!」
「3!」
短いやり取りで状態を確認する。どうやら、あの男はあと3発撃てば昏倒するらしい。
走り去ろうとするガルムの前にアシドが立ち塞がる。急ブレーキをかけ、方向転換しようとするが遅い。アシドは凶悪な獣の顎をかち上げた。
その隙にコストイラが肉薄し、刀の峰で叩き、崖に叩きつけた。
最後の仕上げはシキだ。ただ壁に叩きつけられただけの獣が抜け出そうとするので、縫い留めておく必要がある。
シキの回転蹴りがガルムの前足に刺さる。ドゴンと小さな山を揺らし、ガルムの体を埋め込ませた。意図的に死なないようにしているが、本当に死んでいないのか、と不安になる。
「今だ! 奴の頭を狙え!」
狩人が叫ぶと、復讐者はハッとした表情をして構えた。
動かない的に対して、復讐者が一発目を外す。素人なので仕方ないが、ここで外すとは運がない。
「くっ!?」
メティスケントンは命を削り、もう一発放つ。今度こそガルムの頭に当たり、獣の頭がブシャリと潰れた。
復讐者の意識がプツと落ちた。魔力の使い過ぎと、強度の緊張からの緩和、そして目標を達成したことによる安心感が混ざりあった結果だろう。
糸の切れた人形のように倒れようとするメティスケントンの体の下に、エンドローゼが潜り込む。
「れ、レイドさん!」
「う、ウム」
支える腕をプルプルさせながらレイドを呼ぶ。レイドはおっかなびっくりしながら手伝う。
「わ、わ、私のかーい復魔法では、ま、ま、魔力までは回復しーません。た、体力の回復はし、し、しますので、ま、魔力に関しては、こ、こ、こ、このまま、ね、寝かせてあげてください」
「はい」
いつの間にか狩人以外にも人がいた。倒れた男と似た装備をしている男衆だ。
「私はメントモールと申します。貴方方は?」
「オレ達はここらを旅をしている。オレの名前はコストイラだ」
「ありがとうございます。ケンちゃ、メティスケントンを助けてくれて」
「とこんで、すげー音だったんけんど、何と戦っとったんだ」
訛りが入った発言をした男がメントモールをニヤニヤと見ている。おそらく外向けの話し方をしていることを茶化しているのだろう。
「あれだ」
コストイラは気にせず指でさし示す。そこには獣が埋め込まれていた。
「おぉ!」
男衆がおっかなびっくり近づいた。
「倒してくれたお礼がしたい。私達の街に来てくれないか?」
そうコストイラ達が名付けた魔物はもちろん狼擬きという名前ではない。
本名をガルムという魔物は鋭くカチカチ鳴らす。
体長1.9m、首の周りは26㎝はある。人の指ほどの長さがある牙、簡単に人肌を切り裂ける鉤爪、背中には一筋の縞模様があり、胸元には乾いた血がついている。
右側の腹を首元に怪我をしている痕がある。療養中だったのかもしれない。このまま後ろ歩きで離れれば見逃してくれるかもしれないだろうか。
まずは石でも投げて牽制しようとすると、森の中から銃声が聞こえた。
銃のような形状をしている魔道具を構えた男が出てきた。
「邪魔だ! そいつは俺が殺す!」
完全に目がキマッテおり、きっと何を言っても聞かないのだろう。
「待て」
森から別の男が出てくるが、その男はやはり言葉を無視して魔道具を発砲した。
「マズいわね。あの魔道具は自身の魔力を消費するタイプのものよ。あの人はもう魔力酔いを引き起こしているから、命さえ消費しているわ」
「そりゃマズイな」
「あの二人目は山の猟師だな。おそらく山で暮らしている守護者のようなポジションだ」
「そ、そ、それよりも回復を、で、でも、魔力まではー、回復さーせられない」
アストロの観察により、男が限界であることが分かった。コストイラは魔力酔いの辛さを思い出しながら苦い顔をする。レイドが二人目の男のことを推察するが、誰も反応してくれず肩を落としてシュンとする。エンドローゼはガルムのことを気にせず、魔道具を乱射している男の元へ近づこうとする。
「おい、メティスケントン! 乱射すんな! 死ぬぞ!」
「うるせぇ! 俺ぁ娘が殺されてんだ! 奴は俺が絶対にぶっ殺してやんだ!」
それを聞いたコストイラ達の目が変わる。家族の仇。多かれ少なかれ家族に対して一物ある集団。それがこの6人だ。この男に手を貸すのに、思考時間は一秒も必要なかった。
アストロが魔力を放ち、ガルムの行動や移動先を制限していく。
「アストロ!」
「3!」
短いやり取りで状態を確認する。どうやら、あの男はあと3発撃てば昏倒するらしい。
走り去ろうとするガルムの前にアシドが立ち塞がる。急ブレーキをかけ、方向転換しようとするが遅い。アシドは凶悪な獣の顎をかち上げた。
その隙にコストイラが肉薄し、刀の峰で叩き、崖に叩きつけた。
最後の仕上げはシキだ。ただ壁に叩きつけられただけの獣が抜け出そうとするので、縫い留めておく必要がある。
シキの回転蹴りがガルムの前足に刺さる。ドゴンと小さな山を揺らし、ガルムの体を埋め込ませた。意図的に死なないようにしているが、本当に死んでいないのか、と不安になる。
「今だ! 奴の頭を狙え!」
狩人が叫ぶと、復讐者はハッとした表情をして構えた。
動かない的に対して、復讐者が一発目を外す。素人なので仕方ないが、ここで外すとは運がない。
「くっ!?」
メティスケントンは命を削り、もう一発放つ。今度こそガルムの頭に当たり、獣の頭がブシャリと潰れた。
復讐者の意識がプツと落ちた。魔力の使い過ぎと、強度の緊張からの緩和、そして目標を達成したことによる安心感が混ざりあった結果だろう。
糸の切れた人形のように倒れようとするメティスケントンの体の下に、エンドローゼが潜り込む。
「れ、レイドさん!」
「う、ウム」
支える腕をプルプルさせながらレイドを呼ぶ。レイドはおっかなびっくりしながら手伝う。
「わ、わ、私のかーい復魔法では、ま、ま、魔力までは回復しーません。た、体力の回復はし、し、しますので、ま、魔力に関しては、こ、こ、こ、このまま、ね、寝かせてあげてください」
「はい」
いつの間にか狩人以外にも人がいた。倒れた男と似た装備をしている男衆だ。
「私はメントモールと申します。貴方方は?」
「オレ達はここらを旅をしている。オレの名前はコストイラだ」
「ありがとうございます。ケンちゃ、メティスケントンを助けてくれて」
「とこんで、すげー音だったんけんど、何と戦っとったんだ」
訛りが入った発言をした男がメントモールをニヤニヤと見ている。おそらく外向けの話し方をしていることを茶化しているのだろう。
「あれだ」
コストイラは気にせず指でさし示す。そこには獣が埋め込まれていた。
「おぉ!」
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「倒してくれたお礼がしたい。私達の街に来てくれないか?」
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