メグルユメ

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28.岩礁の遺跡

1.水神の神殿

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 川辺は氾濫の危険があるとされている。その為、川の近くの集落を作る際は、それを考慮して距離のある所にする。

 しかし、人は水がなければ生きていけない。農業も畜産業も工業も、少なからず水を使う。その為、村は河の近くに作られる。

 この鬩ぎ合いの中で作られた村は、結局川の氾濫を恐れる。恐れた結果、村の者達は河に祠を建てた。水運が難にならぬように、その神を祀って。





「祠だ」
「またね」

 コストイラが再び祠を見つめる。これで何度目だろうか。別段神を疎ましく思っているわけではない。何か言うことがあるとすれば、熱心ですね、くらいだろう。

「海と言やぁ、サーウィン・フェイドースか」

 懐かしい名前が出され、エンドローゼが髪飾りに触れた。恐ろしいほどに懐かしく感じたとしても、たかだか数か月前の話だ。半年は経っていないのではないだろうか。

「でも、これサーウィン・フェイドースが祀られている気はしないんだけど。何か、三叉持ってない? この像」
「確かに」

 アストロの言う通り、祀られている像は三叉を持っている。記憶の中にいるサーウィンは武器を持っていない。実際は持っているのかもしれないが。

 ザバと川から何かが出てきた。神像に象られた神かと思ったが、ちょっと違う。足がない。尻鰭だ。神像とは関係がない?
 長柄の棒の先端に鎖がついており、さらにその先端に黒い鉄球がついている。

 レイドが楯でハンマーを弾く。かなり重い感触だ。黒い鉄球だけの重さではない。何かしらの技を使用したと判断した。

 紫の殻を持った人魚が尻鰭で陸を叩き、一回転する。黒い鉄球もそれに合わせて一回転した。黒鉄球が何やら加速を始める。
 レイドが楯で受け止める。地面が少し抉られてしまう程の威力。しかし、耐えてみせた。

 コストイラが刀を振ろうとした時、ヘルダイバーは尻鰭を打った。それに呼応するように川の水が山のように盛り上がった。

「ぶ」

 一瞬親指に全体重をかけ、後ろに跳んだ。100㎏超えが左足の親指一本にかかった。ちょっと危ない音が聞こえた気がするが、無視。コストイラの目の前に波が落ちた。

 シキが距離を詰める。その時、川から三叉が現れる。
 キンと甲高い音を響かせ、ナイフの進行を止める。

 三叉。間違いなく神像と同じ種類のものだ。つまり、こいつは神像に象られた水の神だ。

 この世界には信仰を集めていない神がいる。いや、信仰を集めていないわけではない。きっと、貴方の信仰している宗教は何ですか? というアンケートを取ったとしたなら、その他に分類されるタイプだ。
 信仰というのは、この紫の殻の魔物だ。おそらくこの一体だけではないのだろう。

 神を相手にするのは気圧されてしまう。こういう時、別に神の信仰しているわけではないコストイラやシキは強い。何も感じずに倒すことができる。

 神は水の中に消えた。姿を見せてくれない。見せないのは強さに直結する。一発逆転の手札があるのかもしれないというのは、相手を鈍らせることに繋がる。

 ヘルダイバーはシュコーと息をしながら、上半身に力を籠める。川の中に戻ろうとしているのだ。
 ヘルダイバーの姿に影が差す。命の危機を感じ取り、より力を込めて後ろに下がる。
 影が狙いを変える。直前で変えたため、威力が少し落ちた。

 アシドの槍が額にある紫の殻に当たる。殻が砕け、額に槍が刺さった。
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