メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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28.岩礁の遺跡

4.猫パンチ

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 シキは五感が異常に発達している。レベルがすでに三百を超えているシキは、その基礎能力に加え、魔力による強化することで、異常なまでに感覚を敏感にすることができる。
 フォンやグレイソレアは逃げられない相手の代名詞として扱われている。最近のシキは白銀の悪魔として、接敵したら逃げられない相手の代名詞として数えられるようになった。

 その力を遺憾なく発揮する。今はコストイラの下あたりか。

 もはやアレン以上に見える”目”を持ち、魔眼持ちの魔王二人にもドン引きされているシキが動き出す。シキが踵を引き、足を動かさずに踵だけで地面を叩いた。
 コストイラの下あたりから震動がやってくる。コストイラが本能的に飛び退いた。

 一秒もしない後、コストイラがいた場所に大口が開く。口の中に岩や土が入るが、生き物は入ってこない。生き物が入ってこない。
 コストイラが刀に炎を纏わせ、サンドウォームの口内に放つ。

 サンドウォームは後退できない。その為、無理矢理炎の中に入っていくことになった。

 口内が爛れていく。サンドウォームはすぐに土中に潜っていこうとする。
 そこにシキが蹴りを入れる。先程とは反対側だ。

 サンドウォームが右頬から破裂した。その穴から血やら歯やら肉やら、オレンジと黒の混じった煙とともに吐き出された。

「え?」

 コストイラとアシドの上にそれが落ちた。
 それに気付かないまま、シキがナイフを振るい、巨大蚯蚓の頭と胴を切り離した。その地も二人は被った。

「ム」

 少し申し訳なさそうな顔をする。コストイラは右眼を隠すように乗っていた肉を落とし、シキは大丈夫だ、とハンドサインを送る。
 アストロがホッとする。左腕の痛みがなくなった。相手がいなくなったからだろう。

 人の心の機微なエンドローゼはそれを見落とさない。

「あ、あ、アストロさん?」

 エンドローゼは肩に手を置こうとして、諦めた。その下の右腕を掴む。

「エンドローゼ?」
「あ、あ、アストロさん。トーラウマ、か、かかか、抱えていますよね?」

 アストロが言い訳をしようと口を開きかけ、止まる。そんなことをしても無駄だ。簡単に見破られるのだろう。

「降参。話すから減刑して」
「ば、場合により、ますね」

 可愛らしく頬を膨らませるそばかすの少女に頬を緩ませそうになった。

「ひ、左腕よ。喰われた時からトラウマなのよ」
「は、は、話さなかったのは、なーぜですか?」

 エンドローゼの眼がきつく吊り上がる。しかし、声がとても優しい。叱るというよりは諭す感じに聞こえる。

「何か、あれよ。意地よ」
「い、意地、ですか?」
「トラウマは抱えていればいる程、魔法は威力が上がるという説があるわ」
「な、何ですか、そ、そーの理論」

 ――凄ェ。結論はちょっと違うけど、注目点は素晴らしい。トラウマ的イベントは結果的に魔法を増やすことに繋がるんだよね。

 エンドローゼが唇を尖らせる。かなり葛藤しているのだろう。

「ん! ち、治療します」

 エンドローゼに猫パンチされながら宣言された。もう逃げ場などどこにもない。アストロは素直に岩に座った。

「完全に手持無沙汰だし、その辺を探索してくるか」

 アストロの現状を見て、コストイラはその場を離れた。
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