メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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29.暴霊の傷跡

12.赤い行軍

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 隷属番号010ラーヴァゴーレム。彼はこの保管庫の絶対王者だと思っていた。

 そう思うのも当然のことで、彼はラーヴァゴーレムとして負けたことがなかったのだ。
 この檻だって、その気になれば壊すことができたし、隷属の紋章だって意味を成していなかった。

 そう思って疑わなかった。アイツが出てくるまでは。

 アイツはなんかこう、美味しそうな見た目をしていた。水のような色をしていて、プルプルした見た目、冷たそうな雰囲気。中にギザギザと神経が走っているが、夏にぴったりな食べ物に見えた。

 しかし、実力は本物で、通常攻撃である水ビームでさえ、他の魔物を貫通していた。

 恐怖。ラーヴァゴーレムは初めて恐怖して憤った。

 絶対王者はここで引かない。
 そして、今日、二人は激突し、ラーヴァゴーレムは退いた。

 負けたのではない。断じて敗北でも敗走でもない。ただ引いただけだ。相撲でいうところの仕切り直しだ。

 とはいえ、ここは相撲のように真正面からの正々堂々な戦いではない。こちらが有利な状態から始められる。

 ボコボコと床が泡立つ。石畳が泡立つなどかなり異常なことだが、ラーヴァゴーレムはその原因を体内で生成し、垂れ流していた。
 ラーヴァゴーレムは溶岩を引き連れて、車厘の元に向かった。




 ガキン!
 金属が激しくぶつかる音がした。

 コストイラが刀を振ったのだ。しかし、刀と爪が合った音ではない。刀と肩が当たった音だ。

 魔力人形が危機を感じて距離をとった。

 フルフェイスが傾き、右腕を見た。肩のジョイント部分が完全に外されている。防犯ブザーのように押し込めば嵌まるというわけではないため、ここで簡単に直すことができない。

 ガキンゴキンッと内部ユニットの位置が変化していく。そして、ガバリと胸が開いた。

「ヤバいくらい魔力が集約されているわ」
「レイド、いけるか!?」
「無論!」

 レイドが白銀色の透き通るような見た目をした楯を構えた。月天石の魔力軽減性能がどこまで作用してくるか分からない。
 ズガッ!! と魔力人形の胸を何かが貫いた。何かは分からない。直後、煌めいたからだ。
 魔力エネルギーが暴走し、光エネルギーに変換された。そして、変換されなかった魔力エネルギーが爆発した。

「グァ!?」
「ぬェ!?」
「きゃ!?」

 世界は光と轟音に包まれた。




 ズズンと施設が揺れた。

『golo?』

 ラーヴァゴーレムが斜め上を見た。その直後にビシと罅が大きく幾本も生まれる。ガラガラと天井が崩れ始めた。





「え、ん? あ?」

 アストロが目を開ける。凄く疲れが体に出ているため、体を動かすのがつらい。それでも右腕を動かし、眼を半分以上覆った。
 眩しい。どうやら眼に光が入り始めている。

「まぶ」

 そこでピタリと動きを止めた。

 日光? あの部屋は暗くジメジメとした場所だったはずだ。分かりやすく言えば、窓すらなく日光の入らなかった部屋のはずだ。

 アストロが上半身を起こす。

 空だ。天井が吹っ飛んでおり、空が露出している。それほどの爆発だったということだろう。
 隣を見ると、エンドローゼやレイドが眠っていた。アストロは微笑ましい光景に頬を緩ませる。片手で器用に伸びをする。首をぐるりと回して立ち上がった。

 アシドとアレンもいる。はて、コストイラとシキはどこに行った?

 キョロキョロと探すが、パッと見た感じでは見つからない。そして、崖を見た。サァと血の気が引く。まさか。落ちた? いや、そもそも落ちたとしても死んだとは限らない。
 ガラガラと瓦礫が退いた。コストイラかシキかと思ったが、違った。ラーヴァゴーレムだった。

 アストロが焦る。現在のアストロは万全ではない上、後ろには守るべき者達がいる。護りながら戦うのはアストロには高度すぎる。

 果たして、勝つことができるか?
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