超不人気職【治療術師】になってしまったので、パーティから追放されないようになんとか頑張ります

玄米

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第一章 出会いと始まり

夜の訪れと美味い飯

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 暫くするとシーラが居た方向から、何やら香ばしい匂いが漂ってきた。
 恐らくは我が供物の用意ができたのであろう。

 だが、所詮はあのアホの作ったものだ。
 期待は少しに抑えておいてやろう。



 ……と、思っていたのだが――――

「なっ……何だ…………これは……!?」

 卓上に並べられた、食物と思われる黒い物体。
 そんな得体の知れないモノを見ていたら、思わず驚愕の声を上げてしまった。
 対して、作成者であるシーラは何も悪びれずに突っ込んでくる。

「何よアンタ……ちょっと焦げちゃったかもしれないけど、そんなに驚かなくたっていいじゃない!」

「ちょ……ちょっとだと!? これが……この黒いのがちょっとなのか!? 最早原型すらとどめていないじゃないか! それに……何だか妙な臭いがするぞ……」

「臭いって……ああ、恐らくは隠し味の――――」

「ははっ、まあまあ二人とも……見た目と味は大して関係無いだろ? 俺もう腹ぺこぺこでさあ……お先に頂くぜえ!」

 シーラが説明を終える前に、ハクが黒いモノに齧り付く。
 声には出さないものの、フウも空腹は隠せないらしく……ハクに続いて食事を始めた。

 が……

「ヴォエエエエエエエ…………」

 突如、この世のものとは思えない呻き声を上げたハク。
 続いてフウも、見るからに顔が青く染まっていた。

 そして次の瞬間……



 映してはいけない液体を、口から勢いよく吐き出していた。

「……シーラ、貴様……一体この物体に何を入れた!?」

「な、何って……別に変なものは……」

 言い淀むシーラを待っている訳にもいかないため、我は恐る恐る黒い物体に手を伸ばす……

「ぐっ……な、なんだこの味は……」

 欠片を口にしただけなのに、一瞬で分かった。




 これは人の食べて良いものではない。

 素材自体は恐らく……さっきの一角獣の肉だろう。
 それ自体は一般に食べられているものなので、問題はない。

 だが、如何せん味付けがおかしすぎる。
 まず口一杯に広がる甘み……

 ベタだが、塩と砂糖を間違えたのだろう。
 次はソースと思わしき物体だな。
 これは甘みに加えて、異常な酸味と苦みを感じる。

 苦みの方はヒルの実だな……
 香り付けとして有名なサンの実と取り違えたのだろう。
 見た目は大して変わらないのだが、ヒルの実は完全なる薬用だ。

 主に痛み止めとして肌に直接塗りつけたりする。
 勿論、食べられるものではない。

 最後にこの酸味……

「貴様……肉にレモンジュースをかけるとは……なんて神経をしているんだっ!?」

「っ…………か、隠し味としてちょっと……だけ」

 思わず頭を抱えてしまう。
 奴のちょっとと我々のちょっとは、どうやら違う意味合いを持つらしい。

 なんせこいつの調理後には、ジュースの瓶3本が丸々転がっていたのだから。

「……な、何故……ここまで無知なのに料理など引き受けた!? やはり貴様はバカなのか!?」

「なっ……そ、それはアンタが何もやらないって言うし……他のメンバーも皆料理なんてやった事無いって言うし……私はちょっとだけ自身があったから……」

「……この惨状を見ても、まだ自信が残っているのかね?」

「…………確かに、言われてみれば……あの時私の料理を食べた人たち皆……真っ青な顔して完食していたわ……」

 こいつの料理を完食……
 正にご愁傷様である。合掌。


「……まあ、それはいい。貴様の過去に何があろうと今に関係は無いからな……だが、困った事に腹は満たされていない訳だ」

「うっ……それは…………ごめんなさい……」

 今回ばかりはシーラも突っかかってこなかった。
 しゅんとしている姿を見ていると、少し可哀そうな気に……ならない事も無いが、うむ……

 瞬間、我が脳裏にある事が浮かんだ。

 …………いや、我は絶対に雑用など……

「お前たち、暫しの間そのまま待っていろ! 空腹に耐えかねても、絶対その物体を食べるんじゃないぞ!」

 やはり身体は正直であった。
 気づいた時には、もうその足が動いていたのだから……



◇◆◇



「……こ、これを……全部アンタが……!?」

 驚愕と疑惑の入り混じった視線をこちらに向けてくるシーラ。
 他の二人もすっかり回復したようで、食い入るような目で卓上を見つめていた。

「す、すげえ……こんな美味そうなの……初めて見た……」

「…………ゴクリ」

「ハハハハハッ! さあ、遠慮せずに食え食え!」

 我が発すると、三人はゆっくり……料理に手を付け始めた。

「う、うまいっ!」

「………………頬がとろける」

「……悔しいけど……美味しいわ」

 短時間で作ったため、できたのは簡単なサンドイッチとスープに、残った一角獣肉のソテーだけであるが……

 ここまで褒めちぎられると気分がいいものだな!
 しかし……

「ま、待て……貴様ら……!? 何故そんなにも食べるのが速いのだ!? も、もうほとんど――――」

「よっしゃ! 最後のサンドイッチ頂きっ!」

 我が手を付けようとした頃には、目の前の料理と言える料理は完全に平らげられていたのだった……
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