鷹にように華やかに

与倉 透

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十一

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 数日がたち、一人での朝食にもなれてきた。猫はというと、家の主がいなくなったことを知ってか知らずか、相変わらずの気ままな様子だ。

 店を開けてすぐ、仕立て屋の男が訪ねてきた。大きめの風呂敷包みをもっている。「ようやく出来上がったからもってきたんだ。あんなことがあったけど、品子さんとの約束だったから」
 包を説いてみると、艶やかな着物だった。ところどころに花があしらわれた薄桃色の振り袖。帯留めには鳥の羽根があしらわれていた。「僕には、よくわからないけど鷹の羽らしいんだ。品子さんがすごくこだわってたから知り合いの詳しい人に絵を描いてもらってそれから彫り上げたんだよ。とにかく、布選びから型紙から何から何まで品子さんの気持ちが入った品なんだ」彼は、うやうやしい手付きでたたまれた着物を広げた。「僕に完成品の想像図を話す品子さんは、いつも笑顔だったよ。よっぽど大事な人のために作るんだなって、何だか嫉妬しちゃうほどにね」
 鷹華は、その着物を見て、品子の絵を思い出していた。

 店の奥で、着替えてみる。ひとつひとつ、教わった手順を思い出しながら。
 仕立て屋は、鷹華の晴れ姿をみて自然と涙していた。「でれば品子さんにも見せて上げたかった」
 それを聞いた鷹華は、穏やかに笑っていた。「いいえ、品子さんは見てくれています。いつも」それに同意するかのように、猫が短く小さく鳴いた。
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