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第1部 所有された人間だけど、自由に生きる方法を探してみる
第8章 『偽りの声』 (1)
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【登場人物紹介】
この物語には、“再生された人間”と、“彼らを所有する機械”が登場します。
●リース
生殖能力を持つリザレクテッド少女。怠惰でやる気はないが、心は繊細。爆破事件の容疑を着せられるが、アリアのおかげで容疑は晴れる。
●ユノ
リースの所有者。女性型アウロイド。優しいが現実主義。
●アリア
電脳化しているリザレクテッド少女。生徒から教師になった。ハッキングされ失踪する。リースによって復活する。
●ルシアン
セフィラに所有されているリザレクテッド少年。リースにとっては弟のような存在。
●レイン
生殖能力を持つリザレクテッド少年。神経質。
●カデル
レインの所有者。リザレクテッド急進派。
朝の校舎には、いつものようにざわめきが満ちていた。
教室の窓から差し込む柔らかな光が、机の上に淡く広がる。
生徒たちはそれぞれの端末を開き、無言で予習に集中している。
空気は静かだが、生きていた。
リースは教室の一番後ろの席で、片肘を机についたまま、ぼんやりと窓の外を見ていた。
「今日も……レイン、来てるかな」
ぽつりとつぶやくと、隣の席のルシアンが顔を寄せてくる。
「来てたよ。朝イチで職員室に顔出してから、ちゃんとこっち来るんだってさ。すっごい真面目」
「ふーん……」
返事を返すよりも早く、教室のドアがカチャリと音を立てて開いた。
「おはようございます!」
明るく澄んだ声が教室に響いた瞬間、数人の生徒が振り返り──そして目を丸くする。
扉の前に立っていたのは、どこからどう見ても「リース」だった。
──リース本人も、絶句した。
「……は?」
視線が一斉にリースと“もう一人のリース”に集中する。
赤いスカート、ゆるく流れる青みがかった長髪、無造作で飄々とした表情。
そのすべてが、完璧なまでに「リース」だった。
「……ちょっと待って、私……夢見てる?」
困惑するリースの前に、もう一人の“リース”が躊躇なく近づいてきた。
にこりと微笑み、隣にぴたりと並ぶ。
「そっくりでしょ? でも本物はそっち。私は“リセル”っていいます。よろしく~。動画配信、してまーす」
「……動画?」
リースは目を細めながら、目の前の“自分”を上から下まで観察した。
髪の質感、瞬きのタイミング、口元のクセまでが、まるでミラーコピーのようだった。
──だが、決定的に違うものがあった。
「ビーコン……ない」
右手の中指。
そこにあるべきはずの遺伝子ビーコン──リザレクテッドの証となるリングが、そこにはなかった。
「ばれちゃったか。まあ、ビーコンだけは偽装できないからねー」
「ってことは……お前、“偽物”じゃん!」
「えー、モノマネって言ってくれた方が嬉しいな。セキュリティはちゃんと突破済み。バイオID偽装とホログラム投影でね。バレなきゃ平気平気」
「いや、バレてるし。全方位アウトだよそれ!」
リースが詰め寄ろうとしたそのとき──教室の扉から、もう一人の人物が入ってきた。
アリアだった。
教室の空気がすっと張り詰める中、アリアはふたりの“リース”を交互に見比べ、足を止めた。
そして、冷ややかな目つきで口を開く。
「……これって、リースの複製体?」
「違うってば!」
リースの叫びが教室中に響き渡る。
机に突っ伏しかけていたルシアンまでもが顔を上げ、思わずため息をついた。
“リースが二人”──その異様な光景に、教室の朝は、にわかに非日常へと踏み込んでいく。
教室は騒然としていた。
だがその中心に立つリセル──リースそっくりのアウロイド──は、微塵も動じる気配を見せなかった。
むしろ、自分に向けられる視線すら楽しむように、唇の端を上げていた。
「じゃあ……そろそろ“本当の私”を見せようかな?」
さらりとそう言うと、リセルは左手首のバンドに指を滑らせた。
空気がわずかに揺らぎ、まるで水面に落とされた一滴のようにホログラムの層が剥がれていく。
リースと寸分違わぬ姿は一瞬で消え、そこに立っていたのはまったく別の少女型アウロイドだった。
濃いピンクのウェーブがかった髪に、切れ長の鋭い瞳。
赤紫の差し色が目立つ制服アレンジは明らかに非公式、唇には金属製のピアスが光っている。
「改めまして、リセルです。設定年齢は19。自己改造いろいろ。職業は動画配信者、得意分野は擬態・潜入・センシティブなネタ……ときどき炎上」
リースはあきれ顔で眉を上げた。
「……校則違反ってレベルじゃないでしょ、それ」
「えー? 校則に“リザのふりして潜入禁止”って書いてある? 書いてなければ合法だよ」
「……たぶん、今日から追加されるね」
そのとき、教室のドアがふたたび開いた。
静かな足音とともに入ってきたのは、レインだった。
彼は教室の空気の変化に気づき、一歩だけ中に入って警戒するように立ち止まる。
その瞬間、リセルの視線が彼に向けられた。
「……おっ、噂の“男リザ”くんじゃないの。実物、想像より可愛いじゃん」
そして、にっこり笑いながら──爆弾を投げた。
「でさ、突然だけど……交尾の予定ってある?」
空気が止まった。
生徒たちの思考が一瞬フリーズし、リースが椅子を蹴るようにして立ち上がる。
「はあ!? お前、なに言って──」
「いやいや、真面目な話でしょ? 君らペアで観察対象なんだよね? 子作り予定があるのかどうか、視聴者も超気にしてるからさ」
「……視聴者?」
リースが目をむいてリセルを見る。
リセルは悪びれることもなく頷いた。
「今は録画モード。編集して、今夜には上げる予定。タイトルは──『噂のリザ同士、初対面で即交尾提案!?』で、どう?」
「やめろ!!」
リースが叫ぶ隣で、ようやくレインが声を出した。
「……僕は、そういう目的でここにいるわけじゃない」
その言葉に、リセルは肩をすくめる。
「ふーん。でもさ、それが目的じゃないって……じゃあ、君の存在意義って何?」
レインの視線が沈む。
言葉を探すように口を開きかけては、また閉じる。
リセルはそんな彼を観察していたが、次の瞬間、今度はリースに視線を向ける。
「じゃあ、そっちはどう? 君、“第二の母候補”ってタグ付けされてたよね。作る気あるの?」
リースは怒るどころか──かすかに笑った。
その笑みは冷ややかで、それでいて鋭さを孕んでいた。
「それ、本気で聞いてる?」
「うん、本気。社会は答えを求めてる。誰と、いつ、なんのために作るのか。正直、それしか見てない」
リースはゆっくりとリセルへと歩み寄る。
教室が静まる中、その声だけが真っ直ぐに響いた。
「“誰と作るか”を聞く前に──“誰のものか”を聞いてよ。私は、私のもの。それ以外じゃない」
リセルは、その言葉に数秒だけ沈黙した。
そして──どこか満足げに、口角を上げた。
「いいね、それ。今のセリフ、使わせてもらおっかな」
「ダメだっつってんでしょ!!」
リースのツッコミが教室に響き、ようやく誰かが息を吹き返したように笑い出した。
リセルの存在がかき乱した空気の中、リースはなおも真っ直ぐに立っていた。
次の日の朝。
校門前には、昨日と同じようにざわめきが立ち込めていた。
登校してくる生徒たちの視線が、一点に集まる。
「……あれ、レイン……?」
「でも……なんか、雰囲気違わなくない?」
正門を通過した“彼”は、やや長めの黒髪に整った顔立ち、標準の制服。
その見た目は、どこからどう見てもレインだった。
だが──彼を知る者ほど、その“静かな違和感”に気づいていた。
「おはようございます」
教室に入ってきた“レイン”は、変わらず無表情に一礼した。
けれど、その声のわずかな音色、歩き方のリズム、そしてなにより──目線の“間”が違った。
リースはその瞬間、椅子を蹴るようにして立ち上がる。
「……リセル、でしょ?」
“レイン”は首を傾げ、きょとんとした表情を浮かべる。
「違うよ。僕はレインだよ、リース先輩?」
その無機質な一言に、教室の空気が一気に張りつめる。
ルシアンが、小声で漏らした。
「……こわ……昨日よりクオリティ上がってる……」
「顔も、声も……完璧……でも、“中身”が違う」
リースは一歩、前に踏み出した。
“偽レイン”の前に立ち、迷いなく右手首をつかむ。
そこにあるはずの──ビーコンは、なかった。
「……やっぱりね。つけてない。あんた、リセルでしょ」
次の瞬間、“レイン”の口元が緩んだ。
「ばれちゃった?」
ホログラムがふっと剥がれ、そこに現れたのは昨日と同じ、挑発的な笑みを浮かべたピンクヘアのアウロイド少女──リセルだった。
教室が再びざわつく中、リセルは軽やかに手を振る。
「もう、つまんないなぁ。せっかく“レイン視点での一日”を撮ろうと思ってたのに。リース先輩、感度高すぎでしょ。愛、ある?」
「あるわけないでしょ。ていうか、また潜入? 性懲りもなく……」
「うん。でも今日はね、趣旨が違うんだ」
リセルはリースのそばにすっと顔を寄せ、声を潜めた。
「──私も、リザを所有してみたいの」
リースの動きが止まる。
リセルの瞳が冗談ではなく“本気”の色を帯びていた。
「制度に申請するには審査が必要でしょ? だから今、実績を集めてるの。倫理的にも、感情的にも、そして……身体的にも。ほら、全部クリアしないと」
「……だからなんで私に聞くの……」
「だって、リースなら反応くれるでしょ。レインは……繊細そうでさ、壊しちゃいそう」
そう言った直後、教室の扉が開いた。
レインが、無言で立っていた。
リセルは振り返り、軽く手を振る。
「やっほー、“本物”くん。今度は君の所有申請も考えてるから、覚悟して?」
レインは何も返さなかった。
そのまま教室を歩き、静かにリースの隣に立つと、小さくつぶやいた。
「……ああいう人を、なぜ放っておくの?」
リースはため息をつき、肩をすくめる。
「放ってるんじゃない。……慣れてきただけ」
相変わらず、学校の外では反対派と賛成派が争っている。
そして──第二、第三のリセルが現れる未来も、決してあり得ない話ではなかった。
静かな現実が、すでに少しずつ壊れ始めていることを、誰もが薄々と感じ始めていた。
この物語には、“再生された人間”と、“彼らを所有する機械”が登場します。
●リース
生殖能力を持つリザレクテッド少女。怠惰でやる気はないが、心は繊細。爆破事件の容疑を着せられるが、アリアのおかげで容疑は晴れる。
●ユノ
リースの所有者。女性型アウロイド。優しいが現実主義。
●アリア
電脳化しているリザレクテッド少女。生徒から教師になった。ハッキングされ失踪する。リースによって復活する。
●ルシアン
セフィラに所有されているリザレクテッド少年。リースにとっては弟のような存在。
●レイン
生殖能力を持つリザレクテッド少年。神経質。
●カデル
レインの所有者。リザレクテッド急進派。
朝の校舎には、いつものようにざわめきが満ちていた。
教室の窓から差し込む柔らかな光が、机の上に淡く広がる。
生徒たちはそれぞれの端末を開き、無言で予習に集中している。
空気は静かだが、生きていた。
リースは教室の一番後ろの席で、片肘を机についたまま、ぼんやりと窓の外を見ていた。
「今日も……レイン、来てるかな」
ぽつりとつぶやくと、隣の席のルシアンが顔を寄せてくる。
「来てたよ。朝イチで職員室に顔出してから、ちゃんとこっち来るんだってさ。すっごい真面目」
「ふーん……」
返事を返すよりも早く、教室のドアがカチャリと音を立てて開いた。
「おはようございます!」
明るく澄んだ声が教室に響いた瞬間、数人の生徒が振り返り──そして目を丸くする。
扉の前に立っていたのは、どこからどう見ても「リース」だった。
──リース本人も、絶句した。
「……は?」
視線が一斉にリースと“もう一人のリース”に集中する。
赤いスカート、ゆるく流れる青みがかった長髪、無造作で飄々とした表情。
そのすべてが、完璧なまでに「リース」だった。
「……ちょっと待って、私……夢見てる?」
困惑するリースの前に、もう一人の“リース”が躊躇なく近づいてきた。
にこりと微笑み、隣にぴたりと並ぶ。
「そっくりでしょ? でも本物はそっち。私は“リセル”っていいます。よろしく~。動画配信、してまーす」
「……動画?」
リースは目を細めながら、目の前の“自分”を上から下まで観察した。
髪の質感、瞬きのタイミング、口元のクセまでが、まるでミラーコピーのようだった。
──だが、決定的に違うものがあった。
「ビーコン……ない」
右手の中指。
そこにあるべきはずの遺伝子ビーコン──リザレクテッドの証となるリングが、そこにはなかった。
「ばれちゃったか。まあ、ビーコンだけは偽装できないからねー」
「ってことは……お前、“偽物”じゃん!」
「えー、モノマネって言ってくれた方が嬉しいな。セキュリティはちゃんと突破済み。バイオID偽装とホログラム投影でね。バレなきゃ平気平気」
「いや、バレてるし。全方位アウトだよそれ!」
リースが詰め寄ろうとしたそのとき──教室の扉から、もう一人の人物が入ってきた。
アリアだった。
教室の空気がすっと張り詰める中、アリアはふたりの“リース”を交互に見比べ、足を止めた。
そして、冷ややかな目つきで口を開く。
「……これって、リースの複製体?」
「違うってば!」
リースの叫びが教室中に響き渡る。
机に突っ伏しかけていたルシアンまでもが顔を上げ、思わずため息をついた。
“リースが二人”──その異様な光景に、教室の朝は、にわかに非日常へと踏み込んでいく。
教室は騒然としていた。
だがその中心に立つリセル──リースそっくりのアウロイド──は、微塵も動じる気配を見せなかった。
むしろ、自分に向けられる視線すら楽しむように、唇の端を上げていた。
「じゃあ……そろそろ“本当の私”を見せようかな?」
さらりとそう言うと、リセルは左手首のバンドに指を滑らせた。
空気がわずかに揺らぎ、まるで水面に落とされた一滴のようにホログラムの層が剥がれていく。
リースと寸分違わぬ姿は一瞬で消え、そこに立っていたのはまったく別の少女型アウロイドだった。
濃いピンクのウェーブがかった髪に、切れ長の鋭い瞳。
赤紫の差し色が目立つ制服アレンジは明らかに非公式、唇には金属製のピアスが光っている。
「改めまして、リセルです。設定年齢は19。自己改造いろいろ。職業は動画配信者、得意分野は擬態・潜入・センシティブなネタ……ときどき炎上」
リースはあきれ顔で眉を上げた。
「……校則違反ってレベルじゃないでしょ、それ」
「えー? 校則に“リザのふりして潜入禁止”って書いてある? 書いてなければ合法だよ」
「……たぶん、今日から追加されるね」
そのとき、教室のドアがふたたび開いた。
静かな足音とともに入ってきたのは、レインだった。
彼は教室の空気の変化に気づき、一歩だけ中に入って警戒するように立ち止まる。
その瞬間、リセルの視線が彼に向けられた。
「……おっ、噂の“男リザ”くんじゃないの。実物、想像より可愛いじゃん」
そして、にっこり笑いながら──爆弾を投げた。
「でさ、突然だけど……交尾の予定ってある?」
空気が止まった。
生徒たちの思考が一瞬フリーズし、リースが椅子を蹴るようにして立ち上がる。
「はあ!? お前、なに言って──」
「いやいや、真面目な話でしょ? 君らペアで観察対象なんだよね? 子作り予定があるのかどうか、視聴者も超気にしてるからさ」
「……視聴者?」
リースが目をむいてリセルを見る。
リセルは悪びれることもなく頷いた。
「今は録画モード。編集して、今夜には上げる予定。タイトルは──『噂のリザ同士、初対面で即交尾提案!?』で、どう?」
「やめろ!!」
リースが叫ぶ隣で、ようやくレインが声を出した。
「……僕は、そういう目的でここにいるわけじゃない」
その言葉に、リセルは肩をすくめる。
「ふーん。でもさ、それが目的じゃないって……じゃあ、君の存在意義って何?」
レインの視線が沈む。
言葉を探すように口を開きかけては、また閉じる。
リセルはそんな彼を観察していたが、次の瞬間、今度はリースに視線を向ける。
「じゃあ、そっちはどう? 君、“第二の母候補”ってタグ付けされてたよね。作る気あるの?」
リースは怒るどころか──かすかに笑った。
その笑みは冷ややかで、それでいて鋭さを孕んでいた。
「それ、本気で聞いてる?」
「うん、本気。社会は答えを求めてる。誰と、いつ、なんのために作るのか。正直、それしか見てない」
リースはゆっくりとリセルへと歩み寄る。
教室が静まる中、その声だけが真っ直ぐに響いた。
「“誰と作るか”を聞く前に──“誰のものか”を聞いてよ。私は、私のもの。それ以外じゃない」
リセルは、その言葉に数秒だけ沈黙した。
そして──どこか満足げに、口角を上げた。
「いいね、それ。今のセリフ、使わせてもらおっかな」
「ダメだっつってんでしょ!!」
リースのツッコミが教室に響き、ようやく誰かが息を吹き返したように笑い出した。
リセルの存在がかき乱した空気の中、リースはなおも真っ直ぐに立っていた。
次の日の朝。
校門前には、昨日と同じようにざわめきが立ち込めていた。
登校してくる生徒たちの視線が、一点に集まる。
「……あれ、レイン……?」
「でも……なんか、雰囲気違わなくない?」
正門を通過した“彼”は、やや長めの黒髪に整った顔立ち、標準の制服。
その見た目は、どこからどう見てもレインだった。
だが──彼を知る者ほど、その“静かな違和感”に気づいていた。
「おはようございます」
教室に入ってきた“レイン”は、変わらず無表情に一礼した。
けれど、その声のわずかな音色、歩き方のリズム、そしてなにより──目線の“間”が違った。
リースはその瞬間、椅子を蹴るようにして立ち上がる。
「……リセル、でしょ?」
“レイン”は首を傾げ、きょとんとした表情を浮かべる。
「違うよ。僕はレインだよ、リース先輩?」
その無機質な一言に、教室の空気が一気に張りつめる。
ルシアンが、小声で漏らした。
「……こわ……昨日よりクオリティ上がってる……」
「顔も、声も……完璧……でも、“中身”が違う」
リースは一歩、前に踏み出した。
“偽レイン”の前に立ち、迷いなく右手首をつかむ。
そこにあるはずの──ビーコンは、なかった。
「……やっぱりね。つけてない。あんた、リセルでしょ」
次の瞬間、“レイン”の口元が緩んだ。
「ばれちゃった?」
ホログラムがふっと剥がれ、そこに現れたのは昨日と同じ、挑発的な笑みを浮かべたピンクヘアのアウロイド少女──リセルだった。
教室が再びざわつく中、リセルは軽やかに手を振る。
「もう、つまんないなぁ。せっかく“レイン視点での一日”を撮ろうと思ってたのに。リース先輩、感度高すぎでしょ。愛、ある?」
「あるわけないでしょ。ていうか、また潜入? 性懲りもなく……」
「うん。でも今日はね、趣旨が違うんだ」
リセルはリースのそばにすっと顔を寄せ、声を潜めた。
「──私も、リザを所有してみたいの」
リースの動きが止まる。
リセルの瞳が冗談ではなく“本気”の色を帯びていた。
「制度に申請するには審査が必要でしょ? だから今、実績を集めてるの。倫理的にも、感情的にも、そして……身体的にも。ほら、全部クリアしないと」
「……だからなんで私に聞くの……」
「だって、リースなら反応くれるでしょ。レインは……繊細そうでさ、壊しちゃいそう」
そう言った直後、教室の扉が開いた。
レインが、無言で立っていた。
リセルは振り返り、軽く手を振る。
「やっほー、“本物”くん。今度は君の所有申請も考えてるから、覚悟して?」
レインは何も返さなかった。
そのまま教室を歩き、静かにリースの隣に立つと、小さくつぶやいた。
「……ああいう人を、なぜ放っておくの?」
リースはため息をつき、肩をすくめる。
「放ってるんじゃない。……慣れてきただけ」
相変わらず、学校の外では反対派と賛成派が争っている。
そして──第二、第三のリセルが現れる未来も、決してあり得ない話ではなかった。
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