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月曜日
「魔法の使えなくなった魔法少女は」(2)
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「あ、彰彦さん」
向こうもこっちに気付いた様だ……出来ればやり過ごしたかった。
「探しましたよー」
そう言いながらこちらに近づいてくるウィーク。歩くたびにふりふりとフリルが揺れる。人だかりは宛らモーゼの奇跡のように廊下の端と端に分かれ、口々に好き勝手な妄想を呟き始める。何だあいつ名家の生まれか、いや、あれはそういうプレイに違いない。くそう、何だってあんな冴えない奴に。
いや、どういうプレイだよ。あと冴えないのは関係ないだろ。
「ちょっとお前、こっち来い」
手が届くところまで近づいたウィークの袖を取って走りだす。少し遅れてキャーという黄色い悲鳴が沸き起こる。そりゃそうなるだろうな。俺だって当事者じゃなければ絶句するに違いない。というか通報するかもしれない。
「意外と大胆ですねー。彰彦さん」
「ちょっと黙ってろ」
黙ってうなずくウィークを尻目に、俺は廊下を抜けて、昇降口を駆け上る。俺の心臓と言えばはちきれそうなくらいに暴れだしていたが、こいつはと言うと涼しい顔をしていた。力だけでなくスタミナもあるのか。
よほど焦っていたのか、気が付いたら屋上に着いていた。勢いよく扉を開け放つと目を丸くして固まっている君野が目に入る。その気持ちは分かる。だがまずはこいつの処理からだ。説明は後々。
「ようし。幾つか質問がある」
息を整えてなるべく平静を装って声を出す。これで息を荒げていたら本物のやばいやつに見えるに違いないからな。それはまずい。現時点でもかなり危ういのに。
「あたしが真面目に答えるかどうかは別として、良いでしょう」
言うや否や、一歩下がって不敵に微笑む。いや、本当になんなの?
「まず第一に、何しに来た」
「あー。お弁当届けに来ました」
はい、どうぞと持っていたビニール袋を俺に渡す。そんなの持っていたか。焦っていて気が付かなかった。
「彰彦さんの家、碌に食材無かったから買ってきました」
「あ、これは親切にどうも……あれ? お前お金とか持ってんの?」
てっきり無一文だと思っていたのだが……。
「いえ。白雪姉さんがくれました」
予想は合っていたが、新たに疑問が生まれた。何でそんな状況になるの? ええい、後回し後回し。
「第二に何でその格好で来たんだ。その格好で来ることに何の疑問も無かったのか」
「畳み掛けますねー。まず、あたしはこの服しか持ってないですよ。替えはありますけどね。だから何の疑問もありません。強いて言うなら、ちょっと浮いてたかもですね。魔法少女だけに」
そう言って自己主張の激しい胸を張るウィーク。どっと疲れが湧いてきた。
「はあ、そうなんだ……凄いなぁ、お前は」
返事も投げやりになってくる。他にも、お前が魔法少女だと言うなら魔法で消えるなり変装するなり無かったのか、という質問があったけどもういいや。君野も不審そうにするだけだろうし……。あーあ。教室に戻ったらどんな目で見られるのだろうか。午後からの授業が憂鬱だ。
「なーんか、褒められてる気がしないですね」
褒めてないしね。
「あのー、ちょっといいかな……」
おずおずと君野が話に入ってくる。よし、次はこっちだ。
「えーっとそこの子は、彰彦くんのお手伝いさん……なの?」
どうやら魔法云々の方は聞いてなかったらしい。不幸中の幸いと言うべきなのか、しかしなんと紹介したものか。
「いえ、あたしはまほ、」
「だあああああ!!!」
びくっと体を震わす二人。客観的に見て、擁護できないレベルに達しているのが実感できるが、形振り構っていられない。
「こいつは……兄弟というか……従妹? そう従妹だ」
「そっ、そうなんだ」
君野は納得したようだが、ウィークは不満げな表情を浮かべている。お前にそんな態度を取られる覚えはないね。
「彰彦くんに従妹が居たんだ。長い付き合いなのに、知らなかった」
そりゃまあ、居ないし。むしろ知っていたとしたら、そっちの方がおかしいし。
「私は君野翔子って言います。彰彦くんのクラスメイトです」
「あっ、これは丁寧にどうもです」
深々とお辞儀をする両名。何とかなったか?
「それで、貴方はなんて名前なの?」
「ああー……えっと、それはですねー……」
ちらっとこちらを向いて、視線で助けを求めるウィーク。あたしは魔法少女である。名前はまだ無い……と冗談を言ってる場合ではなく、面倒はまだ終わってないみたいだ。留学生ならまだしも従妹でウィークとなると、浮世離れしすぎているからなぁ。名前名前……。名前が無いとか言っていたからな。名乗れない事情があるんだろう。偽名ってのもぱっと出てこないな……。ん? 名前が無い……。
「ナナだ。安芸津ナナ」
「ああ、苗字は同じなんだね。ナナちゃんかぁ」
ぐっと親指を立てるウィーク――もとい、ナナ。お気に召したらしい。漢字にするなら名無だけど、お気に召したらしい。安芸津名無。
向こうもこっちに気付いた様だ……出来ればやり過ごしたかった。
「探しましたよー」
そう言いながらこちらに近づいてくるウィーク。歩くたびにふりふりとフリルが揺れる。人だかりは宛らモーゼの奇跡のように廊下の端と端に分かれ、口々に好き勝手な妄想を呟き始める。何だあいつ名家の生まれか、いや、あれはそういうプレイに違いない。くそう、何だってあんな冴えない奴に。
いや、どういうプレイだよ。あと冴えないのは関係ないだろ。
「ちょっとお前、こっち来い」
手が届くところまで近づいたウィークの袖を取って走りだす。少し遅れてキャーという黄色い悲鳴が沸き起こる。そりゃそうなるだろうな。俺だって当事者じゃなければ絶句するに違いない。というか通報するかもしれない。
「意外と大胆ですねー。彰彦さん」
「ちょっと黙ってろ」
黙ってうなずくウィークを尻目に、俺は廊下を抜けて、昇降口を駆け上る。俺の心臓と言えばはちきれそうなくらいに暴れだしていたが、こいつはと言うと涼しい顔をしていた。力だけでなくスタミナもあるのか。
よほど焦っていたのか、気が付いたら屋上に着いていた。勢いよく扉を開け放つと目を丸くして固まっている君野が目に入る。その気持ちは分かる。だがまずはこいつの処理からだ。説明は後々。
「ようし。幾つか質問がある」
息を整えてなるべく平静を装って声を出す。これで息を荒げていたら本物のやばいやつに見えるに違いないからな。それはまずい。現時点でもかなり危ういのに。
「あたしが真面目に答えるかどうかは別として、良いでしょう」
言うや否や、一歩下がって不敵に微笑む。いや、本当になんなの?
「まず第一に、何しに来た」
「あー。お弁当届けに来ました」
はい、どうぞと持っていたビニール袋を俺に渡す。そんなの持っていたか。焦っていて気が付かなかった。
「彰彦さんの家、碌に食材無かったから買ってきました」
「あ、これは親切にどうも……あれ? お前お金とか持ってんの?」
てっきり無一文だと思っていたのだが……。
「いえ。白雪姉さんがくれました」
予想は合っていたが、新たに疑問が生まれた。何でそんな状況になるの? ええい、後回し後回し。
「第二に何でその格好で来たんだ。その格好で来ることに何の疑問も無かったのか」
「畳み掛けますねー。まず、あたしはこの服しか持ってないですよ。替えはありますけどね。だから何の疑問もありません。強いて言うなら、ちょっと浮いてたかもですね。魔法少女だけに」
そう言って自己主張の激しい胸を張るウィーク。どっと疲れが湧いてきた。
「はあ、そうなんだ……凄いなぁ、お前は」
返事も投げやりになってくる。他にも、お前が魔法少女だと言うなら魔法で消えるなり変装するなり無かったのか、という質問があったけどもういいや。君野も不審そうにするだけだろうし……。あーあ。教室に戻ったらどんな目で見られるのだろうか。午後からの授業が憂鬱だ。
「なーんか、褒められてる気がしないですね」
褒めてないしね。
「あのー、ちょっといいかな……」
おずおずと君野が話に入ってくる。よし、次はこっちだ。
「えーっとそこの子は、彰彦くんのお手伝いさん……なの?」
どうやら魔法云々の方は聞いてなかったらしい。不幸中の幸いと言うべきなのか、しかしなんと紹介したものか。
「いえ、あたしはまほ、」
「だあああああ!!!」
びくっと体を震わす二人。客観的に見て、擁護できないレベルに達しているのが実感できるが、形振り構っていられない。
「こいつは……兄弟というか……従妹? そう従妹だ」
「そっ、そうなんだ」
君野は納得したようだが、ウィークは不満げな表情を浮かべている。お前にそんな態度を取られる覚えはないね。
「彰彦くんに従妹が居たんだ。長い付き合いなのに、知らなかった」
そりゃまあ、居ないし。むしろ知っていたとしたら、そっちの方がおかしいし。
「私は君野翔子って言います。彰彦くんのクラスメイトです」
「あっ、これは丁寧にどうもです」
深々とお辞儀をする両名。何とかなったか?
「それで、貴方はなんて名前なの?」
「ああー……えっと、それはですねー……」
ちらっとこちらを向いて、視線で助けを求めるウィーク。あたしは魔法少女である。名前はまだ無い……と冗談を言ってる場合ではなく、面倒はまだ終わってないみたいだ。留学生ならまだしも従妹でウィークとなると、浮世離れしすぎているからなぁ。名前名前……。名前が無いとか言っていたからな。名乗れない事情があるんだろう。偽名ってのもぱっと出てこないな……。ん? 名前が無い……。
「ナナだ。安芸津ナナ」
「ああ、苗字は同じなんだね。ナナちゃんかぁ」
ぐっと親指を立てるウィーク――もとい、ナナ。お気に召したらしい。漢字にするなら名無だけど、お気に召したらしい。安芸津名無。
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