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火曜日
「貴方のために使った魔法」(2)
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スペードだと? それは確かナナの一族が仕えてる名家とやらじゃなかったか。朝っぱらからややこしい話をされて、頭の中がぐちゃぐちゃだ。ナナを無力化するとかしないとか……。確かに茶柱ぐらいなら平和なものだろうが、頻繁に流れ星なんか落とされたらどんな影響が出るかわからない。地表にクレーターが出来るくらいならまだマシで、ビルや人の上に降り注ぐ可能性だってあるわけだし。『幸運』の魔法がどの程度コントロール出来るものか知らない(そもそも詳しい内容も知らない。今の所、茶柱と流れ星の魔法と認識している)が、そういうことを意図的にやってのけないとも限らない。
じゃあ、手伝うのか? 俺が? 言っておくけど俺は二日前に遭遇しただけの、通りすがりの高校生だぞ。なんだって魔法界の沽券に関わらないといけないんだ。死んでもお断りだ。生涯平穏が俺の掲げる信条だ。
俺はやっとのことで部屋へ戻り、ベッドに倒れる。横目でテーブルを見るが、昨日と違ってナナは居ない。結局、俺は面倒なのだろう。ナナのことが可哀想とかいう気持ちよりも、ただ面倒だから関わりたくないと言うだけのことだ。面倒事は嫌いだ。それだけで生きてきた様なものだ。
じゃあ、どうする? このまま知らん振りを続けて、ナナがいつの日か魔力を失うのを見ているのか……そもそもナナはいつまで居るつもりなのだろうか? 俺は保護者じゃないのだが。
「くっそ分からん」
寝返りを打つと何やら光が目に留まる。勿論室内だから流れ星なわけもなく。ただ単に枕元で通知をし続ける俺の携帯が視界に入っただけだ。画面をスライドさせてメッセージを表示させる。白雪先輩の顔写真の横に『学校終わる頃に返してあげるねー』とハート付きでメッセージが添えられていた。
どうすれば良いのやら。
「はあーあ」
「お疲れだねえ、彰彦くん」
「そりゃあ、なあ」
昼休みの人気の少なくなった教室で、君野はゆったりとした口調で話し掛けてくる。その声に何処か落ち着いている俺がいた。
「朝から凄かったもんねぇ。あの二人とはどういう関係だーって」
「ああ……」
俺としてはその前にあったやりとりも有って、疲れ倍増って感じなんだが。家でも学校でも気が休まらなくて、もうコンビニしかないな。そうだ、コンビニ行こう。
「昨日、従妹って言ったのにな。二人目の奴はマジで知らん。ナナの友達か何かじゃないのか。流石に従妹の交友関係までは知らんからな」
言いながら、あれがただの『お友達』ではないだろうと心の中で突っ込みを入れる。自分でボケて自分で突っ込む。別にボケてるわけじゃないか。それに、知らないのは本当に知らないわけだし。
「そうだよねー。格好からしてお友達だよねぇ」
本人の前で言わないだけで、やっぱり気にしてたのか。というか、格好を知っているってことは夜遅い校舎に居たのか。閉館時間まで図書室に居るらしいからなぁ。じゃあ、俺の名前出したの君野だろうか。別に良いけど。
「今日ナナちゃんは一緒じゃないの?」
「友達の所に泊まってる」
へー、そうなんだぁと興味が無い様でいて、癒される口調で返事をする。掴み所が無いという点でナナに似ているかもしれない。
「それにしても彰彦くん元気になったよねぇ。いつもやる気無さそうにしてたのに。ナナちゃんのおかげかな?」
「そんなんじゃねえよ」
あはは、と心底楽しそうに笑う君野。現在進行形で思い悩んでいる最中だ。それもあいつのことでだ。
「じゃあ私、屋上に行くけど、良かったら来る?」
「うーん……。どうだろう」
正直今は君野と楽しくランチって気分でもない。教室で頭を抱えていた方が楽だ。
「そっかぁ。分かった」
特に残念そうにするでもなく、君野は教室を後にする。何となくつられて立ち上がり、それから特にすることも無く、ロッカーと自分の席を行き来する。何やってんだか。しょうがない。購買に行って何かしら腹に詰めよう。いっそ走って行ったら気分が多少晴れるかもしれない。
そう思い立って、直ぐ行動に移す。即断即決はなにも店長だけの特技じゃない。鞄から財布を取り出すと、一気にスタートを切り、人を障害物に見立てて避けながら廊下を走り抜ける。
今の季節の陽気さも相俟って、購買に着くころには汗が滲んでいたが、多少すっきりした。やはり運動は良いものだ。
じゃあ、手伝うのか? 俺が? 言っておくけど俺は二日前に遭遇しただけの、通りすがりの高校生だぞ。なんだって魔法界の沽券に関わらないといけないんだ。死んでもお断りだ。生涯平穏が俺の掲げる信条だ。
俺はやっとのことで部屋へ戻り、ベッドに倒れる。横目でテーブルを見るが、昨日と違ってナナは居ない。結局、俺は面倒なのだろう。ナナのことが可哀想とかいう気持ちよりも、ただ面倒だから関わりたくないと言うだけのことだ。面倒事は嫌いだ。それだけで生きてきた様なものだ。
じゃあ、どうする? このまま知らん振りを続けて、ナナがいつの日か魔力を失うのを見ているのか……そもそもナナはいつまで居るつもりなのだろうか? 俺は保護者じゃないのだが。
「くっそ分からん」
寝返りを打つと何やら光が目に留まる。勿論室内だから流れ星なわけもなく。ただ単に枕元で通知をし続ける俺の携帯が視界に入っただけだ。画面をスライドさせてメッセージを表示させる。白雪先輩の顔写真の横に『学校終わる頃に返してあげるねー』とハート付きでメッセージが添えられていた。
どうすれば良いのやら。
「はあーあ」
「お疲れだねえ、彰彦くん」
「そりゃあ、なあ」
昼休みの人気の少なくなった教室で、君野はゆったりとした口調で話し掛けてくる。その声に何処か落ち着いている俺がいた。
「朝から凄かったもんねぇ。あの二人とはどういう関係だーって」
「ああ……」
俺としてはその前にあったやりとりも有って、疲れ倍増って感じなんだが。家でも学校でも気が休まらなくて、もうコンビニしかないな。そうだ、コンビニ行こう。
「昨日、従妹って言ったのにな。二人目の奴はマジで知らん。ナナの友達か何かじゃないのか。流石に従妹の交友関係までは知らんからな」
言いながら、あれがただの『お友達』ではないだろうと心の中で突っ込みを入れる。自分でボケて自分で突っ込む。別にボケてるわけじゃないか。それに、知らないのは本当に知らないわけだし。
「そうだよねー。格好からしてお友達だよねぇ」
本人の前で言わないだけで、やっぱり気にしてたのか。というか、格好を知っているってことは夜遅い校舎に居たのか。閉館時間まで図書室に居るらしいからなぁ。じゃあ、俺の名前出したの君野だろうか。別に良いけど。
「今日ナナちゃんは一緒じゃないの?」
「友達の所に泊まってる」
へー、そうなんだぁと興味が無い様でいて、癒される口調で返事をする。掴み所が無いという点でナナに似ているかもしれない。
「それにしても彰彦くん元気になったよねぇ。いつもやる気無さそうにしてたのに。ナナちゃんのおかげかな?」
「そんなんじゃねえよ」
あはは、と心底楽しそうに笑う君野。現在進行形で思い悩んでいる最中だ。それもあいつのことでだ。
「じゃあ私、屋上に行くけど、良かったら来る?」
「うーん……。どうだろう」
正直今は君野と楽しくランチって気分でもない。教室で頭を抱えていた方が楽だ。
「そっかぁ。分かった」
特に残念そうにするでもなく、君野は教室を後にする。何となくつられて立ち上がり、それから特にすることも無く、ロッカーと自分の席を行き来する。何やってんだか。しょうがない。購買に行って何かしら腹に詰めよう。いっそ走って行ったら気分が多少晴れるかもしれない。
そう思い立って、直ぐ行動に移す。即断即決はなにも店長だけの特技じゃない。鞄から財布を取り出すと、一気にスタートを切り、人を障害物に見立てて避けながら廊下を走り抜ける。
今の季節の陽気さも相俟って、購買に着くころには汗が滲んでいたが、多少すっきりした。やはり運動は良いものだ。
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