1week 魔法少女の卒業試験

石嶺経

文字の大きさ
13 / 46
火曜日

「貴方のために使った魔法」(2)

しおりを挟む
 スペードだと? それは確かナナの一族が仕えてる名家とやらじゃなかったか。朝っぱらからややこしい話をされて、頭の中がぐちゃぐちゃだ。ナナを無力化するとかしないとか……。確かに茶柱ぐらいなら平和なものだろうが、頻繁に流れ星なんか落とされたらどんな影響が出るかわからない。地表にクレーターが出来るくらいならまだマシで、ビルや人の上に降り注ぐ可能性だってあるわけだし。『幸運』の魔法がどの程度コントロール出来るものか知らない(そもそも詳しい内容も知らない。今の所、茶柱と流れ星の魔法と認識している)が、そういうことを意図的にやってのけないとも限らない。

 じゃあ、手伝うのか? 俺が? 言っておくけど俺は二日前に遭遇しただけの、通りすがりの高校生だぞ。なんだって魔法界の沽券に関わらないといけないんだ。死んでもお断りだ。生涯平穏が俺の掲げる信条だ。
 俺はやっとのことで部屋へ戻り、ベッドに倒れる。横目でテーブルを見るが、昨日と違ってナナは居ない。結局、俺は面倒なのだろう。ナナのことが可哀想とかいう気持ちよりも、ただ面倒だから関わりたくないと言うだけのことだ。面倒事は嫌いだ。それだけで生きてきた様なものだ。

 じゃあ、どうする? このまま知らん振りを続けて、ナナがいつの日か魔力を失うのを見ているのか……そもそもナナはいつまで居るつもりなのだろうか? 俺は保護者じゃないのだが。

「くっそ分からん」

 寝返りを打つと何やら光が目に留まる。勿論室内だから流れ星なわけもなく。ただ単に枕元で通知をし続ける俺の携帯が視界に入っただけだ。画面をスライドさせてメッセージを表示させる。白雪先輩の顔写真の横に『学校終わる頃に返してあげるねー』とハート付きでメッセージが添えられていた。

 どうすれば良いのやら。



「はあーあ」

「お疲れだねえ、彰彦くん」

「そりゃあ、なあ」

 昼休みの人気の少なくなった教室で、君野はゆったりとした口調で話し掛けてくる。その声に何処か落ち着いている俺がいた。

「朝から凄かったもんねぇ。あの二人とはどういう関係だーって」

「ああ……」

 俺としてはその前にあったやりとりも有って、疲れ倍増って感じなんだが。家でも学校でも気が休まらなくて、もうコンビニしかないな。そうだ、コンビニ行こう。

「昨日、従妹って言ったのにな。二人目の奴はマジで知らん。ナナの友達か何かじゃないのか。流石に従妹の交友関係までは知らんからな」

 言いながら、あれがただの『お友達』ではないだろうと心の中で突っ込みを入れる。自分でボケて自分で突っ込む。別にボケてるわけじゃないか。それに、知らないのは本当に知らないわけだし。

「そうだよねー。格好からしてお友達だよねぇ」

 本人の前で言わないだけで、やっぱり気にしてたのか。というか、格好を知っているってことは夜遅い校舎に居たのか。閉館時間まで図書室に居るらしいからなぁ。じゃあ、俺の名前出したの君野だろうか。別に良いけど。

「今日ナナちゃんは一緒じゃないの?」

「友達の所に泊まってる」

 へー、そうなんだぁと興味が無い様でいて、癒される口調で返事をする。掴み所が無いという点でナナに似ているかもしれない。

「それにしても彰彦くん元気になったよねぇ。いつもやる気無さそうにしてたのに。ナナちゃんのおかげかな?」

「そんなんじゃねえよ」

 あはは、と心底楽しそうに笑う君野。現在進行形で思い悩んでいる最中だ。それもあいつのことでだ。

「じゃあ私、屋上に行くけど、良かったら来る?」

「うーん……。どうだろう」

 正直今は君野と楽しくランチって気分でもない。教室で頭を抱えていた方が楽だ。

「そっかぁ。分かった」

 特に残念そうにするでもなく、君野は教室を後にする。何となくつられて立ち上がり、それから特にすることも無く、ロッカーと自分の席を行き来する。何やってんだか。しょうがない。購買に行って何かしら腹に詰めよう。いっそ走って行ったら気分が多少晴れるかもしれない。
 そう思い立って、直ぐ行動に移す。即断即決はなにも店長だけの特技じゃない。鞄から財布を取り出すと、一気にスタートを切り、人を障害物に見立てて避けながら廊下を走り抜ける。
 今の季節の陽気さも相俟って、購買に着くころには汗が滲んでいたが、多少すっきりした。やはり運動は良いものだ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...