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木曜日
「宣戦布告だ。魔法少女スペード」(2)
しおりを挟む『えっ、特訓?』
時計は十一時を回ったころだった。あまりにも授業が退屈で死にそうだったから白雪先輩に「魔法って特訓とかで強くなったりするんですか?」と送ってみたら帰ってきたのが冒頭の通りだった。
考えてみたら今からやることって全くもって無駄なのではないだろうか。テンション上がって俺一人だけ馬鹿を見るのではないだろうか……。
画面を開きっぱなしにしていた携帯に赤い通知のマークがつく。白雪先輩だ。
『魔力がってこと? それならノーだよ』
『魔法使いになれば別だけどね』
「ヴぇっ」
思わず汚い声が出てしまった。慌てて顔を上げると教師含め教室の全員がこちらを怪訝そうな目で見ている。君野だけは心配そうな顔をしていて癒されるが、やれやれ注目の的じゃないか。
「すいません、喉が痛くて」
そうか、とさして興味もなさそうに言って授業が再開する。危ない危ない。これ以上内申点を下げるわけにはいかない。日下に申し訳ないからな。
とか言いつつ携帯に視線を戻すと、さらに白雪先輩からメッセージが届いていた。長すぎて表示しきれていないのでアプリを起動する。
『ただ、制御できるようにはなる……かも。彰彦ちゃんの好きな野球で例えると、百六十キロのストレートをアタシが投げられるとする』
ふむ。野球部だったというだけで、野球が好きと言った覚えはないが。
『いくら投げ込んでも球速は上がらないし、スタミナもつくわけじゃない』
『でも、内外に投げ分けられるようにはなるし、百五十キロにしたり、百キロにしたり、強弱はつけられるようにはなる』
なるほど。じゃあ無駄ではないってわけだ。ひとまず安心。
『ありがとうございます。なんとかなりそうです』
送信。
間髪入れずに返事が来る。暇なのかなこの人。大学ちゃんと行ってるといいけど。
『なになに? 何か面白いことしようとしてる?』
『してますけど、白雪先輩には内緒です。俺とナナのことなんで』
『あーん。彰彦ちゃん冷たい』
語尾に泣いている顔文字。もう無視していいか。
携帯を机の中に置いて時計を見る。十一時半か。ナナには昼休みに屋上に来るように言ってあるから、もうそんなに時間は無いな。
そうだ。屋上で鉢合わせになっても面倒だし、君野にも言っておくか。あいつって授業中に携帯とか見るのかな。
『屋上使いたいから、すまないが今日は別のところで昼食をとってくれ』
送信。
ややぶっきらぼうすぎただろうか? まあ、送ってしまったものは仕方がない。
数秒ほど経ってから、一生懸命ノートを取っていた君野が手を止める。必要以上に廻りを警戒した後でゆっくりと携帯を取り出し、急いで何事か入力している。
……なんか俺のせいで君野まで目を付けられたりしないだろうか。少し罪悪感。
そして通知。言うまでもなく君野からだ。
『わかった。頑張ってね』
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