1week 魔法少女の卒業試験

石嶺経

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木曜日

「宣戦布告だ。魔法少女スペード」(5)

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「頼む」

 またしても体を反転させ、遅れてスカートの裾が翻る。俺に背を向けた姿勢のままで、両手の人差し指を天に掲げ、振り下ろすと、雲一つない青空に八の字に飛行機雲が形成された。

「おお……」

 そのまま、中指、続いて薬指と指を増やしていく。縦横に線が追加され、或いは新しい流星で削られて、段々と何かの形になっていく。

 これは一体なんだ?
 何かの文字? 日本語には見えないし、アルファベットだろうか。

「そーれ」

 最後に左手を閉じ、右手を開いて空を撫でる。五本の線が真っ直ぐに引かれて、それでようやく教養のない俺にも何を描いていたか分かった。

 楽譜だ。最後の五本線がそのまま五線譜だった。

「いったい何の曲なんだ?」

「曲っていうか、メッセージですね。魔法少女にのみ伝わる符牒というか。まあ、こんなことしなくても来ると思うんですけど」

 符牒ときたか。一体何の……。
 

 炸裂音。


 改めて楽譜を見直そうとして空を見上げた俺だったが、校舎が爆撃にでもあったかのような轟音と、それによっておこる砂埃と衝撃とで思わず目を閉じて身構える。

 なんだ、何が起こった。
 ナナが落とした流星の一つがこっちに落ちてきたのか?
 取り敢えず痛みは感じないが、ナナは無事なのか?
 目を開けて周りを見渡すが、灰色の煙に覆われていて何も見えやしない。

「ナナ、大丈夫か!」

「だいじょう、ヴェッ、ゲッホ」

 咳が汚すぎるけど大丈夫みたいだ。
 取り敢えずナナと合流せねば。何があったか探るのはその後だ。
 両手を平泳ぎの様にして煙を掻き分けて進む。幸いにも目は利かないが、先ほどからずっとナナが大声で咽ているからそれを頼りに。

「おっと」

 そこまで遠くに飛ばされていなかったらしい。どうやらしゃがんでいるらしいナナに足の爪先が当たる。

「彰彦さ、ウェッ」

 ナナもこちらを認識したようだが、それによって何だか俺を見て気分を害しているみたいになった。ひどく心外だ。

「魔法少女ウィーク!」

 どこかから聞いたことのある声がする。するのだが、何処にいるのか全く分からない。

「……何ですかー。というか、誰ですか」

 ようやく復活したナナが心底嫌そうに呟く。というか、ナナも見えていないのか。
 ……それでも誰かは分かるだろうに。

「貴方が呼び出したんでしょう!? あんなことを空に書いてまで! こっんの恥晒しが!」

 目が慣れてきて、やっと声の主のシルエットぐらい見えるようになったが、まあ、確認するまでも無い。

 魔法少女スペードだ。
 こんな脳に直接響くような声はしてなかった気がするが。

「一体どういうつもりで! んあああ! 許せない! 殺す!」

 本当に何を書いたんだろう。キャラが崩壊している。

「別に本当の事じゃないですか?」

「あああああ! 殺す! もう絶対に殺す! 完璧に殺す! 完全に殺す! 姿を見せなさいウィーク!」

 うるさいな……。というか、ナナも煽るなよ……。
 だけど、二人の会話を聞いて大体分かってきた。
 ナナがスペードの恥を書いて、それを見て飛んできて、その衝撃かなんかで今こうなってるわけか。

 ……じゃあ、視界が悪いのはお前のせいじゃないか。
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