1week 魔法少女の卒業試験

石嶺経

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金曜日

「キャスト・オフ!」(5)

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「そうだな……。『俺は魔法が使える』だっけか。それを唱え続けたら魔法が使えるんだな?」

「分かんないです」

 ええ……。ここまでの会話なんだったんだよ。
 膝から崩れ落ちそうになるのをすんでのところで耐える。そういえば寝間着だった。この薄っぺらい寝間着で膝をついたら破れるかもしれない。

「いや、本当に分かんないんです。さっきも言いましたが、ほとんどの人間に魔法が使えないのは、『魔法が使える』と心の底から信じることが出来ないからです。でも」

 ナナは人差し指を立て、その先に砂利が集まり、野球の球ぐらいの大きさになる。良く見れば凄い勢いで回転していて、ナナの指先が切れやしないかハラハラする。

「師匠……いや、彰彦さんはあたしとスペード、二人の魔法少女に『会って』、実際に魔法を『体験して』いるじゃないですか」

「おう」

 四人だけどね。スノーホワイトとデザートと。

「だから魔法の存在をすっかり『信じて』いるはずです。その時点で、そこら辺の人よりは魔法を使える可能性が高くなっています」

「そんなもんですか」

「ですです。後は自分にも使えると『信じる』ことですが、繰り返し唱えろと言ったのは、そうすることで自分を騙し、そうですね、一種の洗脳とでも言いましょうか。魔法が使えると『思い込んで』ほしいんですよね」

 確かに。
 魔法をこの目で見た今でも、正直に言って魔法なんて怪しいものを心底信じられるかと言われたらそんなことはない。半信半疑どころか三信七疑ぐらいのもんだ。ましてや、自分にも使えると思い込むとなると、それこそ洗脳するぐらいのことがないと。

「よし。じゃあ、決まりってことで。ナナはスターゲイザーでの的当て、俺は自分のマインドコントロールをするってことで」

「はーい。了解、です!」

 言いながら砂の塊を目の前の自動車、運転席側の扉に打ち込む。金属片をミキサーに入れた様な嫌な音がして、車の内部が見通せるほどの大きくて綺麗な丸い穴が開く。

 なんだ。出来るじゃん。

「師匠も、早く」

 持ち前の瞬発力によって一瞬で距離を取るナナ。そんなのあったなそういえば。久し振りに見た。
 ナナは早くと言ったが、別にこちらに来いということではなく、修行を始めろということだろう。全く。師匠使いが荒すぎる。

「俺は魔法が使える。俺は魔法が使える。俺は魔法が使える……」

 いや、俺の修行地味すぎるだろ。そしてカルトすぎるだろ。
 少し離れたナナは、自動車をハチの巣にしているが、ここからだと砂なんて視認できず、人差し指で狙ったところが急に穴が開くという、某霊界探偵みたいなことをしている。

 いいなあ。俺もそっちがいい。

「師匠?」

「……魔法が使える。俺は魔法が使える」

 少し黙っただけでナナに睨まれた。スパルタな弟子だなぁ。
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