空色の龍の世界で、最下層に生まれた青年は 〜すべてをもっているひと〜

朝子

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第四章 アメリカムラサキバン

05.好意を伝える火食鳥 ※

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 好きだ。
 好きだ、レイル、全部が好きだ。

 そう言いながら、カジュリエスはレイルの頬から顎へと、唇を這わせていく。別にこの場でレイルに何かをしようなんて思っているわけじゃなく、ただのお遊びのようなもので、少しでも自分の気持ちが伝われば良いと思ってやっているだけだ。

 なぜレイルがこんなに自信が無いのかなんてカジュリエスにはわからない。

 自分はあの日、浮島亭でレイルの後ろ姿を認めた時からレイルに惹き寄せられて仕方がないと言うのに、どうしてわかってもらえないのか、と思いながら口付ける。

 出会った時のレイルを……しかも、後ろ姿をひと目で好きになって、その後もずっと好きだと思い続けている。あまりに思いすぎたのと、自身の勘違いがあって、つがいと認めあった今であっても気分は片思いのままだ。

 もちろん、自分の番の正体が龍だったからと言って嫌な気持ちになることなんてありえない。が。

 龍になって一つだけ残念な事があったとするなら、……髪を梳くようにレイルの頭を撫でながら、カジュリエスは思う。

 あの、素朴に優しい色の茶の髪色を自分は酷く好きだったのだ。今更そこに気づくなんて、愚かだし、もっと伝えておけば良かったなとも思う。色が変わってから「前の色が気に入っていた」と伝えられてもレイルも困るだろう。もっと早く言え、せめて元の色の時に、と。


「レイル……」


 仰向けで寝転ぶレイルの顔を覗き込むようにして左腕で身体を支えながらも、右手は変わらずその髪を梳き続けその名を呼ぶ。


「ん、……なに……」


 こちらを見ながらも目を潤ませているレイル。龍化したことでほぼ唯一変わっていない茶色の瞳を見ると安心する。それから、人だったときと同じ、もしくは更に色鮮やかに真っ赤な唇。カジュリエスはその唇に指を持っていく。当然だが触ったところで感触も何も変わってはいない。


「変わった所は……感じ方も変わったのか……?」
「……え?」
「色が変わっただろ、肌と、髪と、羽と。そこの感じ方……変わったか……?」


 それを聞いたレイルはなぜだか唇だけで笑って「試してみたら?」と挑発的な態度をとるから。
 カジュリエスは思わず立ち上がってレイルの手を引いた。え? と言いながらもつられて一緒に立ち上がったレイルを後ろから抱きしめて、後ろから耳元で囁く。


「それは……家に帰って寝ようというお誘いか? それとも、……もっと直接的に……ここでやろうと言うお誘いか?」


 初めて誘われた時と同じような言葉を吐く。その真意に気づいたのか、レイルは酷く魅力的な笑顔であの日と同じ事を言う。


「……どちらの意味でも。どちらが良いですか?」


 後ろから抱きしめたまま、目の前の耳に歯を立てた。んんっ……とレイルが反応するから、カジュリエスは気分が良い。だいたい、後ろから囲い込んで自分の腕の中でレイルを好きにできるのは、レイルの羽が小さいおかげだ。大きな羽を持っていたら、こんなことできなかった。
 この際だ。後ろからレイルを堪能することにする。
 カジュリエスはそう決めて、目の前の木の幹にレイルを柔らかく押し付けた。


「ほんとに、このまま……?」
「ああ、……このまま、ここで」


 後ろからレイルの顎を掬うようにもちあげて唇を塞いだ。先程まで口づけていたのだから、特に焦らすこともなく舌でその唇を開く。レイルも素直にその口を開いてきた。口づけながらその手で顎の辺りをくすぐるようにしながらカジュリエスは聞く。


「ここは……?」
「……ん、っ、ん……なにが……?」
「感覚、……いつもと違うか……?」


 顎から喉を通り、鎖骨をなぞる。都度、んん、とレイルは震えるが、今までと違うのかと言うとカジュリエスには正直よくわからない。触り心地は全く変わらないように思う。

 そのまま、上着のボタンに手をかける。上から順番にボタンを外し、もう片方の手はレイルの腹の辺りから下履きの中に侵入を試みた。

 さすがに外でそれは、と嫌がられても仕方ないと思っていたがレイルは特に嫌がりもせず受け入れているようで、ボタンを外しても下履きを下ろしても文句を言わずされるがままになっている。

 太陽の光の下で見るその水色にも見える真っ白な身体が眩しいほどで、カジュリエスはぎゅうと抱きしめ口づけを深くした。歯列をなぞり、舌を舐め取る。口蓋が弱いレイルはここを舐めるとすぐに口をだらしなく開いて、喘ぎだすのを知っている。
 案の定、レイルは密やかに息を詰めながらも喘ぎだす。

 口を通じて「んあ、んん、」と響いてくるレイルの声が心地よい。もっともっとと舐めながら、左手でレイルの右の乳首をかすめたら一際大きな声をあげてレイルは口を外してしまう。


「だめだ」
「ん、だって、カジュ……っ」


 顎を掴んで再び口を塞ぐ。だって、と言いながらも素直に口を開いて差し込まれる舌を受け入れる所がレイルらしくてかわいい。カジュリエスは口蓋を舐めながら更に手を動かした。
 付き合い始めた頃から、なぜ雄でもあり種族として卵生の自分たちについているのかわからない、このレイルの乳首をいじるのが楽しくて仕方がない。身体の色は変わったのに乳首の色はあまり変わらないのだな、と思いながら指で押さえて撫で擦る。


「ん、んん、や……カジュ、おれ、あ……」


 何度口を外されても塞ぎ、口蓋を舐めながら乳首の側面を、突起の先をこねるようにくすぐり続ける。乳首に刺激を加えるたびにレイルが喘いで口を開くから、その度カジュリエスは更に口蓋を舐める。


「あ、ああ、ん、や、……っカジュ、リ……エスん、ん、はなし、んんっ」


 カジュリエス自身意地悪したいわけじゃないのに、気持ちよくてどうにかなりそう、と言う態度を見せるレイルをもっともっと見ていたくて、どうしてもレイルを離してあげることができない。嬌声があまりに耳に心地よく、カジュリエスは加減も忘れてレイルの口蓋を、それから乳首を弄り続けた。

 もうだめ、やだ、もう、本当に、カジュリエス、お願い。そう、レイルが言っても離せないほどカジュリエスは夢中になっていて。
 気がつけばレイルは、涙を流しながら木の幹にしがみつくようにして膝を震わせていた。


「……っと、悪い、さすがにやりすぎた」


 レイルの身体を抱きしめていた腕をそのままにレイルの前を覗き込む。

「ああ、ほんと、悪い」そう耳元で呟く振動ですら、レイルは快感として受け取ってしまうようで、んんっと小さく声をあげる。カジュリエスはその様子に気を良くしながら乳首を弄っていた手を離して、レイルの陰茎にその手を這わせた。あまり焦らすことはせずにそっと触る。


「んんんっ、カジュ、も、もう、ほんっとおれむりだから……も……や……」
「……ん、大丈夫だから、一回出しとけ」
「だ、だいじょぶじゃ、ないっ……ださない……ぃ……!」


 ゆっくりと濡れに濡れたレイルの陰茎を触っていると、涙でぐちゃぐちゃの顔に肩越しに睨まれた。
 目の前の髪の色も、羽の色も、肌の色さえ昨日までのレイルと違っているのに、その表情はやっぱりカジュリエスの見知ったレイルでカジュリエスは密かに安堵する。
 この腕の中にいるのは、俺の、俺だけの、かわいいレイルだ。


「なんで……? ここで出すのが嫌か……?」


 誰も居ないとは言え外だしな、とカジュリエスは思ったが。


「ちがっ……ちがくて……も、手、はなして、後ろ……カジュ、入れて……っ」
「は? ……いや……」


 無理だろ、まだ、十分に解してもいない、なんなら今日は素股でもさせてもらうかと思っていたカジュリエスだったが。


「お、れの、身体っ……! どこがかわったか……しりたかった、んだろ……前じゃなくて後ろ……さわって……」


 その言葉に導かれるように、レイルの陰茎を触っていた手を、身体を抱きしめていた手を離し、突き出された尻を見た。少しだけその尻の間を指で辿る。


「レイル……?」
「んんんんっ……そこっ……!」


 つぷり、と指先だけを少し沈めた。やはり濡れているように思う。だが、なぜ。更に指を進め、やはり濡れていると思う。押すとレイルが気持ちの良い声を上げる場所を内側から指で探る。「んあっ」と声があがる。更に奥を辿るように刺激しながらゆっくり出し入れを繰り返す。


「レイル……、ここ、濡れているが……お前、何か入れたか……?」


 この島についてすぐに準備をしたのだろうか。とも思ったが、果たしてそんな時間も余裕もあったようには思えない。出し入れを繰り返すたびにそこはぐちゃりと音がする程に潤み、レイルは小さな背中の羽を無意識のようにはためかせる。そうして、カジュリエスの目を見ながら言う。


「ん……っカジュ、……おまえ、わかんねえの……っそこ……濡れてる理由……んんっ……」
「……ああ、わからない……」


 レイルが微笑む。涙で濡れた顔で。快楽で眉根を寄せ、それでも微笑みながら言う。


「龍に変異して……変わったところを、……おまえが探すんじゃなかったのかよ……?」
「え、これ、……身体が、龍になったから……?」
「だろ……? だから、はやく、カジュ……おまえを、……」


 いれて。
 の、言葉を最後まで聞きながらもカジュリエスは、自身の前たてをあけて陰茎を出しレイルの後孔へとその先端をあてがう。
 ありえないだろ、こんなこと。そんな風に身体が変わることって本当にあるのかよ、言いたいことは山程あるのに、カジュリエスはうまいこと言葉が出せない。


「悪い、痛かったら……」


 謝罪の言葉もそこそこに、先端を沈めた。


「んーーーーーーっ……あ、っああ……」


 レイルの耳に心地いい声を聞きながら先端を沈め、一度ゆっくりと抜き、抜けきるぎりぎりでまた入れる。本当に、濡れている事を実感して、カジュリエスは益々熱くなる。どうして自分がこんなに興奮しているのかわからないが、わからないまま再び先端をレイルの中へと潜り込ませる。
 ぱつぱつに伸びた後孔のふちをゆるりと撫で、漏れ出た体液に濡れているのを指で感じながら、入れながらここを撫でるられることがレイルは好きだったなと思う。


「……全部、……一気に入れても、平気か……?」
「ん、ん、いい、いいけど、いいけど、イッちゃうかも、おれもう、……っもた、ない……!」


 良いと言われた言葉を聞き、レイルの腰を押さえてカジュリエスは一気に奥まで貫いた。下生えがレイルの尻に当たる。入った、と思った瞬間、レイルが一際高い声をあげてカジュリエスの陰茎をぎゅうぎゅうとしめつけてきた。


「い、や、んんんんんっ……! ああ、ああああ、そ、こ、……っ……んんんっ!」


 レイルの腰が動く。小刻みに早く、カジュリエスの陰茎をぎゅうぎゅう締め付けながら動く。前に手を回してレイルの陰茎を扱こうと思ったが、その激しい濡れ具合から、レイルが出してしまったことを知る。だがカジュリエスは気にせず触ることにした。


「ちょ、カジュ、まって、まって……っいまいった、おれ、いま、イッたからっ!!! ほんとうにっ……イッたから……や、やめ……」


 少しだけ逃げ腰になったレイルの腰を、腹の方から片手で引き寄せもう片方の手で陰茎の先端を撫でるように触る。そうして、自身は腰を進める。ゆっくりと、入り口付近から、中の凝ったところをこするように、そして一番奥へと。何度もその動きを繰り返す。


「カジュ、……っんんん、きけって……! きい、って……! おれ、イッた……! イッたから、さわらない、さわら、ないでっ……や、やだ、や、ほんと、……かじゅ、かじゅ、こわい、おれ……それいじょうっ……され、たら……っ!」
「……ん……? それいじょう……? されたら、……っどうなる、っレイル……!」


 カジュリエスは腰を止めない。止めずに、奥をつきながら、レイルの陰茎の先端を撫で続ける。自分でも意地悪だな、と自覚はしているが止められないのだから仕方がない。


「わ、っかんな、わかんないっ……! でも、ああああ、あああ、だめ、だめなんか……やめ、ほんと……それいじょ、う、さきっぽやめて……さきっぽそれいじょう、いじらないで、かじゅ、かじゅ、っ……! やめて……!」
「どうなる? レイル、やめないよ、……見せて、俺に」
「な、なんで、いじわるいじわる……かじゅ、いじっわる…っ、あ、あああああ、なんかなんか……や、こわい、こわいよ、かじゅ、でちゃう、なんかでそう、……おれ……なんかっ」
「ん、出していいよ、出してみて」


 先端を弄り、撫でて、擦る。後孔への刺激もやめない。木の幹にすがりついているレイルの手は真っ白になるほどに力が入り、膝はきっとカジュリエスが支えていなかったらそのままへにゃりとへたれるだろう。
 出してみて、なんて。我ながらあまりにいやらしい。


「え、……ほんと、ほんとに、なんか……でちゃうけど!!! ……でちゃうけど、っ……いいの、も、もう、がまんむり……っ」
「いいよ、出して、レイル」
「んっ……も、ほんと、あ、あ、ああ、ああ、……でる……なんかく、る……こわいっ……かじゅ、でるうぅっ!」


 レイルは、水みたいな液体をその陰茎の先端から放出した。身体全体を震わせながら、あああと大きな声をあげながら。
 その放出でレイルの身体に力が入ったのか、更にぎゅうと陰茎を引き絞られるようでカジュリエスも、ぐ、と奥歯をかみながらも結局放出してしまった。

 肩で息をしながらも、レイルの身体を抱きしめる。レイルはまだ震えて、ちいさく、ああ、ああ、と声を出している。だいぶ余韻に引きずられているようだ。

 あまりレイルの身体に負担を強いることはしたくなく、カジュリエスはゆっくりと後孔から自身の陰茎を引き抜いた。抜けきる直前、レイルの喉の奥が、んんっと鳴る。

 羽と羽の間の辺りを撫でる。レイルが落ち着くように、ゆったりと。

 しばらくそうしていたら、ようやく落ち着いたのかレイルがこちらに目をやって照れたようににらみながらも「カジュリエス、やりすぎだろ」と、文句を言ってきた。






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