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26話 自己嫌悪
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「やばい……緊張してきた」
俺は今瑠魅の家の前まで来ている。
亮には野暮用があると言って別れた。だが、別れ際に亮が一緒に行きたいと言ってきた時には流石にビビった。
今度飯を奢るからと何とか説得できたが、強情なヤツだったら危険だったぜ。
「これも全部瑠魅のためなんだ」
俺は罪悪感を拭うように呟く。
俺は少し間無言で瑠魅の家の前に突っ立っていた。
どんな風に話せば良いかもわからないし、どんな表情すれば良いのかもわからない。
電話では感じなかった不安や恐怖、緊張がどっと押し寄せてきた。
俺は恐る恐るインターホンを押す。
「………誰、ですか?」
「っ………」
瑠魅の声を聞いて鳥肌が立った。瑠魅の声を聞いた俺は、自分の情けなさを痛感した。俺と電話してる時にどれだけ無理をして明るく振舞っていたのかが分かったんだ。
それほどまでに瑠魅の電話の声と今の声は違っていた。違いすぎている。
俺に心配を掛けないようにと瑠魅なりの配慮だったんだ。それなのに、俺は無神経にも瑠魅はもう大丈夫だと思ってしまっていた……。
瑠魅がこれ以上苦しまないように……辛い思いをしないように……守ってあげないと。
現場に居た俺にしか出来ない役目なんだ。瑠魅をこれ以上傷付けないためにも、寄り添ってあげないと。
「……俺だよ。蓮翔だ」
「えっ!?ちょ、ちょっとだけ待っててもらえる?」
「うん」
俺は胸が苦しくなった。俺だと知った瞬間にテンションが上がった。それも変な上がり方だ。無理してるのがインターホン越しにも伝わってくる。
きっと単純に驚いたと言うのもあるかもしれないが、やはり声色が全く違うから俺の前では明るく振舞おうって言う意思を感じた。
瑠魅にばかり気を遣わせてしまう自分自身が嫌になる。瑠魅に無理はして欲しくない。出来るだけ楽にいて欲しい。
俺は瑠魅の家の前でそんなマイナスな思考をずっと繰り返していた。
自分でも分かってる。こんな事考えたって意味ない。早くこんな思考を捨てるべきだと。
でも、瑠魅のあの声を聞いたら、自分の愚かさとか不甲斐なさとか無力さとか……色んなモンを感じちまう。
俺の思考がマイナスになる中、それをぶち破るようにドアが開いた。
「待たせてごめんね?上がって」
「瑠魅………」
当分食事を取っていないのか、それとも精神的なものなのかは分からないけど、だいぶ窶れるていた。
姫乃に教わったであろうメイクで、隠してはいるが、目元のクマはそれでも目立っていた。
そんな姿を見た俺は、何も言うことが出来なかった。何か言葉を掛けようとしても出てこない。
もどかしくて仕方がない。
「どうしたの?大丈夫?」
ずっと黙ったままの俺に心配そうにそう声を掛けてくる。
大丈夫、だと?大丈夫なわけないだろ?瑠魅がこんなにも苦しんでるのに、俺は何も出来なかった。
「………大丈夫だよ」
「そう?」
俺が全力を尽くして出せた言葉はそんな素っ気ない言葉だけだった。
俺は俯いたまま瑠魅の横を通りドアをくぐる。
「っ………」
電気を付けないでカーテンを閉めっぱなしにしてるせいで家の中は真っ暗だ。
本当に何もしていなかったというのが一瞬で分かるほど何も散らかっていなかった。
「ありがと、蓮翔。ワガママ聞いてくれて」
リビングに向かう途中で後ろからそう瑠魅が言った。
自分でも分かるほど心が荒んでいく。気をしっかりしないと声を荒げてしまいそうなほどに、俺は自分に……瑠魅に怒りを感じていた。
瑠魅はもっと自分を大切にするべきなのに……なんでいつもいつも他人を気遣うんだ。
そんなことを考えてるうちにリビングに着いた。リビングに着いた俺は初めて瑠魅の家に来た時と同じ場所に座る。そして瑠魅は俺の正面に座った。
「私……頑張るよ。明日から学校、行くからね」
明らかに無理をしている。瑠魅は俺が見ている間ずっと笑みを絶やしていない。
俺にどれだけ弱みを見せたくないのか、充分に伝わってきた。
でも、俺は瑠魅に寄り添える言葉なんて持っていなかった。
電話ならあんなに色んなことを話せたのに、本人を……こんな状態の瑠魅を見て俺は何も言葉に出来なかった。
掛けてあげたい言葉は沢山あるのに、どれも言葉として出ては来ない。
「嬉しかったんだ。蓮翔が来てくれるって言ったからさ。元気出たよ」
嘘だ。そんなの嘘だ。瑠魅は今も無理矢理笑みを浮かべてるだけだ。
「私ね。最近メイクを頑張っててさ。今日もね、ほら見て───」
「もう、いいよ。無理しないで。見てるこっちが辛いよ」
俺は瑠魅の言葉を遮るように、やっとの事で言葉を発する。
瑠魅は少し驚いたような顔をしている。そんな顔、俺の方がしたい。いつもはあまり話さないで俺の話を黙って聞いてるだけなのに……。
この空気のせいで……気まずい雰囲気のせいで瑠魅は無理して話している。普段あまり喋らない瑠魅が無理してるんだ。
「ごめん、瑠魅。気付いてあげれなくて」
今まで見ぬふりをしていた自分が本当に、本当に嫌になる。
俺は今瑠魅の家の前まで来ている。
亮には野暮用があると言って別れた。だが、別れ際に亮が一緒に行きたいと言ってきた時には流石にビビった。
今度飯を奢るからと何とか説得できたが、強情なヤツだったら危険だったぜ。
「これも全部瑠魅のためなんだ」
俺は罪悪感を拭うように呟く。
俺は少し間無言で瑠魅の家の前に突っ立っていた。
どんな風に話せば良いかもわからないし、どんな表情すれば良いのかもわからない。
電話では感じなかった不安や恐怖、緊張がどっと押し寄せてきた。
俺は恐る恐るインターホンを押す。
「………誰、ですか?」
「っ………」
瑠魅の声を聞いて鳥肌が立った。瑠魅の声を聞いた俺は、自分の情けなさを痛感した。俺と電話してる時にどれだけ無理をして明るく振舞っていたのかが分かったんだ。
それほどまでに瑠魅の電話の声と今の声は違っていた。違いすぎている。
俺に心配を掛けないようにと瑠魅なりの配慮だったんだ。それなのに、俺は無神経にも瑠魅はもう大丈夫だと思ってしまっていた……。
瑠魅がこれ以上苦しまないように……辛い思いをしないように……守ってあげないと。
現場に居た俺にしか出来ない役目なんだ。瑠魅をこれ以上傷付けないためにも、寄り添ってあげないと。
「……俺だよ。蓮翔だ」
「えっ!?ちょ、ちょっとだけ待っててもらえる?」
「うん」
俺は胸が苦しくなった。俺だと知った瞬間にテンションが上がった。それも変な上がり方だ。無理してるのがインターホン越しにも伝わってくる。
きっと単純に驚いたと言うのもあるかもしれないが、やはり声色が全く違うから俺の前では明るく振舞おうって言う意思を感じた。
瑠魅にばかり気を遣わせてしまう自分自身が嫌になる。瑠魅に無理はして欲しくない。出来るだけ楽にいて欲しい。
俺は瑠魅の家の前でそんなマイナスな思考をずっと繰り返していた。
自分でも分かってる。こんな事考えたって意味ない。早くこんな思考を捨てるべきだと。
でも、瑠魅のあの声を聞いたら、自分の愚かさとか不甲斐なさとか無力さとか……色んなモンを感じちまう。
俺の思考がマイナスになる中、それをぶち破るようにドアが開いた。
「待たせてごめんね?上がって」
「瑠魅………」
当分食事を取っていないのか、それとも精神的なものなのかは分からないけど、だいぶ窶れるていた。
姫乃に教わったであろうメイクで、隠してはいるが、目元のクマはそれでも目立っていた。
そんな姿を見た俺は、何も言うことが出来なかった。何か言葉を掛けようとしても出てこない。
もどかしくて仕方がない。
「どうしたの?大丈夫?」
ずっと黙ったままの俺に心配そうにそう声を掛けてくる。
大丈夫、だと?大丈夫なわけないだろ?瑠魅がこんなにも苦しんでるのに、俺は何も出来なかった。
「………大丈夫だよ」
「そう?」
俺が全力を尽くして出せた言葉はそんな素っ気ない言葉だけだった。
俺は俯いたまま瑠魅の横を通りドアをくぐる。
「っ………」
電気を付けないでカーテンを閉めっぱなしにしてるせいで家の中は真っ暗だ。
本当に何もしていなかったというのが一瞬で分かるほど何も散らかっていなかった。
「ありがと、蓮翔。ワガママ聞いてくれて」
リビングに向かう途中で後ろからそう瑠魅が言った。
自分でも分かるほど心が荒んでいく。気をしっかりしないと声を荒げてしまいそうなほどに、俺は自分に……瑠魅に怒りを感じていた。
瑠魅はもっと自分を大切にするべきなのに……なんでいつもいつも他人を気遣うんだ。
そんなことを考えてるうちにリビングに着いた。リビングに着いた俺は初めて瑠魅の家に来た時と同じ場所に座る。そして瑠魅は俺の正面に座った。
「私……頑張るよ。明日から学校、行くからね」
明らかに無理をしている。瑠魅は俺が見ている間ずっと笑みを絶やしていない。
俺にどれだけ弱みを見せたくないのか、充分に伝わってきた。
でも、俺は瑠魅に寄り添える言葉なんて持っていなかった。
電話ならあんなに色んなことを話せたのに、本人を……こんな状態の瑠魅を見て俺は何も言葉に出来なかった。
掛けてあげたい言葉は沢山あるのに、どれも言葉として出ては来ない。
「嬉しかったんだ。蓮翔が来てくれるって言ったからさ。元気出たよ」
嘘だ。そんなの嘘だ。瑠魅は今も無理矢理笑みを浮かべてるだけだ。
「私ね。最近メイクを頑張っててさ。今日もね、ほら見て───」
「もう、いいよ。無理しないで。見てるこっちが辛いよ」
俺は瑠魅の言葉を遮るように、やっとの事で言葉を発する。
瑠魅は少し驚いたような顔をしている。そんな顔、俺の方がしたい。いつもはあまり話さないで俺の話を黙って聞いてるだけなのに……。
この空気のせいで……気まずい雰囲気のせいで瑠魅は無理して話している。普段あまり喋らない瑠魅が無理してるんだ。
「ごめん、瑠魅。気付いてあげれなくて」
今まで見ぬふりをしていた自分が本当に、本当に嫌になる。
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