異世界英雄の学園生活~英雄に休息なんてありません~

パチ朗斗

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5章 最終局面

6話 前哨戦 1

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京雅きょうがっち、今ちょっといいかな?」

  作戦会議の翌日。二時間目の休み時間に自販機に来ていた京雅の背後に現れたのは みっちゃんだった。

  あの遊園地以来時々絡んで来ていた。だが、今日のみっちゃんの雰囲気は普段よりもどこか昂っていた。

  京雅は不思議そうな顔をしながらお茶のペットボトルの蓋を開けた。

「どうした?一応言うが、今は金がないぞ」

「ふふっ、わざわざ京雅っちを追ってまで集んないっつの。この後少し時間ある?」

「せいぜい二分ぐらいならな」

「えぇ……あと五分も休み時間あるのに?」

  そう言って みっちゃんは京雅の背後に回る。両手を後ろで組みながら。

「それで、要件は?」

  京雅が振り向こうとした瞬間、みっちゃんの片腕が京雅の胸元に伸びた。その腕にはピンク色のモヤが掛かる。魅了系の魔法だ。

「ッ………」

  咄嗟に反撃をしようとしたが、案の定、京雅は身を引いてその腕をスレスレで避ける。無表情のままではあるがその瞳には僅かに怒りや当惑があった。

  攻撃を避けた京雅はすぐさま後ろに退いて体勢を整える。

「さすが京雅っち。今のを避けられるとはねぇ……でも、安心して、わたしが絶対に助けてあげるから」

「…………」

  みっちゃんは京雅が何者かによって洗脳されている、そう思い込ませてあるのだ。虚ろになった瞳だが、ただ一つ、京雅のみがその瞳には映っている。京雅は周囲に人の気配がないのを確認し戦闘態勢をとる。

「出来ればここいらでやめて欲しいな。お前を傷つけたくは無い」

「やっぱり京雅っちは優しいね。すぐに助けるから」

  その言葉でみっちゃんは『縮地』を発動。一瞬にして京雅との距離を詰める。そして掌にはピンクのモヤ。しかし、あと僅かのところで京雅の手が正確にみっちゃんの手首を外に弾いてその攻撃を去なす。

「手首、大丈夫か?」

  京雅は余裕を見せるように気遣う。みっちゃんは情けなくも戦闘中にも関わらず頬を僅かに紅く染めた。

「うん。でも、次は手加減しないよ?」

  再び京雅の目の前からみっちゃんが消える。縮地を発動させたのだ。そして、次にみっちゃんが現れたのは京雅の背後。今度は腕全体にピンクのモヤを纏って京雅に触れようと手を伸ばす。

  京雅は横に飛んで回避を試みる。だが、みっちゃんは掌が京雅に触れる前に再び縮地を使っていた。

  出現先は京雅の回避先。ついに追い詰められた京雅。

「……『瞬間移動メタ』」

  寸でのところで京雅に回避をされた。移動先はみっちゃんの背後。

  京雅の姿が現れたのを確認したみっちゃんは後ろに振り向き京雅に笑みを見せた。両手は再び後ろで組まれている。

「もぉ、京雅っち強すぎない?わたしじゃ相手にならないじゃん」

「…………」

  警戒を解くことなくみっちゃんを睨みつける。その膠着状態のなか、みっちゃんは三つ目の能力を発動させる。

「じゃあ、次はこれ」

  そして再び京雅の前から姿を消す。だがそれは縮地ではない。

  京雅は突如地面を思い切り蹴って宙で1回転してながら後方に飛んだ。京雅が地面に着くと同時に京雅が先程まで居た場所が歪む。

  その歪み越しにみっちゃんが姿を現した。

「これも避けちゃう?まさかこれも効かないなんて」

  みっちゃんが繰り出したのは『幻香』。特殊な香りを嗅いだ相手に僅かな時間だけ幻覚を見せるもの。京雅の回りを縮地で移動していた時に発動させていたのだ。

  幻香により姿を消したように見せ、そのまま魅了系魔法、『魅惑の手腕アディクト』で依存状態にしようとしていたのだ。

  防戦一方では埒が明かないと悟った京雅は再び戦闘態勢に入った。

「………少し怖がらせるが許してくれ」

  その一言で京雅の纏う雰囲気がガラリと変わった。その鋭い空気にみっちゃんは怖気付いた。

  その一瞬の隙をついて京雅は一瞬でみっちゃんとの間合いを詰めた。

  みっちゃんが次に京雅を認識したのは既に目の前に拳が出された時だった。

  その拳を前にみっちゃんは恐怖した。その心に出来た穴を敏感に感じ取った京雅はすぐさま拳を止めてその代わりに口を動かす。

「………『眠れ』」

  恐怖によって加護の弱くなったみっちゃんは不完全な京雅の『コトダマ』によって一瞬にして眠りについた。

  京雅は眠ったのを確認するとソレを抱えて迷わずに保健室へと向かって走って行った。

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