クズ勇者が伝説の英雄になるまで

パチ朗斗

文字の大きさ
7 / 66
1章 クズ勇者の目標!?

クズ勇者、事情を知る

しおりを挟む
「そ、それは本当なんですか!?」

  リョーマが帰ってくる数分前。その魔物の存在がギルドに伝わった。

  場の雰囲気は暗くなる。Sランクの魔物は一匹でも街の一つや二つ壊滅させる力がある、言わば生ける災害なのだ。

「僕に、任せてください」

  重い空気を破るように、一人の男が声を上げた。

「か、カインさん!?」

「カイン?」

  ギルド職員、シル、他の冒険者がカインに驚きの声を上げた。

「僕は……守りたいんです。こんな僕を受け入れてくれたここの人を……シルを!」

「カイン……」

「だから、僕に任せてください!」

  勇者パーティーを抜けたカインは弓使いから剣士になった。そして、カインの冒険者としての才能が開化したのだ。

  カインの目には強い意志が宿っていた。

「はっ。お前だけには任せられねぇよ」

「ガントさん……」

  先輩冒険者ガント。カインに剣士を勧めた人だ。

「なぁ、お前ら!期待のルーキーだけに任せるのか!」

  ガントの一声で冒険者たちのやる気が一気に上昇した。

「ビビり逃げんなら今のうちだぜぇ!ただ、もう冒険者やるなよな!」

「そんな言葉聞いてビビり逃げる奴なんてここには居ねぇぞ!」

「皆さん……」

 あぁ……なんて優しい人たちなんだろうか。僕は恵まれてる。こんな人たちと出会えるなんて。

「カイン」

「シル?」

「もう、一人じゃないんだよ」

「!!!」

 そうだ。昔とは違う。弱い僕じゃない!

「皆さん、よろしくお願いします!」

「ふっ。さっさと終わらせるぞ!今日は期待のルーキーカインが奢るってよ!」

「え、えぇえ!!」

  こんな状況でさえ、冒険者ギルドは騒がしく、だが優しい空間だった。

「もしものことがあるかもしれねぇから、ランクの低い奴らは街に残れ」

「で、でも!」
「そうですよ!俺にも!」

「この街を守れって言ってんだよ。はっきり言って俺らで食い止められる可能性は低い」

  ガントらしからぬ言動に周囲は静かになっていった。

「そんときに、お前らが街の人を避難させろ。ま、心配は要らねぇよ!行くぞ、お前ら!」

  そして、討伐隊が出て行って少し経った後、リョーマが街に着き、事情を知ることになった。

「いい感じの魔物ゴミが出てきたじゃねぇか」

~~~~

「この森にSランクがホントに出たんだろうな?」

 「ほ、ホントだぞ!」

 ガントさん、少しピリピリしてるな。

「………お前ら、構えろ」

「え?なんでですか?」

「あの女が見えるか?」

「わぁ……」

 立ち姿を見ただけでも分かる。かなりの美女だ。でも、こんな夜中に森に?

 森に入ってそこまで奥には来ていない。でも、おかしい。

「ガントさん、まさか?」

「あぁ……最悪だ。なんで言わなかったんだ、亜魔人だってよ」

  亜魔人とは、神や天使、獣人族などの亜人とは異なり、霊などが人間のような姿をしていることを指す。

  そして、亜魔人のほとんどは魔物と同じく人間を敵対視している。

「これは……Sランクの名が聞いて呆れるぜ。亜魔人は最低でもSランク冒険者が十人。それでも勝てるか分からないような奴だぞ」

 亜魔人だなんて……。もう、おしまいだ。

「………!!悪運がひでぇな。あいつ、気付きやがったぜ」

 手が震える。ただ見られてるだけなのに、なんという圧力だ。

「お前らは逃げろ」

「ガントさん、何を言ってるんですか?」

「そ、そうだ。俺が悪いのに、俺がお前らを巻き込んじまった……俺がやる」

 みんな、怖くないのか?あんな奴を前にしてもなのか?

 ………僕も冒険者だろ!命を掛けられないような腑抜けが冒険者なんて言えない!

「ガントさん。僕も残ります」

「……カインとシルは希望だ。俺らはいくらでもお前らの糧になる。だから、お前らは俺らの敵討ちしてくれや」

「で、でも!」

「カイン」

「シル?」

「今の私たちじゃ勝てない……」

 シルの悔しそうな顔が僕に伝えてきた。

 誰だって本望じゃない。僕だってそうだ。でも、僕が出るのはここじゃない。

「すみません。ガントさ……」

「ガハッ!!!」

「!!!!ガントさん!」

「ガント!」

  Bランク冒険者、ガント。この街で一番強い冒険者。その肩書きがあるのにも関わらず、自分に傲ることなく街の人たちのための行動を優先してきた。

  この街でガントを目の敵にする人間などは一人もいなかった。

  井の中の蛙。この街の最強は亜魔人には勝てなかったのだ。

  亜魔人から繰り出された拳はガントの骨を折るには充分だった。

「そ、そんな……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

金髪女騎士の♥♥♥な舞台裏

AIに♥♥♥な質問
ファンタジー
高貴な金髪女騎士、身体強化魔法、ふたなり化。何も起きないはずがなく…。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...