上 下
17 / 66
1章 クズ勇者の目標!?

クズ勇者、驚く

しおりを挟む
 妙に頭の下が柔らかいな。枕とかは持ってきてないはずだが……。

「あ、起きた?」

「最悪の目覚めだな…………テメェ、ぶちのめすぞ?」

「えぇ?私の太ももで気持ちよく寝てたのは誰ですかねぇ?」

「誰のおかげで生きられてると思ってんだ?死にてぇなら言えよ。死の救済ならいつでも下してやる」

  それだけを言ってリョーマは不機嫌そうにしながら起き上がった。

「ねぇ」

「あ”ぁ?」

「名前、教えてよ」

「生憎と、道中に落ちてるゴミに教える名前は持ち合わせてないんでね」

「いいじゃんいいじゃん。教えてよ?」

 うぜぇな。どうにかして黙らせられねぇか?

 クソがっ。かったるいったらありゃしねぇな。

「………リョーマだ」

  そう呟くとリョーマは歩き始めた。

「え?」

「……テメェの耳は飾りかよ!」

「ごめんってば、

「………ここまで俺をコケにしたのテメェが初めてだよ」

 額に血管を浮かべ、顔には笑みを浮かべたリョーマは正しく、鬼のようだった。

『起きたんですか!』

「ぐへっ!?」

  フィールに一発入れようと距離を詰めようとした時、何かが横からリョーマに体当たり……抱きしめたのだった。

「テメェ!ドラゴンごときが俺に触れんじゃねぇぞ!殺すぞ!」

『本当に……本当にありがとうございます』

「……………」

  真っ向からお礼を言われてしまうと、天下のリョーマも言葉に詰まる。

「ファニちゃん。良かったね」

『はい!』

「ファニ?こいつの名前か?」

「そうだよ?私のイカしてるネーミングセンスに更に磨きが掛かってる名前だと思わない?」

「離れろ。髪の毛を一本一本、見せしめに抜いていってやろうか?」

『どれだけお礼を言っても言いきれません』

「テメェは……話を聞けぇ!」

  ファブニ改めてファニの頭に拳が振り下ろされ、案の定、たんこぶが出来た。

『痛いですよォ』

「テメェは俺の言うことを聞け!俺に歯向かうんじゃねぇぞ、わかったか」

『わっかりました!』

  ファニは黒竜とは思えぬほどの元気な人間となっていた。

「ねぇ、ファニちゃん。今更だけど、女の子で良いんだよね?」

『………なんとも言えませんね』

「んな事はどーでも良いんだよ。気が済むまで殴らせろ」

「まぁ、まぁ……ファニちゃんが女の子なら、正しく両手に花だよ?」

「花?両手に生ゴミの間違いだろ」

 ムカつく……ムカつくし腹ただしいが……今まで感じていたほどでは無い。

  リョーマを自分の心境の変化に戸惑っていた。自分になにが起きているか理解出来ていなかったのだ。

『えぇとですね。自分たち竜は、二匹の竜が愛し合って初めて性別がハッキリとします』

「はっ!つまらねぇ種族なこったな」

「愛し合うって……!ロマンチックなんだね」

『それで、強い方がメス。弱い方がオスになります』

「へぇ。で、テメェはどっちなんだ?」

『………ないですよ、そんなもん』

「「……………」」

  天下のリョーマですら憐れむほどのものだった。

『そんな可哀想なものを見る目、止めてもらって良いですかね!』

「弱すぎて、誰もお前なんか眼中にないってことか」

『そういう事じゃないですよ!逆の方が可能性ありますよ!』

「笑わせるな!テメェごときが強いわけねぇだろ!鏡みたことあるか?」

『あなたがおかしいんです!自分は普通に強いですからね!あと、鏡の意味がわかりませんから!』

  お互いが相手をいがみ合って、まるで子供の喧嘩のようだった。

「ふふっ。あはははは」

「んだテメェ!お前も締められてぇのか!」

  リョーマはファニの頭を鷲掴みしにし、揺らしながら後ろで笑うフィールを睨みつけた。

「じゃあさじゃあさ。私と愛し合ったら、どっちになるの?」

『さぁ?人間は性別が決まってるから……』

「俺を無視すんじゃねぇぞ、テメェら!絶対に逃げんじゃねぇぞ。絶対、地面に埋めてやる!」

 俺は……俺はどうなっちまったんだよ。

 こいつらのことがムカつく。腹ただしいはずなんだ。

 でも、いつもほどじゃない。

 俺はどうしちまったんだ……。こんな低脳で下等なゴミクズ共と居て………楽しいと感じるなんて。

しおりを挟む

処理中です...