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エセルの物語 Ⅴ
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ある日、エセルは友人たちとのティータイムを楽しんでいた。
華やかなティールームには仲の良い高位貴族の令嬢たちが集まり、様々な話題が飛び交っていた。
「聞いたわよ、エセル。貴女の婚約者のアイヴァン様、最近訓練をサボってるんですって?」
「え?」
寝耳に水の話にエセルは驚き、思わず紅茶を零しそうになった。
「私も聞きましたよ。これまでは勤勉だったと言うのに、最近は全く顔を出さないとか……」
別の令嬢がそう言い添えた。アイヴァンが訓練をサボるなど、彼の誠実な性格を知る彼女には信じがたい話だった。
茶会を終え、エセルは家に帰る馬車の中で、ずっとアイヴァンのことを考えていた。
真面目で実直なアイヴァンが理由も無く仕事を放棄するなど考えられない。ましてや父親であり、現王国騎士団のギルバート・ソーンヒル伯爵は厳しい人で、怠けることなど許すとは思えなかった。
「辞めたいのかしら……?」
最後に会った時、彼は疲れ切った表情をしていた上に、自分との約束も何度も反故にしていた。
もしかしたらアイヴァンは近衛騎士の仕事に疲れてしまったのではないだろうか。主であるサディアス王子の評判は良いけれど、あのアイヴァンをあれほど疲れさせるなんて、何かしら問題があるのではないだろうか。
彼がそんな風に思っているのだとしたら、仕事を放棄するのも理解できた。
「そうよ、アイヴァンも本当は辞めたいのね」
エセルは自分の考えに納得し始めた。そして彼の悪評が広まれば、専属近衛騎士から解任されるかもしれない。そうなれば彼は自由になり、自分の下に戻って来るだろうと。
「彼が自由になれば、私ともっと一緒に過ごせるようになるわ」
エセルは恍惚とした表情で、そう呟いた。
そして彼女は彼のために、自分のために、動き始めることを決意したのだった。
それからというもの、エセルは精力的にアイヴァンの悪評を広め始めた。婚約者であるエセルの話となれば信憑性は増し、社交界ではアイヴァンの無責任さや怠慢さが話題の中心となっていた。
夜会やお茶会の席で、エセルはさりげなくアイヴァンの欠点を語り、周囲の反応を見て、内心でほくそえんでいた。
「彼のいい加減さには私も困っておりますの。約束を反故にするのはもちろん、贈り物もまともなものを選べないし。最近では、私に対する態度も冷たくなってきて……」
嘘は言っていない。約束は反故にされている上に、連絡もつかない。贈り物はエセルの好みではない。
デビュタントの夜、二人が共に踊る姿を目撃していた人々は、『あれほど婚約者を大切にしていたと言うのに……』と、変わり果てた彼の態度に驚きを隠せなかった。
エセルの計画は順調に進み、アイヴァンの名声は次第に傷つけられていった。
近衛騎士団の中でも疑念が抱かれるようになり、アイヴァンが訓練や任務に参加しない理由を問い質す声が聞こえ始め、彼の立場はますます危うくなってきている。
エセルの冷酷な計略は、徐々に周囲の人々を巻き込み、アイヴァンの評価を低下させていった。
「……誰にも渡さない。アイヴァンは私だけのものよ」
彼女の瞳には冷たい光が宿り、その微笑みには狂気が滲んでいた。
華やかなティールームには仲の良い高位貴族の令嬢たちが集まり、様々な話題が飛び交っていた。
「聞いたわよ、エセル。貴女の婚約者のアイヴァン様、最近訓練をサボってるんですって?」
「え?」
寝耳に水の話にエセルは驚き、思わず紅茶を零しそうになった。
「私も聞きましたよ。これまでは勤勉だったと言うのに、最近は全く顔を出さないとか……」
別の令嬢がそう言い添えた。アイヴァンが訓練をサボるなど、彼の誠実な性格を知る彼女には信じがたい話だった。
茶会を終え、エセルは家に帰る馬車の中で、ずっとアイヴァンのことを考えていた。
真面目で実直なアイヴァンが理由も無く仕事を放棄するなど考えられない。ましてや父親であり、現王国騎士団のギルバート・ソーンヒル伯爵は厳しい人で、怠けることなど許すとは思えなかった。
「辞めたいのかしら……?」
最後に会った時、彼は疲れ切った表情をしていた上に、自分との約束も何度も反故にしていた。
もしかしたらアイヴァンは近衛騎士の仕事に疲れてしまったのではないだろうか。主であるサディアス王子の評判は良いけれど、あのアイヴァンをあれほど疲れさせるなんて、何かしら問題があるのではないだろうか。
彼がそんな風に思っているのだとしたら、仕事を放棄するのも理解できた。
「そうよ、アイヴァンも本当は辞めたいのね」
エセルは自分の考えに納得し始めた。そして彼の悪評が広まれば、専属近衛騎士から解任されるかもしれない。そうなれば彼は自由になり、自分の下に戻って来るだろうと。
「彼が自由になれば、私ともっと一緒に過ごせるようになるわ」
エセルは恍惚とした表情で、そう呟いた。
そして彼女は彼のために、自分のために、動き始めることを決意したのだった。
それからというもの、エセルは精力的にアイヴァンの悪評を広め始めた。婚約者であるエセルの話となれば信憑性は増し、社交界ではアイヴァンの無責任さや怠慢さが話題の中心となっていた。
夜会やお茶会の席で、エセルはさりげなくアイヴァンの欠点を語り、周囲の反応を見て、内心でほくそえんでいた。
「彼のいい加減さには私も困っておりますの。約束を反故にするのはもちろん、贈り物もまともなものを選べないし。最近では、私に対する態度も冷たくなってきて……」
嘘は言っていない。約束は反故にされている上に、連絡もつかない。贈り物はエセルの好みではない。
デビュタントの夜、二人が共に踊る姿を目撃していた人々は、『あれほど婚約者を大切にしていたと言うのに……』と、変わり果てた彼の態度に驚きを隠せなかった。
エセルの計画は順調に進み、アイヴァンの名声は次第に傷つけられていった。
近衛騎士団の中でも疑念が抱かれるようになり、アイヴァンが訓練や任務に参加しない理由を問い質す声が聞こえ始め、彼の立場はますます危うくなってきている。
エセルの冷酷な計略は、徐々に周囲の人々を巻き込み、アイヴァンの評価を低下させていった。
「……誰にも渡さない。アイヴァンは私だけのものよ」
彼女の瞳には冷たい光が宿り、その微笑みには狂気が滲んでいた。
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