パピヨン

ひづる

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回顧

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--------昔、1人の稀有な青年がいた。アイドルとして頂点に立ち、その美しい容貌と妖しい雰囲気で、俳優として初めての主演作で、一世を風靡した。
彼のためだけに書かれた小説が映画化され、彼はスクリーンの中で見事に開花した。


タイトルは、パピヨン。


滑らかなその白い背中一面に蝶のタトゥーを入れ、己の本能と欲望のままに男達を破滅へ導いた殺人鬼。観る者全てが彼とその役を同一化させ、もはや彼の名さえ口にせず、誰もが彼をこう呼んだ。


--------パピヨン--------と。


そして、映画のエンドロールが流れるように彼の人生の幕も唐突に下ろされた。
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