10 / 57
学生寮エレオノーラの部屋
しおりを挟む
皆が回廊からいなくなってしばらくしてから、寮に戻ったエレオノーラのもとに、オーダが訪ねてきた。
「エレオノーラ様、私、先ほど談話室でご挨拶したオーダでございます。もしよろしかったら、少しお話ししたいのですが。」
『フレデリク様のスパイ来たー』と思ったエレオノーラだったが、兄の交際相手のオーダと話したかったので、いそいそと、
「こんにちは。どうぞ、お入りになってください。」
とオーダを自室に招き入れた。
「お邪魔します。わぁ、きれいになさっているのですね。」
「いえ、殺風景でお恥ずかしいです。あの、先ほどお渡しした焼き菓子がオーダ様のお口には届かなかったようですが、よろしかったら、残りがこんなにございます。今度こそご試食くださいませ。」
と、お茶をいれて、作り過ぎた焼き菓子を並べた。
「ありがとうございます。美味しいわ。お茶もお菓子も。アルヌルフから、自分より賢いと、いつもエレオノーラ様の自慢を聞いているのよ。素敵な兄妹ね。私は男爵家の娘で兄二人、弟二人の五人兄弟。ここの寮も三人部屋なの。五人兄弟も三人部屋も、おしゃべりしたりケンカしたり毎日楽しいですけどね。この学院に入学して一年と少しの間に、侯爵家と伯爵家のご令嬢のお部屋へ、お茶に呼ばれて行きましたが、どちらのご令嬢とも打ち解けられずそれっきり。侍女がおられて、ご令嬢は身の回りのことは何もされておられないご様子でしたけれど、エレオノーラ様が何でもご自分でされていると伺い、勝手に親しみを感じていましたの。」
「ありがとうございます。私、何も知らなくて、見よう見まねで皆様と合わせるようにしているところで、この前やっとできた友達に、貴族の方との付き合い方を直してもらっているところです。入学以来こちらから声を掛けるのが怖くて誰にも話しかけなかったのに、この前うっかりお声がけしてしまったのが、公爵様と侯爵家ご令息だったというマヌケぶりで。」
「まあ、フレデリク様とカール様ですね。」
オーダは、どうやってフレデリクの話に持っていこうか頭を悩ませていたら、エレオノーラの方から話を振ってくれたので、ホッとした。
「この学院の中では、爵位は構わずに、ということになっておりますので、問題ないのですよ。それに、そのフレデリク様が、エレオノーラ様のことを大変好ましく思っておられるご様子ですの。」
エレオノーラは、兄とオーダの話を聞きたかったのに、自ら公爵の話に振ってしまって、がっくり。
「皆がおそれおおくて話しかけないのに、いきなり話しかけてきた無礼な女が珍しかっただけでございましょう。ところで、オーダ様は、兄とはどういうなれ初めですの?」
と、アルヌルフとオーダの話に無理やりもっていく。
「アルヌルフと私ですか?アルヌルフはあの美貌で、どこに行っても令嬢から騒がれるので、自然と令息方から妬まれ、私も男兄弟に囲まれて育ったものですから令嬢方の意にそまない大雑把な言動をしてしまい、お互い辛い目に合いまして、慰めあって仲良くなりましたの。そういえば今日、フレデリク様と初めてお話をしましたけれど、あまり身分を意識されていないように感じました。エレオノーラ様はどう思われました?」
と、オーダはまたフレデリク案件に話を戻し、
「エレオノーラ様のことを、本を読んで作物を育てるなんて素晴らしいご令嬢だと、手放しで褒めておられましたよ、フレデリク様が。」
エレオノーラは、オーダに負けてなるものかと、
「それは私がツェリェ領のため、懸命に勉強しているからです。アルヌルフ兄様は、オーダ様と共に、立派にツェリェ領を治めることでしょう。そこに私も微力ながらご協力いたしたく存じます。」
と、一気にオーダに自分を売り込む方向に転換してみた。
「オーダ様から見て、アル兄様の一番の魅力は何ですか?」
オーダは、エレオノーラにフレデリクを売り込むのは手強いと諦めた。そしてアルヌルフの魅力を考えながら、
「そうね。アルヌルフのあの綺麗な顔で、バカバカしいことを言うのがギャップ萌えと申しますか、加えて、優しくて頭がキレるときたら、好きにならずにおられましょうか。」
オーダが恥ずかしそうに言ったことに、エレオノーラは、
「アル兄様がバカバカしいことを言う?ギャップ萌え??」
びっくりして復唱するエレオノーラに、オーダは重ねて、
「悩みごとでもあるのかと心配したら、くだらないことを思い出して笑うのを我慢していたり。でも私に困りごとがあると、すぐ気づいて助けてくれるの。それがまたスマートなのよね。」
「くだらないことを思い出して笑うのを我慢?」
「あの顔で笑い話好きなんて、心をわしづかみされちゃったのよね。一緒にいると、二人してずっと笑ってるのよ。」
エレオノーラの驚きに気づかず、オーダはアルヌルフの魅力を語り続けた。
「エレオノーラ様、私、先ほど談話室でご挨拶したオーダでございます。もしよろしかったら、少しお話ししたいのですが。」
『フレデリク様のスパイ来たー』と思ったエレオノーラだったが、兄の交際相手のオーダと話したかったので、いそいそと、
「こんにちは。どうぞ、お入りになってください。」
とオーダを自室に招き入れた。
「お邪魔します。わぁ、きれいになさっているのですね。」
「いえ、殺風景でお恥ずかしいです。あの、先ほどお渡しした焼き菓子がオーダ様のお口には届かなかったようですが、よろしかったら、残りがこんなにございます。今度こそご試食くださいませ。」
と、お茶をいれて、作り過ぎた焼き菓子を並べた。
「ありがとうございます。美味しいわ。お茶もお菓子も。アルヌルフから、自分より賢いと、いつもエレオノーラ様の自慢を聞いているのよ。素敵な兄妹ね。私は男爵家の娘で兄二人、弟二人の五人兄弟。ここの寮も三人部屋なの。五人兄弟も三人部屋も、おしゃべりしたりケンカしたり毎日楽しいですけどね。この学院に入学して一年と少しの間に、侯爵家と伯爵家のご令嬢のお部屋へ、お茶に呼ばれて行きましたが、どちらのご令嬢とも打ち解けられずそれっきり。侍女がおられて、ご令嬢は身の回りのことは何もされておられないご様子でしたけれど、エレオノーラ様が何でもご自分でされていると伺い、勝手に親しみを感じていましたの。」
「ありがとうございます。私、何も知らなくて、見よう見まねで皆様と合わせるようにしているところで、この前やっとできた友達に、貴族の方との付き合い方を直してもらっているところです。入学以来こちらから声を掛けるのが怖くて誰にも話しかけなかったのに、この前うっかりお声がけしてしまったのが、公爵様と侯爵家ご令息だったというマヌケぶりで。」
「まあ、フレデリク様とカール様ですね。」
オーダは、どうやってフレデリクの話に持っていこうか頭を悩ませていたら、エレオノーラの方から話を振ってくれたので、ホッとした。
「この学院の中では、爵位は構わずに、ということになっておりますので、問題ないのですよ。それに、そのフレデリク様が、エレオノーラ様のことを大変好ましく思っておられるご様子ですの。」
エレオノーラは、兄とオーダの話を聞きたかったのに、自ら公爵の話に振ってしまって、がっくり。
「皆がおそれおおくて話しかけないのに、いきなり話しかけてきた無礼な女が珍しかっただけでございましょう。ところで、オーダ様は、兄とはどういうなれ初めですの?」
と、アルヌルフとオーダの話に無理やりもっていく。
「アルヌルフと私ですか?アルヌルフはあの美貌で、どこに行っても令嬢から騒がれるので、自然と令息方から妬まれ、私も男兄弟に囲まれて育ったものですから令嬢方の意にそまない大雑把な言動をしてしまい、お互い辛い目に合いまして、慰めあって仲良くなりましたの。そういえば今日、フレデリク様と初めてお話をしましたけれど、あまり身分を意識されていないように感じました。エレオノーラ様はどう思われました?」
と、オーダはまたフレデリク案件に話を戻し、
「エレオノーラ様のことを、本を読んで作物を育てるなんて素晴らしいご令嬢だと、手放しで褒めておられましたよ、フレデリク様が。」
エレオノーラは、オーダに負けてなるものかと、
「それは私がツェリェ領のため、懸命に勉強しているからです。アルヌルフ兄様は、オーダ様と共に、立派にツェリェ領を治めることでしょう。そこに私も微力ながらご協力いたしたく存じます。」
と、一気にオーダに自分を売り込む方向に転換してみた。
「オーダ様から見て、アル兄様の一番の魅力は何ですか?」
オーダは、エレオノーラにフレデリクを売り込むのは手強いと諦めた。そしてアルヌルフの魅力を考えながら、
「そうね。アルヌルフのあの綺麗な顔で、バカバカしいことを言うのがギャップ萌えと申しますか、加えて、優しくて頭がキレるときたら、好きにならずにおられましょうか。」
オーダが恥ずかしそうに言ったことに、エレオノーラは、
「アル兄様がバカバカしいことを言う?ギャップ萌え??」
びっくりして復唱するエレオノーラに、オーダは重ねて、
「悩みごとでもあるのかと心配したら、くだらないことを思い出して笑うのを我慢していたり。でも私に困りごとがあると、すぐ気づいて助けてくれるの。それがまたスマートなのよね。」
「くだらないことを思い出して笑うのを我慢?」
「あの顔で笑い話好きなんて、心をわしづかみされちゃったのよね。一緒にいると、二人してずっと笑ってるのよ。」
エレオノーラの驚きに気づかず、オーダはアルヌルフの魅力を語り続けた。
0
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
敏腕SEの優しすぎる独占愛
春咲さゆ
恋愛
仕事も恋愛も、兎に角どん底の毎日だった。
あの日、あの雨の夜、貴方に出逢うまでは。
「終わらせてくれたら良かったのに」
人生のどん底にいた、26歳OL。
木崎 茉莉 ~kisaki matsuri~
×
「泣いたらいいよ。傍にいるから」
雨の日に現れた、30歳システムエンジニア。
藤堂 柊真 ~Todo Syuma~
雨の夜の出会いがもたらした
最高の溺愛ストーリー。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!
こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。
そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。
婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。
・・・だったら、婚約解消すれば良くない?
それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。
結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。
「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」
これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。
そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。
※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。
※本編完結しました。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる