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王宮にて
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月に一回の国王陛下謁見のため、王宮を訪れたフレデリクとカール。いつも通りの手順で、いつも通りの時刻に、いつも通り国王陛下の書斎に通される。
「陛下にはご機嫌麗しくお喜び申し上げます。」
陛下は、いつもはしない人払いをした。
「会いたかった、フレデリク、カール。どうだ、この頃は。」
「はい、まず私事ですが、婚約が決まりました。」
「それは重畳。どちらの娘さんだ?」
「ツェリェ伯爵長女エレオノーラ・コンラインです。」
「そうか、ツェリェ伯爵か。」
陛下はしばし沈黙した。
「実は、今、弟が少し神経が立っていてな。」
やっと口を開いた国王に、フレデリクは、
「王弟殿下エルンスト様が心配されているのは、ルカム王国ですか?」
「知っていたか。」
「たまたま商会の者が言っているのを耳にしました。」
「あれは、ルカムのことになるとムキになるから。これは全くの噂の段階なのだが、ルカム王国を挙げて、何やら新しい武器を作っているらしい。昨年の天候不順で、ルカムは我が国の食料不足どころではない酷い状況で、国民の目を逸らすため、我が国を仮想敵国に仕立てている。弟は、ルカム王国が武器作りを成功させたら、我が国に攻めこんで来るに違いないと、いきりたっているのだ。」
「そうですか。」
「国軍を握る弟のそばで、甘言を弄する者がおってな。戦争を煽れば煽るほど懐具合があったまる奴らだ。」
「ペロトネル公爵ですか。」
「奴はまだマシな方だ。この頃はメルドング子爵が弟にうまく取り入ってしまった。」
「メルドング子爵?」
「しかもだ、ツェリェ伯爵やローザン男爵らの数十年前の謀反疑惑事件を持ち出している。」
「そんな。陛下、ツェリェ伯爵からは、国に逆らう意志は全く感じません。そもそも40年前の疑惑も、でっちあげだったという見解ですよね、今では。」
「もちろん私も同じ認識だ。しかしメルドング子爵は、我が国の中で仮想の敵を想定させて、弟のグループを結束させようと目論んでいる。実際、弟がメルドング子爵を重用しだしたのは、ルカムの動きに併せて、謀反疑惑事件を蒸し返しだした頃からだ。」
「そこまでおわかりならば、なぜ王弟殿下を軍のトップから解任し、ペロトネル公爵とメルドング子爵に注意警告するべきなのではないですか。」
「すまない。私はあれには少し甘いことはわかっている。幼い頃から何もかも私よりエルンストの方が秀でていたにも関わらず、先に生まれたのが私だったために、エルンストは私の配下で働くことになって、私に後ろめたさがあってな。」
「国王陛下は、誰よりも秀でておられます。人徳、知識、判断力、何をとっても王弟殿下よりも優っておられます。」
「ありがとう、フレデリク。私が王になり、エルンストを配下で働かせるにあたって、弟にどうしても軍のトップに就きたいと頼まれてな。多少の危うさを感じていたのだ。今は後悔している。エルンストはルカム王国をねじ伏せて、己の実力を国内外に見せつけたい欲にとらわれている。そしてその欲につけ込む奸臣に踊らされているのだ。」
「国王陛下、流れに勢いがつくと、止められなくなります。一刻も早く、王弟殿下と奸臣共を止めてください。強く願います。」
「そうだな。手遅れになる前にな。」
「次回、私の婚約者を連れてご挨拶したいのですが。」
「そうだな。楽しみにしている。すぐにフレデリクの言った通りの行動を起こそう。」
「ありがとうございます。」
「フレデリク、カール、これからも私を支えてくれ。王太子もな。頼む。」
「はい。心から国王陛下、王太子殿下にお仕えいたします。」
「今日も王太子に会っていってくれるか?」
「はい。承知しました。」
国王の元を辞し、王太子の部屋に向かうと、王弟エルンストが王太子フェルディナンドの部屋にいた。
「フレデリク、久々だな。いつぶりかな。」
と鋭い目でフレデリクを射抜くように見る王弟エルンスト。国王と似ているが、美しく整った顔はこの国一番と言える。30歳の男ざかりで、背も高く惚れ惚れするような容姿だ。部屋の奥で座っている王太子が、
「フレデリク、カール、会えて嬉しいです。私はずいぶん強くなったと思うのですが、今日も剣の稽古をつけてくれますか?」
と素直に話しかける王太子は、あどけなさが残る凛々しい10才の少年で、賢そうな額をしている。
「もちろんです、王太子殿下。喜んでお相手しましょう。」
とフレデリクが答える。しかし王弟エルンストが、
「王太子殿下、今日は私の友が王太子殿下に、お話をしに参ります。」
と、王太子フェルディナンドに有無を言わせぬ微笑みで見つめる。
「あ、そうでしたね。私のために王弟殿下がお友達に会わせてくださるんでしたね。うっかり忘れてすみませんでした。」
王弟は、王太子をさりげなく促し、すぐに連れ立って部屋を出て行こうとする。一瞬フレデリクを名残惜しそうに見た王太子だったが、王弟に射抜くように見つめられて、王太子はすんなり部屋を出て行く。
「王太子殿下、次回は必ず!」
とフレデリクが後ろ姿に声をかけると、再度フレデリクを振り返りながら、王太子は王弟に連れられて退室した。
王宮を辞して馬車の中で、
「相変わらず王弟殿下の視線は魅力的だな。国王陛下を説得できなかったら、この国は危なかったかもしれないな。」
とフレデリクはつぶやいた。
「陛下にはご機嫌麗しくお喜び申し上げます。」
陛下は、いつもはしない人払いをした。
「会いたかった、フレデリク、カール。どうだ、この頃は。」
「はい、まず私事ですが、婚約が決まりました。」
「それは重畳。どちらの娘さんだ?」
「ツェリェ伯爵長女エレオノーラ・コンラインです。」
「そうか、ツェリェ伯爵か。」
陛下はしばし沈黙した。
「実は、今、弟が少し神経が立っていてな。」
やっと口を開いた国王に、フレデリクは、
「王弟殿下エルンスト様が心配されているのは、ルカム王国ですか?」
「知っていたか。」
「たまたま商会の者が言っているのを耳にしました。」
「あれは、ルカムのことになるとムキになるから。これは全くの噂の段階なのだが、ルカム王国を挙げて、何やら新しい武器を作っているらしい。昨年の天候不順で、ルカムは我が国の食料不足どころではない酷い状況で、国民の目を逸らすため、我が国を仮想敵国に仕立てている。弟は、ルカム王国が武器作りを成功させたら、我が国に攻めこんで来るに違いないと、いきりたっているのだ。」
「そうですか。」
「国軍を握る弟のそばで、甘言を弄する者がおってな。戦争を煽れば煽るほど懐具合があったまる奴らだ。」
「ペロトネル公爵ですか。」
「奴はまだマシな方だ。この頃はメルドング子爵が弟にうまく取り入ってしまった。」
「メルドング子爵?」
「しかもだ、ツェリェ伯爵やローザン男爵らの数十年前の謀反疑惑事件を持ち出している。」
「そんな。陛下、ツェリェ伯爵からは、国に逆らう意志は全く感じません。そもそも40年前の疑惑も、でっちあげだったという見解ですよね、今では。」
「もちろん私も同じ認識だ。しかしメルドング子爵は、我が国の中で仮想の敵を想定させて、弟のグループを結束させようと目論んでいる。実際、弟がメルドング子爵を重用しだしたのは、ルカムの動きに併せて、謀反疑惑事件を蒸し返しだした頃からだ。」
「そこまでおわかりならば、なぜ王弟殿下を軍のトップから解任し、ペロトネル公爵とメルドング子爵に注意警告するべきなのではないですか。」
「すまない。私はあれには少し甘いことはわかっている。幼い頃から何もかも私よりエルンストの方が秀でていたにも関わらず、先に生まれたのが私だったために、エルンストは私の配下で働くことになって、私に後ろめたさがあってな。」
「国王陛下は、誰よりも秀でておられます。人徳、知識、判断力、何をとっても王弟殿下よりも優っておられます。」
「ありがとう、フレデリク。私が王になり、エルンストを配下で働かせるにあたって、弟にどうしても軍のトップに就きたいと頼まれてな。多少の危うさを感じていたのだ。今は後悔している。エルンストはルカム王国をねじ伏せて、己の実力を国内外に見せつけたい欲にとらわれている。そしてその欲につけ込む奸臣に踊らされているのだ。」
「国王陛下、流れに勢いがつくと、止められなくなります。一刻も早く、王弟殿下と奸臣共を止めてください。強く願います。」
「そうだな。手遅れになる前にな。」
「次回、私の婚約者を連れてご挨拶したいのですが。」
「そうだな。楽しみにしている。すぐにフレデリクの言った通りの行動を起こそう。」
「ありがとうございます。」
「フレデリク、カール、これからも私を支えてくれ。王太子もな。頼む。」
「はい。心から国王陛下、王太子殿下にお仕えいたします。」
「今日も王太子に会っていってくれるか?」
「はい。承知しました。」
国王の元を辞し、王太子の部屋に向かうと、王弟エルンストが王太子フェルディナンドの部屋にいた。
「フレデリク、久々だな。いつぶりかな。」
と鋭い目でフレデリクを射抜くように見る王弟エルンスト。国王と似ているが、美しく整った顔はこの国一番と言える。30歳の男ざかりで、背も高く惚れ惚れするような容姿だ。部屋の奥で座っている王太子が、
「フレデリク、カール、会えて嬉しいです。私はずいぶん強くなったと思うのですが、今日も剣の稽古をつけてくれますか?」
と素直に話しかける王太子は、あどけなさが残る凛々しい10才の少年で、賢そうな額をしている。
「もちろんです、王太子殿下。喜んでお相手しましょう。」
とフレデリクが答える。しかし王弟エルンストが、
「王太子殿下、今日は私の友が王太子殿下に、お話をしに参ります。」
と、王太子フェルディナンドに有無を言わせぬ微笑みで見つめる。
「あ、そうでしたね。私のために王弟殿下がお友達に会わせてくださるんでしたね。うっかり忘れてすみませんでした。」
王弟は、王太子をさりげなく促し、すぐに連れ立って部屋を出て行こうとする。一瞬フレデリクを名残惜しそうに見た王太子だったが、王弟に射抜くように見つめられて、王太子はすんなり部屋を出て行く。
「王太子殿下、次回は必ず!」
とフレデリクが後ろ姿に声をかけると、再度フレデリクを振り返りながら、王太子は王弟に連れられて退室した。
王宮を辞して馬車の中で、
「相変わらず王弟殿下の視線は魅力的だな。国王陛下を説得できなかったら、この国は危なかったかもしれないな。」
とフレデリクはつぶやいた。
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