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ツェリェ伯爵領からエスドート王国
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ヴィーレがツェリェ領伯爵邸に到着し、フレデリクとカールにエーファの意識が回復した事を告げた。伯爵夫妻も安堵し、さてこれからどうするか。
「王都に戻りますか?」
「国境で毒矢、男爵邸へ向かう途中で火矢を浴びましたが、その後、追手は来ませんね。」
「王都で張ってるのかな。公爵邸は無事かな。」
「ツェリェ伯から王都の商会に使いが走って、王立学院のアグネス殿に知らせが行ったそうです。アグネス殿は、商会の取引で使う馬車でローザン領に戻りました。エーファさんの意識が戻った時には、アグネスさんはエーファさんの枕元におられたのですよ。」
とヴィーレが伝えると、フレデリクが婚約者エレオノーラの父であるツェリェ伯に、
「お父様、ありがとうございました。エーファさんも安心されたでしょう。しかし、お父様と商会の連携は素晴らしいです。」
「私も驚きました。情報の集め方も、情報が正しいか確認することも、早く伝えることも、見習うことばかりです。」
と、ヴィーレも言った。
「我々はとりあえず王都に戻ろうと思います。王弟殿下が待ち構えていても、国のためのルカム国境視察だと言ってみます。何か打開策が見えてくるかもしれない。」
いつもどこか楽観的な娘の婚約者を、ツェリェ伯は心配そうに見たが、ここで隠れているよう言うのはやめ、部屋を出て行った。ここにいても、安全なわけではない。今、彼はどう動くべきなのだろう。
ヴィーレは伯爵夫妻が部屋を出たのを見るなり、フレデリクに、
「アグネスさんから、フレデリクに伝言です。『エレオノーラが、フレデリク様が他人行儀だったと落ち込んだり、愛する女より国の事を考えるところに惚れたんだと惚気たりしている』と伝えて欲しい、とのことです。」
ヴィーレの言葉に、フレデリクは破顔した。
「エレオノーラ殿とアグネス殿は、ルカム王国とエスドート王国の歴史、地政学、言葉、文化を猛勉強しているそうですよ。」
「そうか、エレオノーラはさすがだな。軍事力や経済力を探るだけでなく、言語、文化を知ると、わかることがあるかもしれない。」
フレデリク、カール、ヴィーレが、王都に帰る準備をしている時、マティアスが馬で伯爵邸に駆けて込んできた。伯爵が、フレデリクたちを玄関に呼びつけながら、マティアスの知らせを聞く。
「また良くない知らせです。公爵邸に、王宮から騎士が4人来て『公爵と面会させろ』と迫ったそうです。フランツィスカ様が応対し『公爵は留守だ』と伝えると、『公爵が帰り次第、王宮に出頭せよ』と。フランツィスカ様はとっさに、『公爵のフレデリクは先日から、エスドート王国のノイゲン公を訪ねている。亡くなった父の従兄弟であるイノゲン公が病気で、一度会っておきたいと手紙が来たからだ。フレデリクにご用がお有りなら、イノゲン公の領地まで、足をお運び願います。』と騎士に言い、イノゲン公から来た手紙を渡し、追い返したそうです。」
「さすがは姉上。行き先変更だ。今からエスドートのイノゲン公爵邸に向かう。」
と、フレデリクは言い、ツェリェ伯爵に、
「お義父様、何か良い酒はありませんか?」
伯爵は、きょとんとした。
「え?酒?」
「土産にします。」
「え、でも、病気見舞いに酒?」
「いえ、イノゲン公は定期的に、『病気になった、もうダメかもしれない、死ぬ前に一度会っておきたい』と大騒ぎをして手紙を寄越すのです。こんな良いタイミングで手紙は来ないと思いますので、姉は、以前の手紙の中から日付の無い物を見繕って、王弟殿下の配下に渡したと推測します。」
伯爵は、地下室に降りて、埃だらけのボロボロの箱がぐちゃぐちゃに放り込まれた棚から、一つの箱を取り出して階段をのぼり、使用人に、
「これ、手土産用に、良い感じに包んでくれる?急いで。」
と渡した。
「願わくば、酒の味がわかる人に飲んでもらえますように。」
フレデリク、カール、ヴィーレが、また馬車を高速で走らせる。
「王弟殿下の部下より先に着けるかな。着けたら少し前から居たように振る舞う。ルカム国境に行ったことを、反逆罪に仕立てるつもりかもしれない。」
「もう何でもありですね。白を黒。味方を敵。それで国じゅう混乱に陥れて、自分たちだけ無事に済むはずが無いのに。」
「遅かれ早かれ、王弟殿下は破滅するだろう。が、できれば巻き込まれたくないな。国民も我々も。」
国境は、いつも通り『エルデンブルグ公爵フレデリク・フォン・カロマニッチ』と名乗り、問題無く通り抜けた。
「公爵で良かった。」
と、フレデリクがホッとしていると、
「当たり前ですよ。国際問題になります。いくら王弟殿下とは言え、フレデリクはエスドート王国に縁戚関係もあるのですから。」
とカールが言う。
「しかし、足止めくらいはされるかと心配した。王弟殿下は詰めが甘いのかな。どうも動きが杜撰という印象を受ける。優秀で完璧な方だと思っていたのに。」
「優秀ではなかったのかもしれませんね。国王陛下が、弟の方が優秀だと常に言っておられましたが。王弟殿下のあの麗しい顔で、国王陛下まで過大評価されていたのでは。」
フレデリクとカールの会話にヴィーレが、
「これは私の推測混じりの話ですが、」
と切りだした。
「国王陛下と王弟殿下は、子供の頃は仲の良い兄弟でした。しかし、小狡いペロトネル公爵が前国王に嫌われて距離を置かれ始めた頃、ペロトネル公爵が第二王子であった王弟殿下を担ぎ上げ、娘を王弟殿下と結婚させ、形勢逆転を狙いました。その後、現国王陛下が順当に即位されると、今度は王弟殿下を突き放したようです。王弟殿下派たちから一斉に距離を置かれ、国王陛下のまわりからも遠ざけられた王弟殿下は、すっかり自信を無くされたようで、寄ってくるのは、王弟殿下の美貌に魅せられた女性ばかり。しかし国王陛下だけはそんな王弟殿下を心配されていた。それを見たペロトネル公爵が、また王弟殿下にすり寄って、軍のトップを国王にねだるよう、ささやいたという話です。」
ヴィーレの話に、フレデリクが考え込む。
「王弟殿下の完璧な自信たっぷりの微笑みの下に、そのような過去があったのか。」
ヴィーレが、
「このような推測混じりの話は、相手が王族ということもあり、今まで話すことを控えていました。が今は、あらゆる可能性を考えて危険に対処すべきと、お伝えしました。」
カールが、
「王族の場合は、兄弟の間に人が多過ぎるのかもしれませんね。気軽に会話するために、何人もの人を介して、やっと会えるのですから。」
「そうか。王弟殿下は本来なら国王陛下を支えて、外務大臣あたりになって、華々しく活躍されていただろうに。」
「諸外国を見渡しても、歴史を振り返っても、後継者選びで候補者が、奸臣に踊らされた話ばかりです。」
「エレオノーラが言っていた、国王定年制にすれば、奸臣が暗躍することは無くなるかな。一旦国王に決まれば、全てを手に入る。実力差は無くても王になれなければ何も残らない。それが奸臣の現れる根源ではないだろうか。」
「奸臣はいつの時代もどこにでも現れましたね。」
「例えば今の国王陛下が『昔は善政を敷いていたけれど、最近は良くないよね』と判断されたら、王弟殿下が国王に即位。王弟殿下の政治がうまくいかなくなれば、また元の国王陛下に交代するシステムにすれば?」
「それでは、強大な国家に育ちにくくなるかもしれません。国が良くなる間に、周辺国に取って食われるかも。」
「なるほど。」
イノゲン公爵領に入った。何度も訪れたことがあるので、問題無くイノゲン公爵の邸に入り、イノゲン公と面会が叶った。
「フレデリク!カールも!よく来てくれた!」
大歓迎してくれる。
「イノゲン公、急ぎお願いがあります。病気になってください。」
「は?」
「いつものように『もうダメかも』とベッドに横になって、早く。」
「え?え?」
「はい、寝間着に着替えて、あ、はい、これ、お土産です。」
「なに?あ、これ!幻の酒だ!探してももう手に入らない酒ではないか!」
「はい、はい、イノゲン公、着替えますよ。」
「ど、どこでこれを手に入れたんだ、フレデリク?」
「はい、横になって、はい、この酒抱いて、寝てくださいね。」
「よく、手に入ったな。」
「はい。私の義父が、イノゲン公にと持たせてくれました。」
「義父?義父とは?」
「横になるのが先ですよ、イノゲン公。」
イノゲン公が、寝間着でベットに横になり、枕元にフレデリクとカールが良い感じにお見舞いをしている風になったので、フレデリクがやっと事態を話し出す。
「私はついに婚約しました。まだ公表はできないのですが、実は王弟殿下に嫌われているツェリェ伯爵の娘と恋仲になりまして。」
「おお、そうかそうか。良かったな、フレデリク。お前の結婚相手探しには、お前の父親も苦労の連続だったなあ。」
イノゲン公が、若くして亡くなった従兄弟のフレデリクの父を思い出して泣く。
「はい、ご心配をお掛けしましたが、私も無事結婚の約束を取り付けました。しかし、王弟殿下がツェリェ伯を敵視しているため、国王陛下が、公表を待てとおっしゃいました。その後、国王陛下が静養中と発表になり、私は国王陛下に会えなくなりました。」
イノゲン公は、
「フレデリクも難しい立場なのだな。わかるよ、わしもこの国の公爵の娘と結婚してからは、ただただ、冷飯を食わされてきた。この国はな、自国民が一番優れていると思い込んでいる。あちこちから来た移民が原住民を迫害してできた国だと言うのに、笑えるよ。まあ、私は、気楽な身分だと思うことにして、趣味など楽しんでいるが。酒も。」
と、しみじみ言い、
「この酒は、ずっと酒好きの間では、幻の酒と言われてきた物だ。グラスを運ばせるから、早く味わおう。」
「いえ、イノゲン公。私は王弟殿下に追われています。フランツィスカから、イノゲン公の病気見舞いに来ていることにしろと指令が来て、慌ててここに来ました。王弟殿下の部下が、本当に見舞いに私が来ているか確かめに来ると思うので、もうしばらく病気のふりをしていてもらえないですか?」
「お前ほど賢くて、国に忠誠を誓っている人間はおらんのに、王弟殿下がそんな風にお前を扱っているとは。しかしフランツィスカの指示なら、そのなのだろうな。」
「私は国王陛下にお会いすることができなくなり、ルカム王国が我が国に対して武器を作っていると聞いても、何もすることができずにいます。」
「武器?」
「エスドートが、ルカムに最新鋭の武器の作り方を教えているという噂があります。その武器で我がフォルスフッド王国に攻め入らせ、我が国の力を削ぎたいと。王弟殿下はその挑発に乗ろうとし、国王陛下は乗るまいとしています。」
イノゲン公は、
「充分あり得る話だ。エスドート王国は傲慢になり過ぎた。世界一の技術と経済力で、世界を自国の思い通りに作り変えようとしているのか。」
一同ため息をついた。
「フランツィスカは元気か?結婚はまだか?」
「はい、イノゲン公。フランツィスカは結婚相手を探しているところです。」
「そうか。カール、そろそろフランツィスカをもらってやらんのか?」
「え?私ですか?」
「そうだ、フランツィスカは昔からカールが好きだっただろう?」
「そんなことは無いと思いますが。」
「酒でも飲みながら話そう。グラスを用意させて」
「いえ、王弟殿下の使者が来るかも」
「もう来ないのではないか?少しだけ味見だけなら」
「酒くさい病人だと、私が疑われます。」
「では、早く王弟の使者を来させて、さっさと済ませよう。」
「そういう訳にもいきません。」
それから半日のあいだ、早く幻の酒を飲みたいイノゲン公をなだめすかした後、やっと来た王弟殿下の騎士4人に、病気見舞いの姿を見せることに成功した。
『早く酒を飲みたい』『待って』というせめぎ合いにくたびれたイノゲン公は、本物の病人に見えたらしく、騎士たちは納得して去って行った。
「王都に戻りますか?」
「国境で毒矢、男爵邸へ向かう途中で火矢を浴びましたが、その後、追手は来ませんね。」
「王都で張ってるのかな。公爵邸は無事かな。」
「ツェリェ伯から王都の商会に使いが走って、王立学院のアグネス殿に知らせが行ったそうです。アグネス殿は、商会の取引で使う馬車でローザン領に戻りました。エーファさんの意識が戻った時には、アグネスさんはエーファさんの枕元におられたのですよ。」
とヴィーレが伝えると、フレデリクが婚約者エレオノーラの父であるツェリェ伯に、
「お父様、ありがとうございました。エーファさんも安心されたでしょう。しかし、お父様と商会の連携は素晴らしいです。」
「私も驚きました。情報の集め方も、情報が正しいか確認することも、早く伝えることも、見習うことばかりです。」
と、ヴィーレも言った。
「我々はとりあえず王都に戻ろうと思います。王弟殿下が待ち構えていても、国のためのルカム国境視察だと言ってみます。何か打開策が見えてくるかもしれない。」
いつもどこか楽観的な娘の婚約者を、ツェリェ伯は心配そうに見たが、ここで隠れているよう言うのはやめ、部屋を出て行った。ここにいても、安全なわけではない。今、彼はどう動くべきなのだろう。
ヴィーレは伯爵夫妻が部屋を出たのを見るなり、フレデリクに、
「アグネスさんから、フレデリクに伝言です。『エレオノーラが、フレデリク様が他人行儀だったと落ち込んだり、愛する女より国の事を考えるところに惚れたんだと惚気たりしている』と伝えて欲しい、とのことです。」
ヴィーレの言葉に、フレデリクは破顔した。
「エレオノーラ殿とアグネス殿は、ルカム王国とエスドート王国の歴史、地政学、言葉、文化を猛勉強しているそうですよ。」
「そうか、エレオノーラはさすがだな。軍事力や経済力を探るだけでなく、言語、文化を知ると、わかることがあるかもしれない。」
フレデリク、カール、ヴィーレが、王都に帰る準備をしている時、マティアスが馬で伯爵邸に駆けて込んできた。伯爵が、フレデリクたちを玄関に呼びつけながら、マティアスの知らせを聞く。
「また良くない知らせです。公爵邸に、王宮から騎士が4人来て『公爵と面会させろ』と迫ったそうです。フランツィスカ様が応対し『公爵は留守だ』と伝えると、『公爵が帰り次第、王宮に出頭せよ』と。フランツィスカ様はとっさに、『公爵のフレデリクは先日から、エスドート王国のノイゲン公を訪ねている。亡くなった父の従兄弟であるイノゲン公が病気で、一度会っておきたいと手紙が来たからだ。フレデリクにご用がお有りなら、イノゲン公の領地まで、足をお運び願います。』と騎士に言い、イノゲン公から来た手紙を渡し、追い返したそうです。」
「さすがは姉上。行き先変更だ。今からエスドートのイノゲン公爵邸に向かう。」
と、フレデリクは言い、ツェリェ伯爵に、
「お義父様、何か良い酒はありませんか?」
伯爵は、きょとんとした。
「え?酒?」
「土産にします。」
「え、でも、病気見舞いに酒?」
「いえ、イノゲン公は定期的に、『病気になった、もうダメかもしれない、死ぬ前に一度会っておきたい』と大騒ぎをして手紙を寄越すのです。こんな良いタイミングで手紙は来ないと思いますので、姉は、以前の手紙の中から日付の無い物を見繕って、王弟殿下の配下に渡したと推測します。」
伯爵は、地下室に降りて、埃だらけのボロボロの箱がぐちゃぐちゃに放り込まれた棚から、一つの箱を取り出して階段をのぼり、使用人に、
「これ、手土産用に、良い感じに包んでくれる?急いで。」
と渡した。
「願わくば、酒の味がわかる人に飲んでもらえますように。」
フレデリク、カール、ヴィーレが、また馬車を高速で走らせる。
「王弟殿下の部下より先に着けるかな。着けたら少し前から居たように振る舞う。ルカム国境に行ったことを、反逆罪に仕立てるつもりかもしれない。」
「もう何でもありですね。白を黒。味方を敵。それで国じゅう混乱に陥れて、自分たちだけ無事に済むはずが無いのに。」
「遅かれ早かれ、王弟殿下は破滅するだろう。が、できれば巻き込まれたくないな。国民も我々も。」
国境は、いつも通り『エルデンブルグ公爵フレデリク・フォン・カロマニッチ』と名乗り、問題無く通り抜けた。
「公爵で良かった。」
と、フレデリクがホッとしていると、
「当たり前ですよ。国際問題になります。いくら王弟殿下とは言え、フレデリクはエスドート王国に縁戚関係もあるのですから。」
とカールが言う。
「しかし、足止めくらいはされるかと心配した。王弟殿下は詰めが甘いのかな。どうも動きが杜撰という印象を受ける。優秀で完璧な方だと思っていたのに。」
「優秀ではなかったのかもしれませんね。国王陛下が、弟の方が優秀だと常に言っておられましたが。王弟殿下のあの麗しい顔で、国王陛下まで過大評価されていたのでは。」
フレデリクとカールの会話にヴィーレが、
「これは私の推測混じりの話ですが、」
と切りだした。
「国王陛下と王弟殿下は、子供の頃は仲の良い兄弟でした。しかし、小狡いペロトネル公爵が前国王に嫌われて距離を置かれ始めた頃、ペロトネル公爵が第二王子であった王弟殿下を担ぎ上げ、娘を王弟殿下と結婚させ、形勢逆転を狙いました。その後、現国王陛下が順当に即位されると、今度は王弟殿下を突き放したようです。王弟殿下派たちから一斉に距離を置かれ、国王陛下のまわりからも遠ざけられた王弟殿下は、すっかり自信を無くされたようで、寄ってくるのは、王弟殿下の美貌に魅せられた女性ばかり。しかし国王陛下だけはそんな王弟殿下を心配されていた。それを見たペロトネル公爵が、また王弟殿下にすり寄って、軍のトップを国王にねだるよう、ささやいたという話です。」
ヴィーレの話に、フレデリクが考え込む。
「王弟殿下の完璧な自信たっぷりの微笑みの下に、そのような過去があったのか。」
ヴィーレが、
「このような推測混じりの話は、相手が王族ということもあり、今まで話すことを控えていました。が今は、あらゆる可能性を考えて危険に対処すべきと、お伝えしました。」
カールが、
「王族の場合は、兄弟の間に人が多過ぎるのかもしれませんね。気軽に会話するために、何人もの人を介して、やっと会えるのですから。」
「そうか。王弟殿下は本来なら国王陛下を支えて、外務大臣あたりになって、華々しく活躍されていただろうに。」
「諸外国を見渡しても、歴史を振り返っても、後継者選びで候補者が、奸臣に踊らされた話ばかりです。」
「エレオノーラが言っていた、国王定年制にすれば、奸臣が暗躍することは無くなるかな。一旦国王に決まれば、全てを手に入る。実力差は無くても王になれなければ何も残らない。それが奸臣の現れる根源ではないだろうか。」
「奸臣はいつの時代もどこにでも現れましたね。」
「例えば今の国王陛下が『昔は善政を敷いていたけれど、最近は良くないよね』と判断されたら、王弟殿下が国王に即位。王弟殿下の政治がうまくいかなくなれば、また元の国王陛下に交代するシステムにすれば?」
「それでは、強大な国家に育ちにくくなるかもしれません。国が良くなる間に、周辺国に取って食われるかも。」
「なるほど。」
イノゲン公爵領に入った。何度も訪れたことがあるので、問題無くイノゲン公爵の邸に入り、イノゲン公と面会が叶った。
「フレデリク!カールも!よく来てくれた!」
大歓迎してくれる。
「イノゲン公、急ぎお願いがあります。病気になってください。」
「は?」
「いつものように『もうダメかも』とベッドに横になって、早く。」
「え?え?」
「はい、寝間着に着替えて、あ、はい、これ、お土産です。」
「なに?あ、これ!幻の酒だ!探してももう手に入らない酒ではないか!」
「はい、はい、イノゲン公、着替えますよ。」
「ど、どこでこれを手に入れたんだ、フレデリク?」
「はい、横になって、はい、この酒抱いて、寝てくださいね。」
「よく、手に入ったな。」
「はい。私の義父が、イノゲン公にと持たせてくれました。」
「義父?義父とは?」
「横になるのが先ですよ、イノゲン公。」
イノゲン公が、寝間着でベットに横になり、枕元にフレデリクとカールが良い感じにお見舞いをしている風になったので、フレデリクがやっと事態を話し出す。
「私はついに婚約しました。まだ公表はできないのですが、実は王弟殿下に嫌われているツェリェ伯爵の娘と恋仲になりまして。」
「おお、そうかそうか。良かったな、フレデリク。お前の結婚相手探しには、お前の父親も苦労の連続だったなあ。」
イノゲン公が、若くして亡くなった従兄弟のフレデリクの父を思い出して泣く。
「はい、ご心配をお掛けしましたが、私も無事結婚の約束を取り付けました。しかし、王弟殿下がツェリェ伯を敵視しているため、国王陛下が、公表を待てとおっしゃいました。その後、国王陛下が静養中と発表になり、私は国王陛下に会えなくなりました。」
イノゲン公は、
「フレデリクも難しい立場なのだな。わかるよ、わしもこの国の公爵の娘と結婚してからは、ただただ、冷飯を食わされてきた。この国はな、自国民が一番優れていると思い込んでいる。あちこちから来た移民が原住民を迫害してできた国だと言うのに、笑えるよ。まあ、私は、気楽な身分だと思うことにして、趣味など楽しんでいるが。酒も。」
と、しみじみ言い、
「この酒は、ずっと酒好きの間では、幻の酒と言われてきた物だ。グラスを運ばせるから、早く味わおう。」
「いえ、イノゲン公。私は王弟殿下に追われています。フランツィスカから、イノゲン公の病気見舞いに来ていることにしろと指令が来て、慌ててここに来ました。王弟殿下の部下が、本当に見舞いに私が来ているか確かめに来ると思うので、もうしばらく病気のふりをしていてもらえないですか?」
「お前ほど賢くて、国に忠誠を誓っている人間はおらんのに、王弟殿下がそんな風にお前を扱っているとは。しかしフランツィスカの指示なら、そのなのだろうな。」
「私は国王陛下にお会いすることができなくなり、ルカム王国が我が国に対して武器を作っていると聞いても、何もすることができずにいます。」
「武器?」
「エスドートが、ルカムに最新鋭の武器の作り方を教えているという噂があります。その武器で我がフォルスフッド王国に攻め入らせ、我が国の力を削ぎたいと。王弟殿下はその挑発に乗ろうとし、国王陛下は乗るまいとしています。」
イノゲン公は、
「充分あり得る話だ。エスドート王国は傲慢になり過ぎた。世界一の技術と経済力で、世界を自国の思い通りに作り変えようとしているのか。」
一同ため息をついた。
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「はい、イノゲン公。フランツィスカは結婚相手を探しているところです。」
「そうか。カール、そろそろフランツィスカをもらってやらんのか?」
「え?私ですか?」
「そうだ、フランツィスカは昔からカールが好きだっただろう?」
「そんなことは無いと思いますが。」
「酒でも飲みながら話そう。グラスを用意させて」
「いえ、王弟殿下の使者が来るかも」
「もう来ないのではないか?少しだけ味見だけなら」
「酒くさい病人だと、私が疑われます。」
「では、早く王弟の使者を来させて、さっさと済ませよう。」
「そういう訳にもいきません。」
それから半日のあいだ、早く幻の酒を飲みたいイノゲン公をなだめすかした後、やっと来た王弟殿下の騎士4人に、病気見舞いの姿を見せることに成功した。
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気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
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