絶望人生にさようなら、人間にして魔王に転ず。

第一章 フリネラアルペン

第八話 ヤゴリ

「オべリス様、近くにいたのでとりあえずこいつを連れてきました。雷狸らいじゅう族のヤゴリです。」

「ルーデン！なんだいきなりこんなところに！もうわいは戦うつもりはないし、お前の助けにもなれんぞ！」

「大丈夫だヤゴリ、我々には強い見方がおられる！この方だ、魔王 オべリス様だ！」

「こんな下劣で貧弱な人間に何ができるか！？」

「まぁそう怒るな。よく見てみろ、あれが普通の人間に見えるのか。お前の目はそこまで劣ってしまったか？」

と言われて目を凝らしてじーっとこちらも見てくるヤゴリ。と思った瞬間、ルーデンの背後に隠れた。

「ルーデン！？お前はこいつを人間だと言ったな？」

「言ったが。ほら見たことか、尻尾が逆立っておるぞ。」

「こいつは人間では無いじゃないか！？先に言え！？見た目は人間でも魔力量がとんでもないわ！それに何か魔力の他にも力を感じる。なんだあれは、化け物か！？」

「まぁまぁ落ち着けヤゴリよ。オべリス様は異世界からきた御仁(ごじん)。だから強力な力も持っていて当然だろう。それにこの魔族領の土地を開拓し、他の国に侵略して魔族領を増やすとのことだ。全くの味方だ、安心せい！それに人間を殲滅するそうだ。」

「ほぉ。それなら安心したわ。いやぁ、失礼した、オべリス殿。わいは雷狸族のヤゴリと申す。このルーデンとかつての大戦で幾度となく戦ったものです。」

こ、これは・・・狸だな。うん、狸だが知っている狸と全く違う。でかい、日本の狸は猫くらいの大きさだったが、これは普通の人間よりもでかい。

「あー、うん。よろしくね、ヤゴリ。僕はオべリス。さっきルーデンが言った通り君たちの味方だよ。言っておくけど一応人間だからね！」

「そ、そうは見えないのですが・・・。それにルーデンはどうしてしまったのでしょう。今までの姿とまた違っておるように見えるが。」

「あぁ、それは僕がテイムして進化したみたい。リッチからリヴレスっていう上位種に。」

「そ、それはなんですと！リヴレスというのは見たことがない！！ルーデン、お前強くなったのか？」

「そりゃもう！前の否にならんぞ！ほんとにオべリス様に感謝だ！」

「オべリス様！わいもテイムしてはくださらんか？わいも強くなりたいのです！」

「えぇ、そんなにすぐ決めていいの？」

「いいのです！これまでのわいより強くなれるのであれば、人間族に勝てるのであれば、テイムしていただけると！」

「うん、わかった。」

血を一滴、ヤゴリに与えた。するとヤゴリは光だし、そして雷雲に包まれ、今までの風貌より変化し少し人間よりに、狸耳獣人へと化した。丸っこい尻尾がかわいい。

「こ、これは！？雷狸族でも稀に見られる雷の妖精に似た姿！？これは雷業らいわいでございます！私の時と言い、またもや進化したというのですか！？」

「そうなの？まぁ確かに人に近い感じにはなったけど。」

「オべリス殿。このような力、有り難き幸せでございます！」

「うん！それより他の雷狸族は？」

「引き連れてきております！」

と物陰からぞろぞろと現れた。ざっと５０人ほどか。それにしても狸のままの者も人型の者もそれぞれだな。個体差がある感じだ。まぁ狸は狸だが。

「それじゃとりあえず魔王城の空いてる部屋に住んでよ。」

「よろしいのですか！？」

「いやいや、もともと君たちのものでしょ？それに余っているものは活用しないとね！」

「なんと寛大な御方。わい、オべリス殿に一生着いていきますぞ！！」

「そ、そんな大袈裟な！」

みんな各部屋に納まり一段落した。