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 久しぶりに王都にやって来た。
 王都は北にあるため寒い。わたくしは、この薄暗い北が好きでは無い。

 今回は、城で開かれる舞踏会に出席する為にわざわざやって来た。馬車で一ヶ月もかかった。遠い…

 まあそんな事はさておき、舞踏会だ。貴族から羽振りのいい平民まで大集合らしい。(絶対王政は、まだまだ先の時代。王より諸侯の方が力のあった時代)
 楽しみだなぁ。
 うちお抱えの道化が褒めていた。女性達のドレスの素晴らしさを!
うちお抱えの吟遊詩人が語っていた、恋の駆け引きの面白さを!
 あーーー。楽しみだなぁ。


 叔父上にエスコートされ入場する。
 そこかしこで華やかな話し声。むせ返るような香水。男女共に意味ありげな視線。
 ウヒョーー。エロい。
 あーーー。楽しみ。

 隣国まで美貌がとどろく叔父上。うん。カッコイイ。
そんな人にエスコートされいい気分だ。
「叔父上カッコイイ!」
「ははは。可愛いアリエノール。赤い薔薇と吟遊詩人に歌われる、我がポワティエ家の宝。ちゅっ」
ふふふ。
「大好き」
叔父上と見つめ合い微笑み合う。


 そんな幸せな時間も長く続かなかった。

「アリエノール ダキテーヌ!お前との婚約を破棄する!」
うん。はて…何だろう。ちょっと頭、働かないな。
「このマーガレットを学園でイジメていたのを俺が知らないとでも思ったか!」
誰?その子?
「何を黙っている!?マーガレットの教科書を破ったり、上履きを隠したり、業と転ばせたり!」
「モーリス様、もういいのです。私が悪かったのです。モーリス様を愛してしまった私が悪いのです」
「ああ。マーガレット!」
何、この茶番。
クスクス。
「ななななんだ!」
「庶民の学校とやらは、随分と下らない事」
「ななななんだと!」
「ひどい!」
「貴族は、学校になど行きませんのよ」
赤い薔薇と褒め讃えられる笑顔でキメる。
「貴族は、家庭教師を屋敷によびますのよ」

 
 
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