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五話 死ねんのだ!
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夢織が私の家に遊びに来るようになって暫くたったある日のこと。
「今日歌配信だよね!」
「帰って!」
今日は歌配信の日、来るなと言ったはずなのに夢織が遊び来た。
確かに来るなといったはずだけど、夢織はまるでアイドルのコンサートを最前列で見に行けると信じてやまないオタクのような顔をしている。
嬉しそうなところ悪いけど、コンサートの席に着こうとしたら転売された席だと運営にバレてて、席にロープ張られ座れなくされたオタクの顔にしてやる。
「え~どうして?」
「歌ってるところ見られたくない!」
「いっつも歌配信してるじゃん。何万人に聞かせてるんだからアタシ一人どうってことないでしょ?」
「アシュリーになってる時とは違うの!」
「こんな叫んでる柊花初めて……」
そら声も大きくなるわ。
こちとら音楽の授業で先生の前で歌わされる時、就業のチャイムが鳴るまで黙り続けて先生に勝利した女やぞ。
「柊花の好きなお菓子とかジュース一杯買ってきたから!」
「一ミリたりとも心揺れないくらい嫌!」
たしかに私の好きな堅めな歯ごたえが売りのポテトとかコーラとかあるけど、私はそんな食い意地張ってないので天秤に乗せるには軽すぎる。
交渉するならせめて超並ぶお店のケーキでも用意してから出直してこい。
「ほら出てった出てった」
「やだ~」
私は夢織を手で押して玄関の外に……外に……
「ふむぅぅぅ!」
「邪魔しないからさぁ」
私は必死に夢織を玄関の外へと押してるんだけどビクともしない。
埒が明かないので一度離れて方からタックルするようにぶつかってもやっぱり動かない。
それどころか何もされてないかのような顔でおねだりをされ続けている。
力の差がありすぎる……
運動不足だし、輪っかを持って実際に運動するゲームのザ・リング・アドベンチャー配信でもやってみようか。
いや種族差のせいかもしれないしやっても無駄か。
体重バレしたくないし。
「はっ! アシュリーちゃんが私に抱き着いてくれてる?! 嬉死!!」
「あっ! ちょ!」
何を勘違いしたのか、夢織の胸元に押し付ける形になった私の頭を両腕で抱きしめてきた。
動物王国を作った眼鏡のおじさんがヨーシヨシヨシとやる時ばりに頭とか背中を撫でられている。
思いもよらぬカウンターに背筋がゾゾッと寒くなってとっさに離れようとするが夢織に頭を抱えられていて離れられない。
こいつ無駄にいい香りしやがって……あと私よりおっぺぇ大きい……
「ちっちゃい! 可愛い!」
「離して! 私はリアルでてぇてぇするつもりない!」
「え?! 今アタシとアシュリーてぇてぇ?!」
しまった。思わずよりヒートアップさせる言葉を言ってしまった。
【てぇてぇ】とは尊いからきたネットスラングで、主にVtuber同士が仲良くしたりイチャイチャしたりしてる時に使う言葉である。
この場合夢織と私がイチャイチャして百合の花が咲いているってこと。何故アシュリーの時でさえ他人との絡みがなくて言われたことがないのに現実でそうならにゃならんのだ。
私に百合属性はないのに。
「ふふふ……このアタシをどかせられるかな?」
「こいつ……」
夢織が恍惚とした声で調子に乗り始めた。
私は夢織の腹を押すどころか、拳を握ってボスボス背中を叩いてるのに怯む様子はない。
ただ頭を抱えられてるだけで、ヘッドロックみたいにガッチリ組まれたわけではないのに抜け出せない。
総合格闘技の試合でも見たことないよ、この態勢で動けない所。
「もう今日の配信やめようかな……」
「ええ?!」
お、離してくれた。やっぱりこっち系は効果あるね。
それにしても何を驚いてるんだ。陰キャにはそれくらいの嫌なことなんだぞ。
私はこればっかりは配信さぼっての炎上も辞さない不退転の意思を示すつもりだ。
陽キャには屈するつもりはない。
「私は個人Vtuberだから配信サボるのも自由、さあどうする?」
「うぐぅ……」
配信そのものを盾に取られ怯んだ夢織は、今度こそ私の腕力でも動かすことができた。
夢織の腕を左右からつかんでクルリと回れ右させ、外へと向けて背中を押すと一歩一歩、やや抵抗しながらも歩いてくれた。
すると夢織が背中越しに私の方を向いて最後の悪あがきのおねだりをしてくる。
「じゃっ……じゃあカラオケ! 今度一緒にカラオケ行こうよ!」
「無理です」
夢織が背中を押されながらまた恐ろしいことを言ってくる。
漫画で見たことある。チャラ男とか出るんでしょ?
カラオケデビューは私にはまだ早いって。
大体、私のファンが店員さんにいたら歌声でバレるかもしれないし感情とか抜きにして駄目だ。
私はこれでも人気Vtuberなのだ。普通の人と比べると声優のような特徴的な声をしてるので気を付けるに越したことはない。
「じゃあ今日はちゃんと自分の家で配信見てね」
「あ~ん……」
扉を閉めるとき悲痛な声が聞こえてきた。
勝利の味とはこうも美味なのか。
「ふぅ……準備するか」
なんとか外に押しやった私は配信の準備をしようと道具を取りに普段の配信しているパソコン部屋へと向かった。
「ん?」
そうして戦いの果てに辿り着いたパソコン部屋だが、部屋に入ってまずはスマホを手に取った時、カーテンに違和感を覚えた。
カーテンの下の方が二か所赤くなっている。
具体的に言うとカーテンの後ろに赤い光の玉が二つ透けて見えている。
それほど明るいわけではなく、うっすらとした明かりなのだけど、まだ遮光カーテンではなくレースカーテンで窓を遮っていたのでかろうじて見える。
窓のすぐ外に何かいるなんて、普段なら私は怖くて動けなくなるだろうけど今日は心当たりがあるため焦ることはなかった。
私は窓の方へと近づいてみる。
私の部屋は一軒家の二階で外に足場はないため、普通ならここから覗かれる事はないはずだけど恐らく窓の外の相手はヴァンパイア。
確信をもってカーテンを一気に開ける。
『あ』
思った通り窓にべったりと耳をくっつけている夢織がいた。
カーテンを開けた私に気づいてこっちを向いた夢織と目が合った。何時もは灰色の目を赤く光らせた夢織が、悪戯が見つかったような表情をしている。
私はガラリと窓を開けて覗き魔と化した夢織に弁明を聞くことにした。
「何してるの?」
「えへへへぇ」
愛想笑いで誤魔化す夢織。
私は窓を開けてどうなっているのかと窓の外を覗き込んでみると、夢織は冊子に指をかけているだけで足は宙ぶらりんだった。
こいつならアスレチック番組制覇も夢じゃないな。
スパッツ履いているとはいえスカートでやらない方がいいと思うけど。
「えへへへ」
何も言わない私に夢織は更に誤魔化し笑いする。その顔に窓枠からこの指外して落ちても大丈夫なのか試したくなった。
普通の人間でも二階なら死にはしないだろうしいけるかな?
いけるよな?
やらないけど。
「とりあえず配信できないから帰ってよ」
「そこをなんとか! アタシ! アシュリーの歌めっちゃ好きで生歌聞くまで死ねんの!」
「長生きできるからいいじゃん」
「ぞうじゃなくて~」
とりあえず窓開けたままにする替えにはいかないので窓を閉めよう。
『あれ? 許された? ここで聞いていいの?』
「聞こえるのならどうぞ~」
勘違いして喜んだ声が窓越しに聞こえてきた。
いや……私が防音室ないのに歌う訳ないじゃん。
再び勝利を確信した私は、意気揚々と歌配信専用部屋へと向かった。
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確かに来るなといったはずだけど、夢織はまるでアイドルのコンサートを最前列で見に行けると信じてやまないオタクのような顔をしている。
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「え~どうして?」
「歌ってるところ見られたくない!」
「いっつも歌配信してるじゃん。何万人に聞かせてるんだからアタシ一人どうってことないでしょ?」
「アシュリーになってる時とは違うの!」
「こんな叫んでる柊花初めて……」
そら声も大きくなるわ。
こちとら音楽の授業で先生の前で歌わされる時、就業のチャイムが鳴るまで黙り続けて先生に勝利した女やぞ。
「柊花の好きなお菓子とかジュース一杯買ってきたから!」
「一ミリたりとも心揺れないくらい嫌!」
たしかに私の好きな堅めな歯ごたえが売りのポテトとかコーラとかあるけど、私はそんな食い意地張ってないので天秤に乗せるには軽すぎる。
交渉するならせめて超並ぶお店のケーキでも用意してから出直してこい。
「ほら出てった出てった」
「やだ~」
私は夢織を手で押して玄関の外に……外に……
「ふむぅぅぅ!」
「邪魔しないからさぁ」
私は必死に夢織を玄関の外へと押してるんだけどビクともしない。
埒が明かないので一度離れて方からタックルするようにぶつかってもやっぱり動かない。
それどころか何もされてないかのような顔でおねだりをされ続けている。
力の差がありすぎる……
運動不足だし、輪っかを持って実際に運動するゲームのザ・リング・アドベンチャー配信でもやってみようか。
いや種族差のせいかもしれないしやっても無駄か。
体重バレしたくないし。
「はっ! アシュリーちゃんが私に抱き着いてくれてる?! 嬉死!!」
「あっ! ちょ!」
何を勘違いしたのか、夢織の胸元に押し付ける形になった私の頭を両腕で抱きしめてきた。
動物王国を作った眼鏡のおじさんがヨーシヨシヨシとやる時ばりに頭とか背中を撫でられている。
思いもよらぬカウンターに背筋がゾゾッと寒くなってとっさに離れようとするが夢織に頭を抱えられていて離れられない。
こいつ無駄にいい香りしやがって……あと私よりおっぺぇ大きい……
「ちっちゃい! 可愛い!」
「離して! 私はリアルでてぇてぇするつもりない!」
「え?! 今アタシとアシュリーてぇてぇ?!」
しまった。思わずよりヒートアップさせる言葉を言ってしまった。
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私に百合属性はないのに。
「ふふふ……このアタシをどかせられるかな?」
「こいつ……」
夢織が恍惚とした声で調子に乗り始めた。
私は夢織の腹を押すどころか、拳を握ってボスボス背中を叩いてるのに怯む様子はない。
ただ頭を抱えられてるだけで、ヘッドロックみたいにガッチリ組まれたわけではないのに抜け出せない。
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「ええ?!」
お、離してくれた。やっぱりこっち系は効果あるね。
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陽キャには屈するつもりはない。
「私は個人Vtuberだから配信サボるのも自由、さあどうする?」
「うぐぅ……」
配信そのものを盾に取られ怯んだ夢織は、今度こそ私の腕力でも動かすことができた。
夢織の腕を左右からつかんでクルリと回れ右させ、外へと向けて背中を押すと一歩一歩、やや抵抗しながらも歩いてくれた。
すると夢織が背中越しに私の方を向いて最後の悪あがきのおねだりをしてくる。
「じゃっ……じゃあカラオケ! 今度一緒にカラオケ行こうよ!」
「無理です」
夢織が背中を押されながらまた恐ろしいことを言ってくる。
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「あ~ん……」
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勝利の味とはこうも美味なのか。
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カーテンの下の方が二か所赤くなっている。
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窓のすぐ外に何かいるなんて、普段なら私は怖くて動けなくなるだろうけど今日は心当たりがあるため焦ることはなかった。
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『あ』
思った通り窓にべったりと耳をくっつけている夢織がいた。
カーテンを開けた私に気づいてこっちを向いた夢織と目が合った。何時もは灰色の目を赤く光らせた夢織が、悪戯が見つかったような表情をしている。
私はガラリと窓を開けて覗き魔と化した夢織に弁明を聞くことにした。
「何してるの?」
「えへへへぇ」
愛想笑いで誤魔化す夢織。
私は窓を開けてどうなっているのかと窓の外を覗き込んでみると、夢織は冊子に指をかけているだけで足は宙ぶらりんだった。
こいつならアスレチック番組制覇も夢じゃないな。
スパッツ履いているとはいえスカートでやらない方がいいと思うけど。
「えへへへ」
何も言わない私に夢織は更に誤魔化し笑いする。その顔に窓枠からこの指外して落ちても大丈夫なのか試したくなった。
普通の人間でも二階なら死にはしないだろうしいけるかな?
いけるよな?
やらないけど。
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