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二章
15話 戦士見習いタロウ
「ここにミナトという男がいると聞いた!出てきて俺と闘え!」
俺を物騒に呼ぶ声が外から聞こえる。
「なんだ?」
俺は窓から顔を出すと一人の男が立っていた。
歳はまだ若そうだ。
男は二階の窓から除く俺の顔を発見するとまた声を上げる。
「お前がミナトか!」
「そうですけど……あなたは?」
「俺はアナンの村の戦士見習いタロウだ!お前に決闘を申し込む!」
「はあ?」
いきなり何を言っているんだろうか?
もしかして他の村の男が来たら決闘する文化がここにはあるのか?
タロウと言う男の事は、見たことも聞いたこともない。
全くの初対面だと思う。
俺は少なくとも初対面の男に喧嘩を売られるようなことはしてない筈だが……。
「ちょっと待っててくださ~い……リタさんなんか決闘挑まれたんですがあの人知ってます?俺初対面だと思うんですけど……」
「ああ戦士見習いのタロウだな。今日アンタに求婚してきた女の一人が婚約者だった筈だ。」
「ええ…婚約者いるのに求婚してきたんですか……」
リタの言葉を聞いてガクッとくる。
ということは女関係のクレームってことか?
俺がこの世界の女性の肉食っぷりを受け入れられる時が来るのだろうか。
「ミナト!早く降りてこい!」
どうするべきか?
正直面倒くさくてたまらない。
降りたところで俺に何一つメリットがない。
だけど彼の気持ちもわからないでもないし、やはり降りるべきなんだろう。
「仕方がないか……」
「タロウ!今取り込んでんだ!また出直しな!」
渋々だが降りて話をしようかと決心した時だった。
リタが俺を押しのけ、窓から顔を出して啖呵を切ったのだ。
戦士見習いのタロウが何か言おうとしていたが、リタはそれを無視し、木窓を締めてしまった。
「人の家まで来て面倒くさい男だな。」
「えーリタさん、ちょっと俺あの人と話してこようかと思ってるんですが……」
「いいんだよ。あんなやつほっとけば。」
そう言いながらリタは金具を下ろして窓の鍵を締める。
ちなみに日本でよく使われている半回転させるクレセント錠ではなく、南京錠を使っている。
部屋は暗闇に包まれたが、直ぐにリタがランタンに火をともしてうっすらと明るくなる。
(あれ?これどうやって出れば……)
「その…よろしくお願いします。」
先程タロウに啖呵を切ったときは、何時もの勇ましさを取り戻していたが、またあのもじもじモードになってしまった。
それも明らかにさっきまでと違い覚悟完了の様子である。
あんな邪魔があったというのに続けようとする辺り、初心でもやはりこの世界の女と言うことだろうか。
リタがぱさっとベッドに倒れ込んだ。
まずい、女にここまでさせて恥かかせるのは忍びないが、これ以上はいけない。
「リタさん鍵開けてくれませんか?」
「……なんでだよ……」
「さっきも言いましたがちょっと外の奴と話してきます。それに僕は心に決めた人がいるんです。」
「やっぱりあたいみたいな女らしく無い奴じゃ駄目ってことか?」
「うぐっ!」
これは反則だ。
リタがもじもじモードから不安そうなうるうるモードになってしまった。
普段強気で男勝りな口調のリタだが、同時にコンプレックスだということだろうか。
そのいじらしさに胸がキュンとしてしまった。
だがここは心を鬼にしなければならない。
「あなたは凄く魅力的です。でも俺は相手が誰であろうと靡きません。鍵を渡してください。」
俺は語気を強くして、決して折れない意志を示そうとする。
リタはそんな俺に少し怯んだのか肩をビクッと震わせたが、やはりこの世界の女は逞しかった。
手をかざして何かを見せてきた。
「…ほら、これが鍵だ。これが欲しいなら力付くで奪いな。」
目をそらしながらリタはそう言うと、分厚い上着を脱ぎ、タンクトップ姿になる。
するとタンクトップの胸元を開き、見せつけるようにしながら鍵を胸の谷間に収めてしまった。
「好きにしろよ…その代わり、お…おっぱいに触ったらせせせ…責任…とれ!」
「ええ…?」
やばい!この女、既に王手を決めにかかっている!
俺が鍵を渡すように説得しようとしても頑なに拒んでくる。
それどころか説得するたびにリタが薄着になっていき、もうパンツとブラだけだ。
毎日鎚でも振ってるのだろうか?
よく鍛えられた健康的な体が眩しい。
(考えろ…何か生き残る手段はあるはずだ…俺はあの生死をかけた戦いを生き延びたんだ!ここで終わるわけには行かない!)
俺は部屋中に視線を巡らせ何か手はないか考える。
出口はない。
使えそうなもの…物はあるが何に使えと言うんだ。
鈍器として使ってリタを気絶させるか?
いや、いくらなんでも好意を寄せてもらってる相手にそれはありえない。
(なにか…なにか……あ。)
「パンツも脱ぐぞ!もし見たら責任とるんだぞ!いいな!……ミナト?」
俺は何も持たずに窓に近づく。
その様子を不思議そうにリタが観察している。
なぜ直ぐに思いつかなかったんだ。
俺の起死回生の究極の一手、それはただ窓を開けることだったんだ。
俺は木窓を押すと、当然鍵が邪魔してくる。
だが俺は男だ。
こんな物で俺の進む道を阻む事などできない。
床を蹴り、腰を回して腕に回転の力を伝える。
窓に当てられた手により窓に力は伝えられ、窓から金属の鍵にまで伝搬した。
鍵はガチン!っと音を響かせて俺に抵抗しようとする。
だが鍛え抜かれた俺の力を受け止めるには、鍵を止めている窓側が貧弱すぎた。
鍵を止めている窓から釘が抜け、窓が勢いよく開く。
(外だ!)
俺は窓から身を乗り出して二階から飛び降りた。
この程度の高さは今の俺には椅子から降りるくらいに簡単なことだ。
俺は着地に成功し、顔を上げる。
「タロウさん!お待たせしました!話を聞き…ましょ…う……」
タロウは諦めずにまだ外にいたようだ。
だが、タロウは正座しており、リタの母親がその前に立っている。
俺が飛び降りたことで二人の視線は俺に集中している。
「あら?うるさくしてごめんなさいねぇ。今この男に静かにするように言い聞かせてたところだから、安心して部屋に戻って下さい。」
どうやらリタの邪魔はさせまいとタロウを母親が説教していたようだ。
俺をすごい剣幕で見ていたタロウが、今では俺に助けを求めるような目で見てくる。
「えっと…その人と話があるんで……」
「ミナト!俺と勝負しろ!それとさっきは助かった……」
「先ずは話し合いませんか?あとどういたしまして。」
勝負しろと叫んだあとにペコッと頭を下げるタロウ。
どうやら悪い人ではなさそうだ。
俺はあの後、引き止めるリタの母親から用事があると言ってなんとか逃げてきた。
その際、タロウもこっちでなんとかすると言って連れてきた。
今は的やカカシが立ててあるアナンの村の訓練場に来ている。
「なんで俺と戦おうとしてたんですか?」
「俺の唯一の婚約者がお前に求婚したと聞いたからだ!」
「あーやっぱりですか…その事なら俺は断った筈なので心配しなくても大丈夫ですよ。」
「俺もそう聞いているが、今ここで俺の強さを示しとかないと逃げられるんだよ!」
やっぱり女絡みだったようだ。
それも質の悪い事に、俺の対応をわかった上で喧嘩をふっかけてるらしい。
「俺にメリット無いし嫌なんですけど……」
「くっ…確かにそうだが…頼む!俺を助けると思って正々堂々と決闘してくれ!」
なんで決闘を頭を下げられて申し込まれてるんだろうか?
まあ彼の気持ちも分からないでもないし、命の取り合いじゃなければいいか……。
メリットないと言ったが知らない人と訓練できると思えばメリットはある。
「分かりました。やりましょう。勿論、命のやり取りや障害の残る様な怪我はなしでお願いします。」
「本当か!恩に切る!」
そういうわけで俺とタロウは決闘することになった。
訓練場の雪は少し残っているものの、殆ど除雪されており、踏ん張りはしっかり効きそうだ。
どこからか騒ぎを聞きつけ、いつの間にか村の人間達が俺達を見ている。
その中には俺に求婚してきたタロウの婚約者もいる。
タロウの武器は女の狩猟衆が使うような普通の木刀だ。
大して俺が訓練場から借りたのは、3倍は分厚い、もはや棍棒というべき木刀だ。
(落ち着け、同じ戦士見習いだ。俺の力が通用しないはずはない。)
「では行くぞ!」
タロウは剣を振りかぶり切りかかってきたのに対し、俺も同じように切りかかって剣同士がぶつかる。
鍔迫り合いになったのは一瞬で、タロウは直ぐに俺の攻撃で押し出されるように後ろに飛んだ。
俺はすかさず追いかけるが、木刀を前に突き出し、踏み込む俺の顔を狙ってくる。
俺はひるまずに更に踏み込んで地面と体が水平になるほど体を低くした。
俺の背中には木刀が擦る感触を感じる。
倒れる体を足を大きく開いて前に出して支えると、右手に持った棍棒を太腿に向かって振った。
タロウの足に棍棒が触れる。
だがタロウは俺の棍棒が骨に到達してダメージを与える前に、頭を横に投げ出して手を地面につけない側転でダメージを逃した。
(マジかよ!)
キマったと思っただけにこの回避のされ方は驚いた。
このタロウもという男はなかなかの使い手のようだ。
俺は横に流れた棍棒の動きをそのまま活かし、円を描くように頭の上まで持ってきて、タロウの肩に向かって振り下ろす。
タロウは木刀で俺の棍棒を受けた。
だが武器の重量は遥かにこちらのほうが上で、なおかつ重量を活かせる振り下ろしだ。
このまま行けると判断して、ガードの上からタロウの肩を狙うべく更に力を込める。
だが次の瞬間、俺の腕に棍棒を通じて感じる抵抗が消え去った。
タロウは棍棒を受けた木刀を縦にしながら受け流し、タロウの木刀を押し出す俺の力も利用して半歩
横にずれて回避したのだ。
(こんな重い武器の一撃を受け流された?!)
タロウは俺が攻撃を受け流されたことで、体勢を崩すしたところを狙い、木刀を薙ぎ払ってくる。
(軽い……)
木刀は俺の腕に当たるが、この程度の威力なら問題ない。
俺は木刀を無視して棍棒を薙払ってタロウを後ろに下がらせた。
タロウは離れて直ぐに一気に踏み込んで突きを放ってきた。
突きは腹に向かっている。
俺は体を右足を後ろに下げ、半身になって避けると、左手で突きを放ったタロウの右腕を掴む。
「もう逃さねえぞ!」
タロウは必死に俺の腕を振りほどこうとするが、俺は握力を強めて絶対に離してやらない。
ミシミシと俺が掴んだタロウの腕から骨がきしむ音が聞こえる。
抵抗する力はそうでもない。
右腕で棍棒を振りおろす。
流石に腕を掴まれた状態では避けることができなかったようだ。
棍棒は今度こそタロウの肩をガードの上から打ち据えた。
「がっ!」
タロウはたまらず膝をついた、俺は握った腕を後ろにまわして一気にひねりあげる。
タロウは俺の捻り上げで、顔を雪の地面につけて身動きが取れなくなった。
「はぁ…はぁ…俺の…勝ちです……。」
「……俺の負けだ。」
ギリギリの戦いに、いつの間にか息を止めていたようだ。
肺が空気を求めて呼吸が荒くなっている。
だがなんとかなった。
俺の初のサンの村以外の人間との戦いに無事勝利する事ができた。
俺を物騒に呼ぶ声が外から聞こえる。
「なんだ?」
俺は窓から顔を出すと一人の男が立っていた。
歳はまだ若そうだ。
男は二階の窓から除く俺の顔を発見するとまた声を上げる。
「お前がミナトか!」
「そうですけど……あなたは?」
「俺はアナンの村の戦士見習いタロウだ!お前に決闘を申し込む!」
「はあ?」
いきなり何を言っているんだろうか?
もしかして他の村の男が来たら決闘する文化がここにはあるのか?
タロウと言う男の事は、見たことも聞いたこともない。
全くの初対面だと思う。
俺は少なくとも初対面の男に喧嘩を売られるようなことはしてない筈だが……。
「ちょっと待っててくださ~い……リタさんなんか決闘挑まれたんですがあの人知ってます?俺初対面だと思うんですけど……」
「ああ戦士見習いのタロウだな。今日アンタに求婚してきた女の一人が婚約者だった筈だ。」
「ええ…婚約者いるのに求婚してきたんですか……」
リタの言葉を聞いてガクッとくる。
ということは女関係のクレームってことか?
俺がこの世界の女性の肉食っぷりを受け入れられる時が来るのだろうか。
「ミナト!早く降りてこい!」
どうするべきか?
正直面倒くさくてたまらない。
降りたところで俺に何一つメリットがない。
だけど彼の気持ちもわからないでもないし、やはり降りるべきなんだろう。
「仕方がないか……」
「タロウ!今取り込んでんだ!また出直しな!」
渋々だが降りて話をしようかと決心した時だった。
リタが俺を押しのけ、窓から顔を出して啖呵を切ったのだ。
戦士見習いのタロウが何か言おうとしていたが、リタはそれを無視し、木窓を締めてしまった。
「人の家まで来て面倒くさい男だな。」
「えーリタさん、ちょっと俺あの人と話してこようかと思ってるんですが……」
「いいんだよ。あんなやつほっとけば。」
そう言いながらリタは金具を下ろして窓の鍵を締める。
ちなみに日本でよく使われている半回転させるクレセント錠ではなく、南京錠を使っている。
部屋は暗闇に包まれたが、直ぐにリタがランタンに火をともしてうっすらと明るくなる。
(あれ?これどうやって出れば……)
「その…よろしくお願いします。」
先程タロウに啖呵を切ったときは、何時もの勇ましさを取り戻していたが、またあのもじもじモードになってしまった。
それも明らかにさっきまでと違い覚悟完了の様子である。
あんな邪魔があったというのに続けようとする辺り、初心でもやはりこの世界の女と言うことだろうか。
リタがぱさっとベッドに倒れ込んだ。
まずい、女にここまでさせて恥かかせるのは忍びないが、これ以上はいけない。
「リタさん鍵開けてくれませんか?」
「……なんでだよ……」
「さっきも言いましたがちょっと外の奴と話してきます。それに僕は心に決めた人がいるんです。」
「やっぱりあたいみたいな女らしく無い奴じゃ駄目ってことか?」
「うぐっ!」
これは反則だ。
リタがもじもじモードから不安そうなうるうるモードになってしまった。
普段強気で男勝りな口調のリタだが、同時にコンプレックスだということだろうか。
そのいじらしさに胸がキュンとしてしまった。
だがここは心を鬼にしなければならない。
「あなたは凄く魅力的です。でも俺は相手が誰であろうと靡きません。鍵を渡してください。」
俺は語気を強くして、決して折れない意志を示そうとする。
リタはそんな俺に少し怯んだのか肩をビクッと震わせたが、やはりこの世界の女は逞しかった。
手をかざして何かを見せてきた。
「…ほら、これが鍵だ。これが欲しいなら力付くで奪いな。」
目をそらしながらリタはそう言うと、分厚い上着を脱ぎ、タンクトップ姿になる。
するとタンクトップの胸元を開き、見せつけるようにしながら鍵を胸の谷間に収めてしまった。
「好きにしろよ…その代わり、お…おっぱいに触ったらせせせ…責任…とれ!」
「ええ…?」
やばい!この女、既に王手を決めにかかっている!
俺が鍵を渡すように説得しようとしても頑なに拒んでくる。
それどころか説得するたびにリタが薄着になっていき、もうパンツとブラだけだ。
毎日鎚でも振ってるのだろうか?
よく鍛えられた健康的な体が眩しい。
(考えろ…何か生き残る手段はあるはずだ…俺はあの生死をかけた戦いを生き延びたんだ!ここで終わるわけには行かない!)
俺は部屋中に視線を巡らせ何か手はないか考える。
出口はない。
使えそうなもの…物はあるが何に使えと言うんだ。
鈍器として使ってリタを気絶させるか?
いや、いくらなんでも好意を寄せてもらってる相手にそれはありえない。
(なにか…なにか……あ。)
「パンツも脱ぐぞ!もし見たら責任とるんだぞ!いいな!……ミナト?」
俺は何も持たずに窓に近づく。
その様子を不思議そうにリタが観察している。
なぜ直ぐに思いつかなかったんだ。
俺の起死回生の究極の一手、それはただ窓を開けることだったんだ。
俺は木窓を押すと、当然鍵が邪魔してくる。
だが俺は男だ。
こんな物で俺の進む道を阻む事などできない。
床を蹴り、腰を回して腕に回転の力を伝える。
窓に当てられた手により窓に力は伝えられ、窓から金属の鍵にまで伝搬した。
鍵はガチン!っと音を響かせて俺に抵抗しようとする。
だが鍛え抜かれた俺の力を受け止めるには、鍵を止めている窓側が貧弱すぎた。
鍵を止めている窓から釘が抜け、窓が勢いよく開く。
(外だ!)
俺は窓から身を乗り出して二階から飛び降りた。
この程度の高さは今の俺には椅子から降りるくらいに簡単なことだ。
俺は着地に成功し、顔を上げる。
「タロウさん!お待たせしました!話を聞き…ましょ…う……」
タロウは諦めずにまだ外にいたようだ。
だが、タロウは正座しており、リタの母親がその前に立っている。
俺が飛び降りたことで二人の視線は俺に集中している。
「あら?うるさくしてごめんなさいねぇ。今この男に静かにするように言い聞かせてたところだから、安心して部屋に戻って下さい。」
どうやらリタの邪魔はさせまいとタロウを母親が説教していたようだ。
俺をすごい剣幕で見ていたタロウが、今では俺に助けを求めるような目で見てくる。
「えっと…その人と話があるんで……」
「ミナト!俺と勝負しろ!それとさっきは助かった……」
「先ずは話し合いませんか?あとどういたしまして。」
勝負しろと叫んだあとにペコッと頭を下げるタロウ。
どうやら悪い人ではなさそうだ。
俺はあの後、引き止めるリタの母親から用事があると言ってなんとか逃げてきた。
その際、タロウもこっちでなんとかすると言って連れてきた。
今は的やカカシが立ててあるアナンの村の訓練場に来ている。
「なんで俺と戦おうとしてたんですか?」
「俺の唯一の婚約者がお前に求婚したと聞いたからだ!」
「あーやっぱりですか…その事なら俺は断った筈なので心配しなくても大丈夫ですよ。」
「俺もそう聞いているが、今ここで俺の強さを示しとかないと逃げられるんだよ!」
やっぱり女絡みだったようだ。
それも質の悪い事に、俺の対応をわかった上で喧嘩をふっかけてるらしい。
「俺にメリット無いし嫌なんですけど……」
「くっ…確かにそうだが…頼む!俺を助けると思って正々堂々と決闘してくれ!」
なんで決闘を頭を下げられて申し込まれてるんだろうか?
まあ彼の気持ちも分からないでもないし、命の取り合いじゃなければいいか……。
メリットないと言ったが知らない人と訓練できると思えばメリットはある。
「分かりました。やりましょう。勿論、命のやり取りや障害の残る様な怪我はなしでお願いします。」
「本当か!恩に切る!」
そういうわけで俺とタロウは決闘することになった。
訓練場の雪は少し残っているものの、殆ど除雪されており、踏ん張りはしっかり効きそうだ。
どこからか騒ぎを聞きつけ、いつの間にか村の人間達が俺達を見ている。
その中には俺に求婚してきたタロウの婚約者もいる。
タロウの武器は女の狩猟衆が使うような普通の木刀だ。
大して俺が訓練場から借りたのは、3倍は分厚い、もはや棍棒というべき木刀だ。
(落ち着け、同じ戦士見習いだ。俺の力が通用しないはずはない。)
「では行くぞ!」
タロウは剣を振りかぶり切りかかってきたのに対し、俺も同じように切りかかって剣同士がぶつかる。
鍔迫り合いになったのは一瞬で、タロウは直ぐに俺の攻撃で押し出されるように後ろに飛んだ。
俺はすかさず追いかけるが、木刀を前に突き出し、踏み込む俺の顔を狙ってくる。
俺はひるまずに更に踏み込んで地面と体が水平になるほど体を低くした。
俺の背中には木刀が擦る感触を感じる。
倒れる体を足を大きく開いて前に出して支えると、右手に持った棍棒を太腿に向かって振った。
タロウの足に棍棒が触れる。
だがタロウは俺の棍棒が骨に到達してダメージを与える前に、頭を横に投げ出して手を地面につけない側転でダメージを逃した。
(マジかよ!)
キマったと思っただけにこの回避のされ方は驚いた。
このタロウもという男はなかなかの使い手のようだ。
俺は横に流れた棍棒の動きをそのまま活かし、円を描くように頭の上まで持ってきて、タロウの肩に向かって振り下ろす。
タロウは木刀で俺の棍棒を受けた。
だが武器の重量は遥かにこちらのほうが上で、なおかつ重量を活かせる振り下ろしだ。
このまま行けると判断して、ガードの上からタロウの肩を狙うべく更に力を込める。
だが次の瞬間、俺の腕に棍棒を通じて感じる抵抗が消え去った。
タロウは棍棒を受けた木刀を縦にしながら受け流し、タロウの木刀を押し出す俺の力も利用して半歩
横にずれて回避したのだ。
(こんな重い武器の一撃を受け流された?!)
タロウは俺が攻撃を受け流されたことで、体勢を崩すしたところを狙い、木刀を薙ぎ払ってくる。
(軽い……)
木刀は俺の腕に当たるが、この程度の威力なら問題ない。
俺は木刀を無視して棍棒を薙払ってタロウを後ろに下がらせた。
タロウは離れて直ぐに一気に踏み込んで突きを放ってきた。
突きは腹に向かっている。
俺は体を右足を後ろに下げ、半身になって避けると、左手で突きを放ったタロウの右腕を掴む。
「もう逃さねえぞ!」
タロウは必死に俺の腕を振りほどこうとするが、俺は握力を強めて絶対に離してやらない。
ミシミシと俺が掴んだタロウの腕から骨がきしむ音が聞こえる。
抵抗する力はそうでもない。
右腕で棍棒を振りおろす。
流石に腕を掴まれた状態では避けることができなかったようだ。
棍棒は今度こそタロウの肩をガードの上から打ち据えた。
「がっ!」
タロウはたまらず膝をついた、俺は握った腕を後ろにまわして一気にひねりあげる。
タロウは俺の捻り上げで、顔を雪の地面につけて身動きが取れなくなった。
「はぁ…はぁ…俺の…勝ちです……。」
「……俺の負けだ。」
ギリギリの戦いに、いつの間にか息を止めていたようだ。
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現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編