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15章:憧れを胸に
3話:アーリンの秘密
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翌日はあまりに突拍子がなくて、しかも過酷な訓練が言い渡された。
「…………え?」
「第一師団は弓を持って森で狩りをする。獲物が捕れなければ肉無しだぞ」
「……マジか」
ジェイソンを含めて全員が途方に暮れた顔をするが、ゼロスもコンラッドも本気らしい。
こんな無茶振り第一だけかと思ったら、他の所でもどよめきが起こっている。
「第三は湖で釣りね。これ、今日の夕飯になるから気合い入れて」
「第二師団は周辺の測量と地図作りするよ。間違えたら肉なしだから」
「第五は木を切って薪作るからな。煮炊きに必要だから必死こいてやるよ」
「第四は薬草を採りに行きます。全員十種類は見つけて下さいね。毒を見つけた場合は得点足しますが、摘み取った場合はお昼抜きです」
なんだか、大変な事を言われている。ジェイソンは手元の弓矢を見て、頑張ろうと気合いを入れた。
とはいえ、気合いでどうにかなるわけがない。
森はけっこう草食動物がいて姿を見る。そこに狙いを定めて矢を放つが、最初は真っ直ぐ長い距離を飛ばす事がまずできなかった。届いたとしても仕留める事なんてできない。そもそも気配を察知して逃げてしまうのだ。
今ジェイソンの目の前にはウサギがいる。まだこちらには気づいていないだろう。そっと近づいて、弓を引く。そうして放った矢は一歩届かずウサギが前に逃げた。
だが背後から飛んできた矢が見事、動き出したウサギを仕留めた。
「アーリン!」
急いで後ろを振り向くと、アーリンが弓を構えていた。青い瞳がジェイソンを見ている。
「下手くそ」
「だって、難しい……」
「風下に立て、奴らは臭いにも敏感だ。気配を消して、顔の向きや体の向きも計算に入れろ。止まっているその場所よりも少し進行方向を狙え」
早口に一通り言い終えたアーリンが、仕留めたウサギの側へと行って血抜きをして、袋に入れる。
一連の事を呆然と見ていたジェイソンは、グッと拳を握る。そして、気合いを入れ直して森の中を進んだ。
そうして少し。運良くウサギを見つけたジェイソンはアーリンの教えてくれた事を忠実に守った。
風下に立ち、音を立てないようにして、気配を消して弓を引く。体の向きを見て、こちらを警戒していないのを何度も確認して、矢を放った。
「やった!」
無事に一羽捕まえる事ができたジェイソンはすぐに血抜きをする。そうして袋に入れた所で、薬草摘みをしているオリヴァーと出くわした。
「おや、どうしました?」
「いえ、獲物を追ってここまできまして」
「とれました?」
「なんとか」
苦笑して袋の中を見せると、オリヴァーは優しく笑って「良かったですね」と言ってくれる。
ジェイソンはこの人を穏やかで優しい人だと思っているのだが、どうにも先輩達は違う事を言う。オリヴァーは怖いと言うのだ。
「それにしても、ウサギでは腹が膨れませんね。もう少し大きな獲物が欲しいところですが」
「大きいですか?」
「鹿とか、イノシシとか、鴨もいいかもしれませんね」
「そんなに大きなものですか!」
想像がつかない。
呆然としているジェイソンだが、にわかに第四が大きな声を上げた。
「オリヴァー様! イノシシが!」
「おや、噂をすれば。今日はイノシシ鍋ですかね」
嬉々としたオリヴァーが自身の弓を握る。一般隊員が持っている物とは明らかに違うものだ。
第四が怯えたように様子を見ているその先、かなり距離のある場所にイノシシが確かにいる。それを確認したオリヴァーはまったく臆することなく弓を構えた。
「オリヴァー様?」
「いいですか、よく見ておきなさい」
強い力で引き絞られる弓。それが放たれると、矢は風を切り裂くように突き進んでいく。緩やかなものではない強弓は見事にイノシシの目を射貫いた。
「もう一発!」
立て続けに二本、オリヴァーの素早い矢が放たれると、イノシシは首を貫かれて倒れた。
「ふぅ、イノシシ鍋ゲットですね」
「……すごい」
イノシシなんて、皮膚が硬くて貫けないと思っていた。なのに……
「ジェイソン、ゼロスを呼んでおいで。運ぶのを手伝ってもらいましょう。ついでに第四には動物の解体の仕方を教えましょうね」
「……はい」
にっこりと笑うオリヴァーの後ろで、薬草摘みをしていた第四はげっそりとした顔をするのだった。
ゼロスを探して話をすると、すぐに笛で呼ばれた。この笛はそれぞれの教育係が持っていて音程が違う。程なくして第一が集まってオリヴァーの所に向かうと、絶賛イノシシ解体中で第四は数人げっそりとしていた。
まぁ、分からなくはない。そしてコンラッドが具合悪そうな顔でその場を離れていった。
だがおかげで今夜はイノシシ鍋が食べられるとウハウハで施設に運び込むと、ランバートがやたらと目を輝かせて肉の下処理をし始めた。その手際の良さを見るに、本当にこの人は凄い人だと思う。
それに加えてウサギをゲットできた数人がそれを出し、こっちは唐揚げにする事になった。今日は肉三昧らしいが、何せ喰い盛りが多いだけにこれでも一日分なんだそうだ。
よって、引き続き狩りが必要らしい。
残りの時間とにかく駆けずり回ったジェイソンは、どうにかウサギを数匹、偶然にも鴨を一羽仕留めた。汗だくになってそれをランバートに渡すと、彼はとても嬉しそうに笑ってくれた。
船で湖に出て魚を釣っていた第三は、多少魚が釣れたくらいで数人が全身びっしょりだった。聞くところによると落ちたらしい。
そして第五はとにかく汗臭かった。不慣れな斧を使っての薪作りはそれほどに重労働だったのだろう。
だが、何より嬉しいのが既に風呂の準備が出来ていた事だった。ランバートがその辺の雑事を全部引き受けてくれたらしく、食事から何から完璧だ。
この人、神様かもしれないとクタクタの新人はとにかく拝むくらいだった。
その夜、疲れ果てて食事の後すぐに泥のように眠ったジェイソンは、ふとした音に目が覚めて起き上がった。
月明かりが差し込む室内に人の気配がない。だが寝落ちする少し前にアーリンは確かに帰ってきて、言葉も交わさずに寝たはずだった。
起き上がって確かめたが、彼のベッドはもぬけの殻。しかもちょっとトイレという感じはない。ちょっとなら布団とか、ちょっとぐしゃりとしているはず。なのにアーリンのベッドは整えられてまだ誰も寝ていないかのようだ。
おかしい。嫌な予感がして外に出たジェイソンはそのまま歩き出す。月が明るい夜で、廊下を青白く照らし出している。
人がいないかと辺りを見回すと、少し遠くから知っている顔をみつけた。
「コリー!」
「ジェイソン? どうしたのさ」
夜間警備なのだろうコリーがこちらへと近づいてくる。ジェイソンは駆け寄って、すぐにアーリンを見なかったかを訪ねた。
「アーリン? それは見てないけど、ブランドンはさっき見たよ。相変わらずコバンザメ数人連れてさ」
「ブランドンが?」
嫌な顔をするコリーに、ジェイソンも同じように嫌な顔をする。それは、このブランドンという男があまりいい人間ではないことを物語っていた。
ブランドン・ウォーレイは、いわゆるいじめっ子タイプの男だ。ガキ大将を拗らせたとも言う。いつも子分を引き連れて俺様のように振る舞い、弱そうな相手に強気の姿勢を取る。そのくせ根性はなく、訓練を真っ先にリタイアするのはこいつだ。
昔は人の言うことなど聞かなかったらしいし、何でも腕力と家のコネで解決してきた男だったが、騎士団に入ってからはそうもいかない。何せブランドンくらい簡単に捻り倒す人が多い。
だからといって家のコネが通じる人達でもない。ランバートやファウストは特にそうで、家柄も地位も全く適わないのだ。
その結果、何か弱みを握るといじめ倒したり、嫌みを言ったりしてくる。ジェイソンに「兄の七光り」と言ってくるのもこいつだったりする。
「アーリンなら喧嘩であいつらに負けるとは思わないんだけどさ」
「俺もそうは思うけれど。そもそも一緒に居ないと思うし」
「どうかな? なんか変な噂を聞いたよ」
「噂?」
嫌な予感が更に増していくジェイソンに、コリーは素直に頷いた。
「アーリンがブランドンのいいなりになってるって。なんか弱みでも握られたんじゃないかって噂」
「何だよそれ」
アーリンが? ブランドンに?
話しを聞いて、カッと腹の底が熱くなる感じがした。それは瞬間的に湧いた怒りだった。
だが、どうしてそこまでの怒りを感じたのかは分からない。ルームメートで仲間。けれどそれ以上の関わりは今のところないはずなのに。
「詳しくは分からないよ。なにせアーリンもあの性格だから、話してくれないと思うし」
「だよな。 ……分かった、有難う。俺、少し探してみるよ」
コリーと別れて更に探し出したジェイソンは、夜警をしている他の人にも聞いてみた。するとやっぱりブランドンの話しは出てくるけれどアーリンは分からない。コリーの話も気になったジェイソンはとりあえずブランドンの足取りを追って、施設の中庭の方へと回ってみた。
「ジェイソン?」
「ユーイン! なぁ、ブランドンかアーリン知らないか?」
「え?」
夜警のユーインはとても不思議そうな顔をする。おそらくアーリンだけなら分かるだろうが、ブランドンというのが解せない様子だ。
理由を簡単に話すと、ユーインも納得してくれる。そしてスッと、中庭から森へと向かう道を指し示す。が、そこは簡単な柵と木戸があって、そこを夜間出てはいけない事になっていた。
「誰か分からない、けど。とても遠くから、そこを誰か通った」
「本当か!」
「う、ん。戸が閉まるのを、見たから」
多分出たら怒られる。これがブランドン達だけなら規律違反を犯してまで行く価値がない。けれどもしもアーリンがいて、本当にあいつらの言いなりになっていたら……。
ジェイソンが覚悟を決めて一歩踏み出す。その袖を、ユーインが引いて首を横に振った。
「ダメ、だよ。規律違反になる。怒られるだけならいいけど、最悪除隊……」
「でも!」
「どうして、そこまでするの? アーリンと、そんなに仲、いいの?」
ユーインの言葉に、ジェイソンは一瞬詰まった。確かに仲がいいわけじゃない。同室ってだけ。一緒に壇上に上がって剣を下賜されただけ。ただそれだけだ。
でも……
「ごめん、放っておけないんだよ」
「……分かった」
手を離してくれて、ジェイソンは木戸を開けて森へと出た。一本道が続いている。そこを走っていくと、十分程度で小さな小屋が見えてきた。多分不要な物を放り込んでおく小屋としてあるのだろう。その中からゆらゆらと、明かりが揺れて人の声が聞こえていた。
何を言っているのかは分からない。けれど複数いる。ジェイソンは躊躇いなくドアを引き開けた。
そこに広がった光景に、ジェイソンは言葉がなかった。中にはブランドンと他四人の子分達。そして彼らの目の前で服を脱がされたアーリンがいる。髪や体が汚れている。そして特有の臭いがあった。
「なんだジェイソン、お前もコイツをヤリにきたのか?」
「……え?」
ゲスな笑みを浮かべたブランドンが目だけでアーリンを見て言う。アーリンはとても情けない顔をしていて、次には悔しそうに視線を逸らした。
「遠慮するなよ、溜まってるだろ? コイツ、別に初物じゃねーしな。具合いいぜ、この口」
「!」
腹の中が、胸の奥が、ザワザワ、ぐちゃぐちゃと煮えてくる。拳を握っていつもは耐えられる。けれど今は拳を握ってなお、その拳が震えるくらいの怒りがこみ上げてくる。
「なんだお坊ちゃん、もしかしてやり方知らないのか? 教えてやるよ、こうするんだぜ」
ブランドンがズボンの前だけを緩めて自らの汚い物を取り出す。そしてそれをアーリンに向かって咥えるように命令し、アーリンが辛そうにしながらも従おうと動いた。
その瞬間、ジェイソンの中で何かが切れる音がした。
握った拳が振り上げられ、ブランドンの頬を思い切り殴り倒していた。普段から訓練に耐えたジェイソンの拳は本人が思ったよりも威力があった。軽く吹っ飛んだブランドンが睨み、怒声を上げる。アーリンの前に守るように立ったジェイソンはそのまま、ブランドンも他の子分も合わせてほぼ無傷で殴り倒していた。
興奮に息が上がっている。目の前には殴り合って倒れた五人が転がっている。それを前に冷静になったジェイソンは自分の力の強さに驚きながらも、背後のアーリンに向き直った。
「アーリン、大丈夫か?」
「お前……バカか、問題起こして! これじゃお前まで処分」
「そんなのどうでもいい! 服、どこにある? あっと、拭くもの」
「そんなのどうでもいい! お前は急いでここを離れてこっそり戻れ。頼むから!」
「そんなこと出来ないったら!」
慌ててジェイソンを戻そうとするアーリンの顔や髪を拭くものを探して立ち上がる。そのタイミングで、小屋のドアが開いた。
「!」
「っ!」
月明かりに照らし出されたのは目をつり上げたランバートと、惨状に眉根を寄せるゼロス、ドゥーガルド、ハリー、オリヴァーだった。
「お前達、ここで何をしている」
「あ……」
途端に怖くなった。もしかしたらここで、色んな事が終わるかもしれない。憧れた道が、消えるかもしれない。オスカルに、迷惑をかけてしまう。
けれど背後で顔色のないアーリンを見たら、震えを押し込める事ができた。
「喧嘩して殴ったのは俺です! アーリンは被害者です!」
「ジェイソン!」
「すみません、規律違反は承知しています。でもアーリンは無理矢理だと思います。だから!」
深々と頭を下げるジェイソンに、ランバートが溜息をつく。そしてゼロスとドゥーガルドに転がっている奴らを縛り上げるように頼んで、ジェイソンの前に立った。
「覚悟はあるんだな?」
「はい。でも、アーリンは」
「それは後で聞く。お前はとりあえず謹慎だ。後で話を聞きに行くから、それまで大人しくしておけ」
「……はい」
「ハリー、頼めるか?」
「OK。行くよ、ジェイソン」
ハリーに腕を引かれたジェイソンは大人しく歩き出す。だが小屋を出る少し前、背後を気にして立ち止まって振り返った。
アーリンは気遣うようなランバートとオリヴァーに声を掛けられている。その様子からも、酷くはないだろうと思えた。
「行くよ、大丈夫だから」
「はい」
多分、大丈夫だ。それが分かって、ホッとした。
施設に戻り、使われていない部屋に入るとハリーが手の治療をしてくれた。「下手くそだけど」と前置きをしながらも、手慣れている感じがする。
素手で人を殴ると、こちらもダメージがあるんだと思った。拳は血が出ていて、今になって酷く痛く感じた。
「無茶するよね、本当に。今度誰かを殴る時は加減を考えないと。骨折れるよ」
「殴らないようにとは、言わないんですね」
「無理でしょ。俺も多分無理。我慢はするけれど、我慢の限界だってある。今回のは、そういうことでしょ?」
座っているジェイソンの前に膝をついて治療してくれるハリーが、上目遣いに言ってくる。それに、ジェイソンは頷いた。
「悪いようにはならないよ。ランバートはちゃんと話を聞いてくれる。正直に話せば伝わる相手だから、下手に隠し事しないように。多分バレるから」
「はい、分かりました」
「よしよし、いい子。んじゃ、ここでしばらく待ってなよ」
治療を終えて包帯を巻いてくれて、ハリーは手を振って出て行く。
多分、ユーインが心配になって先輩達に教えたのだろう。これで良かったんだと思う。助かった。
そして思い出して、少し怖くなった。自分に、だ。あんな風に感情が爆発して、どうする事もできずに人を殴るなんて、初めての事だった。もみくちゃになって殴っていたから、誰をどのくらい傷つけたのか分からない。けれど止まった事に、安心した。もしも止まらなかったら、殺していたかもしれない。
傷ついた手を見てみる。思った以上に力がついていた。訓練の成果をこんな形で知るとは思わなかった。前なら殴りかかったってたかが知れていたのに。
もうこの手は、人を殺しかねないくらい強くなっている。それを知ると、怖くなった。
そうしてどれくらい黙って座っていたのか。不意にドアが開いてランバートと、綺麗になったアーリンが入ってきた。俯くアーリンの様子が気になったけれど、とりあえず怪我とかはしていないようでホッとした。
それが顔に出ていたのか、ランバートが困ったように笑う。そしてジェイソンの前に座った。
「何があったか、順を追って話してくれ」
「はい。俺が目を覚ましたら、居るはずのアーリンが居ない事に気づきました。トイレとかではなく、きっちりと布団が整えられていたことに不安を覚え探していると、ブランドンと子分を見たという話しと、誰かが木戸を通って外に出たというのを聞きました」
「夜警のコリーとユーインか。二人が俺に知らせてきたんだ」
「そうだと思いました。助かります」
「助かる?」
「……俺、こんなに自分に力がついていたなんて知りませんでした。素手でこんなに、人を殴り倒せるくらい強くなっているなんて、知りませんでした。冷静になって、怖くなったんです。だから来て頂いて……良かった」
正直な気持ちを伝えるとランバートは目を丸くして、次に笑った。
「このくらいで驚くなよ。ドゥーやファウスト様、クラウル様なんかは本当に拳で人殺せるぞ」
挙げられた人を考えると納得出来るのが凄い。だが、自分はまだまだそんなレベルじゃないと思っていたんだ。
「人を殺す事が怖いなら、騎士団は無理だぞ」
ふと、ランバートが真剣な目をする。それを直視したジェイソンは、キッと強く見つめた。
「覚悟は出来ています!」
「まぁ、追々な」
そう言って、今は許してくれた。おそらく実際の場に立った時はどうなのかとかあるけれど、今は意気込みだけでいいと思ってくれたのだろう。
「さて、続きを頼む」
「はい。その後、道の先で件の小屋を見つけ、声がしたので開けたらブランドン達がアーリンを、その……」
「強姦か?」
「はい。それで我慢ができず、殴ってしまいました。先に殴ったのは俺です」
「……アーリンは、拒んでいなかったんじゃないか?」
「拒んでいなくても無理矢理だってのは、顔とか反応を見れば分かります! 何にしても複数人で囲んであんなことを強要している状況が、普通の状況とは思えません」
ジェイソンはチラリとアーリンを見る。だがアーリンは顔ごと目を逸らしている状態で、横顔しか見えない。その顔すら、悔しそうだった。
ランバートは腕を組んで黙って聞いていたが、やがて深く頷いた。
「分かった。お前の気持ちはよく分かる」
「え?」
「俺も昔はしょっちゅうファウスト様に怒られてたよ。今もだけど」
「え?」
「お前の理由には正義があって、道理がある。だが、違反は違反だ。明日は半日謹慎して、反省文を書くこと。そして今日から一ヶ月、訓練後に追加訓練だ」
「……え゛」
それは嬉しいような、怖いような……
「あの、この事で兄を……オスカル様を困らせるような事は……」
「あるわけないだろ? お前が何をしても、あの人が困ったりする事はないさ。まぁ、一般人を殺したとかになったら別だけど」
「そんなことしません!」
「だろ? 隊内での多少の喧嘩は良くある。それに俺には、お前の主張に義があると思う。どうしたって集団で一人を嬲れば、そういう判断になるだろうしな」
これで沙汰は下ったと、ランバートは腰を上げる。そして代わりにアーリンを椅子に座らせた。
「え? あの……」
「アーリンから、お前に話がある。俺や師団長レベルの人は知っている話だ」
「あの、そんな大事な話をどうして俺に……」
「……お前を、巻き込んだ」
絞り出すようなアーリンの声は震えていた。カサついたような声音に不安になる。水をと思うけれど、どうにもそんな雰囲気ではなかった。
俯いているアーリンは顔を上げないまま、膝の上で拳を握っている。その握った拳も震えている。下唇を噛みしめた顔が、酷く痛く思えてしまう。
「あの、嫌な事は俺知らなくても……」
「ダメだ! 俺はお前を巻き込んで、罰まで受けさせて……なのに俺は報告書だけでほぼお咎めがないなんてそんな……。お前は、知る権利がある」
「いや、だからその権利を放棄しても……」
けれどアーリンが首を強く横に振ったから、それ以上何も言えなくなって黙った。
「……俺の母の名は、カミラ・ドイル」
突然と告げられる言葉に、ジェイソンは首を傾げる。そんな様子にはまったく構わず、アーリンは一気に吐ききるように言葉を繋げた。
「結婚前の名はカミラ・エイプルトン。兄の名はクレイグ・エイプルトン。その子供が……ルース・エイプルトンだ」
「……あ」
しばらくは分からなかった。けれどルースの名が出た途端に、色んな事がわかった。
酷く自嘲気味な顔をするアーリンが正面を向く。歪んだ笑みは、泣いているんだとすぐに分かった。
抱きしめたい。そんな顔をしないで欲しい。「大丈夫」と言ってやりたい。
「俺はあいつの……国の裏切り者の従兄弟にあたるんだ」
「でもお前は関わったわけじゃ……」
「当たり前だろ! 俺の母は嫁いでから一度も伯父と接触していない! ルースとも関係はない! けれど!! けれど、端から見たらそんなの何になるんだ……」
叫ぶ声は吐き出したい色んな感情の塊に思える。苦しくて辛くて憎くて……でも、諦めてもいて。
痛いことが伝わるのは、辛い。アーリンが苦しむ必要なんてないと思う。アーリンは西の戦いに参加していないんだから、反逆者なんかじゃない。
けれど違うと、アーリンはまた自嘲した。
「自分の兄が皇帝暗殺未遂事件を行った時、母は父から離縁された。けれど俺を追い出したら跡取りがいなくなるからと、冷遇の中に置かれた。母は生活の支援を父から受けて、一人で生きてきた。なのに後妻をもらって、その間に男の子が生まれて、ルースの事件を受けて俺も追い出された! 支援も切られ、仕事もなくなり、身一つで……」
グッと声が詰まる。下唇をまた、耐えるように噛んでいる。痛そうなくらいだった。
「仕事についても、半年しないでバレた。反逆者の身内だと。母もそれで定職につけず、体を壊して入院している。俺が……母を助けなければ母は死んでしまう」
「アーリン」
「母が、俺が、何をしたっていうんだ。ただ平穏に、普通に生きてきたんだ。真面目に生きてきたんだ。なのに……どうしてぇ……」
崩れるようなアーリンをどうしていいか分からずオロオロするジェイソンはランバートを見る。ランバートは頷いて、声を上げた。
「事件の時、新聞屋が素性を何の配慮もなく書き立てたんだ。実名や、住んでいる場所や、仕事も。彼ら親子はそれに晒され続け、皆が名を知ってしまった。国がどうにか押さえた時には遅かったんだ」
「……騎士団へと言われ、最初は断った。けれど母の医療費が……払える見込みがなかった。だから生活を保障してくれる騎士団に行く事を決めたんだ。安定もするし。だから、ココを出て行く訳にはいかないんだ」
「あいつらが、それを知ってお前を?」
聞くと、アーリンは静かに頷いた。
「ブランドンの家の家政婦が、元々俺の生家でも働いていたんだ。それで」
「でも嫌なら抵抗できただろ!」
「全員にこれをバラすと言われて、そんなこと出来るか!」
アーリンの睨み付ける目を見て、ジェイソンは後悔した。多分とても、傷つけたんだ。
「お前に、何が分かる。家も裕福で、後ろめたい事なんてなくて、兄は団長で……お前に俺の何が分かる」
「アーリン」
「……嫌いだ、お前なんて。俺を哀れんだ目で見るな!」
酷く泣きそうな苦しそうな顔をしたアーリンは立ち上がり、背を向けてしまう。そしてそのまま、部屋を出ていってしまった。
ランバートが溜息をついて近づいてくる。そしてジェイソンの頭をポンポンと叩いた。
「ここにくるまで、辛かったみたいなんだ。色んな職を転々として、そこでも素性が知れると酷い扱いを受けていたみたいだ」
「でもあいつは何もしてない!」
「それが通用しないのが一般だ。親族がそうならお前もそうなんだろう。そう思う人間が多いのは否めない」
「そんなの!」
「……ジェイソン、俺がアーリンを説得して、お前に話すように言ったのはこれなんだ」
ランバートの困った顔をキョトンと見たジェイソンは首を傾げる。明らかに関係が悪化したようにしか思えないのだが。
「アーリンは意地っ張りでプライドが高い。認めている相手には絶対に弱みを見せたくないタイプの人間だ」
「あー、はい」
ジェイソンもそう思う。
「ジェイソンは誰とでもある程度上手く付き合えて、秘密は絶対に守れる。気遣う気持ちもあるし、何より相手を決めつけないだろ?」
「まぁ、俺って単純でバカなんで、思い込みはダメだなって反省したので」
主に、エリオットの時に猛反省をした。とてもいい人だって分かったら大好きになった。同時にあの時意地悪をした自分がとても嫌いになったのだ。だから、思い込みじゃなくその人を知ってから対応しなければと、常に思うようにしているのだ。
「アーリンの味方になってやってほしい。多分、今も色々と抱えている。けれど俺達の目は見逃す可能性がある。今回もここまで悪化させてしまった。だからお前に、アーリンを支える相手になって欲しいんだ」
ランバートの困ったような目を見て、ジェイソンは頷いた。もとより放っておけないと思っていたのが、こんな話しを聞いたら余計に放っておけなくなった。
「頑張ります」
「頼む」
軽く頭を下げたランバートの苦笑に頷き、ジェイソンは改めて気を引き締める。
「放っておけない」という感情の正体も、分からないままで。
「…………え?」
「第一師団は弓を持って森で狩りをする。獲物が捕れなければ肉無しだぞ」
「……マジか」
ジェイソンを含めて全員が途方に暮れた顔をするが、ゼロスもコンラッドも本気らしい。
こんな無茶振り第一だけかと思ったら、他の所でもどよめきが起こっている。
「第三は湖で釣りね。これ、今日の夕飯になるから気合い入れて」
「第二師団は周辺の測量と地図作りするよ。間違えたら肉なしだから」
「第五は木を切って薪作るからな。煮炊きに必要だから必死こいてやるよ」
「第四は薬草を採りに行きます。全員十種類は見つけて下さいね。毒を見つけた場合は得点足しますが、摘み取った場合はお昼抜きです」
なんだか、大変な事を言われている。ジェイソンは手元の弓矢を見て、頑張ろうと気合いを入れた。
とはいえ、気合いでどうにかなるわけがない。
森はけっこう草食動物がいて姿を見る。そこに狙いを定めて矢を放つが、最初は真っ直ぐ長い距離を飛ばす事がまずできなかった。届いたとしても仕留める事なんてできない。そもそも気配を察知して逃げてしまうのだ。
今ジェイソンの目の前にはウサギがいる。まだこちらには気づいていないだろう。そっと近づいて、弓を引く。そうして放った矢は一歩届かずウサギが前に逃げた。
だが背後から飛んできた矢が見事、動き出したウサギを仕留めた。
「アーリン!」
急いで後ろを振り向くと、アーリンが弓を構えていた。青い瞳がジェイソンを見ている。
「下手くそ」
「だって、難しい……」
「風下に立て、奴らは臭いにも敏感だ。気配を消して、顔の向きや体の向きも計算に入れろ。止まっているその場所よりも少し進行方向を狙え」
早口に一通り言い終えたアーリンが、仕留めたウサギの側へと行って血抜きをして、袋に入れる。
一連の事を呆然と見ていたジェイソンは、グッと拳を握る。そして、気合いを入れ直して森の中を進んだ。
そうして少し。運良くウサギを見つけたジェイソンはアーリンの教えてくれた事を忠実に守った。
風下に立ち、音を立てないようにして、気配を消して弓を引く。体の向きを見て、こちらを警戒していないのを何度も確認して、矢を放った。
「やった!」
無事に一羽捕まえる事ができたジェイソンはすぐに血抜きをする。そうして袋に入れた所で、薬草摘みをしているオリヴァーと出くわした。
「おや、どうしました?」
「いえ、獲物を追ってここまできまして」
「とれました?」
「なんとか」
苦笑して袋の中を見せると、オリヴァーは優しく笑って「良かったですね」と言ってくれる。
ジェイソンはこの人を穏やかで優しい人だと思っているのだが、どうにも先輩達は違う事を言う。オリヴァーは怖いと言うのだ。
「それにしても、ウサギでは腹が膨れませんね。もう少し大きな獲物が欲しいところですが」
「大きいですか?」
「鹿とか、イノシシとか、鴨もいいかもしれませんね」
「そんなに大きなものですか!」
想像がつかない。
呆然としているジェイソンだが、にわかに第四が大きな声を上げた。
「オリヴァー様! イノシシが!」
「おや、噂をすれば。今日はイノシシ鍋ですかね」
嬉々としたオリヴァーが自身の弓を握る。一般隊員が持っている物とは明らかに違うものだ。
第四が怯えたように様子を見ているその先、かなり距離のある場所にイノシシが確かにいる。それを確認したオリヴァーはまったく臆することなく弓を構えた。
「オリヴァー様?」
「いいですか、よく見ておきなさい」
強い力で引き絞られる弓。それが放たれると、矢は風を切り裂くように突き進んでいく。緩やかなものではない強弓は見事にイノシシの目を射貫いた。
「もう一発!」
立て続けに二本、オリヴァーの素早い矢が放たれると、イノシシは首を貫かれて倒れた。
「ふぅ、イノシシ鍋ゲットですね」
「……すごい」
イノシシなんて、皮膚が硬くて貫けないと思っていた。なのに……
「ジェイソン、ゼロスを呼んでおいで。運ぶのを手伝ってもらいましょう。ついでに第四には動物の解体の仕方を教えましょうね」
「……はい」
にっこりと笑うオリヴァーの後ろで、薬草摘みをしていた第四はげっそりとした顔をするのだった。
ゼロスを探して話をすると、すぐに笛で呼ばれた。この笛はそれぞれの教育係が持っていて音程が違う。程なくして第一が集まってオリヴァーの所に向かうと、絶賛イノシシ解体中で第四は数人げっそりとしていた。
まぁ、分からなくはない。そしてコンラッドが具合悪そうな顔でその場を離れていった。
だがおかげで今夜はイノシシ鍋が食べられるとウハウハで施設に運び込むと、ランバートがやたらと目を輝かせて肉の下処理をし始めた。その手際の良さを見るに、本当にこの人は凄い人だと思う。
それに加えてウサギをゲットできた数人がそれを出し、こっちは唐揚げにする事になった。今日は肉三昧らしいが、何せ喰い盛りが多いだけにこれでも一日分なんだそうだ。
よって、引き続き狩りが必要らしい。
残りの時間とにかく駆けずり回ったジェイソンは、どうにかウサギを数匹、偶然にも鴨を一羽仕留めた。汗だくになってそれをランバートに渡すと、彼はとても嬉しそうに笑ってくれた。
船で湖に出て魚を釣っていた第三は、多少魚が釣れたくらいで数人が全身びっしょりだった。聞くところによると落ちたらしい。
そして第五はとにかく汗臭かった。不慣れな斧を使っての薪作りはそれほどに重労働だったのだろう。
だが、何より嬉しいのが既に風呂の準備が出来ていた事だった。ランバートがその辺の雑事を全部引き受けてくれたらしく、食事から何から完璧だ。
この人、神様かもしれないとクタクタの新人はとにかく拝むくらいだった。
その夜、疲れ果てて食事の後すぐに泥のように眠ったジェイソンは、ふとした音に目が覚めて起き上がった。
月明かりが差し込む室内に人の気配がない。だが寝落ちする少し前にアーリンは確かに帰ってきて、言葉も交わさずに寝たはずだった。
起き上がって確かめたが、彼のベッドはもぬけの殻。しかもちょっとトイレという感じはない。ちょっとなら布団とか、ちょっとぐしゃりとしているはず。なのにアーリンのベッドは整えられてまだ誰も寝ていないかのようだ。
おかしい。嫌な予感がして外に出たジェイソンはそのまま歩き出す。月が明るい夜で、廊下を青白く照らし出している。
人がいないかと辺りを見回すと、少し遠くから知っている顔をみつけた。
「コリー!」
「ジェイソン? どうしたのさ」
夜間警備なのだろうコリーがこちらへと近づいてくる。ジェイソンは駆け寄って、すぐにアーリンを見なかったかを訪ねた。
「アーリン? それは見てないけど、ブランドンはさっき見たよ。相変わらずコバンザメ数人連れてさ」
「ブランドンが?」
嫌な顔をするコリーに、ジェイソンも同じように嫌な顔をする。それは、このブランドンという男があまりいい人間ではないことを物語っていた。
ブランドン・ウォーレイは、いわゆるいじめっ子タイプの男だ。ガキ大将を拗らせたとも言う。いつも子分を引き連れて俺様のように振る舞い、弱そうな相手に強気の姿勢を取る。そのくせ根性はなく、訓練を真っ先にリタイアするのはこいつだ。
昔は人の言うことなど聞かなかったらしいし、何でも腕力と家のコネで解決してきた男だったが、騎士団に入ってからはそうもいかない。何せブランドンくらい簡単に捻り倒す人が多い。
だからといって家のコネが通じる人達でもない。ランバートやファウストは特にそうで、家柄も地位も全く適わないのだ。
その結果、何か弱みを握るといじめ倒したり、嫌みを言ったりしてくる。ジェイソンに「兄の七光り」と言ってくるのもこいつだったりする。
「アーリンなら喧嘩であいつらに負けるとは思わないんだけどさ」
「俺もそうは思うけれど。そもそも一緒に居ないと思うし」
「どうかな? なんか変な噂を聞いたよ」
「噂?」
嫌な予感が更に増していくジェイソンに、コリーは素直に頷いた。
「アーリンがブランドンのいいなりになってるって。なんか弱みでも握られたんじゃないかって噂」
「何だよそれ」
アーリンが? ブランドンに?
話しを聞いて、カッと腹の底が熱くなる感じがした。それは瞬間的に湧いた怒りだった。
だが、どうしてそこまでの怒りを感じたのかは分からない。ルームメートで仲間。けれどそれ以上の関わりは今のところないはずなのに。
「詳しくは分からないよ。なにせアーリンもあの性格だから、話してくれないと思うし」
「だよな。 ……分かった、有難う。俺、少し探してみるよ」
コリーと別れて更に探し出したジェイソンは、夜警をしている他の人にも聞いてみた。するとやっぱりブランドンの話しは出てくるけれどアーリンは分からない。コリーの話も気になったジェイソンはとりあえずブランドンの足取りを追って、施設の中庭の方へと回ってみた。
「ジェイソン?」
「ユーイン! なぁ、ブランドンかアーリン知らないか?」
「え?」
夜警のユーインはとても不思議そうな顔をする。おそらくアーリンだけなら分かるだろうが、ブランドンというのが解せない様子だ。
理由を簡単に話すと、ユーインも納得してくれる。そしてスッと、中庭から森へと向かう道を指し示す。が、そこは簡単な柵と木戸があって、そこを夜間出てはいけない事になっていた。
「誰か分からない、けど。とても遠くから、そこを誰か通った」
「本当か!」
「う、ん。戸が閉まるのを、見たから」
多分出たら怒られる。これがブランドン達だけなら規律違反を犯してまで行く価値がない。けれどもしもアーリンがいて、本当にあいつらの言いなりになっていたら……。
ジェイソンが覚悟を決めて一歩踏み出す。その袖を、ユーインが引いて首を横に振った。
「ダメ、だよ。規律違反になる。怒られるだけならいいけど、最悪除隊……」
「でも!」
「どうして、そこまでするの? アーリンと、そんなに仲、いいの?」
ユーインの言葉に、ジェイソンは一瞬詰まった。確かに仲がいいわけじゃない。同室ってだけ。一緒に壇上に上がって剣を下賜されただけ。ただそれだけだ。
でも……
「ごめん、放っておけないんだよ」
「……分かった」
手を離してくれて、ジェイソンは木戸を開けて森へと出た。一本道が続いている。そこを走っていくと、十分程度で小さな小屋が見えてきた。多分不要な物を放り込んでおく小屋としてあるのだろう。その中からゆらゆらと、明かりが揺れて人の声が聞こえていた。
何を言っているのかは分からない。けれど複数いる。ジェイソンは躊躇いなくドアを引き開けた。
そこに広がった光景に、ジェイソンは言葉がなかった。中にはブランドンと他四人の子分達。そして彼らの目の前で服を脱がされたアーリンがいる。髪や体が汚れている。そして特有の臭いがあった。
「なんだジェイソン、お前もコイツをヤリにきたのか?」
「……え?」
ゲスな笑みを浮かべたブランドンが目だけでアーリンを見て言う。アーリンはとても情けない顔をしていて、次には悔しそうに視線を逸らした。
「遠慮するなよ、溜まってるだろ? コイツ、別に初物じゃねーしな。具合いいぜ、この口」
「!」
腹の中が、胸の奥が、ザワザワ、ぐちゃぐちゃと煮えてくる。拳を握っていつもは耐えられる。けれど今は拳を握ってなお、その拳が震えるくらいの怒りがこみ上げてくる。
「なんだお坊ちゃん、もしかしてやり方知らないのか? 教えてやるよ、こうするんだぜ」
ブランドンがズボンの前だけを緩めて自らの汚い物を取り出す。そしてそれをアーリンに向かって咥えるように命令し、アーリンが辛そうにしながらも従おうと動いた。
その瞬間、ジェイソンの中で何かが切れる音がした。
握った拳が振り上げられ、ブランドンの頬を思い切り殴り倒していた。普段から訓練に耐えたジェイソンの拳は本人が思ったよりも威力があった。軽く吹っ飛んだブランドンが睨み、怒声を上げる。アーリンの前に守るように立ったジェイソンはそのまま、ブランドンも他の子分も合わせてほぼ無傷で殴り倒していた。
興奮に息が上がっている。目の前には殴り合って倒れた五人が転がっている。それを前に冷静になったジェイソンは自分の力の強さに驚きながらも、背後のアーリンに向き直った。
「アーリン、大丈夫か?」
「お前……バカか、問題起こして! これじゃお前まで処分」
「そんなのどうでもいい! 服、どこにある? あっと、拭くもの」
「そんなのどうでもいい! お前は急いでここを離れてこっそり戻れ。頼むから!」
「そんなこと出来ないったら!」
慌ててジェイソンを戻そうとするアーリンの顔や髪を拭くものを探して立ち上がる。そのタイミングで、小屋のドアが開いた。
「!」
「っ!」
月明かりに照らし出されたのは目をつり上げたランバートと、惨状に眉根を寄せるゼロス、ドゥーガルド、ハリー、オリヴァーだった。
「お前達、ここで何をしている」
「あ……」
途端に怖くなった。もしかしたらここで、色んな事が終わるかもしれない。憧れた道が、消えるかもしれない。オスカルに、迷惑をかけてしまう。
けれど背後で顔色のないアーリンを見たら、震えを押し込める事ができた。
「喧嘩して殴ったのは俺です! アーリンは被害者です!」
「ジェイソン!」
「すみません、規律違反は承知しています。でもアーリンは無理矢理だと思います。だから!」
深々と頭を下げるジェイソンに、ランバートが溜息をつく。そしてゼロスとドゥーガルドに転がっている奴らを縛り上げるように頼んで、ジェイソンの前に立った。
「覚悟はあるんだな?」
「はい。でも、アーリンは」
「それは後で聞く。お前はとりあえず謹慎だ。後で話を聞きに行くから、それまで大人しくしておけ」
「……はい」
「ハリー、頼めるか?」
「OK。行くよ、ジェイソン」
ハリーに腕を引かれたジェイソンは大人しく歩き出す。だが小屋を出る少し前、背後を気にして立ち止まって振り返った。
アーリンは気遣うようなランバートとオリヴァーに声を掛けられている。その様子からも、酷くはないだろうと思えた。
「行くよ、大丈夫だから」
「はい」
多分、大丈夫だ。それが分かって、ホッとした。
施設に戻り、使われていない部屋に入るとハリーが手の治療をしてくれた。「下手くそだけど」と前置きをしながらも、手慣れている感じがする。
素手で人を殴ると、こちらもダメージがあるんだと思った。拳は血が出ていて、今になって酷く痛く感じた。
「無茶するよね、本当に。今度誰かを殴る時は加減を考えないと。骨折れるよ」
「殴らないようにとは、言わないんですね」
「無理でしょ。俺も多分無理。我慢はするけれど、我慢の限界だってある。今回のは、そういうことでしょ?」
座っているジェイソンの前に膝をついて治療してくれるハリーが、上目遣いに言ってくる。それに、ジェイソンは頷いた。
「悪いようにはならないよ。ランバートはちゃんと話を聞いてくれる。正直に話せば伝わる相手だから、下手に隠し事しないように。多分バレるから」
「はい、分かりました」
「よしよし、いい子。んじゃ、ここでしばらく待ってなよ」
治療を終えて包帯を巻いてくれて、ハリーは手を振って出て行く。
多分、ユーインが心配になって先輩達に教えたのだろう。これで良かったんだと思う。助かった。
そして思い出して、少し怖くなった。自分に、だ。あんな風に感情が爆発して、どうする事もできずに人を殴るなんて、初めての事だった。もみくちゃになって殴っていたから、誰をどのくらい傷つけたのか分からない。けれど止まった事に、安心した。もしも止まらなかったら、殺していたかもしれない。
傷ついた手を見てみる。思った以上に力がついていた。訓練の成果をこんな形で知るとは思わなかった。前なら殴りかかったってたかが知れていたのに。
もうこの手は、人を殺しかねないくらい強くなっている。それを知ると、怖くなった。
そうしてどれくらい黙って座っていたのか。不意にドアが開いてランバートと、綺麗になったアーリンが入ってきた。俯くアーリンの様子が気になったけれど、とりあえず怪我とかはしていないようでホッとした。
それが顔に出ていたのか、ランバートが困ったように笑う。そしてジェイソンの前に座った。
「何があったか、順を追って話してくれ」
「はい。俺が目を覚ましたら、居るはずのアーリンが居ない事に気づきました。トイレとかではなく、きっちりと布団が整えられていたことに不安を覚え探していると、ブランドンと子分を見たという話しと、誰かが木戸を通って外に出たというのを聞きました」
「夜警のコリーとユーインか。二人が俺に知らせてきたんだ」
「そうだと思いました。助かります」
「助かる?」
「……俺、こんなに自分に力がついていたなんて知りませんでした。素手でこんなに、人を殴り倒せるくらい強くなっているなんて、知りませんでした。冷静になって、怖くなったんです。だから来て頂いて……良かった」
正直な気持ちを伝えるとランバートは目を丸くして、次に笑った。
「このくらいで驚くなよ。ドゥーやファウスト様、クラウル様なんかは本当に拳で人殺せるぞ」
挙げられた人を考えると納得出来るのが凄い。だが、自分はまだまだそんなレベルじゃないと思っていたんだ。
「人を殺す事が怖いなら、騎士団は無理だぞ」
ふと、ランバートが真剣な目をする。それを直視したジェイソンは、キッと強く見つめた。
「覚悟は出来ています!」
「まぁ、追々な」
そう言って、今は許してくれた。おそらく実際の場に立った時はどうなのかとかあるけれど、今は意気込みだけでいいと思ってくれたのだろう。
「さて、続きを頼む」
「はい。その後、道の先で件の小屋を見つけ、声がしたので開けたらブランドン達がアーリンを、その……」
「強姦か?」
「はい。それで我慢ができず、殴ってしまいました。先に殴ったのは俺です」
「……アーリンは、拒んでいなかったんじゃないか?」
「拒んでいなくても無理矢理だってのは、顔とか反応を見れば分かります! 何にしても複数人で囲んであんなことを強要している状況が、普通の状況とは思えません」
ジェイソンはチラリとアーリンを見る。だがアーリンは顔ごと目を逸らしている状態で、横顔しか見えない。その顔すら、悔しそうだった。
ランバートは腕を組んで黙って聞いていたが、やがて深く頷いた。
「分かった。お前の気持ちはよく分かる」
「え?」
「俺も昔はしょっちゅうファウスト様に怒られてたよ。今もだけど」
「え?」
「お前の理由には正義があって、道理がある。だが、違反は違反だ。明日は半日謹慎して、反省文を書くこと。そして今日から一ヶ月、訓練後に追加訓練だ」
「……え゛」
それは嬉しいような、怖いような……
「あの、この事で兄を……オスカル様を困らせるような事は……」
「あるわけないだろ? お前が何をしても、あの人が困ったりする事はないさ。まぁ、一般人を殺したとかになったら別だけど」
「そんなことしません!」
「だろ? 隊内での多少の喧嘩は良くある。それに俺には、お前の主張に義があると思う。どうしたって集団で一人を嬲れば、そういう判断になるだろうしな」
これで沙汰は下ったと、ランバートは腰を上げる。そして代わりにアーリンを椅子に座らせた。
「え? あの……」
「アーリンから、お前に話がある。俺や師団長レベルの人は知っている話だ」
「あの、そんな大事な話をどうして俺に……」
「……お前を、巻き込んだ」
絞り出すようなアーリンの声は震えていた。カサついたような声音に不安になる。水をと思うけれど、どうにもそんな雰囲気ではなかった。
俯いているアーリンは顔を上げないまま、膝の上で拳を握っている。その握った拳も震えている。下唇を噛みしめた顔が、酷く痛く思えてしまう。
「あの、嫌な事は俺知らなくても……」
「ダメだ! 俺はお前を巻き込んで、罰まで受けさせて……なのに俺は報告書だけでほぼお咎めがないなんてそんな……。お前は、知る権利がある」
「いや、だからその権利を放棄しても……」
けれどアーリンが首を強く横に振ったから、それ以上何も言えなくなって黙った。
「……俺の母の名は、カミラ・ドイル」
突然と告げられる言葉に、ジェイソンは首を傾げる。そんな様子にはまったく構わず、アーリンは一気に吐ききるように言葉を繋げた。
「結婚前の名はカミラ・エイプルトン。兄の名はクレイグ・エイプルトン。その子供が……ルース・エイプルトンだ」
「……あ」
しばらくは分からなかった。けれどルースの名が出た途端に、色んな事がわかった。
酷く自嘲気味な顔をするアーリンが正面を向く。歪んだ笑みは、泣いているんだとすぐに分かった。
抱きしめたい。そんな顔をしないで欲しい。「大丈夫」と言ってやりたい。
「俺はあいつの……国の裏切り者の従兄弟にあたるんだ」
「でもお前は関わったわけじゃ……」
「当たり前だろ! 俺の母は嫁いでから一度も伯父と接触していない! ルースとも関係はない! けれど!! けれど、端から見たらそんなの何になるんだ……」
叫ぶ声は吐き出したい色んな感情の塊に思える。苦しくて辛くて憎くて……でも、諦めてもいて。
痛いことが伝わるのは、辛い。アーリンが苦しむ必要なんてないと思う。アーリンは西の戦いに参加していないんだから、反逆者なんかじゃない。
けれど違うと、アーリンはまた自嘲した。
「自分の兄が皇帝暗殺未遂事件を行った時、母は父から離縁された。けれど俺を追い出したら跡取りがいなくなるからと、冷遇の中に置かれた。母は生活の支援を父から受けて、一人で生きてきた。なのに後妻をもらって、その間に男の子が生まれて、ルースの事件を受けて俺も追い出された! 支援も切られ、仕事もなくなり、身一つで……」
グッと声が詰まる。下唇をまた、耐えるように噛んでいる。痛そうなくらいだった。
「仕事についても、半年しないでバレた。反逆者の身内だと。母もそれで定職につけず、体を壊して入院している。俺が……母を助けなければ母は死んでしまう」
「アーリン」
「母が、俺が、何をしたっていうんだ。ただ平穏に、普通に生きてきたんだ。真面目に生きてきたんだ。なのに……どうしてぇ……」
崩れるようなアーリンをどうしていいか分からずオロオロするジェイソンはランバートを見る。ランバートは頷いて、声を上げた。
「事件の時、新聞屋が素性を何の配慮もなく書き立てたんだ。実名や、住んでいる場所や、仕事も。彼ら親子はそれに晒され続け、皆が名を知ってしまった。国がどうにか押さえた時には遅かったんだ」
「……騎士団へと言われ、最初は断った。けれど母の医療費が……払える見込みがなかった。だから生活を保障してくれる騎士団に行く事を決めたんだ。安定もするし。だから、ココを出て行く訳にはいかないんだ」
「あいつらが、それを知ってお前を?」
聞くと、アーリンは静かに頷いた。
「ブランドンの家の家政婦が、元々俺の生家でも働いていたんだ。それで」
「でも嫌なら抵抗できただろ!」
「全員にこれをバラすと言われて、そんなこと出来るか!」
アーリンの睨み付ける目を見て、ジェイソンは後悔した。多分とても、傷つけたんだ。
「お前に、何が分かる。家も裕福で、後ろめたい事なんてなくて、兄は団長で……お前に俺の何が分かる」
「アーリン」
「……嫌いだ、お前なんて。俺を哀れんだ目で見るな!」
酷く泣きそうな苦しそうな顔をしたアーリンは立ち上がり、背を向けてしまう。そしてそのまま、部屋を出ていってしまった。
ランバートが溜息をついて近づいてくる。そしてジェイソンの頭をポンポンと叩いた。
「ここにくるまで、辛かったみたいなんだ。色んな職を転々として、そこでも素性が知れると酷い扱いを受けていたみたいだ」
「でもあいつは何もしてない!」
「それが通用しないのが一般だ。親族がそうならお前もそうなんだろう。そう思う人間が多いのは否めない」
「そんなの!」
「……ジェイソン、俺がアーリンを説得して、お前に話すように言ったのはこれなんだ」
ランバートの困った顔をキョトンと見たジェイソンは首を傾げる。明らかに関係が悪化したようにしか思えないのだが。
「アーリンは意地っ張りでプライドが高い。認めている相手には絶対に弱みを見せたくないタイプの人間だ」
「あー、はい」
ジェイソンもそう思う。
「ジェイソンは誰とでもある程度上手く付き合えて、秘密は絶対に守れる。気遣う気持ちもあるし、何より相手を決めつけないだろ?」
「まぁ、俺って単純でバカなんで、思い込みはダメだなって反省したので」
主に、エリオットの時に猛反省をした。とてもいい人だって分かったら大好きになった。同時にあの時意地悪をした自分がとても嫌いになったのだ。だから、思い込みじゃなくその人を知ってから対応しなければと、常に思うようにしているのだ。
「アーリンの味方になってやってほしい。多分、今も色々と抱えている。けれど俺達の目は見逃す可能性がある。今回もここまで悪化させてしまった。だからお前に、アーリンを支える相手になって欲しいんだ」
ランバートの困ったような目を見て、ジェイソンは頷いた。もとより放っておけないと思っていたのが、こんな話しを聞いたら余計に放っておけなくなった。
「頑張ります」
「頼む」
軽く頭を下げたランバートの苦笑に頷き、ジェイソンは改めて気を引き締める。
「放っておけない」という感情の正体も、分からないままで。
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