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19章:建国祭ラブステップ
9話:ミスコン開催!
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ミスコン参加者がどうにか衣装とメイクを終えてこっそりとラウンジへと入ると、そこはなんだか異様な空気だった。ザワザワしているのだが一つ一つの声は小さいのだ。
「何があったのでしょうか、オスカル様?」
自身も女装したオリヴァーが場の異様さを感じ取って司会のオスカルに問うと、彼はとても困ったように事の経緯を話してくれた。
「……知らぬとは言え、勇敢な子ですね」
「クラウルが必死すぎてさ。しかもゼロスまで流されちゃったから変な空気になっちゃって。実際、あの後から場がざわついて仕方が無いからフリータイムになっちゃった」
「ご苦労様です。では、後はこちらで引き継ぎますね」
とても舞台に再び注目を集めるのは難しい空気感だが、オリヴァーはヒールを鳴らしながら舞台へと向かい、持っていた鞭でパァァン! と床を鳴らした。
ビクリッと音に驚いた隊員達の目が舞台に釘付けになる。オリヴァーは大胆に胸元を開けた赤いドレスを纏い、足下は深くスリットが入ってチラチラと白い美脚が見える。大きめのイミテーションの宝石をちりばめた彼は高級娼婦そのものの姿だった。
「あれって……女優のアルテミシアが今やってるオペラの衣装じゃ」
「ってか、アルテミシアかと思った」
皆オペラを見に行くような者ばかりではないが、この姿のアルテミシアは知っている。なぜなら街の劇場や酒場にも彼女のポスターが貼られているのだから。
「何をざわついているのです? この私が前に出たというのに、他に気を散らすなど罰が当たる。この鞭で叩かれたいのかい?」
「滅相もございません、女王様!!」
視線が一気に舞台に引き戻されたのは良かった。だが、既にオリヴァーが全てをかっ攫っていないか? という疑問は大いにあった。
「……俺、あの空気の中で出て行くんですか?」
第一師団でも綺麗どころと言われている四年目のミックが、今にも泡を吹きそうな顔色で他の隊員達に言うが、こればっかりは仕方が無い。全員が「南無南無」と手を合わせた。
「さて、仕切り直しましょう。これより、第一回騎士団ミスコンテスト開催です! 全員、入場時に紙を渡されましたね?」
オリヴァーの呼びかけに、その場にいる全員が紙を取り出す。
「今から十人のエントリー者が順に出てきます。皆さんはどの番号が美しかったかを、全員見た後で三つ書いていただきます。順位をつける必要はありません。なお、同一の番号を同じ紙に書いても無効ですので、お間違いのないように」
ルールが伝えられ、全員がやんのやんのと声を上げる。直前のフリータイムでお酒の入った彼らのノリの良さはある意味恐ろしいものだ。
「それでは、エントリーNo.1! ミック!」
コールされ、事前に打ち合わせた通り舞台の袖から女装をしたミックが出てきて、中央で正面を見て数歩前に出る。
赤いプリンセスラインのドレスは基調は赤だが、フロントラインは仕立てのいい白で、レースもふんだんに使われている。スカートの中は膨らませる為に骨組みのような物が使われ、それでなくてもボリュームのあるプリンセスドレスを更に膨らませた。
カツラの髪はドレスに合わせてお嬢様スタイル。サイドの髪を三つ編みにし、それをカチューシャのようにして後ろはそのまま下ろしている。
見た目はかなり綺麗めになったミックだが、その足捌きはやはり男のもの。正面で腰に手を当ててポージングはしたが、ぎこちなさは仕方が無いものだ。
「エントリーNo.2! コリー!」
ミックが舞台から退出したタイミングで出てきた一年目のコリーは、小柄で明るい雰囲気そのままの元気カラーのドレスを纏っている。
レモンイエローのプリンセスドレスは何段にもなっていて、レースと造花がふんだんに使われている。胸元や腰のラインにもピンクや白、オレンジといった造花があしらわれているのだ。くるぶしまである足下も黄色。
髪は自前のキャラメル色を活かしているが、元々長めのボブなので違和感はあまりない。花の冠をつけて皆に手を振りながら歩く姿は愛らしく、ショタ好きを一気に惹きつけた感じがあった。
正面でのポージングは、あえての投げキッス。ノリノリの彼に「可愛い」の声と口笛が贈られた。
「温まってきましたね。続いて、エントリーNo.3! リカルド!」
そのコールと共に出ていったリカルドを見た場の空気は、明らかに今までとは違った。
彼は深い緑色の、王侯貴族が社交界で好むタイプのドレスを選んだ。深いグリーンは裾が長く、腰のラインから半円に美しく広がる裾には金色の造花が縫い止められ、スカート部分はアシンメトリーにタッグが寄せられ、そこは金のリボンがつけられている。
髪はそのままショートスタイルで、白い髪に緑の花の髪飾り。その髪飾りには金色の繊細な細工の蝶が羽を休めている。
「リカルド!」
驚いたチェスターが声を上げると、リカルドは正面で彼を見つけ、ふわりと儚げに微笑む。その姿がまた観客を興奮させるようで、大いに湧いた。
が! 一番湧いたのは彼が後ろを向いた瞬間。少し大きめに空いている胸元と背中の美しさと項に、男共から「おぉぉ!」という声が漏れた。
「いい感じですね。それではこのままエントリーNo.4! ディーン!」
コールで出てきた第一師団のディーンは、すっかり身長も伸びて顔立ちも綺麗系へと変貌した。初期の幼さが抜け、美人になったのだ。
そんな彼が選んだのはあえての純白のウエディングドレスだった。
すらりと伸びた身長や長い腕を見せつけるように袖の無いIラインドレスはスッキリとシンプルでありながらも、エレガントさと洗練された美しさを作り出している。
光沢のある生地にプラチナの刺繍がされ、左腰には大きく作ったリボンがある。裾がやや広がる、エレガントなものだった。
「ねぇ、ドゥーこれ知ってたの? ……ドゥー?」
ドゥーガルドの隣にいるハリーが顔を覗き込むと、ドゥーガルドは顔を真っ赤に……
「ドゥー、鼻血出てる!!」
「だらしないなぁ」
ハリーとは逆隣にいるレイバンがハンカチを手にすると、それをドゥーガルドの鼻めがけてぶち込む。
それでもドゥーガルドは舞台から目を離せないようで、もの凄く真っ赤なまま瞬きもしていない。
「ドゥーガルド先輩!」
「!」
舞台上のディーンが声をかける。それにビクリと反応すると、その手元めがけてディーンは手にしていたブーケを投げる。狙い通りドゥーガルドの手元に落ちたそれを、皆が「おぉぉ!」と拍手を送った。
「貴方の為のウエディングドレスです。気に入ってくれましたか?」
「う、ぁ…………うぉぉぉぉ!」
何かが爆発したのか、ドゥーガルドは突如雄叫びを上げて壇上へと上がり、ディーンをお姫様抱っこするとそのまま会場を出て行った。
「…………あー、ディーンはしばらく帰ってきませんね。なお、彼の目的は達成された様子です」
ディーン曰く、『ドゥー先輩に獣のように貪られたくなりました!』だったそうだ。
「さて、気を取り直しましてエントリーNo.5! シウス様!」
あっけにとられていた会場が、意外な名前にどよめき、更に登場した人の美しさとエキゾチックさに見惚れた。
彼はエキルゾの民族衣装である、サリーというものをベースにした衣装を選んだ。この衣装は上下に分かれ、しかもトップスが少し短めにできている。結果、動くと臍がチラ見えだ。その為一度つけたコルセットをあえてやめ、胸元だけをブラジャーをつけて作り直した。
光沢のあるマリンブルーの生地に余すところなく金糸で刺繍が施された七分袖のトップスは、少し動くだけでも煌びやか。下は同色のスッキリとしたAラインだが、こちらも煌びやかな刺繍に加えて腰に飾りベルトがあり、そこについた鈴が歩く度にシャンシャンと音を立てる。
ほっそりとした首には幅広の金の豪華なネックレス。手首には金と銀の細い腕輪が幾重にも重ねてつけられている。白い髪は下ろし、そこに共布の膝裏まであるベールがかけられ、細い金冠で止めている。
「シウス、綺麗……」
自身もまだウエディングドレス姿のままのラウルが、思わず呟く。
シウスはそんなラウルを見つけると知的な瞳を僅かに細めて微笑みを浮かべ、ベールを片方指で摘まんで広げ、腰をくねらせる。
元々男にしては細い腰つきが妖艶にくねり、シャンと音が鳴る。白い臍が見えるだけで、場がただただ見惚れているのが伝わる。
シウスはそのままベールを翻し、反対側の舞台袖へと消えていった。
「えー、妖艶でしたね。あれで三十路とは思えない美しさですが」
「オリヴァー、聞こえておるぞ!」
「失礼しました! では、続きましてエントリーNo.6! ユーイン!」
コールされ、小柄な少年がこれまでとまったく違う服装で登場する。彼はあえて煌びやかさを捨て、コルセットも捨てたのだ。
纏うのは幼女が寝る時に着るような薄手の白いワンピースタイプのパジャマ。下は同じ生地で作られた、足首を絞った感じのズボンだ。
金色の波打つカツラをつけた彼は恥ずかしそうにもじもじとランウェイを歩く。手には大きめのクマのぬいぐるみがある。
正面を向いたユーインは恥ずかしそうに会場を見て、不安そうに大きな青い瞳を揺らしてぎゅっとぬいぐるみを抱き寄せた。
「おぉぉ」
幼女趣味がけっこうな数釣れ、更には妹過保護隊員の庇護欲をくすぐった。
そんな彼が辺りを見回し、ふとジェイソンやアーリンの側にいるリーを見つける。彼も気づいたのか、下から少し赤くなりながらも手を振ってくれた。
それだけで、ユーインはぱっと嬉しそうな顔をし、ほころぶような笑みを見せた。
「うぉぉぉ! 可愛い!」
「俺の妹」
この日から、ユーインは騎士団の「妹」になりそうだ。
「えー、俺の妹ではないので犯罪に走らないように。続いてはエントリーNo7! 人妻なのでお手を触れないようにお願いします! コナン!」
コールで呼ばれたコナンは、まさに生けるお人形だった。
小さな体に纏うのはピンクと白を基調とした、プリンセススタイルのドレスだ。
フロント部分は白い生地が使われ、レースとリボンをふんだんに使っている。
スカートはボリュームのあるオーバースカート。白い何段ものレースを使ったボリューミーなスカートの上はピンク色だ。
肩はエレガントな丸みのある作りで、そこから肘まではむしろほっそりとしている。そして肘から先は豪華なベルスリーブで、ピンクの外側と白い総レースの豪華なもの。
金色のゆるい縦巻きのカツラに幼さを強調するようなピンクのボンネット。不安そうに揺れる瞳がまた、少女らしく映る。
これを見たルイーズの興奮度合いは、天国並だった。何せ嫁が可愛い。可憐でありながらもキュート。最初、衣装を着せるのはオリヴァーの仕事だと言われた時には反発もあったが、我慢したからこそのときめきがここにある。
正面にきたコナンは不安そうに辺りを見回している。その不安そうに揺れる瞳も可愛い。今すぐ抱きしめたい。
やがて、そんなルイーズをコナンが見つけた。そしてとても嬉しそうな、愛らしい笑みを見せた。
「僕は、貴方の為のお人形です」
勿論これはルイーズに向けた言葉だった。だが、酔っ払いな一般隊員も萌えた。
「俺のお人形に是非!」
「バカ! ルイーズ様の嫁だぞ」
「あの子なら俺、お人形遊びしたい」
「変態だぞ!」
場がガヤガヤと五月蠅いが、とりあえず「お人形遊び」と口にした奴は後で絞めようか。
不穏な事をルイーズが考えている間に、コナンは去ってしまった。
「えー、アレは近衛府副長ルイーズの嫁なので、鞭でたたきのめされたく無ければ手を出さない事です。さて、続いては……! 期待していてくださいよ! エントリーNo.8! ベリアンス!」
コールに、ベリアンスはドキドキしていた。だが彼も一隊を率いた隊長だったのだ。拳を握り、一歩を踏み出す。明るいランウェイに出た途端、会場は湧いた。
上は比較的見慣れている感じがした。白いワイシャツに青を基調としたダブルのジャケット。腰元は少し細めに絞ってある。
だが会場が湧いたのは、そこから下。膝上の超ミニスカートは、少しかがんだだけでも見えてしまいそうな危うさ。そこから見えるガーターベルトが、白いニーハイを繋いでいる。靴は編み上げのロングブーツだ。
腰には革の剣帯をつけ、そこに煌びやかな細い模造剣を差している。更に肩には膝裏まである白いマントを、金のマント止めで止めている。
髪は片方を編み込み、そこにシルバーのバレッタをつけ、凜とした騎士の顔をして歩くベリアンスは、正面に立ってドキリとした。
アルフォンスはこのパーティーには参加していないはずだ。夕飯の当番だったから、早めに休むと言っていた。確認したのだから間違いないはずだ。
だが確かにいるのだ。会場の隅の方でジェイクと二人でこちらを見ている。腕を組んだ彼は壇上のベリアンスを見てにっこりと口元に笑みを浮かべる。だが目は笑っていない。
怒っている?
不安がこみ上げるが、既に人前だ。ここで中途半端にしては余計に無様だ。
ベリアンスは腰の剣を一気に抜き去る。軽い木材を使い、それにメッキをした模造の剣はそれでも雰囲気は十分だ。抜き去った剣が天を突く。
「我ら、騎士の誇りを胸に悪を砕く! 誇り高き者達よ、我に続け!」
「おぉぉぉぉ!!」
ベリアンスの鼓舞に呼応するように、隊員達が声を上げる。
ベリアンスは剣を下ろし、出陣を思わせマントを翻して出てきたのとは反対の舞台袖に引っ込んだ。
「ベリアンス、かっこよかったよ!」
そこにいたオスカルが声をかけてくれたが、ベリアンスはそれどころではない。舞台袖に引っ込んだ途端に膝から崩れて、脳内がちょっとしたパニックだった。
「ベリアンス?」
「……怒られる」
「え?」
「どうしよう、怒らせてしまった」
それがとても怖くて、ベリアンスはちょっと涙目になってしまった。
「女騎士、憧れですね。でも帝国にはできませんよ。さて、続きましては料理府からの意外な伏兵! エントリーNo9! ダレン!」
料理府二年目の彼は、普段はあまり目立たない、とても静かな青年だ。言葉数は少なく、黙々と目の前の事を完璧にこなす。そう、彼は完璧主義者なのだ。
そんな彼が女装に選んだのは、おとぎ話の魔女。だが、ただの魔女ではない。魔女であり、女王のような威厳がある。
黒くシンプルなドレスだが、黒地に黒の刺繍が施されて意外と豪華。上半身はスッキリと体に合っている。袖もほっそりと手首まであり、それだけでも綺麗だ。
スカートは少し膨らんだAラインで、重厚なシルエットを持っている。
彼は元々綺麗な顔立ちだ。長めの黒いボブに、大きめだがキリッとした黒い瞳。頭が小さく肌は白く、顎のラインもスッキリとしている。
そんな青年がこのような格好をすると、冷たい雰囲気が増して思わず飲まれてしまう。
正面まできたダレンは両手を広げる。金のマント止めから半円に大きなマントは、それぞれの中指についているリングに繋がっていて、まるで黒い羽根を広げたように見えた。
「おぉ……」
見下すような黒い瞳の冴え冴えとした光に、一部のマゾがゾクリと背を震わせる。まさに電気が走ったというやつだ。
そうした数人を見たダレンが、形のいい口元に笑みを浮かべる。ニヒルな笑みは無言でも「このブタ共め」と言わんばかりだ。
背を向けて去って行くダレン。それが完全に舞台裏へと消えて、ようやく会場は息をついた。
「すげー雰囲気。圧倒されるわ」
「なんか、俺踏まれたい気分になった」
「お前、それってヤバいって」
そんな声が会場に広がっていった。
「凄いドS女王様でしたね」
オリヴァーがそんな事を言うが、会場中は思った。
アンタがそれを言うのかと。
「さて、最後のエントリーです。エントリーNo.10! ランバート!」
そのコールに、会場中がざわついた。だがそれは、ランバートが出てきた途端に一気に静まりかえった。
出てきたのは、麗しい修道女だった。黒いシンプルなロングドレスに、首元を隠す白い襟。頭には肩くらいまでのベールがかけられている。
綺麗な金の髪は三つ編みにされ、後頭部で一つのお団子にまとめられていた。
露出の少ない姿だが、だからこその欲望がある。黒いドレスはシンプルなのだが、とてもシャープでタイトだ。細い腰つきから、尻のラインが服の上からでもはっきり分かる。ほっそりとした腕が、白い項に僅かに落ちる金の髪が。
しかも若い修道女の格好で、頭全体を覆うものではなくあえての短めベール。
聖職者の神聖さと禁欲的な空気、だからこそ触れてみたいと思わせる背徳感と、あちらも誘っているのではないかと思える腰つきだ。
正面に来たランバートは隊員達を見回すと、首からかけている大きめのロザリオを両手で握る。そして、自分の声を上手く女性に似せた。
「邪な心を持つ者達よ、私の前で懺悔なさい」
響く声は女性的な響きがある。声色までしっかりと操る彼は既に暗府にも負けない域にあるのだ。
「ランバートがOKなら、僕もOKだったんじゃない?」
ラウルが少しふて腐れるが、そこは所属が違う。ランバートはあくまで騎兵府。本職ではなく、趣味や副業のようなものだ。
まぁ、そっちの方に気合いの入る人間は多いわけなのだが。
ランバートが去った後、会場のあちこちから「懺悔しないと」という呟きが聞こえる。
だが、最も懺悔しなければいけない男は現在完全にノックアウトされていた。
「ファウスト、大丈夫か?」
「……少しだけなら」
戻ってきたクラウルが声をかけてくるが、正直大丈夫ではない。もの凄い破壊力だった。
けしからん腰つきだ。細くしなり、尻のラインも綺麗で誘っているとしか思えない。化粧もあえての薄付き。白い項が綺麗だった。
「それでは皆さん、投票タイムに移らせてもらいます! 綺麗だと思う番号を三つ書いて、前の投票箱に入れてください!」
箱が三つ用意され、書き込むための台も出てくる。順番に並んだ隊員達が一斉に書き込み箱へと投票していく。
それらが落ち着くと、司会のオリヴァーの指示で箱が下げられた。
「それでは、投票の結果が出るまでしばしお時間を頂きます。それまでどうかご歓談ください。なお、ミスコン参加者も混じりますので、楽しんで頂けると幸いです」
「まじで!!」
女装のまま参加者が出てきて、会場へと紛れていく。ただ見ていただけの隊員はそれだけで更に盛り上がったのだった。
「何があったのでしょうか、オスカル様?」
自身も女装したオリヴァーが場の異様さを感じ取って司会のオスカルに問うと、彼はとても困ったように事の経緯を話してくれた。
「……知らぬとは言え、勇敢な子ですね」
「クラウルが必死すぎてさ。しかもゼロスまで流されちゃったから変な空気になっちゃって。実際、あの後から場がざわついて仕方が無いからフリータイムになっちゃった」
「ご苦労様です。では、後はこちらで引き継ぎますね」
とても舞台に再び注目を集めるのは難しい空気感だが、オリヴァーはヒールを鳴らしながら舞台へと向かい、持っていた鞭でパァァン! と床を鳴らした。
ビクリッと音に驚いた隊員達の目が舞台に釘付けになる。オリヴァーは大胆に胸元を開けた赤いドレスを纏い、足下は深くスリットが入ってチラチラと白い美脚が見える。大きめのイミテーションの宝石をちりばめた彼は高級娼婦そのものの姿だった。
「あれって……女優のアルテミシアが今やってるオペラの衣装じゃ」
「ってか、アルテミシアかと思った」
皆オペラを見に行くような者ばかりではないが、この姿のアルテミシアは知っている。なぜなら街の劇場や酒場にも彼女のポスターが貼られているのだから。
「何をざわついているのです? この私が前に出たというのに、他に気を散らすなど罰が当たる。この鞭で叩かれたいのかい?」
「滅相もございません、女王様!!」
視線が一気に舞台に引き戻されたのは良かった。だが、既にオリヴァーが全てをかっ攫っていないか? という疑問は大いにあった。
「……俺、あの空気の中で出て行くんですか?」
第一師団でも綺麗どころと言われている四年目のミックが、今にも泡を吹きそうな顔色で他の隊員達に言うが、こればっかりは仕方が無い。全員が「南無南無」と手を合わせた。
「さて、仕切り直しましょう。これより、第一回騎士団ミスコンテスト開催です! 全員、入場時に紙を渡されましたね?」
オリヴァーの呼びかけに、その場にいる全員が紙を取り出す。
「今から十人のエントリー者が順に出てきます。皆さんはどの番号が美しかったかを、全員見た後で三つ書いていただきます。順位をつける必要はありません。なお、同一の番号を同じ紙に書いても無効ですので、お間違いのないように」
ルールが伝えられ、全員がやんのやんのと声を上げる。直前のフリータイムでお酒の入った彼らのノリの良さはある意味恐ろしいものだ。
「それでは、エントリーNo.1! ミック!」
コールされ、事前に打ち合わせた通り舞台の袖から女装をしたミックが出てきて、中央で正面を見て数歩前に出る。
赤いプリンセスラインのドレスは基調は赤だが、フロントラインは仕立てのいい白で、レースもふんだんに使われている。スカートの中は膨らませる為に骨組みのような物が使われ、それでなくてもボリュームのあるプリンセスドレスを更に膨らませた。
カツラの髪はドレスに合わせてお嬢様スタイル。サイドの髪を三つ編みにし、それをカチューシャのようにして後ろはそのまま下ろしている。
見た目はかなり綺麗めになったミックだが、その足捌きはやはり男のもの。正面で腰に手を当ててポージングはしたが、ぎこちなさは仕方が無いものだ。
「エントリーNo.2! コリー!」
ミックが舞台から退出したタイミングで出てきた一年目のコリーは、小柄で明るい雰囲気そのままの元気カラーのドレスを纏っている。
レモンイエローのプリンセスドレスは何段にもなっていて、レースと造花がふんだんに使われている。胸元や腰のラインにもピンクや白、オレンジといった造花があしらわれているのだ。くるぶしまである足下も黄色。
髪は自前のキャラメル色を活かしているが、元々長めのボブなので違和感はあまりない。花の冠をつけて皆に手を振りながら歩く姿は愛らしく、ショタ好きを一気に惹きつけた感じがあった。
正面でのポージングは、あえての投げキッス。ノリノリの彼に「可愛い」の声と口笛が贈られた。
「温まってきましたね。続いて、エントリーNo.3! リカルド!」
そのコールと共に出ていったリカルドを見た場の空気は、明らかに今までとは違った。
彼は深い緑色の、王侯貴族が社交界で好むタイプのドレスを選んだ。深いグリーンは裾が長く、腰のラインから半円に美しく広がる裾には金色の造花が縫い止められ、スカート部分はアシンメトリーにタッグが寄せられ、そこは金のリボンがつけられている。
髪はそのままショートスタイルで、白い髪に緑の花の髪飾り。その髪飾りには金色の繊細な細工の蝶が羽を休めている。
「リカルド!」
驚いたチェスターが声を上げると、リカルドは正面で彼を見つけ、ふわりと儚げに微笑む。その姿がまた観客を興奮させるようで、大いに湧いた。
が! 一番湧いたのは彼が後ろを向いた瞬間。少し大きめに空いている胸元と背中の美しさと項に、男共から「おぉぉ!」という声が漏れた。
「いい感じですね。それではこのままエントリーNo.4! ディーン!」
コールで出てきた第一師団のディーンは、すっかり身長も伸びて顔立ちも綺麗系へと変貌した。初期の幼さが抜け、美人になったのだ。
そんな彼が選んだのはあえての純白のウエディングドレスだった。
すらりと伸びた身長や長い腕を見せつけるように袖の無いIラインドレスはスッキリとシンプルでありながらも、エレガントさと洗練された美しさを作り出している。
光沢のある生地にプラチナの刺繍がされ、左腰には大きく作ったリボンがある。裾がやや広がる、エレガントなものだった。
「ねぇ、ドゥーこれ知ってたの? ……ドゥー?」
ドゥーガルドの隣にいるハリーが顔を覗き込むと、ドゥーガルドは顔を真っ赤に……
「ドゥー、鼻血出てる!!」
「だらしないなぁ」
ハリーとは逆隣にいるレイバンがハンカチを手にすると、それをドゥーガルドの鼻めがけてぶち込む。
それでもドゥーガルドは舞台から目を離せないようで、もの凄く真っ赤なまま瞬きもしていない。
「ドゥーガルド先輩!」
「!」
舞台上のディーンが声をかける。それにビクリと反応すると、その手元めがけてディーンは手にしていたブーケを投げる。狙い通りドゥーガルドの手元に落ちたそれを、皆が「おぉぉ!」と拍手を送った。
「貴方の為のウエディングドレスです。気に入ってくれましたか?」
「う、ぁ…………うぉぉぉぉ!」
何かが爆発したのか、ドゥーガルドは突如雄叫びを上げて壇上へと上がり、ディーンをお姫様抱っこするとそのまま会場を出て行った。
「…………あー、ディーンはしばらく帰ってきませんね。なお、彼の目的は達成された様子です」
ディーン曰く、『ドゥー先輩に獣のように貪られたくなりました!』だったそうだ。
「さて、気を取り直しましてエントリーNo.5! シウス様!」
あっけにとられていた会場が、意外な名前にどよめき、更に登場した人の美しさとエキゾチックさに見惚れた。
彼はエキルゾの民族衣装である、サリーというものをベースにした衣装を選んだ。この衣装は上下に分かれ、しかもトップスが少し短めにできている。結果、動くと臍がチラ見えだ。その為一度つけたコルセットをあえてやめ、胸元だけをブラジャーをつけて作り直した。
光沢のあるマリンブルーの生地に余すところなく金糸で刺繍が施された七分袖のトップスは、少し動くだけでも煌びやか。下は同色のスッキリとしたAラインだが、こちらも煌びやかな刺繍に加えて腰に飾りベルトがあり、そこについた鈴が歩く度にシャンシャンと音を立てる。
ほっそりとした首には幅広の金の豪華なネックレス。手首には金と銀の細い腕輪が幾重にも重ねてつけられている。白い髪は下ろし、そこに共布の膝裏まであるベールがかけられ、細い金冠で止めている。
「シウス、綺麗……」
自身もまだウエディングドレス姿のままのラウルが、思わず呟く。
シウスはそんなラウルを見つけると知的な瞳を僅かに細めて微笑みを浮かべ、ベールを片方指で摘まんで広げ、腰をくねらせる。
元々男にしては細い腰つきが妖艶にくねり、シャンと音が鳴る。白い臍が見えるだけで、場がただただ見惚れているのが伝わる。
シウスはそのままベールを翻し、反対側の舞台袖へと消えていった。
「えー、妖艶でしたね。あれで三十路とは思えない美しさですが」
「オリヴァー、聞こえておるぞ!」
「失礼しました! では、続きましてエントリーNo.6! ユーイン!」
コールされ、小柄な少年がこれまでとまったく違う服装で登場する。彼はあえて煌びやかさを捨て、コルセットも捨てたのだ。
纏うのは幼女が寝る時に着るような薄手の白いワンピースタイプのパジャマ。下は同じ生地で作られた、足首を絞った感じのズボンだ。
金色の波打つカツラをつけた彼は恥ずかしそうにもじもじとランウェイを歩く。手には大きめのクマのぬいぐるみがある。
正面を向いたユーインは恥ずかしそうに会場を見て、不安そうに大きな青い瞳を揺らしてぎゅっとぬいぐるみを抱き寄せた。
「おぉぉ」
幼女趣味がけっこうな数釣れ、更には妹過保護隊員の庇護欲をくすぐった。
そんな彼が辺りを見回し、ふとジェイソンやアーリンの側にいるリーを見つける。彼も気づいたのか、下から少し赤くなりながらも手を振ってくれた。
それだけで、ユーインはぱっと嬉しそうな顔をし、ほころぶような笑みを見せた。
「うぉぉぉ! 可愛い!」
「俺の妹」
この日から、ユーインは騎士団の「妹」になりそうだ。
「えー、俺の妹ではないので犯罪に走らないように。続いてはエントリーNo7! 人妻なのでお手を触れないようにお願いします! コナン!」
コールで呼ばれたコナンは、まさに生けるお人形だった。
小さな体に纏うのはピンクと白を基調とした、プリンセススタイルのドレスだ。
フロント部分は白い生地が使われ、レースとリボンをふんだんに使っている。
スカートはボリュームのあるオーバースカート。白い何段ものレースを使ったボリューミーなスカートの上はピンク色だ。
肩はエレガントな丸みのある作りで、そこから肘まではむしろほっそりとしている。そして肘から先は豪華なベルスリーブで、ピンクの外側と白い総レースの豪華なもの。
金色のゆるい縦巻きのカツラに幼さを強調するようなピンクのボンネット。不安そうに揺れる瞳がまた、少女らしく映る。
これを見たルイーズの興奮度合いは、天国並だった。何せ嫁が可愛い。可憐でありながらもキュート。最初、衣装を着せるのはオリヴァーの仕事だと言われた時には反発もあったが、我慢したからこそのときめきがここにある。
正面にきたコナンは不安そうに辺りを見回している。その不安そうに揺れる瞳も可愛い。今すぐ抱きしめたい。
やがて、そんなルイーズをコナンが見つけた。そしてとても嬉しそうな、愛らしい笑みを見せた。
「僕は、貴方の為のお人形です」
勿論これはルイーズに向けた言葉だった。だが、酔っ払いな一般隊員も萌えた。
「俺のお人形に是非!」
「バカ! ルイーズ様の嫁だぞ」
「あの子なら俺、お人形遊びしたい」
「変態だぞ!」
場がガヤガヤと五月蠅いが、とりあえず「お人形遊び」と口にした奴は後で絞めようか。
不穏な事をルイーズが考えている間に、コナンは去ってしまった。
「えー、アレは近衛府副長ルイーズの嫁なので、鞭でたたきのめされたく無ければ手を出さない事です。さて、続いては……! 期待していてくださいよ! エントリーNo.8! ベリアンス!」
コールに、ベリアンスはドキドキしていた。だが彼も一隊を率いた隊長だったのだ。拳を握り、一歩を踏み出す。明るいランウェイに出た途端、会場は湧いた。
上は比較的見慣れている感じがした。白いワイシャツに青を基調としたダブルのジャケット。腰元は少し細めに絞ってある。
だが会場が湧いたのは、そこから下。膝上の超ミニスカートは、少しかがんだだけでも見えてしまいそうな危うさ。そこから見えるガーターベルトが、白いニーハイを繋いでいる。靴は編み上げのロングブーツだ。
腰には革の剣帯をつけ、そこに煌びやかな細い模造剣を差している。更に肩には膝裏まである白いマントを、金のマント止めで止めている。
髪は片方を編み込み、そこにシルバーのバレッタをつけ、凜とした騎士の顔をして歩くベリアンスは、正面に立ってドキリとした。
アルフォンスはこのパーティーには参加していないはずだ。夕飯の当番だったから、早めに休むと言っていた。確認したのだから間違いないはずだ。
だが確かにいるのだ。会場の隅の方でジェイクと二人でこちらを見ている。腕を組んだ彼は壇上のベリアンスを見てにっこりと口元に笑みを浮かべる。だが目は笑っていない。
怒っている?
不安がこみ上げるが、既に人前だ。ここで中途半端にしては余計に無様だ。
ベリアンスは腰の剣を一気に抜き去る。軽い木材を使い、それにメッキをした模造の剣はそれでも雰囲気は十分だ。抜き去った剣が天を突く。
「我ら、騎士の誇りを胸に悪を砕く! 誇り高き者達よ、我に続け!」
「おぉぉぉぉ!!」
ベリアンスの鼓舞に呼応するように、隊員達が声を上げる。
ベリアンスは剣を下ろし、出陣を思わせマントを翻して出てきたのとは反対の舞台袖に引っ込んだ。
「ベリアンス、かっこよかったよ!」
そこにいたオスカルが声をかけてくれたが、ベリアンスはそれどころではない。舞台袖に引っ込んだ途端に膝から崩れて、脳内がちょっとしたパニックだった。
「ベリアンス?」
「……怒られる」
「え?」
「どうしよう、怒らせてしまった」
それがとても怖くて、ベリアンスはちょっと涙目になってしまった。
「女騎士、憧れですね。でも帝国にはできませんよ。さて、続きましては料理府からの意外な伏兵! エントリーNo9! ダレン!」
料理府二年目の彼は、普段はあまり目立たない、とても静かな青年だ。言葉数は少なく、黙々と目の前の事を完璧にこなす。そう、彼は完璧主義者なのだ。
そんな彼が女装に選んだのは、おとぎ話の魔女。だが、ただの魔女ではない。魔女であり、女王のような威厳がある。
黒くシンプルなドレスだが、黒地に黒の刺繍が施されて意外と豪華。上半身はスッキリと体に合っている。袖もほっそりと手首まであり、それだけでも綺麗だ。
スカートは少し膨らんだAラインで、重厚なシルエットを持っている。
彼は元々綺麗な顔立ちだ。長めの黒いボブに、大きめだがキリッとした黒い瞳。頭が小さく肌は白く、顎のラインもスッキリとしている。
そんな青年がこのような格好をすると、冷たい雰囲気が増して思わず飲まれてしまう。
正面まできたダレンは両手を広げる。金のマント止めから半円に大きなマントは、それぞれの中指についているリングに繋がっていて、まるで黒い羽根を広げたように見えた。
「おぉ……」
見下すような黒い瞳の冴え冴えとした光に、一部のマゾがゾクリと背を震わせる。まさに電気が走ったというやつだ。
そうした数人を見たダレンが、形のいい口元に笑みを浮かべる。ニヒルな笑みは無言でも「このブタ共め」と言わんばかりだ。
背を向けて去って行くダレン。それが完全に舞台裏へと消えて、ようやく会場は息をついた。
「すげー雰囲気。圧倒されるわ」
「なんか、俺踏まれたい気分になった」
「お前、それってヤバいって」
そんな声が会場に広がっていった。
「凄いドS女王様でしたね」
オリヴァーがそんな事を言うが、会場中は思った。
アンタがそれを言うのかと。
「さて、最後のエントリーです。エントリーNo.10! ランバート!」
そのコールに、会場中がざわついた。だがそれは、ランバートが出てきた途端に一気に静まりかえった。
出てきたのは、麗しい修道女だった。黒いシンプルなロングドレスに、首元を隠す白い襟。頭には肩くらいまでのベールがかけられている。
綺麗な金の髪は三つ編みにされ、後頭部で一つのお団子にまとめられていた。
露出の少ない姿だが、だからこその欲望がある。黒いドレスはシンプルなのだが、とてもシャープでタイトだ。細い腰つきから、尻のラインが服の上からでもはっきり分かる。ほっそりとした腕が、白い項に僅かに落ちる金の髪が。
しかも若い修道女の格好で、頭全体を覆うものではなくあえての短めベール。
聖職者の神聖さと禁欲的な空気、だからこそ触れてみたいと思わせる背徳感と、あちらも誘っているのではないかと思える腰つきだ。
正面に来たランバートは隊員達を見回すと、首からかけている大きめのロザリオを両手で握る。そして、自分の声を上手く女性に似せた。
「邪な心を持つ者達よ、私の前で懺悔なさい」
響く声は女性的な響きがある。声色までしっかりと操る彼は既に暗府にも負けない域にあるのだ。
「ランバートがOKなら、僕もOKだったんじゃない?」
ラウルが少しふて腐れるが、そこは所属が違う。ランバートはあくまで騎兵府。本職ではなく、趣味や副業のようなものだ。
まぁ、そっちの方に気合いの入る人間は多いわけなのだが。
ランバートが去った後、会場のあちこちから「懺悔しないと」という呟きが聞こえる。
だが、最も懺悔しなければいけない男は現在完全にノックアウトされていた。
「ファウスト、大丈夫か?」
「……少しだけなら」
戻ってきたクラウルが声をかけてくるが、正直大丈夫ではない。もの凄い破壊力だった。
けしからん腰つきだ。細くしなり、尻のラインも綺麗で誘っているとしか思えない。化粧もあえての薄付き。白い項が綺麗だった。
「それでは皆さん、投票タイムに移らせてもらいます! 綺麗だと思う番号を三つ書いて、前の投票箱に入れてください!」
箱が三つ用意され、書き込むための台も出てくる。順番に並んだ隊員達が一斉に書き込み箱へと投票していく。
それらが落ち着くと、司会のオリヴァーの指示で箱が下げられた。
「それでは、投票の結果が出るまでしばしお時間を頂きます。それまでどうかご歓談ください。なお、ミスコン参加者も混じりますので、楽しんで頂けると幸いです」
「まじで!!」
女装のまま参加者が出てきて、会場へと紛れていく。ただ見ていただけの隊員はそれだけで更に盛り上がったのだった。
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