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1章:祝福の家族絵を(エリオット)
おまけ2:リオガンの日記1
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『十二月九日。天気:晴れ
今日はダンクラート隊長とハクインと一緒に王都へ行った。
王都は今、建国祭の飾り付けでとても華やかになっている。金や銀のモール、キラキラの玉飾り、星に、陶器人形。道端や広場には小さな露天が出ていて、お菓子や食べ物を売っていた。
ちょっと、複雑だった。去年のこのくらいに、王都に入った。騒ぎを起こすのに。
ジョシュア・ヒッテルスバッハを殺せば帝国のダメージになるって、ハクインは言っていた。その人を殺すのに、僕とハクインは王都に潜伏したんだ。
あの時も、とても綺麗だなって思っていた。でも楽しいなんて思えなかった。嫌な事を、しなきゃいけなかったし……。
ハクインははしゃいで、沢山お菓子を買っていた。
隊長はやっぱりお肉とお酒が好き。あれもこれもって、お肉食べてた。野菜も食べないと体に悪いよって、言おうと思ったのに今日も言えなかった。
それから、下町にも行った。賑やかで、人が沢山で、僕ははぐれてしまった。
でも大丈夫。以前フォックスって人を狙った時に下町の地理は覚えた。
……ごめんなさいを、言いそびれた。神父様にも「悪い事をしたら謝りなさい」って言われていたのに。
あっ、えっと、綺麗な人に会った。確か……ランバート!
そう、ランバートって人。金髪に青い瞳の、とても雰囲気のある綺麗な人。軍神の恋人。
「あれ? 一人? どうしたの?」って、聞かれた。はぐれたって言ったら、困った顔をしながらも一緒に探してくれていた。
この人にも、沢山嫌な事をしたのに親切にしてくれる。怒っていないのかな?
結局、二人はすぐに見つかって、僕がお礼を言ったら「今度ははぐれるなよ」と言って行ってしまった。
騎士団の人達は、僕達の事を許してくれる。
どうしてなんだろう? 嫌な事も、最低な事も沢山したのに、「とりあえず」って言って許してくれている。今後、働いてもらうって。
チェルルは今、ハムレット先生についてお医者さんのお手伝いをしている。
キフラス様は体が鈍るからって、屋敷のある別荘地の自警団にお邪魔している。僕もそこに、いさせてもらっている。
ハクインは料理が楽しいんだって。お店屋さんでお仕事をしていて、楽しそうに毎日話してくれる。
レーティスも体調良くなって、小さな店の財務顧問っていうのをしているけれど、僕には難しい。お金の話なんだって言っていた。
故郷にいる時よりも充実している。軍でお仕事するより、皆楽しそうな顔をしている。僕も、楽しい。
早く、戦争なんて終わればいいのに。アルブレヒト様が王様になったら、こんな風に楽しい日がくるのかな?
アルブレヒト様、今どうしているんだろう……。怪我、してないかな。苛められていないかな。寂しくないかな……。
会いたいな……。頭、撫でてくれるの好きなんだ。
あっ、また横道に逸れた。暗い事考えないで、楽しい日記にしようと思っていたのに。この日記を、アルブレヒト様に見せるんだ。僕達が毎日、どんな風にしていたかを教えてあげたい。
僕は口下手だから上手くお話ができない。だから日記にしようと思って、ハムレット先生にお願いしたのに。
建国祭には、みんなでお祭りに行こうってハムレット先生が言ってくれた。いいよって、騎士団も言ってくれたから。
僕の目に、どんな風に映るのかな? 去年みたいに、冷たい気持ちは嫌だな。もっと温かくて、キラキラした気持ちになれるかな?
反省しなきゃいけないけれど、せめて何かを綺麗だって思えたらいいな』
「リオガ~ン!」
不意に呼ばれて、リオガンは顔を上げて振り向く。そのタイミングでドアが開いて、キラキラした緑色の瞳がリオガンを映した。
「今日買ったお菓子でお茶しようよ! 先生も帰ってきたからさ!」
「うん。すぐ、行く」
「待ってるからね!」
用件だけを伝え、バタンとドアが閉まる。次にはバタバタと階段を駆け下りていく音が響く。
リオガンは小さく笑い、日記の最後に『おしまい』と書き足し、日記を閉じた。
今日はダンクラート隊長とハクインと一緒に王都へ行った。
王都は今、建国祭の飾り付けでとても華やかになっている。金や銀のモール、キラキラの玉飾り、星に、陶器人形。道端や広場には小さな露天が出ていて、お菓子や食べ物を売っていた。
ちょっと、複雑だった。去年のこのくらいに、王都に入った。騒ぎを起こすのに。
ジョシュア・ヒッテルスバッハを殺せば帝国のダメージになるって、ハクインは言っていた。その人を殺すのに、僕とハクインは王都に潜伏したんだ。
あの時も、とても綺麗だなって思っていた。でも楽しいなんて思えなかった。嫌な事を、しなきゃいけなかったし……。
ハクインははしゃいで、沢山お菓子を買っていた。
隊長はやっぱりお肉とお酒が好き。あれもこれもって、お肉食べてた。野菜も食べないと体に悪いよって、言おうと思ったのに今日も言えなかった。
それから、下町にも行った。賑やかで、人が沢山で、僕ははぐれてしまった。
でも大丈夫。以前フォックスって人を狙った時に下町の地理は覚えた。
……ごめんなさいを、言いそびれた。神父様にも「悪い事をしたら謝りなさい」って言われていたのに。
あっ、えっと、綺麗な人に会った。確か……ランバート!
そう、ランバートって人。金髪に青い瞳の、とても雰囲気のある綺麗な人。軍神の恋人。
「あれ? 一人? どうしたの?」って、聞かれた。はぐれたって言ったら、困った顔をしながらも一緒に探してくれていた。
この人にも、沢山嫌な事をしたのに親切にしてくれる。怒っていないのかな?
結局、二人はすぐに見つかって、僕がお礼を言ったら「今度ははぐれるなよ」と言って行ってしまった。
騎士団の人達は、僕達の事を許してくれる。
どうしてなんだろう? 嫌な事も、最低な事も沢山したのに、「とりあえず」って言って許してくれている。今後、働いてもらうって。
チェルルは今、ハムレット先生についてお医者さんのお手伝いをしている。
キフラス様は体が鈍るからって、屋敷のある別荘地の自警団にお邪魔している。僕もそこに、いさせてもらっている。
ハクインは料理が楽しいんだって。お店屋さんでお仕事をしていて、楽しそうに毎日話してくれる。
レーティスも体調良くなって、小さな店の財務顧問っていうのをしているけれど、僕には難しい。お金の話なんだって言っていた。
故郷にいる時よりも充実している。軍でお仕事するより、皆楽しそうな顔をしている。僕も、楽しい。
早く、戦争なんて終わればいいのに。アルブレヒト様が王様になったら、こんな風に楽しい日がくるのかな?
アルブレヒト様、今どうしているんだろう……。怪我、してないかな。苛められていないかな。寂しくないかな……。
会いたいな……。頭、撫でてくれるの好きなんだ。
あっ、また横道に逸れた。暗い事考えないで、楽しい日記にしようと思っていたのに。この日記を、アルブレヒト様に見せるんだ。僕達が毎日、どんな風にしていたかを教えてあげたい。
僕は口下手だから上手くお話ができない。だから日記にしようと思って、ハムレット先生にお願いしたのに。
建国祭には、みんなでお祭りに行こうってハムレット先生が言ってくれた。いいよって、騎士団も言ってくれたから。
僕の目に、どんな風に映るのかな? 去年みたいに、冷たい気持ちは嫌だな。もっと温かくて、キラキラした気持ちになれるかな?
反省しなきゃいけないけれど、せめて何かを綺麗だって思えたらいいな』
「リオガ~ン!」
不意に呼ばれて、リオガンは顔を上げて振り向く。そのタイミングでドアが開いて、キラキラした緑色の瞳がリオガンを映した。
「今日買ったお菓子でお茶しようよ! 先生も帰ってきたからさ!」
「うん。すぐ、行く」
「待ってるからね!」
用件だけを伝え、バタンとドアが閉まる。次にはバタバタと階段を駆け下りていく音が響く。
リオガンは小さく笑い、日記の最後に『おしまい』と書き足し、日記を閉じた。
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