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4章:特別な贈り物
1話:幸せな悩み事
二月上旬。雪中訓練の疲れも癒えたランバートは今後の行軍の事でファウスト達と打ち合わせなどを細かくしている。冬の森を突っ切るのだから当然と言えば当然だが、幸い山のような険しさはない。そして、最適な道案内がいるということだった。
そんなある夜、ランバートを訪ねる人物がいた。
「ラウル? どうしたんだ?」
「あぁ、うん。実は秘密の相談があって」
周囲を気にしながらのラウルをとりあえず部屋に招き入れたランバートは、そのままソファーに招いてお茶を置く。ちょんと座ったラウルは周囲を見回して興味深げにしていた。
「ランバートらしい部屋になったね」
「そうかな?」
「うん。シンプルで使いやすくて、でも温かい感じ」
室内は少しずつ物が増えた。クッションも幾つか足したし、ラグも気に入っている。本棚にはお気に入りの本が少し。実家から持って来た飾り棚には以前誕生日にエリオット達からもらったティーセットが入っている。
「ラウルの部屋も片付いただろ。新婚って感じか?」
「うん、まぁ。ってか、ランバートからの結婚祝いちょっと恥ずかしかったよ。香油のセットって……」
「毎晩でも使うだろ?」
「そんなにしないもん!」
恥ずかしさに顔を真っ赤にしたラウルに、ランバートは下世話に笑った。
ラウルの結婚祝いを考えた時、ちょっと悪戯心が働いた。そこで質の良い香油のセットにしたのだ。匂いも様々で、ランバートはけっこう気に入っている。髪や肌にも使えるが、当然夜の営みにも大切だ。ベトベト感が少なく、香りがよく、そして体に無害。案外便利だ。
「使った?」
「……うん」
顔から火を噴きそうなほど赤くなったラウルがそれでも頷く。こういう顔がとても可愛い。しかも最近はここに『人妻』という色気と雰囲気が出て、妖艶になってきた。
「で、俺に相談ってなに?」
「あぁ、うん。実は、シウスの誕生日に何を贈ったらいいか、ランバートならいい意見あるかなって」
「あぁ、なるほど」
シウスの誕生日は二月も中程。そろそろ考えたいというのは頷ける。
毎年集まってパーティーをするのが定番ではあるが。
「何か、やりたい事があるのか?」
「……特別な贈り物をしたいなって思うんだけど、案が出なくて。思い出に残る物がいいんだ」
「特別な……か」
そうなると既製品じゃないほうがいい。だがそうなると、なんだろう。
「手編みとかも考えたんだけど、前にもしてるし。それに、一緒の部屋になったら隠し事ができなくなって」
「それで俺に相談か……」
はて、どうしようか。思っていると、ラウルが「ちょっとだけ」と口を開いた。
「ちょっとだけ、思ったんだけどね。絵が、いいかなって」
「絵?」
「うん。部屋にね、シウスのお母さんの小さな肖像画があるんだけど、最近寂しそうにそれを見てるんだ。聞いたら、家族の肖像画ってないんだって。だから、ちょっと……」
「そうか……」
肖像画というならそれほどの苦もない。準備のできたキャンバスもあるし、画材もあれこれこの部屋に運び込んだ。だが、それだけではあまり面白くはない。
「……ラウル、一口乗らないか?」
「え?」
ニヤリと笑ったランバートはラウルに耳打ちをする。それを聞いたラウルは途端に目を輝かせ、大きく頷いてみせた。
「それ、凄く喜ぶと思う!」
「だろ?」
「じゃあ、僕が他の皆さんに話してくる。あとは……フェレスさんかリスクスさんにお願いしてみる」
「うん、頼むよ」
「任せて!」
意気揚々と出て行くラウルを見送り、ランバートもニヤリと笑う。
どうやら今年は賑やかで、そして楽しい誕生日になりそうな予感がした。
そんなある夜、ランバートを訪ねる人物がいた。
「ラウル? どうしたんだ?」
「あぁ、うん。実は秘密の相談があって」
周囲を気にしながらのラウルをとりあえず部屋に招き入れたランバートは、そのままソファーに招いてお茶を置く。ちょんと座ったラウルは周囲を見回して興味深げにしていた。
「ランバートらしい部屋になったね」
「そうかな?」
「うん。シンプルで使いやすくて、でも温かい感じ」
室内は少しずつ物が増えた。クッションも幾つか足したし、ラグも気に入っている。本棚にはお気に入りの本が少し。実家から持って来た飾り棚には以前誕生日にエリオット達からもらったティーセットが入っている。
「ラウルの部屋も片付いただろ。新婚って感じか?」
「うん、まぁ。ってか、ランバートからの結婚祝いちょっと恥ずかしかったよ。香油のセットって……」
「毎晩でも使うだろ?」
「そんなにしないもん!」
恥ずかしさに顔を真っ赤にしたラウルに、ランバートは下世話に笑った。
ラウルの結婚祝いを考えた時、ちょっと悪戯心が働いた。そこで質の良い香油のセットにしたのだ。匂いも様々で、ランバートはけっこう気に入っている。髪や肌にも使えるが、当然夜の営みにも大切だ。ベトベト感が少なく、香りがよく、そして体に無害。案外便利だ。
「使った?」
「……うん」
顔から火を噴きそうなほど赤くなったラウルがそれでも頷く。こういう顔がとても可愛い。しかも最近はここに『人妻』という色気と雰囲気が出て、妖艶になってきた。
「で、俺に相談ってなに?」
「あぁ、うん。実は、シウスの誕生日に何を贈ったらいいか、ランバートならいい意見あるかなって」
「あぁ、なるほど」
シウスの誕生日は二月も中程。そろそろ考えたいというのは頷ける。
毎年集まってパーティーをするのが定番ではあるが。
「何か、やりたい事があるのか?」
「……特別な贈り物をしたいなって思うんだけど、案が出なくて。思い出に残る物がいいんだ」
「特別な……か」
そうなると既製品じゃないほうがいい。だがそうなると、なんだろう。
「手編みとかも考えたんだけど、前にもしてるし。それに、一緒の部屋になったら隠し事ができなくなって」
「それで俺に相談か……」
はて、どうしようか。思っていると、ラウルが「ちょっとだけ」と口を開いた。
「ちょっとだけ、思ったんだけどね。絵が、いいかなって」
「絵?」
「うん。部屋にね、シウスのお母さんの小さな肖像画があるんだけど、最近寂しそうにそれを見てるんだ。聞いたら、家族の肖像画ってないんだって。だから、ちょっと……」
「そうか……」
肖像画というならそれほどの苦もない。準備のできたキャンバスもあるし、画材もあれこれこの部屋に運び込んだ。だが、それだけではあまり面白くはない。
「……ラウル、一口乗らないか?」
「え?」
ニヤリと笑ったランバートはラウルに耳打ちをする。それを聞いたラウルは途端に目を輝かせ、大きく頷いてみせた。
「それ、凄く喜ぶと思う!」
「だろ?」
「じゃあ、僕が他の皆さんに話してくる。あとは……フェレスさんかリスクスさんにお願いしてみる」
「うん、頼むよ」
「任せて!」
意気揚々と出て行くラウルを見送り、ランバートもニヤリと笑う。
どうやら今年は賑やかで、そして楽しい誕生日になりそうな予感がした。
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