恋愛騎士物語3~最強騎士に愛されて~

凪瀬夜霧

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11章:森を越えて

5話:帝国包囲網

 シウスと共に後発の第二師団半分が到着したのは、元傭兵だった女弓兵があらかたのことを話してから二日後の事だった。
 途中、こちらから送った伝令から話をざっくり聞いていたシウスは最初から厳しい顔をしていた。

「――思った以上に、嫌な状況じゃ」

 ランバートやエリオットから話を聞き終えたシウスは腕を組んで唸るしかない。側にいるウェインもまた、なんとも言えない顔をしていた。
 それでもシウスの決断は早い。ウェインを見るとすぐに指示を出した。

「第五と、王都に残した第四を動かしラン・カレイユ攻略をさせよ。指揮はマーロウに。おそらく奴等は力ある者を従わせる為に人質を取っておる。それらを解放せねば、ラン・カレイユが自由にならぬ」

 それに頷いたウェインは早速動こうとした。だがそれを止めたのはアルブレヒトだった。

「それなら、私の所の者を出します。チェルル、ハクイン、リオガンの三名を使いに出し、そのまま使って下さい」
「それは構わぬが、離してよいのかえ?」
「構いません。あちらは潜入、剛よりも技が必要になるでしょう。こちらは知と剛が求められる。それでなくても砦の中で戦える人数が少ない現状で兵力を出すのは避けたくはありませんか?」
「それはそうじゃが……分かった兄、借りる」

 シウスが頷き、ここはこれで決まった。

「砦の中を改めて調べてみた結果、水は全滅ですが他は妙なものは見つかりませんでした。そもそも食べ物は残されていませんでしたし、馬屋などに妙な薬品がかけられていたり、寝具におかしな部分もありませんでした。食料面と飲み水の確保が可能であればラジェーナ砦は使用可能です」

 ここ暫く、少しずつではあるが砦の内部を捜索しておいた。それというのもやはり、後方を守る砦は必要なのだ。安心して籠城したり、下がれる場所があることは前線で戦う兵にとっても安心感に繋がる。
 前線は現在ラジェーナ砦の先。帝国領内のこの砦では距離がある。しかも食料を運ぶ状況にあるのだから、横から襲われ兵糧が届かなくなる状況が一番士気に関わる。
 後方支援の砦を移動させるか。それを、暫く協議していた。

 シウスも暫く考えていた。だが、こちらも道中考えていたのだろう。意外と早く判断が下された。

「他の領内砦からも招集をかけておいた。それを呼び、兵力を底上げしてこちらの砦を預ける。拠点をラジェーナまで上げるぞ」
「は!」

 こうして動き出せる指針が決まった。

 だがその日の深夜、状況が一変した。

「伝令!! 前方ラジェーナ砦付近に複数人影を確認! ジェームダル軍と思われます!」

 ランバート含め、すぐに前線砦の上に駆け上がった。
 そしてそこに広がる光景に、苦虫を噛みつぶしたような顔をした。
 ジェームダル軍、しかも半端な数ではない。おそらく一千はいるだろう影が松明の明かりに照らされてラジェーナ砦を背にこちらを睨み付けている。

「分断されたか」

 忌々しげなシウスの言葉に、前線砦にいる全員に緊張が走った。
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