恋愛騎士物語2~愛しい騎士の隣にいる為~

凪瀬夜霧

文字の大きさ
34 / 233
5章:締めは楽しく恥ずかしく

4話:二人だけの年越し

しおりを挟む
 暴れていたウェインはそれから直ぐに寝入った。今はアシュレーの腕の中、普段は絶対にさせてくれないお姫様抱っこをされている。可愛らしいオレンジのドレスから引き締まって適度に細い足を覗かせ、なんとも安心しきった顔で眠っている。
 ウェインの部屋に連れて行き、とりあえずドレスを脱がせた。紐を緩め、腕を抜いたら後はスルンと脱げていく。さすがにカボチャのように膨らんだものは脱がせなかった。オリヴァーが「下着も女物」と言っていたのを思いだしたからだ。さすがにそれを見られるのは男としてコイツが傷つくだろう。
 裸の体はしっかりと締まっている。傷もないそれにパジャマの上だけを羽織らせると、布団の中に寝かせた。

「まったく、手間のかかる」

 言いながら微笑むアシュレーがそこにはいる。氷の騎士様は、このひまわりみたいな彼を見る時にだけ、こうして毒のない笑みを向けている。ウェイン本人には知られないように、遠く穏やかに。

「んぅ……」

 モゾモゾと体を動かし寝返りを打つウェインが楽しそうに口元をほころばせるのを見て、アシュレーはくくっと笑い、頬にそっとキスをした。

「いい夢を」

 小さく耳元に触れるような距離で告げたアシュレーは、そのまま部屋を後にした。

◆◇◆

 押し倒されるのは覚悟のうえ。だが、この人はそこまでも待ってはくれなかった。
 部屋に担がれたランバートはそのまま壁に手をついて後ろから攻め立てられている。露わになっている背中のラインをなぞるように唇が触れるのを、熱い息を吐き出して受け止めていた。

「まっ……て! ファウスト、服!」

 そう言っても待ってくれる事がない。それもそうだ、遠征から帰って忙しくして、建国祭で事件があって、その後は年末だ。思えば多少の事はあっても激しく求める事も、求められる事もなかった。それが今、決壊状態で押し寄せている。

「はぁ! あっ」

 後ろから手が伸びて平らな胸元を撫でる。滑らかな絹が敏感な胸を撫でてもどかしい気持ちにしていく。

「もっ、分かってるから。頼むから服、脱ぎた」

 借りたこの服が上質なのは分かってる。滑らかな絹の肌触りが心地いい。だからこそ汚すのは忍びないのに。

「何なら買い取る」
「こんなの買い取ってどうするつもりだよ」
「お前がたまに着ればいい」
「そういう趣味ないって!」

 背後で楽しそうに笑う人は本気でそのつもりなのか遠慮がない。項に唇が触れ、強く吸われる。次は首筋に噛みつかれて、思わず声が溢れた。

「俺と式を挙げるときに着るか?」
「勘弁して!」
「似合ってるぞ」
「嫌だ!」

 完全に遊んでいる。そして完全に欲情しきっている。知らなかった、この人シチュエーションってものに弱いんだ。

「いけない事をしている気分だ」

 濡れた声が熱を含んで耳元で囁き、体を反転させられる。壁に背を押し当てた状態でファウストは首の後ろの留め金を外した。シルクに繊細な総レースの上部が落ちて、胸元が露わになる。けれどドレスはまとわりついたまま、腰の所で締まっていて脱げない。
 そのまま胸の突起を舐められると、ゾクゾクと背に気持ちのいい疼きが走って行く。

「はぁ……」

 黒い髪に手を梳き入れて撫でれば、色に濡れた鋭い瞳が見上げて笑った。

「気持ちいいのか?」
「いい」
「久しぶりだ」
「んぁ! わか、てる」

 だから止めはしないし、正直欲しい。ここで止められるほうがもどかしくてたまらない。体中に染みるような心地よさと熱を感じているんだから、止められたら困る。

「ファウスト、脱ぎたい」

 チュッと硬く尖った部分を吸い上げられ、もう一方を摘ままれて息を上げてもランバートのお願いは一つだ。タイトなスカートが窮屈でならない。欲望に煽られて張りつめる部分が辛いのだ。
 もう一ついえば、目の前の人も脱いでもらいたい。こんなとんでもない格好をしているのに、目の前の人は全く乱れていない。首元のボタンを外して鎖骨辺りが露わになったシャツに、黒のトラウザーズというシンプルかつ色気ダダ漏らしの格好だ。
 ファウストは楽しそうに手触りのいいドレスの股間に手を添えて押し込む。形まで分かりそうなくらいに膨らんだそれを刺激され、ランバートは仰け反るように耐えた。ビクッと反応して、足元が震えてしまう。

「ファウスト頼むから!」
「あぁ、分かっている」

 再び壁に手を押し当てて後ろを向かされる。腰の紐が緩まれば腹回りが楽になっていく。そうして尻の辺りまで緩まると、ドレスは自然と床に落ちた。

「っ!」
「?」

 ドレスが落ちた途端、背後でファウストが息を詰めたのが分かった。何をそんなにと思いながらランバートも視線を下にして、羞恥に言葉をなくした。忘れていたのだ、シルエットが崩れるだの何だの言われて女性物の総レースの、しかも際どいTバックの下着を着けさせられているのを。
 その下着の前だってあらぬことになっている。布面積小さくてこれで何を隠せるんだと言わんばかりの三角形の布を、熱く張りつめたものが押し上げている。

「これは!」

 言い訳するよりも前に、ファウストの大きな熱い手が尻を揉む。それだけで、羞恥とあらぬ格好というダブルパンチを食らっている身としては感じてしまう。

「凶悪だな、これは」
「ちょ、やぁ……」
「完全に遊ばれたな」
「はっ」
「来年はできれば、旅行にでも出よう」
「うん! 賛成!」

 結局公開処刑なのだからもういい。今はこの死ねる視界をどうにかするか、さもなければ快楽で脳みそ吹っ飛べばいいと思ってしまう。
 ファウストはあろうことか、後ろを向かせ女性物の下着をつけたままで後ろを解し始めた。汚すものかとドレスを足に引っかけて遠くへと蹴りやるのが精一杯。立ったまま香油に濡れた指を飲み込む事になる。

「んぅ……」

 息を吐いてやり過ごし、濡れた音を聞いている。振り向かされてキスをされ、露わになっているピアスのはまる耳の縁を甘噛みされて、徐々にクラクラしてきた。

「お前も案外感じてるな」
「ダメか?」
「いいや」

 ニヤリと笑う人が更に指を追加していく。ほぼ隠していないような下着では指の侵入を拒めない。ってか、いつまで履いたままなんだこれ。

「頼むから、脱がせて」
「面白いぞ」
「恥ずかしい!」

 主に自分に見えている映像が暴力でしかない。

 クルンと反転させられて、ファウストを前から見る。濡れた色香を持つ瞳がランバートを見て、ニヤリと笑みを深くした。

「確かにこれは、恥ずかしいな」

 荒い息をして背中を壁に預けたまま、呆けたようにファウストを見ていたから指摘されて思い至って恥ずかしくて前を隠した。完全に勃ちあがった先端が下着を押し上げてテラテラと濡れている。そうして前を膨らませていると微妙に尻に後ろが食い込む。レースという微妙な衣擦れの布がもどかしく刺激して、だからといって何も隠してはくれなくて、ジワッと熱を持っていく。

「隠さなくてもいいぞ」
「変態!」
「まぁ、否定はできないな。実際、女装したお前を見て多少煽られた」
「もうしないからな」
「それは残念」

 冗談なのかなんなのか、そんな会話をしながら近づいてきたファウストが下着越しの前に触れる。知らない布の摩擦に擦られた前が更に先走りを溢して濡れていく。ヌチュという音がして、いたたまれなくて強く目を瞑った。

「限界か?」
「もっ、欲しい」

 達するには弱すぎる。でも、意識の外に置くには強い。そんな感覚に涙が出る。とろ火で炙られている状態に、ランバートは懇願した。
 下着を簡単に落とされ、ファウストも前を寛げた。色でぼやけた脳みそが映像だけを送ってくる。でもそこに思考が伴わないんじゃどうしようもない。呆けたままランバートは片足を高く持ち上げられ、壁に背を押し当てたままファウストの高ぶりを飲み込んだ。

「はっ! ぁあぁ!」

 ぐちりと飲み込む部分が一杯に口を広げている。味わったことのない角度で抉られて、涙がこぼれた。

「いつも以上に狭いな」

 色気を含む声がそんな事を言うが、そんな情報拾えない。不安定な状態でバランスが取りづらく、突き上げられると腰が浮き上がりそうになる。
 そのうちに地に着いていた方の足も持ち上げられ、前からM字に開脚させられたような状態で突き上げられて目の前が白黒する。背に感じる壁だけじゃ不安で、首に腕を巻き付けて必死に抱きつけば、落ち着くようにキスをくれた。

「落ちる」
「それはないな」

 近くで端正な顔が笑みを作っている。腕の力が持ち上げ、腰を入れられて揺さぶられていく。自重もあってより深くファウストを飲み込めば、目の前の黒い瞳も濡れていく。荒く息をついてあちこちを突き上げられながら、ランバートはブルッと震えて強く抱きついた。
 互いに激しく求めて息をつめて、より深くファウストを受け入れながらランバートは果てていた。ファウストの服に全てかける事になったが、もうそんな事はどうでもいい。息が荒くて、それでも不安定なまま中に熱い滴りを感じている。その耳に、遠く花火の音がした。

「あ……」

 年が明けたのだ。

「とんでもない年明け」

 汗と唾液と白濁で内も外もドロドロになっている。しかもまだ、ファウストを中に咥え込んだまま吸い上げるように内襞が蠢いている。まだまだ足りないと言わんばかりだ。

「ランバート」
「なに?」
「今年もよろしく」
「こんな体勢で言う事かよ!」

 ニッコリと言われてもどうしたらいい。思うがこれは照れ隠しで、ランバートはギュと抱き寄せてキスをした。

「……よろしく」

 恥ずかしくはあるが、心からそう言ったランバートを抱きしめるファウストが、とても嬉しそうに微笑んでいた。
しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

【完結済】「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? 騎士×妖精

【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる

ざっしゅ
BL
気づけば、男の婚約者がいる悪役として転生してしまったソウタ。 この小説は、主人公である皇太子ルースが、悪役たちの陰謀によって記憶を失い、最終的に復讐を遂げるという残酷な物語だった。ソウタは、自分の命を守るため、原作の悪役としての行動を改め、記憶を失ったルースを友人として大切にする。 ソウタの献身的な行動は周囲に「ルースへの深い愛」だと噂され、ルース自身もその噂に満更でもない様子を見せ始める。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! できるかぎり毎日? お話の予告と皆の裏話? のあがるインスタとYouTube インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

処理中です...